事件番号:JP2017-0004 裁 定 申立人: (氏名/名称) ジョーンズ ラング ラサール アイピー インコーポレイテッド (住所)アメリカ合衆国 イリノイ州 60601 シカゴ イースト・ランドルフ・ ドライブ 200 代理人:弁理士 加藤 勉 弁理士 萼 経夫 弁理士 高 昌宏 登録者: (氏名/名称)Zhao Ke (住所)中華人民共和国 上海市 威海路 655 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、JPドメイン名紛争処理方針、JPドメイン 名紛争処理方針のための手続規則及び日本知的財産仲裁センターJPドメイン名紛争処理 方針のための手続規則の補則並びに条理に則り、申立書・提出された証拠に基づいて審理 を遂げた結果、以下のとおり裁定する。 1 裁定主文 ドメイン名「JONESLANGLASALLE.JP」の登録を申立人に移転せよ。 2 ドメイン名 紛争に係るドメイン名は「JONESLANGLASALLE.JP」である。 3 手続の経緯 別記のとおりである。 4 当事者の主張 a 申立人 申立人は、紛争に係るドメイン名(以下「本件ドメイン名」ということがある。)は、 申立人の登録商標「JONES LANG LASALLE」(標準文字、以下「本件登録商標」という。)と、 建物の管理等の顧客が混同を引き起こすほどに類似し、登録者はドメイン名について正当 な権利を有しておらず専ら転売を目的として、不正の目的で登録されたものである。 従って、申立人は、ドメイン名登録の申立人への移転を請求する。 b 登録者 登録者によって答弁書は提出されなかった。 5 争点および事実認定 規則第15条(a)は、パネルが紛争を裁定する際に使用することになっている原則に ついてパネルに次のように指示する。「パネルは、提出された陳述・文書および審問の結果 に基づき、処理方針、本規則および適用されうる関係法規の規定・原則、ならびに条理 に従って、裁定を下さなければならない。」 方針第4条aは、申立人が次の事項の各々を証明しなければならないことを指図してい る。 (1)登録者のドメイン名が、申立人が権利又は正当な利益を有する商標その他表示と 同一又は混同を引き起こすほど類似していること (2)登録者が、ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有していないこと (3)登録者のドメイン名が、不正の目的で登録又は使用されていること (1)同一又は混同を引き起こすほどの類似性 本件登録商標は商標登録第4439031号であるところ、申立人から提出された特許 情報プラットフォームの写しに掲載されたその登録情報における住所は、本件申立書に記 載され、法人資格証明書に記載された申立人の住所と異なるものである。そこで釈明を求 めたところ、双方共に申立人が使用する住所であることが確認できたので(陳述書)、本件 登録商標は申立人が保有するものであると認める。 本件ドメイン名「JONESLANGLASALLE.JP 」において、「.JP」は日本を意味するトップレ ベルドメインであって類否判断には影響しない部分である。そして、「JONESLANGLASALLE」 の文字列は本件登録商標とスペースの有無を除き同一である。したがって、建物の管理等 の需要者は、本件ドメイン名の「JONESLANGLASALLE 」の部分から、本件登録商標に係る役 務のサイトであるかのごとく誤認するおそれがある。 よって、本件ドメイン名は、本件登録商標と混同を引き起こすほど類似するといえる。 (2)権利又は正当な利益 申立人は、登録者のドメイン名「JONESLANGLASALLE.JP」は、特別なコンテンツを持たず、 ウエブサイトhttps:/whois.domaintools.com において、登録者のドメイン名 「JONESLANGLASALLE.JP」の販売を行っていることから明らかなように、専ら転売を目的と するだけである、と主張する。 本件ドメイン名「JONESLANGLASALLE.JP」が特別なコンテンツを持たないことの立証はな いが、ウエブサイトhttps:/whois.domaintools.com において、本件ドメイン名 「JONESLANGLASALLE.JP」が販売されている事実は、これを認めることができる(甲第1号 証)。 登録者は本件ドメイン名「JONESLANGLASALLE.JP」を販売している以上、これを使用する 意思がないと認められるものであり、加えて本件ドメイン名の登録者名はZhao Keであっ て、本件ドメイン名「JONESLANGLASALLE.JP」との関連性は認められない。 