事件番号:JP2022-0003 裁 定 申立人: (名称)パラマウントベッド株式会社 (住所)東京都江東区東砂二丁目14番5号 代理人:弁護士 服部 謙太朗 登録者: (氏名)蓮 青海 (住所)北海道 ユウバリグンナガヌマチョウ, カガダンタイ,16- (北海道夕張郡長沼町加賀団体16区) 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル(以下「本パネル」という)は、JPドメイ ン名紛争処理方針(以下「方針」という)、JPドメイン名紛争処理方針のための手続規 則(以下「規則」という)及び日本知的財産仲裁センターJPドメイン名紛争処理方針のた めの手続規則の補則並びに条理に則り、申立書・提出された証拠に基づいて審理を遂げた 結果、以下のとおり裁定する。 1 裁定主文 ドメイン名「SMARTSLEEP.JP」の登録を申立人に移転せよ。 2 ドメイン名 紛争に係るドメイン名は「SMARTSLEEP.JP」(以下、「本件ドメイン名」という。なお、 RFCによりドメイン名のラベルに使用する英文字に大文字・小文字の区別はなく、ドメ イン名登録照会に対する通知の割当表記に従う。)である。 3 手続の経緯 別記のとおりである。 4 当事者の主張 a 申立人 申立人の主張の概要は、以下のとおりである。 (1)登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示と 同一または混同を引き起こすほど類似していること ア 登録者のドメイン名 JPRSのWHOIS検索結果によると、本件ドメイン名「SMARTSLEE P.JP」は、蓮青海により、2020年4月1日に登録され、本申立日において も有効に存続している(甲13)。 イ 申立人の商標その他の表示 申立人は、「スマートスリープ ベーシック」、「スマートスリープ ライト」及び 「スマートスリープ アクア」という商品名のマットレス(以下総称して「本件商 品」という。)を販売しており(甲3ないし5)、上段に「SMART SLEEP」 下段に「スマートスリープ」を2段表記してなる商標の商標権者(商標登録第53 13408号及び5314884号。以下総称して「本件商標」という。甲6及び 甲7)でもあり、本件商標を本件商品に使用している。 申立人は、従前紛争に係るJPドメイン名を保有し、前述の本件商品の紹介等の ために使用していた(甲8)。その後、申立人は商品ごとに独自ドメインを保有する のではなく、甲3ないし甲5のようにintime.paramount.co. jpとのドメインの下に表示することとし、本件ドメインの登録の更新を中止した。 ウ 本件ドメイン名と申立人の商標その他の表示の同一性・類似性 本件ドメイン名の要部は本件ドメイン名の文字列中、日本を意味するトップレベ ルドメインである「.JP」を除いた「smartsleep」であるところ、こ れと本件商標とは外観・称呼・観念において同一または混同を引き起こすほど類似 していることは明らかである。 (2)登録者が、当該ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していないこと 本件では、①登録者の氏名は本件ドメイン名と異なり、②登録者は本件ドメイン名 と一致する登録商標を保有しておらず(甲9)、③本件ドメイン名につき申立人が登録 者に対してライセンスした事実はない(後述のとおり、登録者は申立人の公式サイト を装って、訪問者をオンラインカジノサイトに誘引しようとしているが、そのような 行為を行うため、本件ドメイン名につき申立人が登録者に対して許諾するはずがな い。)。 (3)登録者の当該ドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること 登録者は本件ドメイン名を甲10の1ないし5のような態様で使用している。 甲10の1と申立人が本件ドメイン名を使用していた当時表示していたウェブペー ジのアーカイブ(甲8)を対比すると明らかなように、甲10は申立人が権利を有す る画像を流用するなどして、申立人が販売するマットレス「スマートスリープ」(甲 3ないし甲5参照)の公式サイトを装っている。 その一方で、甲10の1の「最近の投稿」欄には「ぐっすり快眠のカギとなるベラ ジョンカジノ―VeraJohn」との表示があり、また、「製品紹介」のページ(甲 10の5)では、「ぐっすり快眠のカギとなるベラジョンカジノ-VeraJohn」 とのタイトルの下、当該ページ下部には、「寝る直前にプレイすると睡眠の質を下げて しまいます。ベラジョンカジノレビューはこの詳細記事からご覧ください。」との記載 がされている。 