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ニュースレターNo.41/2009年3月発行

第23回ICANN報告会レポート

2008年12月11日(木)、虎ノ門パストラルホテル(東京都港区)にて、JPNICと財団法人インターネット協会(IAjapan)の共催で、第23回ICANN報告会を開催しました。以下に、報告会の内容をご紹介します。

ICANNカイロ会議概要報告~新gTLDに関する議論を中心に~

JPNICの高山由香利より、ICANNカイロ会議(2008年11月3日~7日)の概要を報告しました。

今回の会議では、新gTLDの導入とIDN ccTLD Fast Trackに関する、二つの話題が中心となりました。高山からは、このうち前者に関して、まず会議に先立ちICANNから2008年10月23日に公開された、新gTLD導入のドラフト版RFP「Draft Applicant Guidebook(以下、ドラフト版ガイドブック)※1」の内容説明があり、その後、このRFPに対するカイロ会議での実際の意見等も紹介されました。

ドラフト版ガイドブックおよび覚書に対するカイロ会議での反応については、P.34からの「ICANNカイロ会議報告」に詳細がありますので、本稿では割愛します。

今後のスケジュールは、2009年2月半ばに修正を反映したドラフト版ガイドブックが公開され、3月中旬まで意見募集を行った後、5月に最終版ガイドブックが完成し、ICANN理事会の審議を経て5月末に公開されます。公開後の公示期間を4ヶ月と設定した場合2009年9月末に申請受け付けが可能となるとのことです。

写真:JPNIC高山
まずはじめに、JPNICの高山よりカイロ会議の全体概要をご報告いたしました。

IDN ccTLD Fast Trackに関する議論状況

株式会社日本レジストリサービスの堀田博文氏からは、IDN ccTLDの早期導入を実現するためのポリシー策定プロセスである、Fast Trackに関する議論の状況についてご報告いただきました。

2008年6月のパリ会議においてICANN理事会は、IDNC WG※2から提出されたIDN ccTLD FastTrackに関する最終報告書を正式に受領し、それに沿って実行計画を作成することを、ICANN事務局に指示しました。

ICANN事務局は実行計画を作成し、カイロ会議前の2008年10月23日にその中間報告を行い、検討状況を報告しました。続いて11月26日には、七つのmoduleからなる実行計画のドラフトが公開されました。実行計画のドラフトでは、TLD文字列要件や申請・評価プロセス、委任プロセス等はかなり具体化してきました。残存する検討事項としては、

  • ICANNとの契約
  • ICANNへの支払い
  • ccNSOへの参加
  • 他TLDとの同一性/類似性解決方法
  • 同一言語/スクリプトに対して、二つ以上のccTLDから異なるIDテーブルが登録されたとき、起こりうる利用者の混乱への対応
  • 12ヶ月毎のFast Trackプロセスのレビュー実施

が挙げられており、今後さらなる検討が行われることとなります。

パリ会議以降にICANNが行ったアンケートの結果によると、回答があった58の国や地域のうち、日本を含む32の国や地域から、Fast TrackでIDN ccTLDの導入を考えていると返事がありました。インドなど公用語が複数ある国もあるため、実際の申請数はこれより多くなる可能性があるとのことです。

今後のスケジュールについてはパリ会合で提示された通り、2009年第2四半期に受け付けを開始するという案が現在も有効と考えられていますが、新gTLDとの間で、今後調整がなされる可能性もあるそうです。

ビジネスチャンスとしての新gTLD

JPNIC理事の丸山直昌からは「ビジネスチャンスとしての新gTLD」と題して、ICANNにおけるポリシーに関する議論等とは違った視点からの報告がありました。

新gTLDの登録開始を間近に控え、新gTLDを利用してビジネスを行おうとする動きも活発化しつつあるようです。カイロ会議の会場で配布されていたいくつかのパンフレットを例示しながら、gTLDに関する営業活動等の事例が紹介され、それらから受けた印象、見解等が語られました。

パンフレットの中には、セカンドレベルドメイン名の販売促進を目的とするもの、申請予定のあるgTLDの普及活動を目的とするもの、レジストリ事業代行の宣伝を目的とするもの等、さまざまなものがありましたが、特に独自ドメイン名として新gTLDの申請を勧める内容のものが多かったとのことです。

パンフレットからは、あたかも誰でも自分専用のTLDを申請できるような印象を受けたそうです。一方、GNSO最終報告書やドラフト版ガイドブックでは、新gTLDは「レジストリ運用するため」に新設されると書かれており、gTLDには「レジストリ・レジストラモデル※3」が義務化されることからも、一個人や一企業による専有は困難ではないか、と述べられました。

しかし、ドラフト版ガイドブック中には、「community-based gTLD」として、特定のコミュニティのために運用されるgTLDが定義されています。もし「ある会社の社員のため」、あるいは「ある会社の製品ユーザーのため」のTLD の登録が可能とみなされるならば、この「community-based gTLD」が抜け道となって、特定の企業によるTLDの登録が起こりうる可能性を丸山は指摘していました。

TLDの専有については、これまでのところ明示的なポリシー決定はされていないとのことですが、今後の議論により前述の「抜け道」が塞がれるのか、あるいは「独自TLD」の申請が出るのか、その申請が通るのか等、今後の展開に注目したいとして、本報告は締めくくられました。

