事件番号:JP2021-0012

                  裁 定
  申立人:
  (名称)ロート株式会社
  (住所)大阪市生野区巽西1丁目8番1号
  代理人:弁護士 松尾洋輔
  登録者:
  (氏名)Grayson Logan
  (住所)東京都 Shibuya City 26-1 Sakuragaokacho Cerulean Tower 5F
  (渋谷区桜丘町26番1号 セルリアンタワー5F)

 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル(以下「本パネル」という)は、JPドメイ
ン名紛争処理方針(以下「方針」という)、JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則
(以下「規則」という)及び日本知的財産仲裁センターJPドメイン名紛争処理方針のた
めの手続規則の補則並びに条理に則り、申立書・提出された証拠に基づいて審理を遂げた
結果、以下のとおり裁定する。

1 裁定主文
  ドメイン名「ROHTOPHARMACEUTICAL.JP」の登録を申立人に移転せよ。

2 ドメイン名
 紛争に係るドメイン名は「ROHTOPHARMACEUTICAL.JP」(以下、「本件ドメイン名」と
いう。なお、RFCによりドメイン名のラベルに使用する英文字に大文字・小文字の区別
はなく、申立人の主張と関係なく、ドメイン名登録照会に対する通知の割当表記に従
う。)である。

3 手続の経緯
  別記のとおりである。

4 当事者の主張
 a 申立人
(1)登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示と
  同一または混同を引き起こすほど類似していること
 ア 登録者のドメイン名
   WHOIS サービスの検索結果によれば、登録者は、本件ドメイン名を、2021年6月
  25日に登録している(甲1 WHOIS サービス検索結果)。
 イ 申立人の商標その他の表示
   申立人は、「ロート製薬株式会社」(以下「申立人商号」という)の商号で点眼薬
  等の医薬品や、化粧品・機能性食品等の製造販売を行っている東京証券取引所一部
  上場の製薬会社であり、「ロート」「製薬」を英語表示した「ROHTO Pharmaceutical
  Co., Ltd.」(以下「申立人社名の英語表記」という)を社名の英語表記として使用
  している(甲2 ロート製薬Web サイト「会社概要」ページ、甲3 定款)。
   また、申立人は、日本語表記の「ロート製薬」(以下「申立人商標1」という)や、
  アルファベット表記の「ROHTO」の商標(以下「申立人商標2」と総称する)につい
  て以下のとおり商標登録している(甲4〜10 商標登録公報)。
            
登録番号 登録日 登録商標 商品及び役務の区分
5285795 2009.12.4 ロート製薬 第35類
5285791 2009.12.4 ROHTO 第35類
5285790 2009.12.4 ロゴ:ロート 第35類
4838904 2005.2.10 ROHTO 第1類~第45類
4838903 2005.2.10 ロゴ:ロート 第1類~第45類
4834773 2005.1.21 ロゴ:ロート 第1類~第45類
4819519 2004.11.19 ROHTO 第3類
   申立人は、上記の「ROHTO」商標を自社製品の容器包装に表示し、医薬品、医薬部
  外品、化粧品等の製品を販売している(ROHTO の文字列を表示した目薬の例につき
  甲11,ROHTO のロゴを表示した目薬の例につき甲12 参照)。
 ウ 本件ドメイン名と申立人の商標その他の表示の同一性
   本件ドメイン名である「rohtopharmaceutical.jp」(註:申立人による特定。以下、
  同様)は、申立人社名の英語表記の「ROHTO Pharmaceutical Co., Ltd.」の前2語
  をスペースを除いて接続し、株式会社を表す「Co.,Ltd.」を除いただけのものであ
  り、実質的に申立人社名の英語表記と同一の表示である。
   また、本件ドメイン名中の「rohto」(註:申立人による特定、以下、同様)の語
  は、申立人が保有している申立人商標2の「ROHTO」商標と同一の表示である。

(2)登録者が、当該ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していないこと
   登録者は、本件ドメイン名を2021年6月25日に登録しているが、登録者とされ
  るGrayson Logan なる人物が申立人または申立人のグループ会社に在籍している事
  実はない。
   また、申立人は、登録者に対し、申立人商号や申立人商標2の「ROHTO」商標の使
  用を許諾したこともないし、そもそも登録者と接触を持ったことすらない。
   さらに、ウェブブラウザを用いて本件ドメイン名にアクセスすると、申立人が設
  置・運営している「ロート製薬」のコーポレートサイト(以下「申立人サイト」と
  いう)である「https://www.rohto.co.jp/」にリダイレクトされるよう設定されて
  おり、登録者が本件ドメイン名を用いて独自に事業を行っている形跡も認められな
  い。
   したがって、登録者は、申立人商標2の「ROHTO」商標を使用する権利を有してお
  らず、同商標について先使用権を主張しうる立場にもない。

