事件番号:JP2001-0009 裁 定 書 申立人:(名称) ジェ ア モドゥフィヌ ソシエテ アノニム (住所) スイス国ローザンヌ アブニュ ドゥ フランス 90 代理人:弁護士 宮川 美津子 同 山本 麻記子 登録者:(名称) デジコン有限会社 (住所) 〒131-0043 東京都墨田区立花1丁目7番10号 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、JPドメイン紛争処理方針、JPドメ イン名紛争処理方針のための手続規則及び工業所有権仲裁センターJPドメイン名 紛争処理方針のための手続規則の補則並びに条理に則り、申立書・答弁書・提出 された証拠に基づいて審理を遂げた結果、以下のとおり裁定する。 1 裁定主文 ドメイン名「armani.co.jp」の登録を申立人に移転せよ。 2 ドメイン名 紛争に係るドメイン名は「armani.co.jp」である。 3 手続の経緯 日本知的財産仲裁センター(以下、センターという)は、本申立を2001 年5月18日に受領した。同日、センターはJPNICに対し、登録情報の照 会を電子メールで行い、同日、デジコン有限会社が本ドメイン名の登録者であ ることを確認した。 センターは、JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則(以下、手続規 則という)第4条に従い、5月21日、本申立がJPドメイン名紛争処理方針 及び手続規則に適合しているかどうかを確認したところ、申立書の登録者の欄 中に、登録者の住所が記載されていなかったため、同月25日、申立人に対し 申立不備の内容を通知し、同日電子メールにより、28日手交により、補正さ れた申立書を受領した。なお、申立手数料については、5月17日に180, 000円、同月22日に消費税分9,000円が入金されていることを確認し た。 本申立書は、手続規則第4条に従い、5月29日に登録者に送付された。な お、登録者の電子メール及びファクシミリによる送信は不能であったが、JP NICからの登録情報に記載された住所においては翌30日に、申立書に記載 された登録者住所においては31日に、郵送により受領されている。 手続規則第4条(d)及び同第2条(a)により、手続開始日は5月29日 であり、両当事者及びJPNICには、その旨同日通知された。手続規則第5 条(a)により、登録者による答弁書の提出期限は6月26日であったところ、 答弁書の提出がなかったので、翌27日、両当事者に対し、答弁書不提出通知 書を送付した。 センターは、手続規則第6条(b)に基づき、7月3日、単独パネリストと して弁護士島田康男を指名し、両当事者に通知した。手続規則第15条(b) の規定により、裁定予定日は7月24日であった。 なお、6月4日、センターは、登録者から、アルマーニ社からJPドメイン の取得を依頼された旨、また、昨年5月の更新時にアルマーニ社にドメイン名 をどうするかを連絡し「折り返し連絡する」旨の回答があったが、未だに連絡 がない旨等の連絡を受けた。 4 当事者の主張 a 申立人の主張 (1)申立人の商標権について ① 申立人は、資料2乃至資料18に記載の商標権を有している。 資料2乃至資料18に記載の商標権は、「GIORGIO ARMANI(ジョルジオ アルマーニ)」、「EMPORIO ARMANI(エンポリオ アルマーニ)」、「AR MANI(アルマーニ)」に関するものである。 ② 申立人表示の周知性について ⅰ 申立人は、世界的に著名なイタリアのデザイナーである「GIORGIO ARMA NI」(ジョルジオ アルマーニ)の設立した会社であり、そのデザイン及び商標権 等の知的財産権の管理を行っている。 イタリアの服飾デザイナー「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ) は、1975年にイタリアで紳士・婦人物既製品を扱うファッション・デザ イン会社「ジョルジオ アルマーニ社」を設立して以来、「GIORGIO ARMAN I」(ジョルジオ アルマーニ)の商標を付した紳士・婦人用既成服を製作、販売 すると共に、1981年にはブランド「EMPORIO ARMANI」(エンポリオ ア ルマーニ)を発表した。ジョルジオ アルマーニのデザインする製品には、「A RMANI JEANS」その他「ARMANI」、「A/X ARMANI EXCHANGE」等多数の ブランドがある。彼のデザインする上記各ブランドに係る商品は、紳士・婦 人服だけではなく、ネクタイ・靴下・帽子・手袋・傘・眼鏡等の他、ハンド バック、革小物等、さらには香水をはじめとした化粧品をも含み、非常に広 範にわたる。 