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ニュースレターNo.60/2015年7月発行

第92回IETF報告 全体会議報告

第92回IETF Meetingは、2015年3月22日(日)から3月27日(金)の間、米国のダラスにあるフェアモント・ダラスというホテルにて、米グーグル社のホストで開催されました。ソーシャルイベントでは、IETFロゴの焼き印が入ったカウボーイハットを、参加者の頭のサイズに合うように調整して配っており、参加者からは好評だったようです。

IETF Operation and Administration Plenary

3月25日(水)の「IETF Operation and Administration Plenary」では、はじめにウェルカムスピーチが行われ、

  • ホストの米グーグル社の挨拶
  • IETF Chairからの報告
  • IAOC(IETF Administrative Oversight Committee) ChairとIAD(IETF Administrative Director) Chairからの報告
  • IETF Trust Chair、Nomcom Chairからの報告
  • IETF CodeMatchの報告
  • IETF Hackathonの報告
  • 2015 Jonathan B. Postel Service Awardのノミネート期間の紹介
  • 次回第93回IETF Meeting開催地の紹介
  • IAOCオープンマイク
  • IESG(Internet Engineering Steering Group)オープンマイク

という流れで議事が進行しました。

IETF Chairレポート

IETF Chairレポートでは、IETF ChairのJari Arkko氏より、参加者の内訳や新しい取り組みの報告がありました。第92回の現地参加者は、57の国と地域から1,176人の参加となり、前回の1,080人の参加から96人ほど増加しています。また、2014年の同時期に英国ロンドンにて開催された、第89回の参加者数の1,400人弱と比較すると、200名程度参加者が減ったことがわかります。新規参加者は全体の15%弱の172人で、今回も新しい参加者層の取り込みは継続的に進んでいるようです。新規参加者が継続して増える一方で、全体の参加人数がほぼ横ばいになっている状況です。国別の参加者数は、1位米国、2位中国、3位日本、4位ドイツとなっており、参加者全体の約半数を米国、約7割を上位4ヶ国が占める割合となっていました。また、開催国米国の隣国カナダからの参加者数は6位となっていましたが、紹介されたグラフを見る限りでは、日本やドイツとほぼ同じ参加者数であることがわかりました。

また、IETFの会場ネットワークについての新たな試みとして、今回から会場のワイヤレスネットワークを利用するにあたり認証が必要になったことと、会場ネットワークのDNS(meeting.ietf.org)にDNSSECが導入されたと報告がありました。ワイヤレスネットワークについては、会場のほぼすべてのワイヤレスネットワークに接続する場合に認証が必要となり、これまで会場でよく利用されていたSSID「ietf」も対象となっていました。

前号でも報告しましたが※1、IESGが進めている八つのIETFエリア(応用分野(APP)、インターネット分野(INT)、運用管理分野(OPS)、リアルタイム応用・基盤分野(RAI)、ルーティング分野(RTG)、セキュリティ分野(SEC)、トランスポート分野(TSV)、その他分野(GEN))の再編作業については、進捗報告がありました。この再編は2015年の夏頃を完了のめどとしており、現在の決定事項として、応用分野(APP)とリアルタイム応用・基盤分野(RAI)を統合して、応用・リアルタイム分野(ART)とすることが決定されました。これに伴い、現在応用分野(APP)とリアルタイム応用・基盤分野(RAI)に合わせて4名いるエリアディレクターを、一つのエリアにまとめることで3名に減らすと報告がありました。また、エリアの再編が完了するまでは、他のエリアではエリアディレクターの変更は行わないと報告されました。

他の新たな試みとしては、土曜日にIETF開催前のターミナルルームを使用して、第1回となるIETF Hackathonを行ったとの報告がされました。IETFでは全般的に、提案内容が実装可能であるものとみなして議論がされていますが、まれに実装が考慮されていない提案もあり、それに気づいた参加者から指摘を受けるというような場面があります。しかし、インターネットの発展形態とIETFが行っている標準化プロセスは、 David Clark氏が“We reject kings, presidents and voting. We believe in rough consensus and running code”と端的に言い表した通り、IETFの肝はrunning codeなのです。そのため、今回のHackathonのように、running codeの重要性をイベントとしてあらためてきちんと示していこうとする姿勢は、大事であると感じました。このイベントは継続して行う予定で、第2回IETF Hackathonは、第93回IETFの直前の2015年7月18日(土)から19日(日)の2日にかけて行われるそうで、現在、準備や参加者を募集していると呼びかけがありました。

IAOC・IAD Chairレポート

IAOC・IAD Chairレポートでは、IAOC ChairのChris Griffiths氏およびIADのRay Pelletier氏より報告がありました。

今回の会議の収支決算速報では、参加者人数は予測の1,120人より多く、参加費およびスポンサー費の合計は、130万ドルになったとの報告がありました。一方で、ハワイで行われた第91回の収支決算最終報告では、参加者人数は予測を132人下回り、参加費は収入見通しを6万8千ドル下回ったとの報告がありました。また、ハワイ会合のスポンサー費は予算案より5万7千ドル下回り、そのためBits-N-Bitesがキャンセルされたとの報告がありました。なお、ハワイ会合の純利益は、56万5千ドルとなったとのことでした。今回は、IETFの2014年会計報告もありました。2014年は430万ドルの収入に対して580万ドルの支出があり、別途ISOCから160万ドルの資金援助があったとのことです。この他に、米シスコ・システムズ社から82万6千ドル分の機材やソフトウェアの提供等があったとの報告があり、参加者から拍手が起こりました。