そして、上記記載中、「この詳細記事」はハイパーリンクになっており、該当箇所を クリックすると、オンラインカジノサイトであるベラジョンカジノについて紹介する ホームページに遷移する(甲12)。 以上の事実からすると、登録者は、我が国において周知な企業である申立人の公式 サイトを装い、申立人が販売する商品「スマートスリープ」を検索した者に対し、申 立人の公式サイトと誤信させて本件ドメイン名に係るサイトにアクセスさせ、その上 で前述のハイパーリンクをクリックさせて甲12あるいは甲12からさらにベラジョ ンカジノのサイトに誘引することによりアフィリエイト収入等の商業上の利得を得る 目的で、本件ドメイン名を使用しているといえる。 (4)結論 以上のように、方針第4条aの各要件をすべて満たしている。 従って、申立人は、ドメイン名登録の申立人への移転を請求する。 b 登録者 登録者によって答弁書は提出されなかった。 5 争点および事実認定 (1)本パネルに権限のある判断の基礎資料 規則第15条(a)は、パネルが紛争を裁定する際に使用することになっている原則につい てパネルに次のように指示する。「パネルは、提出された陳述・書類及び審問の結果に基 づき、処理方針、本規則及び適用されうる関係法規の規定・原則、ならびに条理に従って、 裁定を下さなければならない。」 また、規則第5条(f)は、「登録者が答弁書を提出しないときには、例外的な事情がない 限り、パネルは申立書に基づいて裁定を下すものとする」とされ、かつ、本パネルは上記 申立人の主張及び提出証拠により、十分な心証が得られると判断する。 (2)移転裁定の実体要件と立証責任 方針第4条aは、申立人が次の事項の各々を証明しなければならないことを指図して いる。 (1) 登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示 と同一または混同を引き起こすほど類似していること(第1要件) (2) 登録者が、当該ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していないこと (第2要件) (3) 登録者の当該ドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること(第3 要件) (3)第1要件 ア 登録者の本件ドメイン名 本センターが後記手続で行ったドメイン名登録照会に対する通知により、登録者 に本件ドメイン名が割当てられている事実を認める。 イ 申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示 甲第6号証の1乃至甲第7号証の2より、申立人は、上段に「SMART SL EEP」下段に「スマートスリープ」を2段表記してなる商標(以下「本件商標」 という)の各指定商品に係る商標権(商標登録第5313408号及び53148 84号。以下「本件商標権」と総称する)を有する。 なお、申立人は、過去には本件ドメイン名と同一の構成であるjpドメイン名を 保有していたと主張し(2013年7月22日当時のarchive.orgの運用するWayback Machineの収集したホームページ記録である甲8より、これを認めることができる)、 また、「smart sleep」との語句を含む商品名、商標の使用する取扱商品が存在する ことを現行「https://intime.paramount.co.jp/item/」内のサイトの表記をもって 立証しているが(甲3〜5)、以上の事実からだけで同表記について申立人が正当な 利益を有する商標その他の表示を別に有すると認定できないし、また、本件商標権 から独立した表示を認定する必要もないことから、判断の対象としない。 ウ 登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示と 同一または混同を引き起こすほど類似していること (ア)基準 第1要件における同一または混同を引きおこすほど類似していることの判断手法 について、本パネルは、ドメイン名がサイバー世界での標識であり、RFC等の規程に 従い運用される標識である以上、申立人商標とドメイン名の表示それ自体を端的に 見比べ、ドメイン名の表示の構成に申立人の「商標その他表示」が含まれるか、ま たはその特徴的部分が含まれているか、ドメイン名のその余の構成に特徴的部分が 含まれて両者を区別するこが可能であるか否かをもって、同一または誤認を惹起す るだけの類似性があるかを客観的に定めることを本則として判断する。 ”WIPO Overview 3.0” 1.7において、誤認を惹起するほど類似するか否かについて は、ドメイン名と関連する商標のテキスト部分との対比観察によることが示されて おり、検索エンジンのアルゴリズムに則した認識可能性を肯定しているように、英 数文字により構成されるドメイン名がこれらを包含するか否かを基準とするのが適 切である。 