(3)登録者の当該ドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること
 ア 本件ドメイン名がフィッシングメール送信目的で使用されている可能性が高いこと
   申立人が本件ドメイン名の存在を把握したのは、以下の経緯によるものである。
   すなわち、2021年6月ころより、本件ドメイン名を用いたメールアドレス
  (admin@rohtopharmaceutical.jp、info@rohtopharmaceutical.jp)を発信者とする
  メールを受信したという者から、申立人がWebサイト上に設置している問い合わせ
  フォーム宛に、月に数件程度、当該メールの内容に関する問い合わせが寄せられる
  ようになった(甲13 問い合わせ内容一覧)。
   問い合わせの概要は、申立人の要職に就いているというヤマダヤスヒロなる人物
  から、申立人における仕事をオファーするメールが送信されたが、事実申立人から
  の連絡か、というものであり、問い合わせの際に引用された元のメールには、本件
  ドメイン名を用いたメールアドレスが送信元または返信先として使用されている例
  がみられた。
   当該メールの内容は、申立人の求人情報等を装ったものとなっているが、申立人
  が一切関知していないものである。また、前記のとおり、本件ドメイン名にアクセ
  スしても、申立人のコーポレートサイトにリダイレクトされる設定になっており、
  受信者はメールの発信者の身元を確認することができない。
   このようなメールを送信する目的は不明であるが、申立人になりすまして受信者
  に接触し、受信者のクレジットカード情報や、各種パスワード等の情報を盗み取る、
  いわゆるフィッシングメールである可能性が高い。

 イ 被害拡大防止の観点から是正の必要性が高いこと
   申立人は、点眼薬等を製造販売する製薬会社として、国際的に事業を展開してお
  り、「ロート」または「ROHTO」ブランドは申立人の製品のユーザーを中心に広く認
  知されている。
   そのため、「rohto」の文字列を含む本件ドメイン名を用いてメールが送信された
  場合、受信者において、申立人が作成・送信した真正なメールであると誤信するお
  それがある(現にメールの内容を信じて問い合わせをしている受信者も存在する)。
   受信者の個人情報等を抜き取ることを目的にしたフィッシングメールの場合、受
  信者が真正なメールと信じて、メールに返信したり、添付ファイルや、メール本文
  記載のハイパーリンクにアクセスしたりすることで、様々な被害を被るおそれがあ
 る。
   申立人としては、顧客等関係者の保護の観点からも、レピュテーションの観点か
  らも、自社の社名を冠した本件ドメイン名を用いてそのような不法行為が行われて
  いることはおよそ看過できない。

   従って、申立人は、ドメイン名登録の申立人への移転を請求する。

 b 登録者
  登録者によって答弁書は提出されなかった。

5 争点および事実認定
(1)本パネルに権限のある判断の基礎資料
 規則第15条(a)は、パネルが紛争を裁定する際に使用することになっている原則につい
てパネルに次のように指示する。「パネルは、提出された陳述・書類及び審問の結果に基
づき、処理方針、本規則及び適用されうる関係法規の規定・原則、ならびに条理に従って、
裁定を下さなければならない。」
 また、規則第5条(f)は、「登録者が答弁書を提出しないときには、例外的な事情がない
限り、パネルは申立書に基づいて裁定を下すものとする」とされる一方、判断の統一性を
JP-DRP研究会がとりまとめたJP-DRP解説(2008年3月)(以下「解説」という)Ⅱ1.(6)c
にあって、パネルは裁定をするにあたって独自調査をすることを可能としており、条理に
属する”WIPO Overview 3.0” 4.8においてもウェブ等の公共の記録に対する調査が可能と
される中、従前から多くの裁定でウェブ調査や辞書類の補充調査が行われている。
 本パネルも、手続きの効率化の観点で、規則第10条(b)に定める両当事者への公平原則
に反しない範囲で実体調査の補充を可能と判断し、申立人より提出された申立書及び書証
に加え、J-PlatPatによる登録商標の登録状況の調査(主に、登録者の商標出願状況及び
「ロート」又は「ROHTO」を含む商標全般の登録状況)、申立人の商号及び「ロート」又は
「ROHTO」の来歴(1909年の申立人のロート目薬発売に際し、ロートムンド博士の名前に
由来することの確認)と使用状況(主に、申立人商号及び申立人社名の英語表記の使用
等)、及び登録者の本件ドメイン名の使用状況(主に、申立人が主張する、登録者が登録
を得た本件ドメイン名のウェブサイトが表示形式では実在せず、これにアクセスしたユー
ザーが申立人のウェブサイトにリダイレクトされる構成であることの確認)を確認してい
る。

