事件番号:JP2014−0001

                  裁 定

  申立人:
  (名称)ジェネラル ニュートリション インヴェストメント カンパニー
  (住所)アメリカ合衆国アリゾナ州85403 フェニックス サウス シックスティー
      サード アベニュー アット バックアイ 1002
  代理人:弁護士 又市義男

  登録者:
  (氏名)金 兌垣
  (所在地)「東京都竜仁市器興馬北同235−1ジエンシビル1F」(ただし、株式会
       社日本レジストリサービスに登録されたもの)
  (公開連絡窓口)福岡市中央区天神2丁目7−21Tenjin Prime 8F
          株式会社paperboy&co.(ただし、株式会社日本レジストリサービス
          に登録されたものであり、かつ、申立書等の送付先)

 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、JPドメイン名紛争処理方針、JPドメイン
名紛争処理方針のための手続規則及び日本知的財産仲裁センターJPドメイン名紛争処理
方針のための手続規則の補則並びに条理に則り、申立書・提出された証拠に基づいて審理
を遂げた結果、以下のとおり裁定する。

1 裁定主文
  ドメイン名「GNCSTORE.JP」の登録を申立人に移転せよ。
2 ドメイン名
  紛争に係るドメイン名は「GNCSTORE.JP」である。
3 手続の経緯
  別記のとおりである。
 
4 当事者の主張
 a 申立人
 (1)申立人は、米国法人であるジェネラル・ニュートリション・センター・インク(以
下「GNC社」という。)の完全子会社であり、全世界においてGNC社の商標その他の知
的財産権を保有し、管理し、行使している法人であって、日本において、次の8件の登録
商標を有している。
   商標登録番号     商標の構成   指定商品・役務
 ① 第4282814号   GNC     第5類
 ② 第4310527号   GNC     第29類
 ③ 第4325802号   GNC     第30類
 ④ 第4310528号   GNC     第31類
 ⑤ 第4310529号   GNC     第32類
 ⑥ 第5073106号   GNC     第35類
 ⑦ 第4288540号  ジーエヌーシー  第5類
 ⑧ 第4367038号  ジーエヌーシー  第29類
 (以下、前6者を指して「申立人登録GNC商標」といい、後2者を指して「申立人登
録ジーエヌシー商標」といい、8者を合わせて単に「申立人登録商標」という。)
 また、申立人は、自ら又はその関連会社を通じて、「gnc.com」、「gnc.info」、「gncstore.net」
「gncstore.com」、「shopgncstore.com」、「gnclivewell.asia」等のドメイン名の登録を得
ており、GNCブランドの商品は、これらのドメイン名の下でのウェブサイトを通じても
広範囲に宣伝・販売されており、過去70年間以上のこのような販売活動により、GNC
社のGNCブランドは、全世界において周知・著名となっている。
 (2)申立人は、登録者が紛争に係るドメイン名「GNCSTORE.JP」(以下「本
件ドメイン名」という。)を登録し、本件ドメイン名を使用したウェブサイト(以下「本件
ウェブサイト」という。)において、申立人登録商標及びGNCの会社名を無断で使用し、
またGNC社の公式サイトであるとの表示を無断で流用し、あたかもGNC社の公式ウェ
ブサイトであるかの外観を作出することにより、GNC社及び申立人登録商標の名声にた
だ乗りして不当に商業上の利得を得ようとして、本件ドメイン名を使用していること、本
件ドメイン名は、申立人登録商標と混同を引き起こすほどに類似し、登録者は本件ドメイ
ン名について正当な利益を有していないし、本件ドメイン名は不正の目的で登録されかつ
使用されていることを主張する。
 したがって、申立人は、本件ドメイン名登録の申立人への移転を請求する。
 b 登録者
 登録者によって答弁書は提出されなかった。

5 争点とそれに対する判断
(1)方針及び規則の適用について 
 方針第4条aは、適用対象となる紛争の要件として、申立人が次の事項の各々を証明し
なければならないことを規定している。
 ①登録者のドメイン名が、申立人が権利又は正当な利益を有する商標その他表示と同一
又は混同を引き起こすほど類似していること
 ②登録者が、ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有していないこと
 ③登録者のドメイン名が、不正の目的で登録又は使用されていること
 上記①から③の要件を判断するに当たり、規則第15条(a)は、「パネルは、提出され
た陳述・文書および審問の結果に基づき、処理方針、本規則および適用されうる関係法規
の規定・原則、ならびに条理に従って、裁定を下さなければならない」と規定する。他方
で、本件において登録者は答弁書を提出していないところ、規則第5条(f)は、「もし登
録者が答弁書を提出しないときには、例外的な事情がない限り、パネルは申立書に基づい
て裁定を下すものとする。」と規定する。
 したがって上記①から③の要件に関する申立書における主張について、各要件に関する
申立人の主張が不十分である又は各要件該当事実の存在を否定する事実が認められるとい
った例外的な事情がない限り、申立人の主張に従い、本件ドメイン名登録移転の裁定を下
すことが妥当と考える。