そして、これらの各ブランドに係る商品は、そのデザイン及び品質におい て大変に優れていたことから、イタリアの国内のみならず、日本を含む世界 各国に商品が輸出されるようになった。中でも、男性用の衣服については、 世界的に注目を浴びるようになり、世界のファッションショーの桧舞台とも いうべきミラノコレクション、パリコレクション、ニューヨークコレクショ ン、東京コレクションで次々に発表し、1979年には「ニーマン・マーカ ス賞」、1980年、1981年、1984年、1986年、1987年の 5度にわたり「カティ・サーク国際トップ・ファッション・メンズ・デザイ ナー賞」、1981年には最高のファッション・デザイナーを選ぶ「G/Q」 雑誌より「メンズ・スタイル賞」、1983年にはアメリカ・ファッション・ デザイナー協会より「国際デザイナー賞」、1988年にはアメリカ・ファ ッション・デザイナー協会より「メンズウェア・ライフタイム・アチーブメ ント賞」、マドリッドにて国際ベスト・デザイナーとして「クリスタル・バ レンシアガ賞」、1989年には日本で繊研新聞より「繊研賞」等、数多く の賞を受賞している(資料1)。 こうして「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)は、その名を世界 に知られるに至り、今や“イタリアモード界の征服者”又は“キングオブブ レザー”のように呼ばれ、世界的に著名なファッション・デザイナーとなっ たものである。 ⅱ 日本における著名性について ジョルジオ アルマーニのデザインする上記ブランドは、「ジョルジオ アル マーニ ジャパン 株式会社」を設立して販売されており、東京、大阪、名古屋、 神戸、札幌等の日本各地に直営店を設けて販売の強化を図ってきたところで あり、その売り上げも平成7年で約150億円にも達する。 特に日本においては、これらの各ブランドに係る商品は、「アルマーニのス ーツ」、「アルマーニのジャケット」、「アルマーニの服」の様に「アルマーニの ○○○」と呼ばれ、いずれも洗練された高品質の商品であり、申立人の長年に わたる継続的な努力によって、世界の超一流品としての極めて高い信用が形 成されるに至ったものである。 こうして、日本においてもデザイナーとしての「GIORGIO ARMANI」(ジョ ルジオ アルマーニ)及びその略称である「ARMANI」(アルマーニ)の名は専門 業者のみならず、一般消費者にも広く知られるに至り、本人及びそのデザイ ンがファッション誌や雑誌、書籍にも多く取り上げられた(資料20乃至2 7)。さらにデパート主催の写真展も開催されたほか(資料28)、新聞、テ レビ上でも数多く取り上げられ(資料29)、その結果、デザイナー「GIORG IO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)は、その略称である「ARMANI」(アル マーニ)と共に、いまや老若男女を問わず誰でもが知っている程に著名にな っているということができる。 イタリアのデザイナー「GIORGIO ARMANI」の略称「ARMANI」の著名性に ついては、日本国特許庁においても「ARMANI」を含む多数の商標についての 登録異議等において認められている(資料30)。 ⅲ さらに、ドメイン名に関しては、「ARMANIINTERNATIONAL.NET」(Ca se No.D2000-0305)「ARMANI-SUNGRASSES.COM」(Case No.D2000-030 6)といういずれも「ARMANI」を含むドメイン名の登録者に対して、申立人 の代理人弁護士事務所であるStudio RAPISARDI SAがWIPO Arbitration and Mediation Centerに申し立てた仲裁において、上記各ドメイン名はいずれも著 名な申立人の商標と要部が同一であり、一般的に「ARMANI」と混同を生じ るものであり、登録者は申立の対象であるドメイン名についての権利または 正当な利益を有しておらず、申し立てにかかるドメイン名は不正の目的で登 録または使用されているものと認められ、2000年6月26日に上記各ド メイン名の登録を請求人に移転するよう裁定が下されている(資料31及び 32)。 ③ ドメイン名と申立人表示の同一若しくは類似について 本件ドメイン名は申立人の著名な商標と同一の商標を含むものである。 (2)登録者は登録について権利または正当な利益を有しないことについて 登録者が、日本ネットワークインフォメーションセンターにて本件ドメイ ン名の登録申請を行った際に(1997年)、デザイナーとしての「GIORGI O ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)及びその略称であり登録商標でもある 「ARMANI」(アルマーニ)を知らなかったということは到底ありえない。ま た、登録者は申立人とは何ら関係のない者であり、申立人は登録者に対して 過去、現在において一切の商標の使用を許諾したことはない。さらに、登録 者は日本において『armani』の商標権を取得しておらず、本件ドメイン名を使 用している形跡もない。よって、登録者は本件ドメイン名について権利また は正当な利益を有していない。 (3)登録者の本件ドメイン名が不正の目的で登録または使用されていることに ついて 申立人の商標「ARMANI」及びその関連商標は世界的に著名な商標であり、 登録者が本件ドメイン名の登録を取得した際に、申立人の有名な商標を知ら なかったということはありえない。したがって、登録者は「ARMANI」が申立 人の著名商標であることを知りながら、正当な登録理由あるいは使用目的を 持たないままに、故意に本件ドメイン名を取得したものであり、仮に将来申 立人その他ジョルジオ アルマーニに関連して正当に権利を得た者以外によ り使用される場合には、インターネット上のユーザーの間に申立人と誤認混 同を生じさせ、使用者のホームページにユーザーを誘引する結果となるので あるから、登録者は本件ドメイン名を自ら使用する目的か、あるいは対価を 得て本件ドメイン名の移転をするためにこのような機能をもつ本件ドメイン 名の登録を取得したものと考えざるを得ない。 また、登録者が本件ドメイン名をインターネット上で使用した際には、申 立人の商標権を侵害するおそれが高く、さらに申立人の著名な商号を含んだ ドメインネームの使用によりインターネット・ユーザーの間に、誤解や混同 を生じさせるものであり、かかる不正使用は、不正競争防止法にも違反する ものである。 b 登録者の答弁 登録者は答弁書を提出しなかった。 5 争点及び事実認定 a 答弁書不提出の効果 (1)本件において登録者は、JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則(以 下、「手続規則」という。)第2条(a)(ⅰ)に基づいて適式に申立書の送付 を受けたにもかかわらず、答弁書提出期限までに答弁書を提出しなかった(別 紙手続の経緯参照)。従って本件において争点は形成されていない。 なお、登録者から、アルマーニ社からJPドメイン名の取得を依頼された との連絡がなされているが、そのことを証する証拠は全く提出されていない し、申立人からは登録者は申立人とは何ら関係のない者であるとの主張がな されていることに照らすと、アルマーニ社からJPドメイン名の取得を依頼 されたとの登録者の主張は措信できない。 また、ドメイン名を申立人に譲渡したいとの連絡もなされているが、本申 立は維持されており、譲渡がなされたことを認めるに足る証拠はないから、 譲渡があったと認めることはできない。なお、譲渡したいとの申し出自体は 本申立を成り立たせなくするものではない(JPドメイン名紛争処理方針(以 下、「処理方針」という。)第4条b.(ⅰ)参照)。 (2)答弁書が提出されなかった場合、手続規則によれば、パネルは申立書に基 づいて裁定を下すものとするとされている(第5条(f))が、一方において、 手続規則は、いずれかの当事者が本規則の規定もしくは要件またはパネルの 要請を履行しないとしても、パネルは適切と思われる判断を下さなければな らないと規定している(第14条(b))こと、処理方針による紛争処理手続 は民事訴訟手続のような公権的な最終的紛争解決手続ではないこと、処理方 針第4条a.が「このJPドメイン名紛争処理手続において、申立人はこれら三 項目(第4条a.に規定する三項目)のすべてを申立書において主張しなけ ればならない。」と規定していること、手続規則が「申立書」には(1)申立の 対象となっているドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商 標その他表示と同一または混同を引き起こすほど類似していること、(2)登録 者が、当該ドメイン名の登録についての権利または正当な利益を有していな いと考えられる理由、(3)登録者の当該ドメイン名が、不正の目的で登録また は使用されていること、を明確にした申立の根拠・理由が記載されることが 要求されること(第3条(b)(ⅰⅹ))、申立人が依拠している商標登録を含む 証拠書類または他のすべての証拠の提出が求められていること(第3条(b) (ⅹⅰⅴ))等に照らすならば、パネルは登録者が答弁書を提出しないという事 実のみを理由として、申立人の申立を認容すること、及び、申立書記載の事 実、判断について登録者が全部自認したものと扱うこと(擬制自白)は許さ れず、処理方針および手続規則の定める要件が充足されているか否かの判断 を申立人の提出した証拠と当事者の陳述(審理の全趣旨)に基づいて認定し なければならないものと言うべきである。 (3)そこで、本件申立事件が処理方針第4条a.に定める3要件を充足してい るかどうかを検討する。 b 登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他 表示と同一または混同を引き起こすほど類似していること(処理方針第4条a. (ⅰ)) (1)登録者のドメイン名「armani.co.jp」のうち、「.jp」の部分はトップレベル ドメインと呼ばれる部分であって国別コードからなっており、「.co」の部分 はセカンドレベルドメインと呼ばれる部分であって組織の種別コードからな っており、「armani」の部分が当該ドメイン名を使用する主体(ホスト)を示 す部分である。 トップレベルドメイン及びセカンドレベルドメインはそれぞれ使用主体 (ホスト)が属する国及び組織を表示するものであるに過ぎないから、登録 者のドメイン名「armani.co.jp」において、主たる識別力を有するのは「arman i」の部分にあるものと認められる。 したがって、登録者のドメイン名「armani.co.jp」の要部は「armani」と認め られる。 (2)申立人の商標その他表示 ① 申立人は別紙記載の商標権を有する。 ② 「GIORGIO ARMANI」商標は、「GIORGIO」と「ARMANI」の間にアルファ ベット1文字ほどの空白が設けられており、また、「GIORGIO ARMANI」は「ジ ョルジオ アルマーニ」と称呼され、イタリア系の人名と認められるから、「G IORGIO」はファーストネーム、「ARMANI」はファミリーネームと観念され るところであり、「GIORGIO ARMANI」は「GIORGIO」と「ARMANI」とに分 離することができ、「ARMANI」が抽出される。イタリア人であるデザイナー Giorgio Armani(ジョルジオ アルマーニ)は服飾デザイナーとして、「GIOR GIO ARMANI」商標はGiorgio Armani(ジョルジオ アルマーニ)に由来する ブランドとして周知、著名であり、人名はファミリーネームで略称されるこ とと相まって、「Armani」、「アルマーニ」は、Giorgio Armani(ジョルジオ アルマーニ)、「GIORGIO ARMANI」商標の略称として周知、著名であるこ とに照らすと、「ARMANI」は「GIORGIO ARMANI」の要部であると認められ る。 同様に、「EMPORIO ARMANI」商標の要部は「ARMANI」と認められ、 「Giorgio Armani/ジョルジョアルマーニ」商標の要部は「Armani」、「アル マーニ」と認められる。 (3)登録者のドメイン名と申立人の商標その他表示との類似性 登録者のドメイン名「armani.co.jp」の要部「armani」と申立人の上記商標の 要部である「ARMANI」は、小文字と大文字の相違があるに過ぎず、称呼は いずれも「アルマーニ」であり、イタリア系の人名のファミリーネームと観 念されるから、両者は同一であると言ってもよく、誤認混同を生ずるほど類 似していることは明らかである。 したがって、「armani.co.jp」は「ARMANI」商標、及び、「アルマーニ」 商標と誤認混同を生ずるほど類似すると認められる。また、「armani.co.jp」 は「GIORGIO ARMANI」商標、「EMPORIO ARMANI」商標、及び、「Giorgio Armani/ジョルジョアルマーニ」商標と誤認混同を生ずるほど類似すると認め られる。 c 登録者のドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること(処理 方針第4条a.(ⅲ)) (1)不正の目的について、処理方針第4条b.