(2)移転裁定の実体要件と立証責任
  方針第4条aは、申立人が次の事項の各々を証明しなければならないことを指図して
 いる。
 (1)  登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示
   と同一または混同を引き起こすほど類似していること(第1要件)
 (2)  登録者が、当該ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していないこと
   (第2要件)
 (3)  登録者の当該ドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること(第3
   要件)
  なお、以上の方針第4条a(2)については、方針第4条cにおいて「登録者がドメイ
 ン名に関係する権利または正当な利益を有していることの証明」を行うことが定めら
 れていることから、申立人ではなく登録者に立証責任があるとの判断もありうるし、
 また、過去、そのように判断した裁定例も散見される。
  ただ、本パネルは、この点、JP-DRPのモデルたるUDRPにおける母国法の一つである
 米国法の民事紛争の事実認定の多くの準則が、証拠の優越(どちらの言い分がもっと
 もらしいか、50%を上回る心証度で証明したものとする準則)で足りるとされている
 点に照らして("WIPO Overview 3.0" 4.2。多くのWIPO裁定において同準則によって
 要件の認定を行うことが明言されている)、方針第4条cと方針第4条a とは矛盾する
 関係に立たないと理解するものであり、方針第4条aで「このJPドメイン名紛争処理
 手続において、申立人はこれら三項目のすべてを立証しなければならない」と明記さ
 れている以上、方針第4条a(2)についても、申立人が証明すべき事項と位置付けて
 (前掲JP-DRP解説Ⅲ3(2))これを判断するものである。
  なお、証拠の優越の準則は、本来、双方が立証活動を尽くして「登録者が、当該ド
 メイン名に関係する権利または正当な利益を」「有していない」事実、又は「有してい
 る」事実のいずれであるかを解明することを期待する動的な事実認定準則であり、本
 事案のように登録者が答弁書を提出していない場合、おのずと解明度が低下すること
 になり、方針第10条及び裁定地法たる日本法を準拠法とする中、十中八九間違いない
 との心証度を要する歴史的証明に沿った事実認定の準則との齟齬も懸念されるところ
 である。
  特に、登録者の答弁書の不提出の一事をもって、擬制自白の成立を認めるべきでは
 なく、かつ、申立人が立証責任を負うべき事項を認定すべきでないことは、JP-DRPで
 確立された事実認定の本則である(解説Ⅱ1.(3)b)。
  このため、本パネルは、申立人の主張する「登録者が、当該ドメイン名に関係する
 権利または正当な利益を有していない」とすべき各事項を検討した上、後記の心証を
 えたものである。

(3)第1要件
 ア 登録者の本件ドメイン名
   本センターが後記手続で行ったドメイン名登録照会に対する通知により、登録者
  に本件ドメイン名が割当てられている事実を認める。

 イ 申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示
   前記のとおり、申立人は、その申立書において、概要、申立人商号(「ロート製薬
  株式会社」)、申立人社名の英語表記(「Rohto Pharmaceutical Co., Ltd.」)、申立人
  商標1(「ロート製薬」)、及び申立人商標2(「ROHTO」の欧文字及びこれを図案化し
  たものを含め、商品区分の変更に応じて申立人主張の各商品区分で登録したものの
  総称)の4つの表示に言及している(申立書において、申立人のホームページより
  (甲2)確認できる「rohto.co.jp」のドメイン名に係る表示の言及はない)。
   申立人商号については、申立書添付の履歴事項証明及び申立人ホームページより、
  昭和24年設立以来、同商号を用いてきたと認められ、申立人の正当な利益を有す
  るその他表示と認める。
   申立人社名の英語表記は、甲2の申立人ホームページ(英語)のCompany Nameの
  表記及び甲3の申立人の定款(2020年6月26日)第1条の「当会社は、ロート製薬
  株式会社と称し、英文ではROHTO PHARMACEUTICAL CO., LTD」と表示する」との規定
  (註:申立人社名の英語表記と一部の大文字、小文字の別異はあっても、RFCにより
  ドメイン名のラベルに使用する英文字に大文字・小文字の区別はなく、これとの関
  係で問題となる申立人の「商標その他表示」もその区別はないものとして取扱う。
  以下、表示に関して全て同様。)よりこれを申立時の正当な利益を有するその他表示
  と認める。
   なお、第1要件の認定にあたって、申立人の「商標その他表示」の著名性の検討
  は不要であり(解説Ⅲ1.(2))、"WIPO Overview 3.0" 1.5も、個人の氏名に関してコ
  モンロー上の権利を有する場合に第1要件を充足する旨が規定されている。
   一般に社名が小売業も含め役務との関係で広くサービスマークとしても機能する
  ことが通常である点に照らしても、著名な製薬会社である申立人社名の英語表記が
  いつの時点から使用開始したかを考慮にいれずとも、申立時において申立人社名の
  英語表記が申立人の正当な利益を有すべきその他表示に該当するものと認定される
  ものである(同旨JP-2004-0002等)。
   申立人商標1(「ロート製薬」)、申立人商標2(「ROHTO」乃至これを図案化したも
  の)については、申立人の提出した甲4ないし甲10の各商標公報より申立人の主張
  する内容のとおりであり(申立人主張に係る同一標章の商標権一部の商品区分の重
  なりは、小売商品区分35類を追加した国際区分第9版以降の出願や指定商品の一部
  重なりにより生じた相違だけである)、申立人が正当な利益を有する商標と認める。
   なお、申立人は、申立人商標2について、甲11及び12の使用例をあげているが
  (甲11は「ロート製薬」表示も含む)、前記商標登録がある以上、申立人商標2が
  申立人の権利または正当な利益を有すべき商標に該当することの証明に必要がない。

