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ニュースレターNo.35/2007年3月発行

第53回RIPEミーティング

2006年10月2日(月)から6日(金)まで、オランダ・アムステルダムにてRIPE53ミーティングが開催されました。当地はオランダの画家レンブラントの生誕400周年を祝し、さまざまな団体や美術館が記念イベントを開催していました。私自身は今回イベントを見学する時間が取れず少々残念です。

以下に今回の会議の主要トピックを、アドレスポリシーを中心にご紹介いたします。

全体報告

アドレスポリシーWG

今回のアドレスポリシーWGでは、以下のポリシー提案が議論されました。

(1)IPv6における割り当てポリシーの変更について※1

エンドサイトへの割り当てサイズを/48に限定せずLIRの判断に委ねることと、追加割り振りの利用率計算を/48ベースではなく/56ベースで行うことという二つの要素からなる提案で、前回のAPNICミーティングで提案されたものと同じもの※2です。

会議では、本提案をベースに具体的なポリシー文書を作成する方向でコンセンサスとなり、今後ドラフトされた文書をもとにさらに議論が進められることとなりました。

(2)IPv6におけるPI(Provider Independent)アドレス割り当てについて※3

PIアドレスの割り当てが必要であることを示すことができるエンドサイトに対しては、RIPE NCCと契約書を締結することを条件に/32のPIアドレスの割り当てを行うことができるという提案です。

会議では、割り当てサイズが/32では大きすぎるのではないかという懸念が示され、メーリングリスト(ML)で継続議論することとなっています。

写真:Plenaryの模様
Plenaryの模様

(3)IPv6における割り振りポリシーの変更について※4

初期割り振りの要件の1つである「2年間に少なくとも200の/48の割り当てを行う計画がある」という条件および、「エンドサイトへ/48を超える割り当てを行う際には、RIR/NIRへ割り当て審議申請を提出しなければならない」という条件を両方撤廃しようとする提案です。

上記提案のうち前者の要素については、ARIN、LACNIC、AfriNICにおいては既に撤廃されており、提案理由の中でもそのことが述べられていますが、今回の会議においても結論は出ず、引き続きMLで議論することとなりました。

(4)データベースへ登録する連絡先e-mailアドレスについて※5

RIPE NCCのWHOISデータベースに登録するe-mailアドレスには、常に有効なものが記載されていなければならないとする提案です。

ある特定のIPアドレスに関して問い合わせを行った際、当該IPアドレスに関する連絡先としてWHOISデータベースに登録されていたe-mailアドレスが、機能していなかったことに端を発する提案のようですが、既にRIPE NCCの文書として「正しい情報を登録すること」がLIRには義務づけられており、そもそも本提案が問題の解決となるのかを疑問視する発言もありました。

結局この提案も、引き続きMLで議論されることとなりました。

(5)IPv4におけるPIアドレスの最小割り当てプリフィクスサイズについて※6

IPv4において、PIアドレスの最小割り当てプリフィクスサイズを/24に規定する提案です。具体的には例えば384個のIPアドレスを割り当てる必要がある際は、/24と/25を割り当てるのではなく、/23(/24を2個)を割り当てるべきとする提案です。

現在RIPE NCCにおけるアドレスポリシーでは、PIの割り当てに関して最小プリフィクスサイズを定めていません※7。ルーティングの観点から、/24より小さいプリフィクスはフィルタされる可能性が高いということが、本提案の背景にあることが説明されました。

これも会議での結論は出ず、MLで継続議論されることとなっています。

(6)IPv4における最大割り振り量について※8

現在RIPE NCCでは、LIRへの割り振り量を文書上で規定していませんが、実情としては「最大2年間の需要に対応できるだけのアドレス量を割り振る」運用がなされています。これを「最大1年間の需要に対応できるだけのアドレス量」に変更し、文書化しようという提案がRIPE NCC側からなされました。

当該期間は、APNICでは1年間※9、ARINでは3~6か月、LACNICでは3か月とされており、RIPE NCCが2年分を割り振るとしているのは長すぎるのではないかということが提案の背景にあります。昨今各地で取り上げられているIPv4アドレスの枯渇に関する話題も関係すると思われます。

会議では、本提案に賛同する意見が複数表明されました。今後MLでさらに議論した後、ポリシー文書のドラフトがなされる見込みです。

(7)IPv4の最小アサインメントウィンドウ※10について

現在RIPE NCCにおける最小アサインメントウィンドウは0※11ですが、これを/21へ引き上げようという提案です。RIPE NCCでは自社インフラへの割り当てについてもアサインメントウィンドウを適用していますが、これを大幅に緩和するものです。