また、ドメインが人の手により入力、認識されるものである以上、音声、翻訳等 の対比も肯定されており(”WIPO Overview 3.0” 1.7及び1.14)、以上の考え方は、 外観、称呼、観念の各要素の対比と総合判断により客観的に類否判断を示す多くの 裁決例に採用されてきた考え方と共通である。 また、対比の対象となるドメイン名は、RFC等により、当然のことながら図柄も利 用できなければ、テキスト内でスペースの使用ができない等の制約があるため、申 立人の「商標その他表示」を構成するテキスト部分での対比が中心となることも明 らかである(フォント等のデザイン化や図形との一体性には商標法上の判断ほど重 きはおかれず、テキスト部分の対比が中心となる)。 したがって、本パネルは、本件ドメイン名と前記申立人が正当な利益を有する各 「商標その他表示」との対比を行うにあたって、本件ドメイン名の中に申立人の 「商標その他表示」(またはその特徴部分)がテキストの構成要素として含まれるか、 その余の検討事項があるか否かにつき、両者の外観、称呼、観念の観点から客観的 に検討して、両者が実質同一であるか、又は誤認を引きおこすだけの類似性がある かの判断を行うものである。 (イ)本件商標について 本件商標は、横一連で同一文字の英文表記の「SMART SLEEP」を上段に、横一連で 同一文字の和文表記の「スマートスリープ」を下段に配置してなる二段併記商標で あり、半角文字、全角文字の違いがあるとはいえ、略同一の大きさの文字体であり、 両端が揃っている等、それなりの一体性はあるとはいえ、特にデザイン化した配置 となっているものではなく、二段併記商標としては一般的な英文表記及び和文表記 で同一の称呼・観念をもたらす表記を上下に併記しただけの態様となっている。 このため、本件商標を構成する英文表記部分及び和文表記部分のそれぞれを分離 観察することが不自然ではない態様であり、それぞれの称呼、観念も同一であると みなすことができることおから、上段の「SMART SLEEP」の英文表記部分及び下段の 「スマートスリープ」の和文表記部分は、それぞれが単独で本件商標の特徴部分で ある。 本件ドメイン名のトップレベルドメインである「.jp」部分は、IANAを承継した ICANNが定める国別コードトップレベルドメンを特定するラベルであって、対比の対 象ではなく、「SMARTSLEEP」部分だけがドメイン紛争の対比の対象である。 両者を対比すれば、本件商標の特徴部分である「SMART SLEEP」には、語句の間に スペースの空白部分が有る相違はあるが、RFC等の規程においてドメイン名に空白と してのスペース記号をお利用することができないことに鑑みれば、本件ドメイン名 が本件商標の特徴部分を含み、かつ、本件ドメイン名には、その余に何ら追加的要 素の付加がない。 このため、本件商標の上記特徴部分との間では、外観は同一であり、称呼も同一 であり、観念も同一であり、本件ドメイン名は、申立人が本件商標権を有する本件 商標と、混同を引き起こすほど類似しているため、第1要件を充足する。 (ウ)第1要件の結論 以上、本パネルは、本件ドメイン名(SMARTSLEEP.JP)は、申立人が本件商標権を 有する本件商標(SMART SLEEP\スマートスリープ)と誤認を引き起こすほど類似で あると認定し、第1要件を充足すると判断する。 (4)第2要件 第2要件である「登録者が、当該ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有し ていないこと」については、JP-DRP解説(2008年3月)(以下「解説」という)」Ⅲ 3.(3)は、申立人に主張・立証が求められる事項として、以下の各事項を例示している。 (i) 登録者の氏名・法人名とドメイン名の不一致 (ii) ドメイン名と一致する登録者が保有する日本の登録商標の不存在 (iii) 当該ドメイン名に関してのライセンスの不存在 他方、方針第4条c.は、登録者がドメイン名に関係する権利または正当な利益を有 していることの証明として、 (i) 登録者が、当該ドメイン名に係わる紛争に関し、第三者または紛争処理機関から 通知を受ける前に、商品またはサービスの提供を正当な目的をもって行うために、当 該ドメイン名またはこれに対応する名称を使用していたとき、または明らかにその使 用の準備をしていたとき (ii) 登録者が、商標その他表示の登録等をしているか否かにかかわらず、当該ドメイ ン名の名称で一般に認識されていたとき (iii) 登録者が、申立人の商標その他表示を利用して消費者の誤認を惹き起こすこと により商業上の利得を得る意図、または、申立人の商標その他表示の価値を毀損する 意図を有することなく、当該ドメイン名を非商業的目的に使用し、または公正に使用 しているとき を例示としてあげている。 