 ウ 登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示と
  同一または混同を引き起こすほど類似していること
 (ア)基準
   第1要件における同一または混同を引きおこすほど類似していることの判断手法
  について、本パネルは、ドメイン名がサイバー世界での標識であり、RFC等の規程に
  従い運用される標識である以上、申立人商標とドメイン名の表示それ自体を端的に
  見比べ、ドメイン名の表示の構成に申立人の「商標その他表示」が含まれるか、ま
  たはその特徴的部分が含まれているか、ドメイン名のその余の構成に特徴的部分が
  含まれて両者を区別するこが可能であるか否かをもって、同一または誤認を惹起す
  るだけの類似性があるかを客観的に定めることを本則として判断する。
   "WIPO Overview 3.0" 1.7において、誤認を惹起するほど類似するか否かについて
  は、ドメイン名と関連する商標のテキスト部分との対比観察によることが示されて
  おり、検索エンジンのアルゴリズムに則した認識可能性を肯定しているように、英
  数文字により構成されるドメイン名がこれらを包含するか否かを基準とするのが適
  切である。
   また、ドメインが人の手により入力、認識されるものである以上、音声、翻訳等
  の対比も肯定されており(”WIPO Overview 3.0” 1.7及び1.14)、以上の考え方は、
  外観、称呼、観念の各要素の対比と総合判断により客観的に類否判断を示す多くの
  裁決例に採用されてきた考え方と共通と考える。
   他方、商標を例にとれば、商品、役務との結び付きのない中でドメイン名と商標
  等との対比を行う関係上、客観的な標章部分での対比が中心となるものであって
  (例えば、商標法上の商標にあっては、一般名詞と言える用語があったとしても、
  指定商品、指定役務との関係では、識別力を有する用語になる場合があり、対比を
  行う部分を抽出する場合でも、標章としてみた場合に一般用語であるか否かを基準
  に判断する事案があると判断される)、また、取引の実情を反映して商品及び役務の
  出所の誤認混同をメルクマールとして類否を判断することが適切でない事案もある
  (特に、本件のドメイン名は申立人のウェブサイトにジャンプさせるよう構成され
  ている事案では商標的使用が想定できない)。
   また、対比の対象となるドメイン名は、RFC等により、当然のことながら図柄も利
  用できなければ、テキスト内でスペースの使用ができない等の制約があるため、申
  立人の「商標その他表示」を構成するテキスト部分での対比が中心となることも明
  らかである(フォント等のデザイン化や図形との一体性には商標法上の判断ほど重
  きはおかれず、テキスト部分の対比が中心となる)。
   さらに、ドメイン名が、ハイフンで連結する場合を除き(ハイフンは数字記号で
  ある)常に横一連英数文字列として構成される標識であり、わが国の商標法の結合
  商標の分野で発達してきた、一体比較を原則としつつ分離観察が可能である商標の
  場合に要部比較をもって類否判断を行うといった判断手法をとることが、必ずしも
  適切でない事案も生じうる("WIPO Overview 3.0" 1,7に言及のある検索エンジンの
  アルゴリズムにとって、「商標その他表示」が分離可能に構成されているかが関連す
  るところはなく、分離可能性についての検討を常に必要とするものではない)。
   したがって、本パネルは、本件ドメイン名と前記申立人が正当な利益を有する各
  「商標その他表示」との対比を行うにあたって、本件ドメイン名の中に申立人の
  「商標その他表示」(またはその特徴部分)がテキストの構成要素として含まれるか、
  その余の検討事項があるか否かにつき、両者の外観、称呼、観念の観点から客観的
  に検討して、両者が実質同一であるか、又は誤認を引きおこすだけの類似性がある
  かの判断を行うものである。
 (イ)申立人社名の英文表記について
   本件ドメイン名のトップレベルドメインである「.jp」部分は、IANAを承継した
  ICANNが定める国別コードトップレベルドメンを特定するラベルであって、対比の対
  象ではなく、「ROHTOPHARMACEUTICA」部分だけがドメイン紛争の対比の対象である。
   申立人が主張する申立人社名の英文表記は、「ROHTO Pharmaceutical Co., Ltd.」
  であり、その内の「Co., Ltd」は有限責任会社(株式会社)を意味する一般用語で
  あるから、その特徴部分は「ROHTO Pharmaceutical」である。
   両者を対比すれば、両者は、大文字、小文字、空白部分の有無の相違はあるが、
  RFC等の規程においてドメイン名に大文字と小文字との区別がなく、空白としてのス
  ペース記号を利用することができないことに鑑みれば、前者が後者をそのままの形