は、(ⅰ)登録者が、申立人ま たは申立人の競業者に対して、当該ドメイン名に直接かかった金額(書面で 確認できる金額)を超える対価を得るために、当該ドメイン名を販売、貸与 または移転することを主たる目的として、当該ドメイン名を登録または取得 しているとき、(ⅱ)申立人が権利を有する商標その他表示をドメイン名と して使用できないように妨害するために、登録者が当該ドメイン名を登録し、 当該登録者がそのような妨害行為を複数回行っているとき、(ⅲ)登録者が、 競業者の事業を混乱させることを主たる目的として、当該ドメイン名を登録 しているとき、(ⅳ)登録者が、商業上の利得を得る目的で、そのウェブサ イトもしくはその他のオンラインロケーション、またはそれらに登場する商 品およびサービスの出所、スポンサーシップ、取引提携関係、推奨関係など について誤認混同を生ぜしめることを意図して、インターネット上のユーザ ーを、そのウェブサイトまたはその他のオンラインロケーションに誘引する ために、当該ドメイン名を使用しているときには、当該ドメイン名の登録ま たは使用は、不正の目的であると認めることができると規定する。 (2)処理方針においては、申立人の商標その他表示が周知であることは要件と はされていない。したがって、上記(ⅰ)乃至(ⅳ)は、申立人の商標その 他表示が周知でない場合であっても、登録者のドメイン名が不正の目的で登 録または使用されていると認めることができる場合を例示したものであると 言える。 上記処理方針が採用された趣旨に照らして、登録者がドメイン名を登録す る際に、現に、申立人の商標その他表示が周知である場合には、登録者が当 該ドメイン名の登録について権利または正当な利益を有すること等特段の事 情の存在することを明らかにしなければ、当該登録は不正の目的でなされた ものというべきである。 ドメイン名はインターネット上の「住所」であり、インターネット及び電 子商取引の普及に伴い、ビジネス上あるいは社会生活上、消費者等を特定の ウェブサイトに引き寄せる上で重要な機能を果たすものであり、他人の周知 の商標その他表示を自己のドメイン名とすることはインターネット上のユー ザー(インターネット利用者)に自己のウェブサイトを他人のウェブサイト と誤認混同させるものであり、登録において誤認混同させる目的(不正の目 的)があったと言えるからである。 (3)申立人表示の周知性については次のとおり認めることができる。 ① 申立人はイタリアのデザイナーであるGiorgio Armani(ジョルジオ アルマ ーニ)の設立した会社であり、そのデザイン及び商標権等の知的財産権の管理 を行うものである。 イタリアの服飾デザイナーGiorgio Armani(ジョルジオ アルマーニ)は、1 975年にイタリアで紳士・婦人物既製品を扱うファッション・デザイン会 社「ジョルジオ アルマーニ社」を設立して以来、「GIORGIO ARMANI」(ジョ ルジオ アルマーニ)の商標を付した紳士・婦人用既成服を製作、販売すると 共に、1981年に「EMPORIO ARMANI」(エンポリオ アルマーニ)ブランド を発表したのをはじめ、「ARMANI JEANS」その他「ARMANI」、「A/X ARM ANI EXCHANGE」等多数のブランドを発表している。上記各ブランドに係る 商品は、紳士・婦人服だけではなく、ネクタイ・靴下・帽子・手袋・傘・眼 鏡等の他、ハンドバック、革小物等、さらには香水をはじめとした化粧品を も含み広範にわたる。 これらの各ブランドに係る商品は、イタリアの国内のみならず、日本を含 む世界各国に商品が輸出されるようになった。中でも、男性用の衣服につい ては、世界的に注目を浴びるようになり、ミラノコレクション、パリコレク ション、ニューヨークコレクション、東京コレクションで次々に発表し、1 979年には「ニーマン・マーカス賞」、1980年、1981年、198 4年、1986年、1987年の5度にわたり「カティ・サーク国際トップ・ ファッション・メンズ・デザイナー賞」、1981年には「G/Q」雑誌よ り「メンズ・スタイル賞」、1983年にはアメリカ・ファッション・デザ イナー協会より「国際デザイナー賞」、1988年にはアメリカ・ファッシ ョン・デザイナー協会より「メンズウェア・ライフタイム・アチーブメント 賞」、マドリッドにて国際ベスト・デザイナーとして「クリスタル・バレン シアガ賞」、1989年には日本で繊研新聞より「繊研賞」等、数多くの賞 を受賞している(資料1)。 ② 日本においても、Giorgio Armani(ジョルジオ アルマーニ)のデザインする 上記ブランドは、「ジョルジオ アルマーニ ジャパン 株式会社」を設立して販 売されており、東京、大阪、名古屋、神戸、札幌等の日本各地に直営店を設 け、売り上げも平成7年で約150億円に達する。 日本においては、「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)の商標を 付した紳士・婦人用既成服は、「アルマーニのスーツ」、「アルマーニのジャケ ット」、「アルマーニの服」の様に「アルマーニの○○○」と呼ばれるに至ってい る。 