また、今回は第91回の段階では決まっていなかった、第93回IETF MeetingのホストがCZ.NICとBrocade社に決まり、会場からは大きな拍手が起こりました。一方、IETF史上初となる、南米はアルゼンチン・ブエノスアイレスにて開催される第95回IETF Meetingのホストは、まだ決まっていないとのことでした。

最後に、IADのRay Pelletier氏より、謝辞として第92回IETF Meetingのスポンサーとなった各企業やNOCメンバー、Hackathonを開催したメンバーが紹介されました。ホストおよびWelcome Receptionのスポンサーをした米グーグル社の他に、回線提供をした米タイム・ワーナー・ケーブル社、そして、今回のBits-N-Bitesをスポンサーした各社が紹介されました。また、NOCメンバーの紹介では、日本のWIDE Projectからの参加者として、浅井大史氏が紹介されました。

IETF CodeMatch

IETF CodeMatch(https://codematch.ietf.org/)とは、IETFで標準化されるプロトコルを実装するコードを、学生や研究者、民間企業のエンジニア等、さまざまな人々の間で共有するためのマーケットプレイスを指し、また、それを作ることを目的として行われている活動です。今回は、その活動の紹介や、モックアップサイト(http://codematch.inf.ufrgs.br/)の紹介等が行われました。

2015 Jonathan B. Postel Service Award

次回第93回IETF Meetingでは、2015 Jonathan B. Postel Service Awardの発表があるとのことで、はじめにインターネットの発展に貢献したJonathan B. Postelの功績についての紹介と、過去の受賞者の紹介がありました。また、2015年3月25日(水)から5月15日(金)の期間で、ノミネートを受け付けているとの報告がありました。

第93回IETF

次回のIETF Meetingは、2015年7月19日(日)から7月24日(金)にかけて、チェコのプラハにて開催されます。CZ.NICのCEOであるOndrej Filip氏より、開催地となるプラハの魅力について説明がありました。プラハの美しい街並みや文化の紹介があり、早めに現地入りして観光を楽しんでみてはいかがでしょうかと話されていました。また、チェコと言えばビールの個人消費量が世界一の国でもあり、取りすぎたビールのカロリーは、その美しい街を散策することで消費してくださいとのアドバイスもありました。

Technical Plenary

3月23日(月)の「Technical Plenary」では、IAB(Internet Architecture Board) Chair、RSE(RFC Series Editor)・RSOC(RFC Series Oversight Committee) Chairからの報告、Technical Topicが一つ、IABの主な活動の報告が二つ、IABオープンマイクという流れで議事進行がされました。

IAB Chairレポート

はじめにIAB ChairのRuss Housley氏より、IAB memberの入れ替えについて発表がありました。Joel Halpern氏、Eliot Lear氏、Xing Li氏の任期が終了し、新たにRalph Droms氏、Robert Sparks氏、Suzanne Woolf氏が加わりました。Jari Arkko氏、Russ Housley氏、Andrew Sullivan氏、Dave Thaler氏は継続となります。また、IAB Chairが、Housley氏からSullivan氏に交代すると発表がありました。

それから、IAB Workshopとして、2015年1月26日(月)から27日(火)の期間に、スイスのチューリッヒでSEMI(IAB Workshop on Stack Evolution in a Middlebox Internet)を開催したと報告がありました。また、2015年6月19日(金)にドイツのベルリンにて、CARIS(IAB/ISOC Workshop on Coordinating Attack Response at Internet Scale)を開催すると発表がありました。

Technical Topic

Technical Topicでは、Hannes Tschofenig氏とDave Thaler氏から、“Smart Object Architecture”と題した発表がありました。近年増加している、インターネットとの連携を想定したセンサーやスマート家電等、また、それを制御する携帯端末やネットワークについて具体的な製品例等を交えながら、現状の関連技術についてまとめた発表がありました。

IABの主な活動報告

IABの主な活動報告としては、前述したSEMIの活動報告と、Unicode 7.0の問題点について報告がありました。Unicode 7.0から新たに追加された、ARABIC LETTER BEH WITH HAMZA ABOVE(U+08A1)という文字は、同一の字形を表すARABIC LETTER BEH(U+0628)と、ARABIC HAMZA ABOVE(U+0654)を用いた結合文字列(combining character sequence)と等価の関係になっておらず、利用者の混乱を生む可能性を指摘されたと報告がありました。
IETFのいくつかのプロトコルでは、Identifierとして用いる文字列は比較一致の機会を増やすため、文字列の比較を行う際に前処理として、文字列に対して正規化処理を行います。これにより、異なる文字コードによる入力があった場合でも、等価の関係にある文字は同一の文字として一致させることが可能となるのですが、このARABIC LETTER BEH WITH HAMZA ABOVE(U+08A1)はそのような等価の関係を示す情報を持たないため、Identifierとして使用する場合、問題が生じると報告がありました。これに対しIETFでは、LUCID(Locale-free UniCode Identifiers) BoFを開催し、Identifierとして使用するUnicodeテーブルに対して、IETF独自のパッチを当てるか検討を行っていくと報告がされました。

写真: The Fairmont Dallas(ホテルの公式Webサイトより引用)
● 会場のThe Fairmont Dallas(ホテルの公式Webサイトより引用)

(青山学院大学 情報メディアセンター 根本貴弘)


※1 第91回IETF報告 [第1弾] 全体会議報告
https://www.nic.ad.jp/ja/newsletter/No59/0650.html

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