事件番号:JP2006-0003 裁 定 申立人: (名称)ヤング・ネイルズ・インク (住所)アメリカ合衆国カリフォルニア州サンタ・フェ・スプリング フローレス・ ストリート13195 代理人: (氏名)弁護士 グレゴリー・ナイレン (住所)アメリカ合衆国カリフォルニア州サンタ・モニカ スイート400E コロラ ド・アベニュー 2450 登録者: (名称)株式会社ピーシーシー 代表取締役 横田敏弘 (住所)329-0618 栃木県河内郡上三川町しらさぎ 2-17-1 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、JPドメイン名紛争処理方針、JPドメイン 名紛争処理方針のための手続規則及び日本知的財産仲裁センターJPドメイン名紛争処理 方針のための手続規則の補則並びに条理に則り、申立書・答弁書・提出された証拠に基づ いて審理をおこなった結果、以下のとおり裁定する。 1 裁定主文 ドメイン名「youngnails.jp」の登録を申立人に移転せよ 2 ドメイン名 紛争に係るドメイン名は「youngnails.jp」である。 3 手続の経緯 別記のとおり。 4 事実関係 パネルは、以下の点を事実として認定し、それを前提として争点について判断する。 ①申立人は、アメリカ合衆国法人であり、以下の商標権を保有している。 a)アメリカ合衆国商標登録 商標: Y YOUNG NAILS (図形を含む商標である) 米国特許商標局登録番号: 2294279 シリアル番号: 75523806 登録日: 1999年11月23日 指定商品: artificial fingernail kits (つけ爪キット), adhesives for attaching artificial fingernails(つけ爪の付着剤), cuticle conditioners (キューティクルコ ンディショナー), cuticle cream (キューティクルクリーム), cuticle removing preparations(キューティクル除去調剤), artificial fingernails (人工爪), body lotions (ボディーローション), nail buffing preparations(爪バフ仕上げ調剤), nail care preparations(ネイルケア調剤), nail cream(ネイルクリーム), nail enamel(ネ イルエナメル), nail glitter(ネイルグリター), nail grooming products(ネイル手 入れ商品), tips(チップ), glue(糊), lacquer and glitter(マニュキア塗料とグリ ター), nail hardeners(ネイル硬化剤), nail polish base coat(ネイルポリッシュの ベースコーティング), nail polish remover(ネイルポリッシュの除去剤), nail polish (ネイルポリッシュ), nail tips(ネイルチップ), false nails for professional distributors and salons(サロンや専門配給者用の偽爪). *なお、日本語訳は、申立人による。 b)日本国登録商標1 商標: Y YOUNG NAILS (図形を含む商標である) 商標登録番号: 第4862416号 登録日: 2005年5月13日 指定商品:家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔 軟剤,洗濯用漂白剤,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗 濯用ふのり,塗料用剥離剤,靴クリーム,靴墨,つや出し剤,せっけん類,歯磨き,化粧 品,香料類,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,つけづめ, つけまつ毛 c)日本国登録商標2 商標: Y YOUNG NAILS (図形を含む商標である) 商標登録番号: 第 4953933号 登録日: 2006年5月19日 指定商品:つけづめ,営業目的販売用又はつけづめサロン用のつけづめ,つけづめ用接着 剤,クレンジングクリーム,コールドクリーム,ハイゼニッククリーム,バニシングクリ ーム,ハンドクリーム,ネイルエナメル,ネイルエナメル除去剤,その他の化粧品,家庭 用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂 白剤,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,塗 料用剥離剤,靴クリーム,靴墨,つや出し剤,せっけん類,歯磨き,香料類,つめ用研磨 紙,研磨紙,つめ用研磨布,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,つ けまつ毛 なお、申立人は、ドメイン名 <youngnails.com> を登録し、これを自らのウェブサ イトに使用している。 ②登録者 登録者は、個人情報保護サービス提供などを業とする日本法人である。 5 当事者の主張 a 申立人 申立人は、現在の登録者に加えて、本ドメイン名の「実際の所有者・管理者」である Christina Ikedaと本ドメイン名の2005年12月16日時点における登録者である株式会社 マイティウイングスを、紛争処理手続きの相手方として追加することを申し立て、これを 前提として、以下のように主張している。申立人とIkedaは、過去、口頭での非排他的販 売契約を締結し、Ikedaは日本領域内において、申立人商品・サービスの非排他的販売者 となっていたが、当該販売契約の契約期間中、Ikedaは申立人商標を使用したドメイン名 を登録する権限は一切付与されていなかった。しかしながら、Ikedaが申立人の承諾無し に、本ドメイン名を登録してウェブサイトを構築しており、本ドメイン名の譲渡を要求し ても、いったんは譲渡に合意したものの、結局現在に至るまで、譲渡を実現していない。 申立人は、2004年9月16日、Ikedaとの間の当該販売契約と非排他的販売権付与の全てを 解除したが、その後もIkedaは、本ドメイン名を使用し続けている。この本ドメイン名の 使用は、商品およびサービスの出所、スポンサーシップ、取引提携関係、推奨関係などに ついて一般に誤認混同を生じせしめることを意図して行われているものである。 