事件番号:JP2008-0001
                                  裁  定
申立人:
    氏名:津田  康宏
    住所:  大阪府豊中市蛍池西町1-6-1  株式会社  津田吉  気付

登録者:
    名称:ダッシュ囲碁
    住所: 北海道札幌市厚別区厚別東2条5丁目11-1

  日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは,JPドメイン名紛争処理方針,JPドメイン
名紛争処理方針のための手続規則及び日本知的財産仲裁センターJPドメイン名紛争処理
方針のための手続規則の補則並びに条理に則り,申立書・答弁書・提出された証拠に基づ
いて審理を遂げた結果,以下のとおり裁定する。

1  裁定主文
    登録者はドメイン名「CLUB-MEISTER.JP」の登録を申立人に移転せよ
2  ドメイン名
    紛争に係るドメイン名は「CLUB-MEISTER.JP」である。
3  手続の経緯
    別記のとおりである。

4  当事者の主張
  a  申立人
    申立人の本件申立書の記載及び記載の全趣旨によれば,申立人は,要旨,次のとおり
主張して,登録者に対し本件ドメイン名「CLUB-MEISTER.JP」の登録を申立人に移転するよ
う求めた。
(i)申立人の妻津田恵子は平成9年1月31日指定商品を「運動用具」,商標を別紙記
載のとおりとする商標権を有しているところ(以下,その登録商標を「本件登録商標」と
いう。),申立人(株式会社津田吉の実質上の経営者)は妻津田恵子からその使用の承諾を
得て,本件登録商標に類似する「クラブマイスター」「Club-Meister」というブランド名(以
下,「本件ブランド名」という。)を使用してゴルフクラブ(ゴルフシャフト,ゴルフパー
ツを含む)の製造,修理,販売をし,現在まで累計20万本を超えるゴルフクラブを販売
し,また,ドメイン名「club-meister.net」をも登録し常用している。したがって,本
件登録商標に類似する上記本件ブランド名「クラブマイスター」「Club-Meister」は,遅く
とも本件ドメイン名が登録された平成20年2月1日には申立人がその使用につき正当な
利益を有する表示である。
  しかるところ,本件ドメイン名の要部「CLUB-MEISTER」は,上記ブランド名「クラブマ
イスター」「Club-Meister」と,称呼,外観(ただし,片仮名表記分は除く),観念(ゴル
フクラブ製作の達人の観念を生ずる)の各点において同一であり,それゆえ,全体として
本件ドメイン名が本件ブランド名と混同をひきおこすほどに類似していることは明らかで
ある。
(ii)しかるに,登録者は,申立人と営業上何の関係もなく,かつ,本件ドメイン名を
使用してゴルフクラブ製造販売等の営業を行っているわけでもない。現に,登録者の有す
る本件ドメイン名を入力すると,そのアクセス自体は可能であるが,他に転送されるだけ
であり,Web上,本件ドメイン名は何ら実質的に使用されていない。登録者の本件ドメイ
ン名保有は申立人らの正当な使用を妨害するだけである。したがって,登録者は本件ドメ
イン名に関して権利又は正当な利益を有していない。
(iii)また,登録者は,かつて申立人が登録し使用していた本件ドメイン名と同一の登
録ドメイン名が登録切れになった直後である平成20年2月1日に本件ドメイン名を登録
しており,これと上記事実関係を総合すると,登録者は本件ドメイン名を不正の目的で登
録していること明らかである。

  b  登録者
    登録者の答弁書の記載及び記載の全趣旨によれば,登録者は,要旨,次のとおり主張
した。
①登録者の保有する本件ドメイン名が申立人主張の「club-meister.net」と類似し
  ていることは認める。
②登録者は,本件ドメイン名の要部である「CLUB-MEISTER」なる用語を直接利用して
  営業していないから,本件ドメイン名を保有する利益を有しないことは認める。
    しかし,登録者が本件ドメイン名を保有するにさいし,その取得に正当な権利ま
  たは利益があるかどうかというようなことは全く考えていなかった。
③登録者はゴルフをしないこともあり,申立人らの営業を妨害する意図は全くなく,
  本件ドメインを不正の目的で登録したものはない。
④以上のとおりであるから,登録者は本件ドメイン名を無償で移転することに何ら異
  存はない。

5  争点および事実認定
  (1)まず,登録者は,本件において「本件ドメイン名の移転に何ら異存はない。」旨表
明している。しかし,処理方針第7条(現状維持規定)によれば,株式会社日本レジスト
リサービス(JPRS)は,上記方針第3条の規定および登録規則に定めのある場合を除
き,係争ドメイン名の現状を変更する手続きを行わないこととしているから,当パネルは
現状に基づき裁定を行う。
(2)規則第15条(a)は,パネルが紛争を裁定する際に使用することになっている
原則についてパネルに次のように指示する。「パネルは,提出された陳述・文書および審問
の結果に基づき,処理方針,本規則および適用されうる関係法規の規定・原則,ならびに
条理に従って,裁定を下さなければならない。」
  方針第4条aは,申立人が次の事項の各々を証明しなければならないことを指図してい
る。
  (i)  登録者のドメイン名が,申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示
         と同一または混同を引き起こすほど類似していること
  (ii) 登録者が,当該ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有していないこと
  (iii)登録者のドメイン名が,不正の目的で登録または使用されていること

