事件番号:JP2020-0003 裁 定 申立人: 氏名(名称):ピクアドロ ソシエタ ペル アチオニ 住所:イタリア国 40041 ボローニャ ガッジョ・モンターノ シ ッラ ロカリタ・サッスリアーノ 246 代理人:弁理士 西浦 嗣晴 弁理士 山田 朋彦 登録者: 氏名(名称):高尾 健二 住所:不明 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、JPドメイン名紛争処理方針 (以下「処理方針」という)、JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則(以 下「手続規則」という)及び日本知的財産仲裁センターJPドメイン名紛争処理 方針のための手続規則の補則並びに条理に則り、申立書・答弁書・提出された 証拠に基づいて審理を遂げた結果、以下のとおり裁定する。 1 裁定主文 ドメイン名「PIQUADRO.JP」の登録を申立人に移転せよ。 2 ドメイン名 紛争に係るドメイン名は「PIQUADRO.JP」である。 3 手続の経緯 別記のとおりである。 4 当事者の主張 a 申立人の主張 申立人は、登録者が、申立人の登録商標(別紙登録商標目録記載)と紛らわ しいドメイン名を登録し、申立人の高い知名度を利用する意図を有していると 主張する。 申立人によれば、ドメイン名は、申立人の商標と混同を引き起こすほどに類 似し、登録者はドメイン名に関係する正当な利益を有しておらず、ドメイン名 は不正の目的で登録または使用されている。 従って、申立人は、ドメイン名登録の申立人への移転を請求している。 b 登録者 登録者によって答弁書は提出されなかった。 5 争点および事実認定 A 適用される規範 手続規則第15条(a)は、パネルが紛争を裁定する際に使用することに なっている原則についてパネルに次のように指示する。「パネルは、提出され た陳述・文書および審問の結果に基づき、処理方針、本規則および適用され うる関係法規の規定・原則、ならびに条理 に従って、裁定を下さなければな らない。」 処理方針第4条aは、申立人が次の事項の各々を証明しなければならない ことを指図している。 ①登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その 他表示と同一または混同を引き起こすほど類似していること ②登録者が、当該ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していな いこと ③登録者の当該ドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること B 認定および判断 よって、まず、申立人において上記Aの処理方針第4条aの①ないし③記 載の各事実を証明するに足りる主張および証拠を提出しているか否かを判断 する。 (1)上記①(ドメイン名と商標の類似)に該当する事由の存否 イ、申立人は、別紙登録商標目録1ないし5の登録商標(以下「本件各登録 商標」という)に関して商標権を有しており(甲4号証の1ないし5)。 本件各登録商標につき「権利」または「正当な利益」を有している。 なお、甲4号証の1ないし5に記載された商標権者の住所と申立書に 記載された申立人の住所が一致しないが、申立人は法人設立時から現在 までの間、住所移転および住所表示を変更しており、本件各登録商標に 関する商標登録の際の申立人の住所表示は、出願時点における申立人の 住所(旧住所)等を願書に記載したことなどの事情により前記相違が生 じたものと推察される(甲10号証)。 また、後記の様に、登録者にドメイン名の登録を依頼した可能性のあ るカマタ株式会社(以下「カマタ」という)と申立人との間のライセン ス契約においても、申立人が登録商標「Piquadro」を使用してブリーフ ケース、バッグ、スーツケース等の商品を世界中で販売していること、 カマタが申立人の上記商品を日本国内において販売する独占的販売権を 付与されるにともなって前記商標の使用を許諾された事実が記載されて いる(甲6号証の2)。 以上のような事実から、上記の様に申立人が本件各登録商標の商標権 者であると認定した次第である。 ロ、本件各登録商標と本件ドメイン名とが混同を生じるほど類似しているこ と。 本件ドメイン名のうち、トップレベル・ドメインである「JP」は日本 国を示すコードであり、出所識別機能を有しない。したがって、本件ド メイン名のうち出所識別機能を有するのは「PIQUADRO」の部分である。 他方、本件各登録商標の構成は別紙登録商標目録記載のとおりであり、 その外観において、本件ドメイン名を構成する「PIQUADRO」と類似する。 また本件各登録商標からは「ピクアドロ」の称呼が生じるところ、本件 ドメイン名の「PIQUADRO」からも同一の称呼が生じる。 さらに、申立人は、本件各登録商標を使用して世界各国でブリーフケ ース、バッグ、スーツケース等を販売するだけではなく、2017年6 月30日までは、カマタとの独占的販売契約にもとづき同社を通じて前 記商品を日本国内で販売し、2018年2月からは大阪府東大阪市所在 の株式会社アンジェロ・ジャパンに対して上記商標を付した商品を輸出 し(甲11号証の1乃至5)、株式会社アンジェロ・ジャパンは、インタ ーネットを通じて同商品を一般消費者向けに広告し、販売若しくは販売 の申し出を行っている(甲12号証の1乃至2)。 