日本においても、デザイナーとしてのGiorgio Armani(ジョルジオ アルマー ニ)、その商標「GIORGIO ARMANI」及びその略称であるArmani、アルマーニ は専門業者のみならず、一般消費者にも広く知られるに至り、本人及びその デザインがファッション誌、雑誌、書籍、新聞、テレビでも数多く取り上げ られている(資料20乃至29)。 (4)登録者が日本ネットワークインフォメーションセンターにて本件ドメイン 名の登録申請を行った際に(1997(平成9)年)、デザイナーとしてのG iorgio Armani(ジョルジオ アルマーニ)、その商標「GIORGIO ARMANI」及び その略称である「Armani」、「アルマーニ」は専門業者のみならず、一般消 費者にも広く知られていたと認められる。 したがって、登録者のドメイン名「armani.co.jp」を登録すれば、インター ネット上のユーザーに申立人のウェブサイトと誤認混同を生じ、あるいは、 登録者ウェブサイトをして申立人と関係するウェブサイトと誤認を生ぜしめ ることとなり、その結果、登録者は申立人の信用にただ乗りして不正に利得 を得、一方、申立人の事業に混乱を生ずることとなることを登録者は意図し ていた、少なくとも、これを認容していたと言うべきである。 (5)本申立においては、登録者が当該ドメイン名の登録について権利または正 当な利益を有すること等特段の事情の存在することを明らかにしたと認める ことはできないから、登録者のドメイン名「armani.co.jp」は不正の目的で登 録されたものと認められる。 d 登録者が登録者のドメイン名の登録について権利または正当な利益を有しな いこと(処理方針第4条a.(ⅱ)) (1)処理方針第4条c.は、登録者がドメイン名に関する権利または正当な利 益を有していることの証明として、(ⅰ)登録者が、当該ドメイン名に係わ る紛争に関し、第三者または紛争処理機関から通知を受ける前に、何ら不正 の目的を有することなく、商品またはサービスの提供を行うために、当該ド メイン名またはこれに対応する名称を使用していたとき、または明らかにそ の使用の準備をしていたとき、(ⅱ)登録者が、商標その他表示の登録等を しているか否かにかかわらず、当該ドメイン名の名称で一般に認識されてい たとき、(ⅲ)登録者が、申立人の商標その他表示を利用して消費者の誤認 を惹き起こすことにより商業上の利得を得る意図、または、申立人の商標そ の他表示の価値を毀損する意図を有することなく、当該ドメイン名を非商業 的目的に使用し、または公正に使用しているときには、登録者は当該ドメイ ン名についての権利または正当な利益を有していると認めることができると 規定している。 したがって、処理方針は、第4条a.(ⅱ)については、登録者がドメイン 名に関する権利または正当な利益を有していることを証明することを予定し ていると言うべきである。しかるに、登録者は答弁書を提出せず、登録者が ドメイン名に関する権利または正当な利益を有していることを証明しようと しない。 (2)登録者から、アルマーニ社からJPドメイン名の取得を依頼されたとの連 絡がなされているが、そのことを証する証拠は提出されていないし、申立人 の主張に照らしても、そのような事実を認めることはできない。 登録者のドメイン名が不正の目的で登録されたとの上記認定に照らして、 上記(ⅰ)乃至(ⅲ)はいずれもこれを認めることはできず、その他に登録 者がドメイン名に関する権利または正当な利益を有していることを認めるべ き事情が存在すると認めることはできない。 (3)以上のとおりであるから、登録者は登録者ドメイン名の登録について権利 または正当な利益を有しないと言わざるを得ない。 6 結論 以上に照らして、当パネルは、登録者によって登録されたドメイン名「arman i.co.jp」が申立人の商標と混同を引き起こすほど類似し、登録者が登録者のドメ イン名について権利又は正当な利益を有しておらず、登録者のドメイン名が不 正の目的で登録されているものと認定する。 よって、処理方針第4条i.に従って、ドメイン名「armani.co.jp」の登録を 申立人に移転するものとし、主文のとおり裁定する。 2001年7月24日 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル パネリスト 島 田 康 男 (単独パネリスト) 別紙 (資料2)「GIORGIO ARMANI」に関する (「GIORGIO ARMANI」商標という。) 