ICANN政府諮問委員会(GAC)報告

総務省の柳島智氏より、政府諮問委員会(GAC)で議論されている5点の主要議題についてお話しいただきました。

以下が、その5点の内容です。

(1)IDN ccTLDについて
実装計画において配慮すべき事項として、ICANN理事会へ2点の助言を行いました。1点目はIDN ccTLD運営事業者のICANNとの契約について、2点目はコスト負担についてで、共に強制することによりIDN導入の障壁になることが懸念されています。

(2)新gTLDについて
パリ会議においてICANN理事会に助言した、国名や地理的名称の使用について、政府の同意が必要とされる等の配慮がされたことが確認されました。また、ドラフト版ガイドブックについて、GACはccTLDとgTLDの差異が不鮮明になることを懸念していることと、GACはgTLDのドメイン名空間における、国名に関する文字列使用の検討を続けることの2点について、ICANN理事会への助言を行いました。

(3)共同プロジェクト合意(JPA)終了後のICANN組織の在り方について
ICANNが各国において法的地位を確保することに関連して、国とICANNとの契約締結についての懸念や、ICANNの予算規模が大きくなっていることに対する懸念が挙げられたほか、JPA終了後のGACの役割の必要性等について意見がありました。インターネットガバナンスへの政府の関与については、国により幅広い意見があるようですが、日本では民間主導で進んできた歴史をかんがみて、政府はサポート役に徹するという基本的な立場が示されました。

(4)ICANN会議の改革について
年3回行われている会議を2回に減少させることの効果には懐疑的な立場であることや、遠隔地からの参加の促進やワーキンググループなどの会合の改革を進めるべきであること、必要なドキメントが会議の直前でなく余裕をもって、かつ、英語以外の言語でも配布されることへの要望が、ICANN理事会へ伝えられました。

(5)2009年のGACの優先課題について
IDN ccTLD( Fast Trackおよび正式導入)、新gTLD、IPv4からIPv6への移行、DNSの安全・安定的な運用、そしてICANNの改革の五つとすることが確認されました。

また、GACの議長にラトビアのKarklins氏が再選され、副議長にフランスのChapelle氏が再任、エジプトのIsmail氏とスリランカのFernand氏が新たに選出され、2009年3月のメキシコ会議以降に就任予定とのことです。

このほかに、2008年12月5日に行われたIGFインド会合での、IPv4アドレス在庫枯渇に関する議論の状況についても紹介がありました。パネリストの意見は、日本国内で2008年4月に最終会合を終えた「インターネットの円滑なIPv6移行に関する調査研究会」※4での結論とほぼ同じであったことのほか、会場内からは、アドレス移転の仕組みを整備すべきという意見や、途上国へのサポートの必要性についての意見があったことが報告されました。

ICANN At-Large諮問委員会(ALAC)報告

財団法人ハイパーネットワーク社会研究所の会津泉氏より、At-Large諮問委員会(ALAC)の活動報告がありました。

冒頭で、会津氏は今回の会議をもって、任期満了に伴いAt-Large諮問会から去られることが報告されました。

ICANNにとって会員制度は根本問題であり、オープンな会員制度を有することが、ICANN設立時に米国政府が付けた条件の一つでもあります。会津氏は、この会員制度のオープン性を確保するための活動を中心に、ICANNに10年にわたり尽力されてきました。

昨年、RALO(Regional At-Large Organization)が成立し、ICANNでのAt-Largeの認知は高まり十分に浸透しました。また、ALACのポリシー活動への関与も強まっており、カイロ会議でも新gTLD導入、IDN ccTLD、およびその他のポリシー課題について、ユーザーの視点で議論がなされました。

新gTLDについては、185,000ドルという高額な申請料が、途上国や少数言語を使うコミュニティ等からの登録を困難にするのではないかといった意見や、公序良俗と言論の自由との線引きをどうすべきかといった問題が挙げられました。また、IDN ccTLDについては、ユーザーの立場からは、選択・競争が広がるので基本的には歓迎である一方、レジストリの選定は公平・透明、合理的に行われるべきであるという意見があったとのことです。

RALOの成立により、At-Largeは組織として整いましたが、ユーザー代表として、いわば「野党」としての役割を維持できるかという点についての懸念と、財政面やボランティア等の人的貢献を含めた、長期継続の基盤についての懸念もあり、At-Largeの真価が問われるのはこれからだと会津氏は考えられています。

ご報告後、会場からはこれまで長期間にわたる、会津氏のICANNへのご貢献と、また今後のさらなるご活躍への期待を込めて、大きな拍手がありました。

ICANNにとって会員制度は根本問題であり、オープンな会員制度を有することが、ICANN設立時に米国政府が付けた条件の一つでもあります。会津氏は、この会員制度のオープン性を確保するための活動を中心に、ICANNに10年にわたり尽力されてきました。

ICANN報告会の資料と動画は、JPNIC Webサイトにて公開しています。
 http://www.nic.ad.jp/ja/materials/icann-report/index.html

(JPNIC インターネット推進部 佐藤香奈枝)

写真:会津泉氏
会津氏によると、 RALOの成立によってかなり体制の整ってきたAt-Largeではありますが、 真価が問われるのはこれからだとのことです。

※1 New gTLD Program: Draft Applicant Guidebook(Draft RFP)
http://www.icann.org/en/topics/new-gtlds/draft-rfp-24oct08-en.pdf
※2 2 IDNC Working Group
http://ccnso.icann.org/workinggroups/idncwg.htm
※3 JPNIC Web ドメイン名とは- gTLDの登録のしくみ
http://www.nic.ad.jp/ja/dom/registration.html
※4 インターネットの円滑なIPv6移行に関する調査研究会
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/ipv6/

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