  で含んでいると判断されるものであり、かつ、本件ドメイン名は、その余に何ら追
  加的要素の付加がない。
   このため、外観は同一であり、称呼も同一であり、観念(『製薬』の『ロート』。
  ただし、申立人商号の由来としてロートムンド博士なる人物名のものという認識が
  一般的なものであったとは理解されない)も同一である以上、(実質)同一であり、
  第1要件を充足する。
 (ウ)申立人商標2について
   事案の性質上、本件ドメイン名が申立人社名の英語表記と同一であることが判断
  できる以上、その余の表記を検討する必要はないが、登録商標権である申立人商標2
  (「ROHTO」又はこれを図案化したもの)についての検討を、念のため行う。
   本件ドメイン名の対比対象は、前記のとおり、「ROHTOPHARMACEUTICA」部分である。
   申立人が主張する申立人商標2は、欧文字で横一連の「ROHTO」(甲5,7、10)、及
  びこれを一部図案化してなる商標(甲6、8、9)よりなるが、対比の対象はテキスト
  部分である「ROHTO」である(JP2020-0009参照)。
   本件ドメイン名の対比部分と申立人商標2とを対比すると、本件ドメイン名は
  「ROHTO」を含み、その余の「PHARMACEUTICAL」部分は、『製薬の』という形容詞の
  一般用語であって、これが付加されることによって特別の区別が生じるものでない。
   外観において当該部分で共通し、称呼において当該部分で共通し、観念において
  「ROHTO」部分に特別の観念を想起させないとはいえ(前記のとおり、申立人商号の
  由来としてロートムンド博士なる人物名からのものとの認識が一般的なものである
  とは理解されない)、「PHARMACEUTICAL」が『製薬の』という形容詞に過ぎないこと
  に鑑みれば、本件ドメイン名の観念に関して『製薬』の『ROHTO』以外の特別の意味
  が生じることがないと認められるから、特段の観念が生じるものではないものの、
  観念において当該部分で両者を区別すべきところもない。
   したがって、本件ドメイン名は、申立人商標2と「混同を引き起こすほど類似」
  しており、第1要件を充足する。
 (エ)申立人商号及び申立人商標1について
   申立人商号は、「ロート製薬株式会社」であり、そのうち「株式会社」は、わが国
  の会社制度を特定する一般用語であり、法人主体を識別する部分は、「ロート製薬」
  であり、その業種・業態を示す「製薬」部分が医薬品のメーカーであることを示す
  一般用語であることに照らしても、その特徴部分は「ロート」にあると理解される。
   申立人商標2は、「ロート製薬」(甲4)であり、特徴部分は申立人商号と同様であ
  る。
   本件ドメイン名と申立人商号及び申立人商標1とを対比すれば、「ロート製薬」の
  英訳である『ROHTO Pharmaceutical』(ただし、「ロート」と英語表記としては
  『ROTO』等もありえる)の意味から観念としての共通性を肯定できることが明らか
  である(他方、外観は共通せず、称呼は「ロート」部分の重なりを除き、異なる)。
   日本国の国別コードのドメイン表記であるjpドメインの取り扱いに際し、母国語
  である日本語からの英語表記の観点で検討することは重要であるとはいえるものの、
  過去の裁定例をみても、申立人が保有するドメインや商標の英数文字の表記に加え
  日本語商標の検討を行うもの(JP2010-0007等)、和文表記の商号や商標のローマ字
  表記の検討を行うもの(JP2004-0002、JP2012-0013等)はあっても、問題となる商
  標または表示を単独で観念同一の観点から「混同を引き起こすほど類似」と判断し
  た裁定例はないと理解される。
   本パネルは、本件ドメイン名と申立人が権利または正当な利益を有する商標その
  他表示との「同一または誤認を引き起こすほど類似」しているかについて、取引の
  実情も踏まえて総合的に判断する手法をとる立場でなく、また、「商標その他表示」
  については個別に検討する立場であるため、申立人商号や申立人商標1を補強的に
  他の「商標その他表示」の類否判断に参酌する必要性はないと考える。
   前記のとおり、本事案にあっては、本件ドメイン名が申立人社名の英文表記及び
  申立人商標2と同一または混同を引き起こすほど類似していることが明らかである
  以上、敢えて申立人商号及び申立人商標1について判断する必要がないものであり、
  本パネルは和文表記の申立人商号及び申立人商標1の類否判断を示さない。
 (オ)第1要件の結論
   以上、本パネルは、本件ドメイン名(ROHTOPHARMACEUTICAL.JP)は、申立人社名
  の英語表記(ROHTO Pharmaceutical Co., Ltd)と同一であり、及び申立人商標2
  (ROHTO)と誤認を引き起こすほど類似であると認定し、第1要件を充足すると判断
  する。

