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ニュースレターNo.64/2016年11月発行

APrIGF2016レポート

2016年8月26(金)〜29日(月)に、台湾・台北にてアジア太平洋地域におけるインターネットガバナンスフォーラム会議である、APrIGF2016が開催されました。本稿では、このAPrIGF2016の様子をご紹介します。

はじめに

APrIGFの正式名称は「Asia Pacific Regional Internet Governance Forum」というもので、本会議はその名の通り、インターネットガバナンスについて、アジア太平洋地域の視点から議論を行う会議です。「IGF」と言うと、2005年の世界情報社会サミット(WSIS)チュニスアジェンダを受けて開催された2006年のアテネ会合以来続いている国連管轄のフォーラムが有名ですが、この台北で開催されたIGFは「リージョナルIGF」と呼ばれるものです。

グローバルIGFと同じように毎年ホスト国が異なりますが、リージョナルIGFは国連が主催するグローバルIGFと異なり、地域のコミュニティから草の根的に発展したものです。APrIGFは2010年香港で開催されたのが最初でした。

全体概要

今回のAPrIGFは台湾情報基盤振興協会(NII)が主催し、そのCEOのKuo Wei Wu氏はAPNIC ECメンバー、ASO選出のICANN理事を務める等、APNICやJPNICとも親交があり、番号資源コミュニティに深く関わってきた方です。

政府関係者やローカル企業の招待などにかなり力を入れていたこともあり、今年のAPrIGFは過去最大の参加者数を記録し、事前の参加登録者数は500人を超え、会期中は現地の参加者は300人以上で、遠隔参加は380人にも上ったとのことです。

地元台湾からも政府関係者、学生、企業の方の参加が見受けられ、日本からも開催地が近いためか企業、大学、総務省から合計10数名の方が参加・登壇されていました。

プログラムは人権とプライバシー、セキュリティ、資源管理など満遍ない内容構成のもと、3日間にわたって1日3コマ、おおむね常時3トラックがパラレルで走り、合計約30セッションが開催されました。

プログラム・議論の様子

グローバルIGFでは、特にメインセッションにおいては比較的概念的な議論が中心であることと比較すると、APrIGFは特定のテーマに対して、地域内各国の事例紹介を踏まえた具体的・現実的な事情に基づいた議論が充実していました。プログラム一覧からは、多岐にわたるトピックスが議論されたことが見てとれます。

プログラム一覧
https://2016.aprigf.asia/program/agenda/

なお、オープニングプレナリーでは、2016年5月に逝去された奈良先端科学技術大学院大学の山口英先生への追悼の時間が設けられ、村井純先生からのビデオメッセージに続き、会場からも山口先生と親交のあったみなさんからのメッセージが寄せられました。

写真:会場の様子
● オープニングプレナリーでは故山口英氏への追悼の時間が設けられました

今回の会合では、筆者は「アジア太平洋地域におけるIPv6」というセッションを企画し、モデレーションを行いました。

IPv6については2015年、2016年とグローバルIGFでもIPv6 Best Practices Forumと呼ばれる議論の場が設けられ、最適な実例を文書化する取り組みがあるため、アジア太平洋地域のIGFでも同じ議論を行い、グローバルな場に地域の状況をインプットする必要性を感じたためです。同じアジア太平洋地域における会議ですが、技術面でのフォーカスが強いAPNIC会議では共有されない、政府・企業・国全体としての取り組みについて意見交換を行い、スリランカ、アフガニスタン等、あまり聞くことのできない個別事情を聞くことができました。あわせて、グローバルIGFにおけるBest Practices Forumの動向を共有したことにより、アジア太平洋地域とグローバルな動向の連携にもつながったように思います。

その他にも、

  • 通信を仲介する事業者の政府に対する情報提供に関する、ユーザーのプライバシー保護の責任を取り巻く課題に対する香港、中国、韓国等の事例
  • TPPにおいて電子商取引章および著作権保護の切り口から、TPP署名国、署名していない国それぞれからの登壇者が見解を紹介する

など、一般メディアで取り上げられているテーマも取り上げられていました。これらに日本からのインプットはありませんでしたが、日本は地域の中でどういう立場にあるのか、議論に参加してもよいテーマだったかもしれません。

グローバルとの連携強化

グローバルIGFにおいては、国・地域別IGF(NRI)との連携強化は特に今年は重視されており、そういった動きも踏まえて、APrIGF事務局の提案により急遽、「IGF Intersessional Work / National & Regional Initiatives」が開催されました。

過去にグローバルIGFのMAG(プログラムを検討するグループ)のチェアを務めたMarkus Kumar氏と、現MAGメンバーとして筆者が動向を紹介しました。参加者との議論では、グローバルなIGFとの連携強化に加え、それぞれの国ごとの課題や事情を踏まえた議論が活発に行われ、今後も定期的に実施してほしいとの要望が寄せられました。

日本としてもグローバルIGFとの連携強化に取り組んでいきたいところです。

APrIGF2016の振り返り

「アジア太平洋地域」と言うと、多くの議論の場ではオーストラリア、ニュージランドの参加者が発言の中心となることが多いのですが、今回のAPrIGFでは、地域内の参加者がバランスよく発言していたように思います。グローバルな場でも一定のプレセンスのある香港、中国、インドに加え、ローカルホストを務めた台湾、韓国、フィリピンからの参加が目立ち、南アジアからもインドの他にネパール、スリランカ等の国からの参加が見受けられました。そして、英語が母国語・公用語ではない国からも、複数の方が立派にモデレーションを務められていたことは励まされる現象です。

筆者のAPrIGFへの参加は、2010年の香港以降6年ぶりでした。通常、グローバルな場でアジア太平洋地域からの議論の参加は活発ではないことから、APrIGFでここまで活発な議論が行われていることを想定していませんでした。実際には、登壇者・参加者はグローバルな場で議論される問題もよく追った上で各国の事情を紹介しており、議論のレベル・問題への認識共に、日本国内の議論と比較して大変高いものでした。それぞれの国における議論が、APrIGFと同じレベルであるかはまた別の可能性はあるものの、日本インターネットガバナンス会議(IGCJ)にも関わっている立場から、大変よい刺激を受けました。

次回のAPrIGF

次回2017年のAPrIGFは、オーストラリアのccTLDである、.auのレジストリであるauDAがローカルホストを務め、オーストラリア・メルボルンで開催される予定です(最終日程は調整中とのことです)。リモートでも参加が可能ですので、ぜひ参加されてみてはいかがでしょうか。

写真:会場の様子
● 会場の様子

(JPNIC インターネット推進部 奥谷泉)

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