事件番号:JP2016-0003

                  裁 定

  申立人:
  (名称)株式会社アドフロー
  (住所)東京都新宿区左門町18番地10武藤ビル3階
  代理人:弁護士 田畑 貴之
  登録者:
  (氏名/名称)Bill Winans
  (住所)東京都高円寺北3-43-13
  (なお、上記はJPRSからの登録情報の回答のとおりである。)

 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、JPドメイン名紛争処理方針、JPドメイン
名紛争処理方針のための手続規則及び日本知的財産仲裁センターJPドメイン名紛争処理
方針のための手続規則の補則並びに条理に則り、申立書・答弁書・提出された証拠に基づ
いて審理を遂げた結果、以下のとおり裁定する。

1 裁定主文
  ドメイン名「スウェット.JP」の登録を申立人に移転せよ。
2 ドメイン名
  紛争に係るドメイン名は「スウェット.JP」である。
3 手続の経緯
  別記のとおりである。
 
4 当事者の主張
 a 申立人
(1)申立人は、平成18年9月に設立され、オリジナルTシャツを作成し販売することを
主な業務としており、平成19年7月からHPに「スウェット.jp」名を使用しており、
当該HPのドメイン名は「sweat.jp」である。
 申立人は、「スウェット.jp」について、平成25年1月9日に商標出願し、同年6月
21日に登録された(商標登録第5592406号、以下「本件商標」という)。
(2)登録者は「スウェット.JP」というドメイン名(以下「本件ドメイン名」という)
を有している。
(3)登録者は本件ドメイン名を含むHP(以下「本件HP」という)を作成しているか、
本件HPの作成者に本件ドメイン名を使用させている。本件HPには、「スウェット.jp」、
本件商標の指定商品・指定役務が記載されている。
 申立人が営んでいる「スウェット.jp」の店舗にアクセスしようと思っている者が、
URL検索欄に「スウェット.jp」と入力すると、申立人とは全く関係のない者が運営
する本件HPが開き、かつ本件商標の指定商品役務が記載され、ユーザーは当該HPは申
立人が運営しているHPである旨誤認する可能性が非常に高い。
 登録者が作成ないし作成を委託したHPは、申立人の本件商標の顧客吸引力にタダ乗り
し、不当に広告収入を得ようとしているのである。
(4)登録者は、商業上の利益を得る目的で、そのウェブサイトに登場する商品及びサービ
スの出所、スポンサーシップ、取引提携関係、推奨関係などについて誤認混同を生じせし
めることを意図して、インターネット上のユーザーをそのウェブサイトに誘引するために
当該ドメイン名を使用している。
 従って、申立人は、ドメイン名登録の申立人への移転を請求する。

 b 登録者
  登録者によって答弁書は提出されなかった。

5 争点および事実認定
 規則第15条(a)は、パネルが紛争を裁定する際に使用することになっている原則に
ついてパネルに次のように指示する。「パネルは、提出された陳述・文書および審問の結果
に基づき、処理方針、本規則および適用されうる関係法規の規定・原則、ならびに条理
に従って、裁定を下さなければならない。」
 方針第4条aは、申立人が次の事項の各々を証明しなければならないことを指図してい
る。
 (1)登録者のドメイン名が、申立人が権利又は正当な利益を有する商標その他表示と
    同一又は混同を引き起こすほど類似していること
 (2)登録者が、ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有していないこと
 (3)登録者のドメイン名が、不正の目的で登録又は使用されていること

 (1)同一又は混同を引き起こすほどの類似性
 登録者のドメイン名は「スウェット.JP」であり、申立人の有する本件登録商標は「ス
ウェット.jp」である。両者は、アルファベット「JP」と「jp」の違いはあるが、
大文字と小文字の違いに過ぎず、全体の称呼が同一で、ドメイン名として識別力のある「ス
ウェット」部分は外観・称呼及び観念において同一である。
 したがって、本件ドメイン名は、申立人が権利を有する本件登録商標と混同を引き起こ
すほど類似していると認められる。
 なお、登録者のドメイン名が使用されるHPを見ていくと、「ポロシャツプリント名入れ」、
「名入れタオルの制作」、「ユニフォームに刺繍、印刷」などの記載がされており、これら
の役務は、本件登録商標の指定役務「被服へのプリント加工,ししゅう」と需要者などに
共通性があると考えられる。