  (3)そこで,上記方針第4条aの指図に従い以下検討する。

(i) 登録者の本件ドメイン名が,申立人が権利又は正当な利益を有する本件ブランドと
      混同を引き起こすほど類似しているか否かについて
  甲第1,第2号証及び申立人主張の全趣旨によると,本件ブランドは,申立人がその使
用につき正当な利益を有する表示であることが認められる。
  また,登録者の保有する本件ドメイン名と本件ブランドの類似性について検討するに,
本件ドメイン名のトップレベルドメイン「.JP」は国別コードを表す部分に過ぎないから,
本件ドメイン名が出所表示として機能を果たす要部は第2レベルドメインである
「CLUB-MEISTER」の部分であることは明白であるところ,他方,甲第2号証により申立人
がその使用につき正当な利益を有することが明らかな本件ブランド名はすべて登録者の上
記本件ドメインの要部と同一であることが認められ,全体として双方類似していること申
立人主張のとおりである。
  従って,本件ドメインは,申立人が使用につき正当な利益を有する本件ブランドと混同
を引き起こすほど類似していると認めることができる。

  (ii)登録者が本件ドメイン名に関し権利又は正当な利益を有していないか否かについ
        て
  甲第3号証及び申立人主張の全趣旨によれば,登録者について申立人主張のとおりの事
実が認められ,登録者は本件ドメイン名に関して権利又は正当な利益を有するものでない
と言うべきである(なお,登録者も本件ドメイン名を保有する利益を有しないことを争っ
ていない。)。

  (iii)登録者が本件ドメイン名を不正の目的で登録または使用しているか否かについて
  甲第4,第5号証及び申立人主張の全趣旨によれば,この項に関する申立人主張のとお
りの事実が認められ,これによると,本件ドメイン名は登録者によって不正の目的で登録
されたものと解すべきである。
  登録者は,本件ドメイン名の取得につき不正の目的はなかった旨縷々主張するが,JPド
メイン名紛争処理方針,JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則及び日本知的財産仲
裁センターJPドメイン名紛争処理方針のための手続規則の補則及びその制定趣旨によれ
ば上記のとおり判断するのが相当である。


6  結論
    よって,本件紛争処理パネルは,処理方針第4条h.iに従って,本件ドメイン名
「CLUB-MEISTER.JP」の登録を申立人に移転することとし,主文のとおり裁定する。

     2008年5月21日

      日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル

                            パネリスト          畑    郁  夫



別記  手続の経緯
(1)  申立書受領日
       2008年3月18日
(2)  料金受領日
       2008年3月18日  申立手数料の受領確認
(3)  ドメイン名及び登録者の確認
       2008年3月18日  JPRSへ照会
       2008年3月18日  JPRSから登録情報の確認
       確認内容:
      申立書に記載された登録者はドメイン名の登録者であること
(4)適式性
        日本知的財産仲裁センターが、2008年3月24日に申立書が処理方針と規則
      に照らし適合しているかを確認したところ、不備が発見されたため申立人に通知。
      2008年3月31日に申立人より当該不備を補正した差し替え書面の提出あり。
(5)手続開始日
      2008年3月31日
      手続開始日の通知
      2008年3月31日
      申立人へ通知(電子メール・ファクシミリ及び配達証明郵便)
(6)登録者への通知日及び内容
      ①2008年3月31日(電子メール・ファクシミリ及び配達証明郵便)
        JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則第2条(a)の規定により送付擬制。
      ②申立書及び証拠等一式
      ③答弁書提出期限  2008年4月28日
(7)答弁書の提出の有無及び提出日
      提出あり。
      提出日:2008年4月7日
(8)答弁書の適式性
        日本知的財産仲裁センターが、2008年4月15日に答弁書が処理方針と規則
      に照らし適合しているかを確認したところ、不備が発見されたため登録者に通知。
      2008年4月21日に登録者より当該不備を補正した差し替え書面の提出あり。
(9)パネリストの選任
      申立人は1名のパネルによって審理・裁定されることを選択。
      パネリスト:畑  郁夫(中立宣言書受領)
(10)紛争処理パネルの指名及び裁定予定日の通知
      2008年4月28日  JPNIC及びJPRSへ通知(電子メール)
                            申立人及び登録者へ通知(電子メール・ファクシミリ及び
                            配達証明郵便)
      裁定予定日:2008年5月21日