本パネルは、証拠の優越の準則に基づくUDRPの規定に沿った方針第4条a.(ii)と同 条c.との関係は、相互に主張・立証活動が行われることを念頭におくものであり、各 考慮事項は、総合考慮事情を意味するものと理解する。 また、第2要件の認定にあたって検討を要する登録者側の事情に係る方針第4条 c.(iii)の定めは、第3要件の登録時又は使用時の不正の目的を認定する典型例である 登録者が申立人の「商標その他表示」にフリーライドしたり、希釈化やターニッシュ メントによりこれを棄損する場合であっても、なお、登録者にドメイン名を使用する 正当な利益を有することを否定できない場合、ミニマル・アプローチの観点からドメ イン名の移転・取消裁定を抑制すべきとの考えにたつものと理解されることから、第1 要件の充足と第3要件の充足を肯定した後に検討されるべき事案もあると理解するが、 多くの裁定例の事案と同様、順序どおり検討することが本件では可能と考える。 したがって、本パネルは、申立人が最終の立証責任を負う「登録者が本件ドメイン 名の関係する権利または正当な利益を有してないこと」との認定にあたって検討した 事項を以下に示す。 まず、登録者である蓮青海は自然人であり、本件ドメイン名と一致しない(解説Ⅲ 3.(3)(i))。 甲第9号証に確認できるとおり、登録者が本件ドメイン名と一致する商標を保有し ていない(解説Ⅲ3.(3)(ii))。 申立人は、登録者が申立人に在籍したことも、ライセンスを付与したこともないと 主張しており、答弁書の提出がない状況においては、これを真実と認めることが可能 である(解説Ⅲ3.(3)(iii))。 解説Ⅲ3.(2)によれば、以上の各事実をもって、申立人の立証が終了したとし、その 後の立証責任が登録者に移行するとされているところでもある。 他方、登録者は、2020年4月1日に本件ドメイン名を登録しており、本申立て以前 より本件ドメイン名を使用したウェブサイトを開設していたとは認められるものの、 甲第10号証の1乃至5に示される登録者によるウェブサイトは、甲第3号証乃至5 号証の申立人のウェブサイト、及び甲第11号証の申立人の社内報の掲載内容をその ままウェブサイトの構成に採用する内容であり、かつ、甲第10号証の1乃至5に設 けられたリンクから甲第12号証の「ベラジョンカジノ」等の全く異なるサイトへの 誘引が図る内容である。 このようなウェブサイトの開設については、本申立時より前から正当にURLの使用を していたものではないことも、その準備をしていたものでないことは明らかである (方針第4条c.(i))。 前記登録者の氏名からして、登録者が本件ドメイン名の表記をもって何らかの営業 活動を行っていないことは明らかである(方針第4条c.(ii))。 登録者の本件ドメイン名の前記使用態様からすれば、単なるドメイン名を保有する 態様(passive holding)を越え、申立人のウェブサイトへの遷移をするようにこれを 利用してきており、非商業的目的に使用していないことも、または公正に使用してい ないことも明らかである(方針第4条c.(iii))。 以上、本パネルは、登録者が本件ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有 してないことを認定し、第2要件を充足するものと判断する。 (5)第3要件 第3要件は、「登録者の当該ドメイン名が、不正の目的で登録または使用されている こと」であり、方針第4条b.は、以下の事情がある場合は、ドメイン名の登録または 使用は、不正の目的であると認めなければならないとされている。 (i) 登録者が、申立人または申立人の競業者に対して、当該ドメイン名に直接かかっ た金額(書面で確認できる金額)を超える対価を得るために、当該ドメイン名を販 売、貸与または移転することを主たる目的として、当該ドメイン名を登録または取 得しているとき (ii) 申立人が権利を有する商標その他表示をドメイン名として使用できないように妨 害するために、登録者が当該ドメイン名を登録し、当該登録者がそのような妨害行 為を複数回行っているとき (iii) 登録者が、競業者の事業を混乱させることを主たる目的として、当該ドメイン 名を登録しているとき (iv) 登録者が、商業上の利得を得る目的で、そのウェブサイトもしくはその他のオン ラインロケーション、またはそれらに登場する商品及びサービスの出所、スポンサ ーシップ、取引提携関係、推奨関係などについて誤認混同を生ぜしめることを意図 