 (2)権利又は正当な利益
 申立人は、登録者のドメイン名が使用されるHPで使用されるドメイン名「スウェット.
JP」は本件登録商標に基づく商標権の侵害であり、本件ドメインの利用も同商標権の侵
害であって、このような商標権侵害にあたるドメイン使用から、登録者が本件ドメイン名
に関係する正当な利益を有していないことが明らかであると主張する。
 当該主張に対して、登録者は答弁書を提出しておらず、また一件記録を検討しても、方
針第4条c(ⅰ)から(ⅲ)に該当するような登録者の本件ドメイン名に関係する権利又
は正当な利益の存在を裏付ける事実や、権利又は正当な利益の不存在を否定する例外的な
事情は認められない。
 したがって、登録者は本件ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有していないと
認められる。

 (3)不正の目的での登録及び使用
登録者のドメイン名が使用されるHPでは、本件登録商標「スウェット.jp」が無断
で使用され、本件登録商標の指定役務と同一又は類似する役務が記載され、役務の提供を
受けられるようになっており、申立人は、登録者は申立人の本件登録商標の顧客吸引力に
タダ乗りし不当に広告収入を得ようとしている、と主張する。
 当該主張に対して、登録者は答弁書を提出しておらず、また一件記録を検討しても、不
正の目的での登録又は使用を否定する例外的な事情は認められない。
 したがって、登録者の本件ドメイン名は不正の目的で登録され、使用されていると認め
られる。

6 結論
 以上に照らして、紛争処理パネルは、登録者によって登録されたドメイン名「スウェッ
ト.JP」が申立人の商標と混同を引き起こすほど類似し、登録者が、ドメイン名について権
利又は正当な利益を有していない、登録者のドメイン名が不正の目的で登録され且つ使用
されているものと裁定する。
 よって、方針第4条iに従って、ドメイン名「スウェット.JP」の登録を申立人に移
転するものとし、主文のとおり裁定する。

    2016年4月25日

   日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル
                            中 村  仁
              単独パネリスト
 
別記  手続の経緯
(1)申立書受領日
      2016年2月23日(電子メール)及び2月26日(書面)
(2)手数料受領日
      2016年2月23日  申立手数料の受領確認
(3)ドメイン名及び登録者の確認
      2016年2月26日  JPRSへ照会
      2016年2月26日  JPRSから登録情報の回答
      回答内容:申立書に記載された登録者はドメイン名の登録者であること、JPRSに登
        録されている登録者の電子メールアドレス及び住所等
(4)適式性
      日本知的財産仲裁センター(以下「センター」という。)は、2016年2月29
  日に、申立書が処理方針と規則に照らし申立書が適合していることを確認した。
(5)登録者への通知日及び内容
      1) 申立書送付日(手続開始日) 2016年3月1日(電子メール及び郵送)
      2) 申立書及び証拠等一式
      3) 答弁書提出期限  2016年3月30日
(6)手続開始日  2016年3月1日
      センターは、2016年3月1日に申立人及び登録者には電子メール及び郵送で、
  JPRS及びJPNICには電子メールで、手続開始日を通知した。
   但し、登録者宛郵送分については「あて所に尋ねあたりません」として返送された。
(7)答弁書の提出の有無及び提出日
      センターは、提出期限日までに答弁書を受領しなかったので、2016年3月31
  日に「答弁書の提出はなかったものと見做す」旨の答弁書不提出通知書を、電子メー
  ル及び郵送で申立人及び登録者に送付した。
   但し、登録者宛郵送分については「あて名不完全で配達できません」として返送さ
  れた(なお、宛名は(6)及び(9)と同一である。)。
(8)パネリストの選任  2016年4月6日
   申立人は、1名のパネルによって審理・裁定されることを選択。
   中立宣言書の受領日:2016年4月14日
   パネリスト:弁理士 中村 仁
(9)紛争処理パネルの指名及び裁定予定日の通知
      2016年4月6日  JPNIC及びJPRSへ電子メールで通知
                         申立人及び登録者へ電子メール及び郵送で通知
   但し、登録者宛郵送分については「あて所に尋ねあたりません」として返送された。
      裁定予定日:2016年4月26日
(10)パネリストへのパネリスト指名書及び一件書類受け渡し
      2016年4月6日(電子メール及び郵送)
(11)パネルによる審理・裁定
      2016年4月25日  審理終了、裁定。