事件番号:JP2013-0008

                  裁 定

  申立人:
  (名称)三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社
  (住所)東京都千代田区丸の内二丁目5番2号
  代理人: 弁護士 増井 賢
  登録者:
  (氏名)Katz Global Domain Name Trust
  (住所)東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー11階

 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、JPドメイン名紛争処理方針、JPドメイン
名紛争処理方針のための手続規則及び日本知的財産仲裁センターJPドメイン名紛争処理
方針のための手続規則の補則並びに条理に則り、申立書・提出された証拠に基づいて審理
を遂げた結果、以下のとおり裁定する。

1 裁定主文
  ドメイン名「sc-mufg.jp」の登録を申立人に移転せよ。
2 ドメイン名
  紛争に係るドメイン名は「sc-mufg.jp」である。
3 手続の経緯
  別記のとおりである。

4 当事者の主張
 a 申立人
  申立人は、株式会社三菱東京UFJフィナンシャルグループ(以下、グループ社と略称
する)の子会社であり、グループ社が有する登録商標第4870824号(マークMUFG 指定商
品第36類)他12件の登録商標(何れもロゴとMUFGと結合してなるマークMUFGロゴで指定
商品が異なる ― 以下13件を一括して本件商標という)を使用することを許諾されている
ことを主張する。申立人によれば、ドメイン名は、申立人使用の本件商標と混同を引き起
こすほどに類似し、登録者はドメイン名について正当な利益を有していない、そしてドメ
イン名は不正の目的で登録され且つ使用されている。
従って、申立人は、ドメイン名登録の申立人への移転を請求する。
 b 登録者
  登録者によって答弁書は提出されなかった。

5 争点および事実認定
 規則第15条(a)は、パネルが紛争を裁定する際に使用することになっている原則に
ついてパネルに次のように指示する。「パネルは、提出された陳述・文書および審問の結果
に基づき、処理方針、本規則および適用されうる関係法規の規定・原則、ならびに条理
に従って、裁定を下さなければならない。」
 方針第4条aは、申立人が次の事項の各々を証明しなければならないことを指図してい
る。
 (1)登録者のドメイン名が、申立人が権利又は正当な利益を有する商標その他表示と
同一又は混同を引き起こすほど類似していること
 (2)登録者が、ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有していないこと
 (3)登録者のドメイン名が、不正の目的で登録又は使用されていること

 (1)同一又は混同を引き起こすほどの類似性
 登録者のドメイン名であるsc-mufg.jpと本件商標を比較すると、外観においてmufgの
部分を共通にし、称呼において前者はエスシー エムユウエフジイ ジェイピー、または、
エスシー エム ユウ エフ ジイあるいは単にエム ユウ エフ ジイと発音され、後者はエム
ユウ エフ ジイと発音されるが、前者はその構成から鑑みて、外観においてmufg、呼称に
おいてエム ユウ エフ ジイが要部をなすと考えられる。観念においては両者とも特別の意
味を持つものではない。
従って両者は混同を引き起こすほど類似していると判断される。
登録者においてドメイン名の使用が継続された場合、登録者のドメイン名に接した閲覧者
は、それが申立人の営業活動である旨誤信させる恐れがあることは明白である。

 (2)権利又は正当な利益
 登録者は、ドメイン名登録の申立前にmufgの名称を使用した事実はなく、使用の為の準
備がなされたという事実もない。また登録者の社名もmufgという名称とは全く異なる。す
なわち登録者はmufgなる表示について、これを使用する何らの権利も正当な理由も見出す
ことができない。

 (3)不正の目的での登録及び使用
登録者は、平成25年5月申立人のM&A担当取締役の名前を装って、ある個人投資家に(以
下、某株主という)に対し、電子メールを送信し、某株主の所有する株式の買取を持ちかけ、
当初この勧誘に応じた某株主に対し、数回にわたって、電子メールの送信をし、その間両
者の間で取交されるべき契約書として、申立人の名前とCEOのサイン入りの書面、その
他が某株主に送られてきたりしたが、平成25年5月31日取引上ネットキャピタルに関す
る費用を要請してきた頃から、某株主が不信を抱き、申立人に確認を取ったところ、申立
人においてそのような事実はなく、登録者の上記行為は完全な詐欺行為であることが発覚
した。
この数回のメールの差出人名義は、いずれも申立人のM&A担当取締役の名前になってい
るが、電子メールアドレスは、登録者のドメイン名「sc-mufg.jp」が含まれている。
以上の事実は、申立人提出の資料④から⑧によって立証をされているが、登録者はこれに
対して何らの反論反証するところもない。
従って登録者のドメイン登録は不正の目的に基づくものと認められる。

6 結論
 以上に照らして、紛争処理パネルは、登録者によって登録されたドメイン名「sc-mufg.jp」
が申立人の使用する商標と混同を引き起こすほど類似し、登録者が、ドメイン名について
権利又は正当な利益を有していない、登録者のドメイン名が不正の目的で登録され且つ使
用されているものと裁定する。
 よって、方針第4条iに従って、ドメイン名「sc-mufg.jp」の登録を申立人に移転する
ものとし、主文のとおり裁定する。


   2013年10月18日

   日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル
              小林 十四雄
              単独パネリスト


記 手続の経緯
(1)申立書受領日
   2013年8月1日(電子メール)及び8月5日(書面)
(2)手数料受領日
   2013年8月8日 申立手数料の受領確認
(3)ドメイン名及び登録者の確認
   2013年8月7日 JPRSへ照会
   2013年8月7日 JPRSから登録情報の回答
   回答内容:申立書に記載された登録者はドメイン名の登録者であること、JPRS
        に登録されている登録者の電子メールアドレス及び住所等
(4)適式性
   日本知的財産仲裁センター(以下「センター」という。)は、2013年8月
   8日に、申立書の補正、委任状及び代表者の資格を証明する公的証明書類の提出
   が必要と判断してその旨を申立人に通知し、補正申出書及び代表者事項証明書を
   8月14日に、委任状を8月26日に受領した。センターは,同年8月26日に,
   申立書が処理方針と規則に照らし申立書が適合していることを確認した。
(5)登録者への通知日及び内容
   1) 申立書送付日(手続開始日) 2013年8月26日(電子メール及び郵送)
   2) 申立書及び証拠等一式
   3) 答弁書提出期限 2013年9月25日
(6)手続開始日 2013年8月26日
   センターは、2013年8月26日に申立人及び登録者には電子メール及び郵
  送で、JPRS及びJPNICには電子メールで、手続開始日を通知した。
(7)答弁書の提出の有無及び提出日
   センターは、提出期限日までに答弁書を受領しなかったので、2013年9月
  26日に「答弁書の提出はなかったものと見做す」旨の答弁書不提出通知書を、
  電子メールと郵送にて申立人及び登録者に送付した。
(8)パネリストの選任 2013年10月2日
   申立人、登録者とも1名のパネルによって審理・裁定されることを選択。。
   中立宣言書の受領日:2013年10月4日
   パネリスト:弁護士 小林 十四雄
(9)紛争処理パネルの指名及び裁定予定日の通知
   2013年10月2日 JPNIC及びJPRSへ電子メールで通知
             申立人及び登録者へ電子メール及び郵送で通知
   裁定予定日:2013年10月23日
(10)パネリストへのパネリスト指名書及び一件書類受け渡し
   2013年10月2日(電子メール及び郵送)
(11)パネルによる審理・裁定
   2013年10月18日 審理終了、裁定。