して、インターネット上のユーザーを、そのウェブサイトまたはその他のオンライ ンロケーションに誘引するために、当該ドメイン名を使用しているとき 上記のとおり、本件ドメイン名は、登録者が甲第12号証に示される「ベラジョン カジノ」等のウェブサイトへの遷移構成を有するウェブサイトに使用されているもの であり、かつ、同ウェブサイトは、申立人が開設してきたウェブサイト及び社内報の 構成をそのまま利用する内容であって、方針4条b. (iv) の「登録者が、商業上の利 得を得る目的で、そのウェブサイトもしくはその他のオンラインロケーション、また はそれらに登場する商品及びサービスの出所、スポンサーシップ、取引提携関係、推 奨関係などについて誤認混同を生ぜしめることを意図して、インターネット上のユー ザーを、そのウェブサイトまたはその他のオンラインロケーションに誘引するために、 当該ドメイン名を使用しているとき」に該当することが明らかである。 さらに、本事案にあっては、前記のとおり第2要件に係る登録者に権利又は正当な利 益の不存在が明白であり(”WIPO Overview 3.0” 3.2.1)、当該事情は、UDRPと異なり、 登録時のみならず、使用時の不正の目的を第3要件の認定対象とする方針第4条 a.(iii)に基づく認定にも沿うものである。 以上、本パネルは、本件ドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていると 認定し、第3要件を充足するものと判断する。 (6)結論 以上の認定事実に照らして、本パネルは、登録者によって登録された本件ドメイン名 「SMARTSLEEP.JP」が申立人の商標その他表示と同一又は混同を引き起こすほど類似し、 登録者が本件ドメイン名に関係する正当な利益を有しておらず、本件ドメイン名が不正の 目的で登録又は使用されているものと判断する。 よって、方針第4条iに従って、ドメイン名「SMARTSLEEP.JP」の登録を申立人に移転 するものとし、主文のとおり裁定する。 2022年4月22日 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル 単独パネリスト 小 池 眞 一 別記 手続の経緯 (1)申立書の受領 日本知的財産仲裁センター(以下「センター」という。)は、2022年2月8日に 申立書(添付する関係書類を含む。)を申立人から電子的送信により受領した。 (2)申立手数料の受領 センターは、2022年2月8日に申立人より申立手数料を受領した。 (3)ドメイン名及び登録者の確認 センターは、2022年2月8日にJPRSに登録情報を照会し、2022年2月8 日にJPRSから申立書に記載された登録者が対象ドメイン名の登録者であることを 確認する回答並びにJPRSに登録されている登録者の電子メールアドレス及び住所 等を受領した。 (4)適式性 センターは、2022年2月16日に補正(申立書の記載事項の修正等)が必要と判 断してその旨を申立人に通知し、2022年2月18日に補正書類を受領し、202 2年2月25日に申立書が処理方針と手続規則に照らし適合していることを確認した。 (5)手続開始 センターは、2022年2月28日に申立人、JPNIC及びJPRSに対し電子的 送信により、手続開始を通知した。センターは、2022年2月28日に登録者に対 し郵送及び電子メールにより、開始通知を送付した。開始通知により、登録者に対し、 手続開始日(2022年2月28日)、答弁書提出期限(2022年3月29日)並 びに書面の受領及び提出のための手段について通知した。但し登録者宛電子メール送 信分については一部が送信不能であり、登録者の公開連絡窓口住所に送付した通知は 「あて所に尋ねあたりありません」として返送された。 (6)答弁書の提出 センターは、提出期限日までに答弁書を受領しなかったので、2022年3月30日 に「答弁書の提出はなかったものと見做す」旨の答弁書不提出通知書を、電子的送信 により申立人及び登録者に送付した。 (7)パネルの指名及び裁定予定日の通知 申立人は、1名のパネルによって審理・裁定されることを選択し、センターは、20 22年4月5日に弁護士 小池 眞一を単独パネリストとして指名し、一件書類を電 子的送信によりパネルに送付した。センターは、2022年4月5日に申立人、登 録者、JPNIC及びJPRSに対し電子的送信により、指名したパネリスト及び裁定 予定日(2022年4月25日)を通知した。パネルは、2022年4月8日に公正 性・独立性・中立性に関する言明書をセンターに提出した。 (8)パネルによる審理・裁定 パネルは、2022年4月22日に審理を終了し、裁定を行った。