事件番号:JP2019-0009

                裁 定

  申立人:
(1)  生活協同組合コープさっぽろ
   (住所)北海道札幌市西区発寒十一条5丁目10番1号
(2) 株式会社エネコープ
   (住所)北海道札幌市中央区北八条西十八条35番地100
   代理人:弁護士 神戸 俊昭
        同  万字 香苗
        同  福田 惇紀
        同  竹川 靖之
        同  森川 雄介
        同  京田 賢一
登録者:
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  (公開連絡先)東京都新宿区西新宿3-9-3

 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、JPドメイン名紛争処理方針、JPドメイン
名紛争処理方針のための手続規則及び日本知的財産仲裁センターJPドメイン名紛争処理
方針のための手続規則の補則並びに条理に則り、申立書・補正書・提出された証拠に基づ
いて審理を遂げた結果、以下のとおり裁定する。

1 裁定主文
  ドメイン名「ENECOOP.JP」の登録を申立人(1)に移転せよ。
2 ドメイン名
  紛争に係るドメイン名は「ENECOOP.JP」(以下、「本件ドメイン名」という)である。
3 手続の経緯
  別記のとおりである。
4 当事者の主張
 a 申立人(1)
   申立人(1)は、登録商標エネコープの商標権者であるところ、同商標と混同されう
  る本件ドメイン名を登録者により登録され、登録者により不正の目的で利用されてい
  る。
   従って、申立人(1)は、ドメイン名登録の同人への移転を請求する。
 b 申立人(2)
   申立人(1)に同じ

 c 登録者
   登録者によって答弁書は提出されなかった。

5 争点および事実認定
  規則第15条(a)は、パネルが紛争を裁定する際に使用することになっている原則
 についてパネルに次のように指示する。「パネルは、提出された陳述・文書および審問
 の結果に基づき、処理方針、本規則および適用されうる関係法規の規定・原則、ならび
 に条理に従って、裁定を下さなければならない。」
  方針第4条aは、申立人が次の事項の各々を証明しなければならないことを指図して
 いる。
 (1)登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示
 と同一または混同を引き起こすほど類似していること
 (2)登録者が、当該ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していないこと
 (3)登録者の当該ドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること

 (1)同一又は混同を引き起こすほどの類似性
   ア 申立人(1)の登録商標との関係
     申立人(1)は、エネコープという商標の商標権者(登録番号第5363409
    号)であり、本件申立を行う権利を有している。そこで、エネコープとENECOOP.JP
    の要部であるENECOOPについてその類似性を検討するに、ENECOOPは、エネコー
    プの完全なローマ字表記ではないものの、その読み方としては、エネコープと読
    むことができ、その称呼は同一である。またその前半「エネ」は、エネルギーの
    短縮形であり、広辞苑によれば後半の「コープ」は生活協同組合を観念している
    ものと考えられるところ、アルファベットの「ENE」も同じくenergyの短縮形と
    広く考えられているところであり、COOPも広辞苑によれば co-opとの表記では
    あるものの、生活協同組合を観念しているものと考えられるから、観念も同一と
    いえる。したがって、エネコープとENECOOPは混同を引き起こすほどの類似性が
    あるといえる。
   イ 申立人(2)について
     申立人(2)については、同人が同人自体のいかなる権利、利益をもって、それ
    と本件ドメイン名との同一性や類似性を主張しているのか明らかではなく、本申
    立てにおいて求める救済に必要な要件を満たしているとはいえない。よって申立
    人(2)については、次の(2)、(3)の要件については判断しない。

 (2)権利または正当な利益
    登録者は、答弁書を提出しておらず、特に例外的な事情も認められないため、申
   立書の記載から判断するに、方針第4条cに記載する事実も認められず、登録者は、
   本件ドメインに関係する権利または正当な利益を有しているとは考えられない。

 (3)不正の目的での登録または使用
    登録者は、申立人(1)そのものではないものの、申立人(1)の子会社である申立人
   (2)が、2019年まで本件ドメインを保有し、これを同社の事業に用いていたところ、
   同社がその登録を解約してから数か月後に本件ドメインを取得した。また、申立書
   によれば、登録者自身に、本件ドメインを使用する実益は見当たらないところであ
   り、方針4条bに掲げるような事実は直ちには見受けられないものの、本件ドメイ
   ン取得の時期及び、その正当な利益の不存在にかんがみると、登録者は、不正の目
   的を持って、本件ドメインを登録したものと考える。

6 結論
  以上に照らして、紛争処理パネルは、登録者によって登録された本件ドメイン名
 「ENECOOP.JP」が申立人(1)の商標と混同を引き起こすほど類似し、登録者が、ドメイ
 ン名に関係する権利または正当な利益を有しておらず、登録者のドメイン名が不正の目
 的で登録または使用されているものと判断する。
  よって、方針第4条iに従って、ドメイン名「ENECOOP.JP」の登録を申立人(1)に移
 転するものとし、主文のとおり裁定する。

  2020年3月10日

   日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル
                    単独パネリスト        苗  村  博  子


別記  手続の経緯
(1)申立書受領日
      2019年12月16日(電子メール)及び12月20日(書面)
(2)手数料受領日
      2019年12月20日  申立手数料の受領確認
(3)ドメイン名及び登録者の確認
      2019年12月23日  JPRSへ照会
      2019年12月23日  JPRSから登録情報の回答
      回答内容:申立書に記載された登録者はドメイン名の登録者であること、JPRSに登
                録されている登録者の電子メールアドレス及び住所等
(4)適式性
      日本知的財産仲裁センター(以下「センター」という。)は、2019年12月2
    4日に補正(補正書,証拠,証拠一覧及び説明書)が必要と判断してその旨を申立人
    に通知し、2020年1月6日に補正書類を受領し、申立書が処理方針と規則に照ら
    し適合していることを確認した。
(5)登録者への通知日及び内容
      1) 申立書送付日(手続開始日) 2020年1月10日(電子メール及び郵送)
      2) 申立書及び証拠等一式
      3) 答弁書提出期限  2020年2月10日
(6)手続開始日  2020年1月10日
      センターは、2020年1月10日に申立人及び登録者には電子メール及び郵送で、
    JPRS及びJPNICには電子メールで、手続開始日を通知した。
(7)答弁書の提出の有無及び提出日
      センターは、提出期限日までに答弁書を受領しなかったので、2020年2月12
    日に「答弁書の提出はなかったものと見做す」旨の答弁書不提出通知書を、電子メー
    ル及び郵送で申立人及び登録者に送付した。
(8)パネリストの指名 2020年2月18日
      申立人は、1名のパネルによって審理・裁定されることを選択。
      言明書の受領日:2020年2月25日
      パネリスト:弁護士 苗村 博子
(9)紛争処理パネルの指名及び裁定予定日の通知
      2020年2月18日  JPNIC及びJPRSへ電子メールで通知
                          申立人及び登録者へ電子メール及び郵送で通知
      裁定予定日:2020年3月10日
(10)パネリストへのパネリスト指名書及び一件書類受け渡し
      2020年2月18日(電子メール及び郵送)
(11)パネルによる審理・裁定
      2020年3月10日  審理終了、裁定。