事件番号:JP2007-0003 裁定 申立人: (名称)札幌テレビ放送株式会社 (住所)北海道札幌市中央区北一条西八丁目1番地1 代理人:弁護士 上村 哲史 弁護士 松田 政行 登録者: (名称)ティーケーテクノロジー有限会社 (住所)北海道北広島市中央二丁目8-25ベルテ北広島602号 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、JPドメイン名紛争処理方針、JPドメイン 名紛争処理方針のための手続規則及び日本知的財産仲裁センターJPドメイン名紛争処理 方針のための手続規則の補則並びに条理に則り、申立書・答弁書・提出された証拠に基づ いて審理を遂げた結果、以下のとおり裁定する。 1 裁定主文 ドメイン名「stv.co.jp」および「stv.jp」の登録を申立人に移転せよ 2 ドメイン名 紛争に係るドメイン名は「stv.co.jp」および「stv.jp」である。 3 手続の経緯 別記のとおりである。 4 当事者の主張 a 申立人 申立人は、申立人の登録商標「STV」と実質的に同一のドメイン名が登録者によって登 録されていることを主張する。申立人によれば、本件紛争に係るドメイン名(以下では本 件ドメイン名という)の要部である「stv」が、申立人の商標と同一であり、登録者は本件 ドメイン名について正当な利益を有しておらず、そして本件ドメイン名は不正の目的で登 録または使用されている。 従って、申立人は、本件ドメイン名登録の申立人への移転を請求する。 b 登録者 登録者によって答弁書は提出されなかった。 5 争点および事実認定 規則第15条(a)は、パネルが紛争を裁定する際に使用することになっている原則に ついてパネルに次のように指示する。「パネルは、提出された陳述・文書および審問の結果 に基づき、処理方針、本規則および適用されうる関係法規の規定・原則、ならびに条理 に従って、裁定を下さなければならない。」 方針第4条aは、申立人が次の事項の各々を証明しなければならないことを指図してい る。 (1)登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示 と同一または混同を引き起こすほど類似していること (2)登録者が、ドメイン名の登録についての権利または正当な利益を有していないこ と (3)登録者のドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること (1)同一または混同を引き起こすほどの類似性 ア 申立書および証拠(甲第5号証)によれば、申立人は「STV」との名称につき、商標 登録(登録第3049083号、指定役務38類 テレビジョン放送、ラジオ放送)を行 っている。 また「STV」との名称は、昭和34年の開局以来、テレビ放送等を通じて申立人の略称と して認識され、日本全国において、申立人を指す略称として周知性および著名性を獲得し ていることは顕著な事実である。 イ 登録者の登録する本件ドメイン名は「stv.co.jp」および「stv.jp」であるところ、 トップレベルのドメイン名はいずれも国別コードであり、前者のセカンドレベルドメイン 名は属性を表すものであるので、ドメイン名として識別されるいわゆる要部は、いずれも 「stv」との部分である。 ウ 登録者の本件ドメイン名の要部「stv」と申立人が有する登録商標「STV」とは、大 文字小文字の差異があるものの、ドメイン名には大文字小文字の区別がないのであり、実 質的に同一の文字列と評価することができる。 (2)権利または正当な利益を有していないこと 登録者は、その名称(ティーケーテクノロジー)および開設中のウェブページ(甲7号 証の1および2)に照らして、本件ドメイン名またはこれに対応する名称を使用していた とは認められない。また本件ドメイン名の名称により一般に認識されていたことも認めら れない。さらに登録者は、登録者の開設するウェブページ上においてSTVの文字をことさ ら大きく表示するなど、消費者の誤認を引き起こすような形で使用しており、また甲第7 号証の2はリンク集であるところ、その中の「STV」および「札幌STV」との表示は、 申立人のサイトへのリンクと誤認させる表示となっているが、いずれも登録者のサイトへ のリンクとなっており、この点から見ても消費者の誤認を引き起こすような表示となって いる。 