以上の各事実に鑑みれば、本件ドメイン名は、申立人が正当な権原を 有する本件各登録商標と混同を生じるほど類似している。 (2)上記②(登録者に権利または正当な利益がないこと)に該当する事由の 存否 イ、登録者はウエブサイトの制作等を業とする者であり、カマタから 「PIQUADRO Web site」の制作依頼を受けた事実が認められるが、申立人 またはその商品の販売とは何らの関係を有しておらず、また、本件ドメ イン名を使用して自らウエブサイト等を開設しているわけでもないので、 本件ドメイン名を登録する正当な利益があるとは考えられない。 また、本件申し立てに対して登録者から答弁書等の提出がないことも、 登録者が本件ドメイン名につき正当な利益がないことを推測させる。 ロ、ただ、申立人が推測するように、登録者はカマタの委託を受け同社のた めにドメイン名の取得を代行した可能性がある。 そこで、念のため、登録者に対して本件ドメイン名の取得代行を依頼 した可能性があるカマタについて、本件ドメイン名の登録に関する正当 な利益があるかについても検討をおこなう。 申立人は、カマタとの間で、同年6月23日から2017年6月30 日までの間を存続期間とする独占的販売契約を締結するとともに、20 17年6月30日を存続期間の終期とする登録商標「Piquadro」の使用 を許諾するライセンス契約を締結した(甲5号証の1、2、同6号証の 1、2)。 しかし、上記各契約はいずれも更新されることなく、上記存続期間の 終期をもって終了した(甲8号証の1)。 したがって、仮にカマタが、上記独占的販売契約および同ライセンス 契約により申立人から与えられた権原に基づき、本件ドメイン名に関し 登録者を登録代行者として登録を行ったとしても、2017年7月1日 以降は、もはやその使用に正当な利益を有しないことは明白である。 (3)上記③(不正の目的)に該当する事由の存否 登録者は、前記の様に、カマタから、「PIQUADRO Web site」の制作の依 頼を受けた関係から、その関係維持のために、カマタの委託をうけ本件 ドメイン名の登録を代行したものと推測され、その登録及び仕様には不 正の目的がある。 また、カマタは、申立人から再三にわたり本件ドメイン名の移転等を 請求された際には、申立人に対して在庫品等の引き取りを要求し、申立 人がこの要求に応じるか否かの回答を見たうえで、本件ドメイン名の移 転に関する回答を行う旨の通知をしている(甲8号証の2、甲8号証の 5 甲8号証の7)。 仮に、申立人とカマタとの間で、在庫品の引き取り等をめぐって係争 が存在するとしても、カマタが本件ドメイン名の使用を継続する法的な 根拠や正当な利益を有しないことは、上記(2)記載のとおりである。 しかるに、申立人の本件ドメイン名の移転請求に対して、カマタが、 再三、申立人に対して在庫品の引き取り等を請求し、その回答を待って ドメイン名の移転請求に関する回答を行う旨の主張を繰り返しているこ とは、カマタが、本件ドメイン名を使用していることを奇貨として、申 立人との上記紛争を有利に解決しようとの意図を有していることは容易 に推認することができる。 よって、カマタも、不正の目的で本件ドメイン名を使用していると認 められる。 6 結論 以上に照らして、紛争処理パネルは、登録者によって登録されたドメイン 名「PIQUADRO.JP」が申立人の商標と混同を引き起こすほど類似し、登録者が、 ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有しておらず、登録者のドメ イン名が不正の目的で登録または使用されているものと判断する。 よって、方針第4条a従って、ドメイン名「PIQUADRO.JP」の登録を申立人 に移転するものとし、主文のとおり裁定する。 2020年7月16日 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル 単独パネリスト 弁護士 松 村 信 夫 別記 手続の経緯 (1)申立書受領日 2020年4月17日(電子メール)及び5月7日(書面) (2)手数料受領日 2020年4月17日 申立手数料の受領確認 (3)ドメイン名及び登録者の確認 2020年5月7日 JPRSへ照会 2020年5月7日 JPRSから登録情報の回答 回答内容:申立書に記載された登録者はドメイン名の登録者であること JPRSに登録されている登録者の電子メールアドレス及び住 所等 (4)適式性 日本知的財産仲裁センター(以下「センター」という。)は、2020 年5月13日に補正(証拠の電子メールによる提出)が必要と判断してそ の旨を申立人に通知し、2020年5月13日に補正書類を受領し、申立 書が処理方針と手続規則に照らし適合していることを確認した。 (5)登録者への通知日及び内容 1) 申立書送付日(手続開始日) 2020年5月15日(電子メール及 び郵送) 2) 申立書及び証拠等一式 3) 答弁書提出期限 2020年6月12日 (6)手続開始日 2020年5月15日 センターは、2020年5月15日に申立人及び登録者には電子メール 及び郵送で、JPRS及びJPNICには電子メールで、手続開始日を通知した。 (7)答弁書の提出の有無及び提出日 センターは、提出期限日までに答弁書を受領しなかったので、2020 年6月15日に「答弁書の提出はなかったものと見做す」旨の答弁書不提 出通知書を、電子メール及び郵送で申立人及び登録者に送付した。 (但し,登録者宛の通知のうち,JPRS登録情報の登録者住所に郵送した通 知は「保管期間経過」として返送された。) (8)パネリストの指名 2020年6月19日 申立人は、1名のパネルによって審理・裁定されることを選択。 言明書の受領日:2020年6月25日 パネリスト:弁護士 松村 信夫 (9)紛争処理パネルの指名及び裁定予定日の通知 2020年6月19日 JPNIC及びJPRSへ電子メールで通知 申立人及び登録者へ電子メール及び郵送で通知 (但し,登録者宛の通知のうち,JPRS登録情報の登録者住所に郵送した通 知は「保管期間経過」として返送された。) 裁定予定日:2020年7月9日 (10)パネリストへのパネリスト指名書及び一件書類受け渡し 2020年6月19日(電子メール及び郵送) (11)追加陳述書及び証拠書類 2020年6月24日、手続規則12条の規定により、パネリストは、 申立人に対し、申立人住所及び登録商標の使用状況についての釈明及び証 拠書類の提出を求め(電子メール及び郵送)、7月1日、センターは、申 立人から証拠書類を受領し、7月2日、パネリスト及び登録者に送付した (電子メール及び郵送)。 (但し,登録者宛の通知のうち,JPRS登録情報の登録者住所に郵送した通 知は「保管期間経過」として返送された。) (12)裁定期限の延長 2020年6月24日、パネリストは、手続規則10条(c)但書の規 定により本件裁定期限を7月16日まで延長し、申立人、登録者、JPNIC 及びJPRSに通知した(電子メール及び郵送)。 (13)パネルによる審理・裁定 2020年7月16日 審理終了、裁定。
登録商標目録
登録番号 登録日 |
イメージ | 分類 | 指定商品/役務名 | 存続満了日 分納満了日 |
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1 | 4634057 2003/01/10 |
16 18 | 【16】システム手帳,システム手帳カバー,メモ帳,皮革製(合成皮革製を含む)のメモ用紙カバー,ノートブックカバー,電話番号記入帳,ペン立て,ペンケース,デスクセット,その他の文房具類,紙類,印刷物,書画,写真,写真立て,遊戯用カード,紙製包装用容器,事務用又は家庭用ののり及び接着剤【18】書類かばん,男性用・女性用財布(貴金属製のものを除く。),ノートブックケース,書類入れかばん,旅行かばん,衣服かばん,皮革製(合成皮革製のものを含む)のワイシャツ収納ケース,皮革製(合成皮革製のものを含む)のネクタイ収納ケース,靴クリーム・靴墨・靴ブラシ・靴磨き布などの靴磨き用具を収納するための小さな革製のケース,その他のかばん類及び袋物,皮革,携帯用化粧道具入れ,かばん金具,がま口口金,傘,ステッキ,つえ | 満2023/01/10 | |
2 | 4833845 2005/01/21 |
09 14 | 【09】サングラス,普通眼鏡,つる,眼鏡ケース,眼鏡チェーン及びコード,その他の眼鏡,写真機械器具,光学機械器具,電池,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,家庭用テレビゲームおもちゃ,ウエットスーツ,レコード【14】宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,ブレスレット,ブローチ,チェーン,イヤリング,ネックレス,指輪,その他の身飾品,時計,貴金属,キーホルダー,貴金属製食器類,貴金属製のくるみ割り器・こしょう入れ・砂糖入れ・塩振出し容器・卵立て・ナプキンホルダー・ナプキンリング・盆及びようじ入れ,貴金属製針箱,貴金属製のろうそく消し及びろうそく立て,貴金属製宝石箱,貴金属製の花瓶及び水盤,記念カップ,記念たて,貴金属製のがま口及び財布,貴金属製コンパクト,貴金属製靴飾り,貴金属製喫煙用具 | 満2025/01/21 | |
3 | 5144815 2008/06/27 |
25 | 【25】洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,ジャケット,ズボン,ベスト,アイマスク,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,帽子,防暑用ヘルメット,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。) | 満2028/06/27 | |
4 | 5147739 2008/07/04 |
35 | 【35】被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供 | 満2028/07/04 | |
5 | 5147740 2008/07/04 |
35 | 【35】紙類及び文房具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供 | 満2028/07/04 |