(2)同一又は混同を引き起こすほどの類似性
 申立人は、本件ウェブサイトにおいて、登録者と実質的に同一の事業主体と思料される
株式会社ケイエルカンパニーという会社がGNCブランドの商品等を販売しているところ、
本件ドメイン名の主要部であるGNCSTOREの後半部分のSTOREは、本件ウェブ
サイトの店舗を意味する普通名称であり何らの顕著性も有せず、したがって、本件ドメイ
ン名のGNCSTOREの要部はGNCであり、このGNCが申立人登録商標と同一であ
り、また申立人登録商標と混同を引き起こすほどに類似していることは明白であると主張
する。
 当該主張に対して、登録者は答弁書を提出しておらず、また一件記録を検討しても、類
似性を否定する例外的な事情は認められず、かえって、本件ドメイン名中の識別力ある「G
NC」の部分は、申立人登録GNC商標と外観及び称呼において同一であり、申立人登録
ジーエヌシー商標と称呼において同一と認められる。
 したがって、本件ドメイン名は、申立人登録商標と混同を引き起こすほど類似している
と認められる。
 
(3)権利又は正当な利益の不存在
 申立人は、登録者は申立人登録商標の使用に関して申立人らから何らの許諾も得ておら
ず、本件ドメイン名および本件ウェブサイトにおいて無断で申立人登録商標を使用してい
るものであって、登録者が本件ドメイン名に関する権利または正当な利益を有していない
ことは明らかであると主張する。
 当該主張に対して、登録者は答弁書を提出しておらず、また一件記録を検討しても、方
針第4条c(i)から(iii)に該当するような登録者の本件ドメイン名に関係する権利又
は正当な利益の存在を裏付ける事実や、権利又は正当な利益の不存在を否定する例外的な
事情は認められない。
 したがって、登録者は本件ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有していないと
認められる。
 
(4)不正の目的での登録及び使用
 申立人は、本件ウェブサイトは、GNC社の公式ウェブサイトをそっくりそのまま模倣
しており、また、本件ウェブサイトでは申立人登録商標を無断で使用していて、登録者は
申立人登録商標の名声にただ乗りして不当に商業上の利得を得ようとしていることが明白
であり、本件ドメイン名が不正の目的で登録されかつ使用されていることが明らかである
と主張する。これは「登録者が、商業上の利益を得る目的で、そのウェブサイト…または
それらに登場する商品…の出所について誤認混同を生ぜしめることを意図して、インター
ネット上のユーザーを、そのウェブサイトに誘引するために、当該ドメイン名を使用して
いるとき」(方針第4条b(iv))に該当すると認められる。
 以上に対して、登録者は答弁書を提出しておらず、また一件記録を検討しても、不正の
目的での登録又は使用を否定する例外的な事情は認められない。
 したがって、登録者の本件ドメイン名は不正の目的で登録され、使用されていると認め
られる。

6 結論
 以上に照らして、紛争処理パネルは、登録者によって登録された本件ドメイン名「GN
CSTORE.JP」が、申立人の商標と混同を引き起こすほど類似し、登録者が本件ドメ
イン名について権利又は正当な利益を有しておらず、本件ドメイン名が不正の目的で登録
され、使用されているものと判断する。
 よって、方針第4条iに従って、ドメイン名「GNCSTORE.JP」の登録を申立人
に移転するものとし、主文のとおり裁定する。

    2014年5月7日

   日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル
                            牧 野 利 秋
              単独パネリスト


 別記  手続の経緯
(1)申立書受領日
      2014年2月18日(電子メール及び書面)
(2)手数料受領日
      2014年2月17日  申立手数料の受領確認
(3)ドメイン名及び登録者の確認
      2014年2月19日  JPRSへ照会
      2014年2月19日  JPRSから登録情報の回答
      回答内容:申立書に記載された登録者はドメイン名の登録者であること、JPRS
        に登録されている登録者の電子メールアドレス、住所及び公開連絡
        先窓口等
(4)適式性
   日本知的財産仲裁センター(以下「センター」という。)は、2014年2月
  19日に、申立書の補正及び代表者の資格を証明する公的証明書類の提出が
  必要と判断して、その旨を申立人に通知した。同年2月21日上申書を受領し、
  同年2月24日に、補正期間を3月20日まで延長することを通知した。補正申
  立書及び代表者の資格を証明する公的証明書類を3月6日に受領した。セン
  ターは、同年3月6日に、申立書が処理方針と規則に照らし申立書が適合してい
  ることを確認した。
(5)登録者への通知日及び内容
     1) 申立書送付日(手続開始日) 2014年3月7日(電子メール及び郵送)
      2) 申立書及び証拠等一式
      3) 答弁書提出期限  2014年4月7日
(6)手続開始日  2014年3月7日
      センターは、2014年3月7日に申立人及び登録者には電子メール及び郵送
  で、JPRS及びJPNICには電子メールで、手続開始日を通知した。
(7)答弁書の提出の有無及び提出日
      センターは、提出期限日までに答弁書を受領しなかったので、2014年4月
  9日に「答弁書の提出はなかったものと見做す」旨の答弁書不提出通知書を、電
  子メールと郵送にて申立人及び登録者に送付した。
(8)パネリストの選任  2014年4月14日
      申立人は、1名のパネルによって審理・裁定されることを選択。
      中立宣言書の受領日:2014年4月16日
      パネリスト:弁護士 牧野 利秋
(9)紛争処理パネルの指名及び裁定予定日の通知
      2014年4月14日  JPNIC及びJPRSへ電子メールで通知
                         申立人及び登録者へ電子メール及び郵送で通知
      裁定予定日:2014年5月7日
(10)パネリストへのパネリスト指名書及び一件書類受け渡し
      2014年4月14日(電子メール及び郵送)
(11)パネルによる審理・裁定
      2014年5月7日  審理終了、裁定。