従って紛争処理方針第4条c所定の、登録者が当該ドメイン名に関して権利または正当 な利益を有していると認めなければならない事情はうかがわれず、その他権利または正当 な利益を有していると認めるべき事情も認められない。 (3)不正の目的での登録または使用 申立人によれば、登録者の代表者が申立人担当者と交渉した際、北海道内の放送局のド メイン名を探索したところ、放送局の中で「stv.co.jp」のみ登録されていないことを知り、 急いで登録申請した旨を述べるとともに、本件ドメイン名を登録した目的について、 「stv.co.jp」とのドメイン名を使用して申立人から申立人の公式ウェブサイトの運営やコ ンテンツ制作の業務を請けたいので、「stv.co.jp」を登録したと述べていた(甲第9号証)。 このことは、ドメイン名の販売や移転を目的としているとはいえないが、登録者が本件 ドメイン名を保有したまま申立人の公式ウェブサイトの運営業務を請け負うことは、実質 的には本件ドメイン名を申立人に貸与し、そのドメイン名登録に要する費用を超える対価 を取得するとの意図があったと認められる。これは紛争処理方針第4条b(i)の事情に該当 する。 また本件ドメイン名のうち「stv.co.jp」については上記の通り申立人の著名な商標と同 一であることを知りながら申立人の取得を妨害する目的で登録したものと認められ、また 汎用ドメイン名である「stv.jp」の登録の際の意図も同様と考えられることから、紛争処 理方針第4条b(ii)の事情にも該当する。 6 結論 以上に照らして、紛争処理パネルは、登録者によって登録された本件ドメイン名 「stv.co.jp」および「stv.jp」が申立人の商標と同一または混同を引き起こすほど類似し、 登録者が、本件ドメイン名について権利または正当な利益を有しておらず、登録者の本件 ドメイン名が不正の目的で登録または使用されているものと裁定する。 よって、方針第4条iに従って、ドメイン名「stv.co.jp」および「stv.jp」の登録を申 立人に移転するものとし、主文のとおり裁定する。 2007年8月14日 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル 町村泰貴 単独パネリスト 別記(手続の経過) (1)申立受領日 電子メール 2007年6月6日 書 面 2007年6月7日(配達証明郵便) (2)料金受領日 申立人代理人 2007年6月8日(189.000円) (3)申立不備通知書 2007年6月13日、申立書に不備があったので、申立不備通知書を申立人代理 人へ送付(配達証明郵便、電子メール、fax) (4)補正申立書受領日 2007年6月15日(窓口) (5)適式性 日本知的財産仲裁センターは、申立書が社団法人日本ネットワークインフォーメー ションセンター(JPNIC)のJPドメイン名紛争処理方針(方針)、JPドメイ ン名紛争処理方針のための手続規則(規則)、JPドメイン名紛争処理方針のための 補則(補則)の形式要件を充足することを確認した。 (6) 手続開始日 2007年6月18日 手続開始日の通知 2007年6月18日 JPNICへ(電子メール) 申立人へ(配達証明郵便、電子メール、fax) (7) ドメイン名及び登録者の確認日 センターの照会日(電子メール) 2007年6月6日 JPRSの確認日及び確認内容(電子メール) 1)2007年6月6日 2)申立書に記載の登録者はドメイン名の登録者であること。 3)登録担当者は椿谷 好雄であること。 (8) 登録者・登録担当者への通知日及び内容 1) 2007年6月18日及び6月21日 2)申立書、申立通知書(配達証明郵便、電子メール) 4か所記載された住所の内、1か所にて6月26日に受領 3)答弁書提出期限 2007年7月17日 (9) 答弁書の提出の有無及び提出日 登録者は答弁書を提出しなかった。 (10) 答弁書不提出通知書の送付(電子メール、配達証明郵便、fax) 申立人 2007年7月18日(7月19日受領) 登録者 2007年7月18日(7月20日受領) (11) パネリストの選任 申立人は一名パネルを要求 パネリストの氏名 町村 泰貴 (12) 紛争処理パネルの指名及び予定裁定日の通知日 2007年7月25日 (13) 宣言書の受領日 2007年7月27日 (14) 予定裁定日 2007年8月14日