(4)第2要件
  第2要件である「登録者が、当該ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有し
 ていないこと」については、解説Ⅲ3.(3)は、申立人に主張・立証が求められる事項と
 して、以下の各事項を例示している。
 (i) 登録者の氏名・法人名とドメイン名の不一致
 (ii) ドメイン名と一致する登録者が保有する日本の登録商標の不存在
 (iii) 当該ドメイン名に関してのライセンスの不存在
  他方、方針第4条c.は、登録者がドメイン名に関係する権利または正当な利益を有
 していることの証明として、
 (i) 登録者が、当該ドメイン名に係わる紛争に関し、第三者または紛争処理機関から
 通知を受ける前に、商品またはサービスの提供を正当な目的をもって行うために、当
 該ドメイン名またはこれに対応する名称を使用していたとき、または明らかにその使
 用の準備をしていたとき
 (ii) 登録者が、商標その他表示の登録等をしているか否かにかかわらず、当該ドメイ
 ン名の名称で一般に認識されていたとき
 (iii) 登録者が、申立人の商標その他表示を利用して消費者の誤認を惹き起こすこと
 により商業上の利得を得る意図、または、申立人の商標その他表示の価値を毀損する
 意図を有することなく、当該ドメイン名を非商業的目的に使用し、または公正に使用
 しているときを例示としてあげている。
  前記のとおり、本パネルは、証拠の優越の準則に基づくUDRPの規定に沿った方針第
 4条a.(ii)と同条c.との関係は、相互に主張・立証活動が行われることを念頭におく
 ものであり、各考慮事項は、総合考慮事情を意味するものと理解する。
  また、第2要件の認定にあたって検討を要する登録者側の事情に係る方針第4条
 c.(iii)の定めは、第3要件の登録時又は使用時の不正の目的を認定する典型例である
 登録者が申立人の「商標その他表示」にフリーライドしたり、希釈化やターニッシュ
 メントによりこれを棄損する場合であっても、なお、登録者にドメイン名を使用する
 正当な利益を有することを否定できない場合、ミニマル・アプローチの観点からドメ
 イン名の移転・取消裁定を抑制すべきとの考えにたつものと理解されることから、第1
 要件の充足と第3要件の充足を肯定した後に検討されるべき事案もあると理解するが、
 多くの裁定例の事案と同様、順序どおり検討することが本件では可能と考える。
  したがって、本パネルは、申立人が最終の立証責任を負う「登録者が本件ドメイン
 名の関係する権利または正当な利益を有してないこと」との認定にあたって検討した
 事項を以下に示す。
  まず、登録者であるGrayson Loganは自然人であり、本件ドメイン名と一致しない
 (解説Ⅲ3.(3)(i))。
  本パネルがJ-PlatPatで調査した範囲で、登録者が本件ドメイン名と一致する商標を
 保有していない(解説Ⅲ3.(3)(ii))。
  申立人は、登録者が申立人に在籍したことも、ライセンスを付与したこともないと
 主張しており、答弁書の提出がない状況においては、これを真実と認めることが可能
 である(解説Ⅲ3.(3)(iii))。
  登録者は、本件ドメイン名を独立したウェブサイトのために使用しておらず、URLに
 本件ドメイン名を入力した場合、申立人のホームページにリダイレクトして遷移する
 形でこれを使用しており、本申立時より前から正当にURLの使用をしていたものではな
 いことも、その準備をしていたものでないことは明らかである(方針第4条c.(i))。
  前記登録者の氏名からして、登録者が本件ドメイン名の表記をもって何らかの営業
 活動を行っていないことは明らかである(方針第4条c.(ii))。
  登録者の本件ドメイン名の前記使用態様からすれば、単なるドメイン名を保有する
 態様(passive holding)を越えて、申立人のウェブサイトへの遷移するようにこれを
 利用してきており、非商業的目的に使用していないことも、または公正に使用してい
 ないことも明らかである(方針第4条c.(iii))。
  以上の事情から、本パネルは第2要件の「登録者が本件ドメイン名に関係する権利ま
 たは正当な利益を有していない」ことを認定するに十分であると考えるが、事案の性
 質上、本事案において申立人が主張している本件ドメイン名を示し登録者が行ったメ
 ール送付の事実(甲13。なお、申立人は、甲13の問い合わせ内容一覧表のメールを提
 出していないが、申立人のような一部上場企業が継続的に作成してきた記録として、
 本パネルは、甲13に示される各メールの送付事実があったものと認定する)について、
 申立人を装ったなりすましメールや、誤ったサイト等に誘導するフィッシングメール
 である可能性を、第2要件及び第3要件の検討対象とする。
  すなわち、前記の解釈及び方針の考慮事情の例示に列挙されておらず、また、従前
 の裁定例では取扱われた形跡のない事情であるが、”WIPO Overview 3.0” 2.13.1は、
 ドメイン名の違法活動のための利用に関して、登録者に権利も正当な利益を付与する
 ところがないとして、違法活動のためのドメイン名の利用に厳格な対応を示しており、
 違法活動の例として、摸倣品や違法薬品の販売等と並び、フィッシング、マルウェア、
 違法アクセス、ハッキング、なりすまし等の典型的な違法なサイバー活動の利用例を
 あげており、本パネルは、これらの事項が第2要件の充足の判断にあたっても直接の
 考慮要素になるものと理解する。
  本事案にあっては、本件ドメイン名が登録された2021年6月25日の直後から(甲13
 の記録で2021年6月27日の申立人への問い合せメールが最初である)、"Yasuhiro
 Yamada"という申立人従業員(スポークスマン)を名乗る人物から、本件ドメイン名を
 メールアドレスのドメイン(メール受信用サーバーのドメインアドレス)として使用
 する"admin@rohtopharmaceutica.jp"または"info@rohtopharmaeceutical.jp"(他に
 本件ドメイン名をユーザー名に組み込んだgmailアドレスも併記)との連絡先を表記
 (及び申立人の社名の英語表記と本店所在地等を併記)した英文メール送信が多くの
 個人、または企業にあった事実が示されており、本件申立のあった2021年9月14日よ
 りも前の2021年7月26日までの間に、申立人に真偽を確認する問い合せだけでも33
 回ものメールを申立人が受信した事実が示されている(甲13)。
  上記のなりすましメールについて、登録者がこれを送信したものであるかの確認は
 客観的な資料の提出はないものの、これらのメール宛先をメール本文に記載している
 以上、本件ドメイン名により開設されたサーバーへの宛先とみなすことは当然にでき
 (ただし、別紙手続きの経緯(7)に記載のとおり、2021年10月29日時点で
 センターより当該メールアドレスに送信したメールは、送信不能となっている。)、
 本件ドメイン名を取得した登録者がこれらのなりすましメールを直接送信したものと
 までは断定できないものの、その登録時期からして登録者が関与してないと判断する
 ことは経験則上できず、最低限、登録者と何らかの関係がある者が、登録者と意を通
 じて、これらのメール送信を行ってきた事実は優に推認できるものである。
  上記のなりすましメールに指定されたメールアドレスにメールを送信した後の活動
 までは確認できないものの、申立人が懸念するように、これらがフィッシングメール
 として活用され、消費者に甚大な被害を与えることが懸念されるとともに、申立人が
 権利又は正当な利益を有すべき商標その他表示に類似する本件ドメイン名について、
 登録者が権利又は正当な利益を有していないことは、以上の違法活動をもって十分に
 認定できるものである。
  以上、本パネルは、登録者が本件ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有
 してないことを認定し、第2要件を充足するものと判断する。