よって、登録者が、ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有していると認めるこ とはできない。 (3)不正の目的での登録及び使用 申立人は、登録者は、商業上の利益を得る目的で、Domain Invest Holdingsと称するブ ローカー通じて、申立人に対し、登録者のドメイン名「JONESLANGLASALLE.JP」の購入を打 診している、と主張する。 甲第2号証によれば、Domain Invest Holdingsの名で、申立人のe-メールアドレス宛に 登録者のドメイン名「JONESLANGLASALLE.JP」の購入を打診するメールが送信されているこ とが認められる。このメールに対価は記載されていないが、ウエブサイトで販売されてい る事実(甲第1号証)を勘案すると、登録者はドメイン名「JONESLANGLASALLE.JP」を、専 ら転売の目的で登録したものと推認することができる。 よって、登録者のドメイン名が、不正の目的で登録されているものと認められる。 6 結論 以上に照らして、紛争処理パネルは、登録者によって登録されたドメイン名 「JONESLANGLASALLE.JP」が申立人の商標と混同を引き起こすほど類似し、登録者が、ドメ イン名について権利又は正当な利益を有していない、登録者のドメイン名が不正の目的で 登録されているものと裁定する。 よって、方針第4条iに従って、ドメイン名「JONESLANGLASALLE.JP」の登録を申立人に 移転するものとし、主文のとおり裁定する。 2017年10月4日 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル 峯 唯 夫 単独パネリスト 別記 手続の経緯 (1)申立書受領日 2017年7月26日(電子メール)及び7月27日(書面) (2)手数料受領日 2017年7月13日 申立手数料の受領確認 (3)ドメイン名及び登録者の確認 2017年7月27日 JPRSへ照会 2017年7月27日 JPRSから登録情報の回答 回答内容:申立書に記載された登録者はドメイン名の登録者であること、JPRSに登 録されている登録者の電子メールアドレス及び住所等 (4)適式性 日本知的財産仲裁センター(以下「センター」という。)は、2017年7月31日 に添付書類に不備があると判断してその旨を申立人に通知し、8月1日に補正書類、 8月3日に補正書類の差替を受領し、8月3日に申立書が処理方針と規則に照らし適 合していることを確認した。 (5)登録者への通知日及び内容 1) 申立書送付日(手続開始日) 2017年8月3日(電子メール及び郵送) 2) 申立書及び証拠等一式 3) 答弁書提出期限 2017年9月1日 (6)手続開始日 2017年8月3日 センターは、2017年8月3日に申立人及び登録者には電子メール及び郵送で、 JPRS及びJPNICには電子メールで、手続開始日を通知した。 (7)答弁書の提出の有無及び提出日 センターは、提出期限日までに答弁書を受領しなかったので、2017年9月4日 に「答弁書の提出はなかったものと見做す」旨の答弁書不提出通知書を、電子メール 及び郵送で申立人及び登録者に送付した。 (8)パネリストの選任 2017年9月6日 申立人は、1名のパネルによって審理・裁定されることを選択。 中立宣言書の受領日:2017年9月8日 パネリスト:弁理士 峯 唯夫 (9)紛争処理パネルの指名及び裁定予定日の通知 2017年9月6日 JPNIC及びJPRSへ電子メールで通知 申立人及び登録者へ電子メール及び郵送で通知 (但し登録者宛郵送分については「あて所に尋ねあたりません」として返送された) 裁定予定日:2017年9月27日 (10)パネリストへのパネリスト指名書及び一件書類受け渡し 2017年9月6日 (11) 追加陳述書及び証拠書類 2017年9月21日、手続規則12条の規定により、パネリストは、申立人に対 し、商標登録を裏付ける追加書類及び申立人住所の補正書類の提出を求め(電子メー ル及び郵送)、9月22日に申立人から書類を受領した。9月22日、パネリストは、 申立人に対し、申立人住所の補正書類についての補足説明を求め(電子メール及び郵 送)、9月29日に申立人から書類を受領し、同日、登録者へ送付した(電子メール及 び郵送で通知)。 (12) 裁定期限の延長 2017年9月21日、パネリストは、手続規則10条(c)但書の規定により本 件裁定期限を10月4日まで延長し、申立人、登録者、JPNIC及びJPRSに通知した(電 子メール及び郵送)。 (13)パネルによる審理・裁定 2017年10月4日 審理終了、裁定。