商標登録第1387409号 商品の区分 第17類 指定商品 被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類 に属するものを除く)寝具類(寝台を除く) (資料3)「EMPORIO ARMANI」に関する (「EMPORIO ARMANI」商標という。) 商標登録第1742581号 商品の区分 第17類 指定商品 被服,布製身回品,寝具類 (資料4)「EMPORIO ARMANI」に関する。 (「EMPORIO ARMANI」商標という。) 商標登録第2204518号 商品の区分 第17類 指定商品 被服,布製身回品,寝具類 (資料5)「ARMANI」に関する。 (「ARMANI」商標という。) 商標登録第3127123号 商品の区分 第25類 指定商品 帽子,その他の被服,履物,運動用特殊衣服,運 動用特殊靴 (資料6)「アルマーニ」に関する。 (「アルマーニ」商標という。) 商標登録第4132921号 商品の区分 第25類 指定商品 被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド, ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴 (資料7)「GIORGIO ARMANI」に関する。 (「GIORGIO ARMANI」商標という。) 商標登録第1676476号 商品の区分 第21類 指定商品 装身具,ボタン類,かばん類,袋物,宝玉および その模造品,造花,化粧用具 (資料8)「EMPORIO ARMANI」に関する。 (「EMPORIO ARMANI」商標という。) 商標登録第1920034号 商品の区分 第21類 指定商品 装身具,ボタン類,かばん類,袋物,宝玉および その模造品,造花,化粧用具 (資料9)「EMPORIO ARMANI」に関する。 (「EMPORIO ARMANI」商標という。) 商標登録第1941608号 商品の区分 第21類 指定商品 装身具,ボタン類,かばん類,袋物,宝玉および その模造品,造花,化粧用具 (資料10)「ARMANI」に関する。 (「ARMANI」商標という。) 商標登録第3123225号 商品の区分 第18類 指定商品 皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,か ばん金具,がま口口金,傘,ステッキ,つえ,つ え金具,つえの柄,乗馬用具,愛玩動物用被服類 (資料11)「Giorgio Armani/ジョルジョアルマーニ」に関する。 (「Giorgio Armani/ジョルジョアルマーニ」商標という。) 商標登録第1640446号 商品の区分 第22類 指定商品 はき物,かさ,つえ,これらの部品及び付属品 (資料12)「EMPORIO ARMANI」に関する。 (「EMPORIO ARMANI」商標という。) 商標登録第1941539号 商品の区分 第22類 指定商品 はき物,かさ,つえ,これらの部品及び付属品 (資料13)「EMPORIO ARMANI」に関する。 (「EMPORIO ARMANI」商標という。) 商標登録第2076955号 商品の区分 第22類 指定商品 はき物,かさ,つえ,これらの部品及び付属品 (資料14)「GIORGIO ARMANI」に関する。 (「GIORGIO ARMANI」商標という。) 商標登録第2198023号 商品の区分 第22類 指定商品 はき物,かさ,つえ,これらの部品および付属品 (資料15)「EMPORIO ARMANI」に関する。 商標登録第2137697号 商品の区分 第23類 指定商品 時計,眼鏡,これらの部品および付属品 (資料16)「GIORGIO ARMANI」に関する。 (「GIORGIO ARMANI」商標という。) 商標登録第2211610号 商品の区分 第23類 指定商品 時計,眼鏡,これらの部品および付属品 (資料17)「ARMANI」に関する。 (「ARMANI」商標という。) 商標登録第2653840号 商品の区分 第23類 指定商品 時計,眼鏡,これらの部品および付属品 (資料18)「ARMANI」に関する。 (「ARMANI」商標という。) 商標登録第4076267号 商品の区分 第14類 指定商品 貴金属,貴金属製食器類,貴金属製のくるみ割り器, 貴金属製の花瓶および水盤,貴金属製針箱,貴金属 製宝石箱,貴金属製のろうそく消しおよびろうそく 立て,貴金属のがま口および財布,貴金属製靴飾り, 貴金属製コンパクト,貴金属製喫煙用具,身飾品, 宝玉およびその原石並びに宝玉の模造品,時計,記 念カップ,記念たて