(5)第3要件
  第3要件は、「登録者の当該ドメイン名が、不正の目的で登録または使用されている
 こと」であり、方針第4条b.は、以下の事情がある場合は、ドメイン名の登録または
 使用は、不正の目的であると認めなければならないとされている。
 (i) 登録者が、申立人または申立人の競業者に対して、当該ドメイン名に直接かかった
  金額(書面で確認できる金額)を超える対価を得るために、当該ドメイン名を販
  売、貸与または移転することを主たる目的として、当該ドメイン名を登録または取
  得しているとき
 (ii) 申立人が権利を有する商標その他表示をドメイン名として使用できないように妨
  害するために、登録者が当該ドメイン名を登録し、当該登録者がそのような妨害行
  為を複数回行っているとき
 (iii) 登録者が、競業者の事業を混乱させることを主たる目的として、当該ドメイン
  名を登録しているとき
 (iv) 登録者が、商業上の利得を得る目的で、そのウェブサイトもしくはその他のオン
  ラインロケーション、またはそれらに登場する商品及びサービスの出所、スポンサ
  ーシップ、取引提携関係、推奨関係などについて誤認混同を生ぜしめることを意図
  して、インターネット上のユーザーを、そのウェブサイトまたはその他のオンライ
  ンロケーションに誘引するために、当該ドメイン名を使用しているとき
  本パネルは、本件ドメイン名について、方針4条b.の各項の定める事情については、
 認定が困難であるものの、以下の理由で第3要件の充足を肯定する。
  すなわち、本件にあって、登録者は申立人に本件ドメイン名の売却等の交渉をして
 おらず(方針第4条b.(i)不充足)、登録者が本件ドメイン名の使用することの妨害を
 行ったものでもなく(同(ii)不充足)、答弁書が提出されていない状況の中で登録者の
 本件ドメイン名の登録が事業者の事業を混乱させることを主たる目的であったと即断
 することはできず(同(iii)不充足。これは、前記なりすましメールの送信が申立人の
 事業を混乱させることを主たる目的とするものかの認定とも関連するが、本パネルは、
 後記理由で同事情を認定する必要がないと判断する)、登録者は本件ドメイン名下での
 独自のウェブサイトを開設しておらず、申立人ホームページにリダイレクトするよう
 構成しており、独自のウェブサイトに消費者を誘引するものでもない(同(iv)の不充
 足)。
  しかしながら、第3要件の検討にあたっても、答弁書の不提出をもって擬制自白を認
 めてはならないという原則は貫かれるものではあるが(解説Ⅱ3.(b))、これを総合考
 慮の一事情として検討することは当然に可能であると思料する。
  また、単に登録者がこれを使用していないとのpassive holdingの一事をもって、登
 録者に不正の目的があると認定してはならないが(解説Ⅲ2.(1)c.)、これらを総合的
 に考慮する一事情として検討することは許容されており(”WIPO Overview 3.0” 3.3)、
 単なる不使用を越え申立人のホームページにリダイレクトする登録者のホームページ
 の構成は、登録者の不正の目的を推認させる事情といえる。
  さらに、本事案にあっては、前記のとおり第2要件に係る登録者に権利又は正当な利
 益の不存在が明白であり("WIPO Overview 3.0" 3.2.1)、また、第2要件の検討と同
 様、なりすましメールとしての本件ドメイン名の利用、及びフィッシングメールとし
 ての利用可能性は、登録者の不正の目的を直接に根拠づけるべき事情と判断されるも
 のであり("WIPO Overview 3.0" 3.4)、当該事情は、UDRPと異なり、登録時のみなら
 ず、使用時の不正の目的を第3要件とする方針第4条a.(iii)に沿うものである。
  以上、本パネルは、本件ドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていると
 認定し、第3要件を充足するものと判断する。