登録者のドメイン名は、申立人が保有しているアメリカ合衆国登録商標を含むものであ り、かような申立人商標と混同を引き起こすほどに類似しているドメイン名を、正当な権 限なく使用していることは、申立人と日本国内における排他的販売契約を締結している有 限会社ミリオンオークスおよび申立人の日本における販売活動について、消費者に混乱を 生じさせる結果になっている。そればかりか、2004年10月4日、Ikedaは、申立人商標を 含む本ドメイン名に何らの法的権限も有していないのにも関わらず、申立人に対し、本ド メイン名を1,000,000.00米国ドルで売る申し込みを行う、という内容の手紙を送付した。 これらIkedaの行為は、JPドメイン名紛争処理方針第4条(b)(i) に規定される「不正な 目的で登録または使用していること」に該当するものである。以上の理由から、申立人は、 ドメイン名登録の申立人への移転を請求している。 b 登録者 登録者は、答弁書を提出し、以下のように述べた。 「当社では、ユーザーの依頼によりドメインを登録しているものであり、ドメイン名の権 利は主張しない。また、この案件についてユーザーに通知した。 結果、ユーザーもドメイン名の権利は主張しない旨を確認した。 よって、申立人に移譲することを妨げない。」 6 争点および争点についてのパネルの判断 規則第15条(a)は、「パネルは、提出された陳述・文書および審問の結果に基づき、 処理方針、本規則および適用されうる関係法規の規定・原則、ならびに条理に従って、裁 定を下さなければならない。」と規定している。本件登録者は、申立人の申し立て通りに裁 定を下すように答弁書を提出しているが、方針第4条aは、申立人が次の事項の各々を証 明しなければならないことを指図している。よって、パネルはこの規定に従い、以下の3 点について順次、確認をしていく。その項目とは、 (1)登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示 と同一または混同を引き起こすほど類似していること (2)登録者が、ドメイン名の登録についての権利又は正当な利益を有していないこと (3)登録者のドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること 以上の3項目である。 (1)同一又混同を引き起こすほどの類似 登録者のドメイン名「youngnails.jp」は、「.jp」の部分が、日本語ドメイン名であること を示す記号であることは明らかであり、要部は、「youngnails」である。一方、申立人は、 商標「y youngnails」について、上記4で認定した通り、アメリカ合衆国商標登録と日本 国商標登録を有しているが、いずれも「y」の部分は図案化されているから、「young nails」 の部分が看者の印象に強く残るであろう。したがって、登録されたドメイン名は、申立人 が登録を有する登録商標と、混同を引き起こすほどに類似すると認定できる。 (2)登録者の権利又は正当な利益 登録者は、答弁書において、「当社では、ユーザーの依頼によりドメインを登録している ものであり、ドメイン名の権利は主張しない。」(答弁書2頁3.)と答弁しており、登録者 自身が権利または正当な利益を有していないことを認めている。 (3)不正の目的での使用 申立人は、過去において非排他的販売契約を締結していたIkedaなる者が、実質的登録者 であることを前提に、この者の行為を不正目的認定の根拠として主張しているが、その点 についての判断を俟つまでもなく、当該ドメイン名は、登録者が不正目的で使用している ものといい得る。 方針4条aに規定された第iii要件は、不正目的の「登録又は使用」と規定しているか ら、不正目的で当該ドメイン名が使用されていることが証明されれば、同要件は満たされ たものと判断される。申立人主張の通り、本ドメイン名に接続されたウエッブページは、 申し立てがあった当時、申立人以外の者によって運営されていた。しかし、消費者がその ウエッブページを申立人のものと誤認する事態を生じているにもかかわらず、登録者は、 登録を依頼してきた者の行為を放置した。この点、移転を認める登録者の答弁は、登録を 依頼してきた者に「案件について通知」して、移転してよいことを確認したとしており、 その者の不正目的の本ドメイン名使用行為を登録者自ら正そうとしたものであって、登録 者はそれ以前の使用が不正目的であったことを自認しているものと認定し得る。 以上に照らして、紛争処理パネルは、4条aに定められた3要件を満たしていると認定 する。 6 結論 以上の通り、方針第4条iに従って、ドメイン名「youngnails.jp」の登録を申立人に移 転するものとし、主文のとおり裁定する。 2006年12月8日 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル 佐藤 恵太 単独パネリスト 別記(手続の経過) (1) 申立受領日 電子メール 2006年8月24日 書面 2006年8月28日 (2) 料金受領日 2006年8月25日 (3) 適式性 日本知的財産仲裁センターは、申立書が社団法人日本ネットワークインフォーメーショ ンセンター(JPNIC)のJPドメイン名紛争処理方針(方針)、JPドメイン名紛争処 理方針のための手続規則(規則)、JPドメイン名紛争処理方針のための補則(補則)の形 式要件を充足することを確認した。 (4) 手続開始日 2006年10月3日 (5) ドメイン名及び登録者の確認日 センターの照会日(電子メール) 2006年8月24日 JPRSの確認日及び確認内容(電子メール) 1) 2006年8月24日 2) 申立書に記載の登録者はドメイン名の登録者である。 (6) 登録者への通知日及び内容 1) 2006年10月3日 2) 申立書、申立通知書(郵送、ファクシミリ、及び電子メール) 3) 答弁書提出期限 2006年11月1日 (7) 答弁書の提出の有無及び提出日 登録者より2006年10月20日に答弁書を受領した。 (8) 答弁書の申立人への送付日 2006年10月20日 (9) パネリストの選任 単独(センターの選任) パネリストの氏名 佐藤恵太 (10) 紛争処理パネルの指名及び予定裁定日の通知日 2006年11月2日 予定裁定日 2006年11月24日 (11) 中立宣言書の受領日 2006年12月8日 (12) 裁定予定日の延長通知日 2006年11月24日 (延長後の裁定予定日:2006年12月1日) 裁定予定日の延長通知日 2006年12月4日 (延長後の裁定予定日:2006年12月8日)