提案の背景としては、CIDRが普及してから相当の時間が経過し、また、トレーニングの成果としてLIR側も割り当てポリシーに慣熟してきたことが挙げられ、RIR側、LIR側双方にとってメリットがあるということが提案者であるRIPE NCCの審議担当者から説明されました。あわせて、審議の比重を割り当て時から、追加割り振り時に移す狙いも説明されました。

これに対し、LIR側からは「確かに双方にとってメリットはあるが、アドレスの無駄使いにつながる懸念は払拭できない」という意見が出され、コンセンサスには至らず、MLで継続議論されることになりました。

本提案は上記(6)の提案とセットで出された感がありますが、厳格化方向の(6)には強い反対意見は出なかった一方で、緩和方向の(7)に対し反対が表明されたのは興味深い動きでした。

その他のトピック - PIアドレス割り当て統計

プレナリーセッションにおいて、各RIRにおけるPIアドレス割り当ての統計が紹介※12されていましたので報告します。

これによると、2005年から2006年におけるPA(Provider Aggregatable)アドレス割り振りプリフィクス数と、PIアドレス割り当てプリフィクス数の比は、APNICが90:10、ARINが77:23であるのに対し、RIPE NCCではこの比が逆転し、41:59でPIのプリフィクス数の方が多いという結果になっています。

また、RIPE NCCでは2003年を境にPIプリフィクス数がPAのそれを逆転したことも示されています。これらの背景として、RIPE NCCではPIアドレスの割り当てを受けるのにマルチホームする必要が必ずしも無いこと、また、エンドユーザーとRIPE NCCが直接の契約関係を持つ必要がなく、接続LIRを通じた簡易な申請ができることなどがあると思われます。

しかしこの反面、エンドユーザーとRIPE NCCとの契約関係がないため、PIアドレスの割り当て先を正確に把握することが難しいという大きな問題がありますので、今後議論の対象になることは避けられないものと思われます。

おわりに

近年RIPE NCCでは大きなポリシー変更提案がなかったのですが、ここへ来てIPv4アドレス枯渇の進行、RIRにおけるアドレス認証局の実験開始などの動きと絡んだ提案、情報提供がされるようになってきました。今回最後にご紹介したPIアドレス割り当てに関する問題もその一環としての問題提起と捉えることもできるのではないでしょうか。

成熟した感のあるIPv4アドレスポリシーにも、今後変更の動きが徐々に出てくる可能性があります。IPv6アドレスポリシーについても同様です。各RIRでの議論を注視しつつ、今後も情報提供に努めたいと思います。

(JPNIC IP事業部 穂坂俊之)


※1 Proposal to Amend the IPv6 Assignment and Utilisation Requirement Policy
http://www.ripe.net/ripe/policies/proposals/2005-08.html
※2 APNICでの提案の概要とその結果については、以下のURLを参照ください。
http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2006/vol392.html
※3 Provider Independent(PI)IPv6 Assignments for End User Organisations
http://www.ripe.net/ripe/policies/proposals/2006-01.html
※4 IPv6 Address Allocation and Assignment Policy
http://www.ripe.net/ripe/policies/proposals/2006-02.html
※5 Contact e-mail Address Requirements
http://www.ripe.net/ripe/policies/proposals/2006-04.html
※6 PI Assignment Size
http://www.ripe.net/ripe/policies/proposals/2006-05.html
※7 APNICでも最小サイズは定められていません。
http://www.apnic.net/docs/policy/add-manage-policy.html#11.1
※8 IPv4 Maximum Allocation Period
http://www.ripe.net/ripe/policies/proposals/2006-06.html
※9 JPNICでも1年間の需要に見合う量を割り振ると規定しています。
  JPNICにおけるアドレス空間管理ポリシー(IPv4)
  9.4 追加割り振りの基準
http://www.nic.ad.jp/doc/ip-addr-ipv4policy.html
※10 アサインメントウィンドウ
LIR(JPNICにおいてはIPアドレス管理指定事業者)が、RIR/NIRの審議を受けることなく自主的に割り当てることができる最大のアドレス空間です。
※11 Minimum IPv4 Assignment Window
http://www.ripe.net/ripe/policies/proposals/2006-07.html
※12 PI Statistics Update
http://www.ripe.net/ripe/meetings/ripe-53/presentations/rir_stats.pdf

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