(6)結論
 以上の認定事実に照らして、本パネルは、登録者によって登録された本件ドメイン名
 「ROHTOPHARMACEUTICAL.JP」が申立人の商標その他表示と同一又は混同を引き起こすほど
 類似し、登録者が本件ドメイン名に関係する正当な利益を有しておらず、本件ドメイン名
 が不正の目的で登録又は使用されているものと判断する。
  よって、方針第4条iに従って、ドメイン名「ROHTOPHARMACEUTICAL.JP」の登録を申立
 人に移転するものとし、主文のとおり裁定する。



2021年11月18日

日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル
       単独パネリスト    小 池  眞 一

別記 手続の経緯
(1) 申立書の受領
   日本知的財産仲裁センター(以下「センター」という。)は、2021年9月14
  日に申立書(添付する関係書類を含む。)を申立人から電子的送信により受領した。
(2) 申立手数料の受領
   センターは、2021年9月15日に申立人より申立手数料を受領した。
(3) ドメイン名及び登録者の確認
   センターは、2021年9月15日にJPRSに登録情報を照会し、2021年9
  月15日にJPRSから申立書に記載された登録者が対象ドメイン名の登録者である
  ことを確認する回答並びにJPRSに登録されている登録者の電子メールアドレス及
  び住所等を受領した。
(4) 適式性
   センターは、2021年9月22日に申立書が処理方針と手続規則に照らし適合し
  ていることを確認した。
(5) 手続開始
   センターは、2021年9月24日に申立人、JPNIC及びJPRSに対し電子
  的送信により、手続開始を通知した。センターは、2021年9月24日に登録者に
  対し郵送及び電子メールにより、開始通知を送付した。開始通知により、登録者に対
  し、手続開始日(2021年9月24日)、答弁書提出期限(2021年10月22
  日)並びに書面の受領及び提出のための手段について通知した。但し、登録者の住所
  に送付した通知は「あて名不完全で配達できません」として返送された。
(6) 答弁書の提出
   センターは、提出期限日までに答弁書を受領しなかったので、2021年10月2
  5日に「答弁書の提出はなかったものと見做す」旨の答弁書不提出通知書を、電子的
  送信により申立人及び登録者に送付した。
(7) パネルの指名及び裁定予定日の通知
   申立人は、1名のパネルによって審理・裁定されることを選択し、センターは、2
  021年10月29日に弁護士 小池 眞一を単独パネリストとして指名し、一件書
  類を電子的送信によりパネルに送付した。センターは、2021年10月29日に申
  立人、登録者、JPNIC及びJPRSに対し電子的送信により、指名したパネリス
  ト及び裁定予定日(2021年11月19日)を通知した。但し登録者宛電子メール
  送信分については一部が送信不能であった。パネルは、2021年11月4日に公正
  性・独立性・中立性に関する言明書をセンターに提出した。
(8) パネルによる審理・裁定
   パネルは、2021年11月18日に審理を終了し、裁定を行った。