司会・モデレータ:大江 将史(国立天文台)
古くからパケット処理を高速に行うための技術分野ではさまざまな工夫がなされてきました。
パケット処理のうち、
特に(1)届いたパケットの情報から経路表を探索し次の宛先を求める“ルーティング”と(2)次の宛先へパケットを送る“フォワーディング”についてはインタフェースの増速(例:Ethernetに於けるFast
EthernetからGigabit Ethernet、10 gigabit
Ethernetへの発展)に対してCPUやメモリの増速スピードが追いついていない等の理由から現在でもさまざまな戦いが繰り広げられています。
本プログラムではこれら二つの分野に於ける問題点と課題、
およびそれらに対して取られてきた工夫を紹介します。
なお、
本プログラムではOSPFやBGPといった“ルーティング・プロトコル”に関する話題は扱いませんのでご注意ください。
時間 |
内容 |
16:15~16:20 |
1) はじめに
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16:20~16:50 |
2) 高速PCルータ研究概観と研究論文紹介
講演者:小原 泰弘(NTTコミュニケーションズ株式会社)
汎用PCを使って高速ルータを作れれば、
ルータのコストが下がる、
ルータの性能を底上げできるという期待があります。
そのような試みは昔から行われてきましたが、
高速なPCルータというのはまだ実現できたとは言えません。
何が難しいのでしょうか? この発表では、
研究論文を読み解き、
歴史と背景を紹介することによって、
原理と課題を解説します。
OSアーキテクチャ、
パケット転送フレームワーク、
経路表データ構造、
経路検索アルゴリズムとGPUの利用などを概観します。
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16:50~17:20 |
3) Linux NAPI & MultiQueue + ルーティングテーブル
講演者:浅間 正和(有限会社銀座堂)
オープンソースで開発が進められているLinuxでも、
パケットフォワーディング&ルーティングを高速に行うための工夫はたくさんなされています。
本発表ではLinuxでなされているパケットフォワーディングの高速化の仕組みとしてNAPIとMultiQueueを、
ルーティングの高速化の話題としてルーティングテーブルの実装について、
それぞれ紹介します。
最後に実装上の問題点と課題を考察します。
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17:20~17:25 |
休憩 |
17:25~17:55 |
4) DPDKを利用した広帯域パケット転送方式
講演者:大江 将史(国立天文台)
「x86 PCを頑張ってチューニングしてるんだけど、
思った性能より一桁悪い!」「なぜ、
ラインレートがでないのじゃ!」などとお嘆きの方は必見です。
ここでご紹介するIntel DPDK (Data Plane
Development kit)を使えば、
LinuxやFreeBSD上で、
実装には軽く苦難をあじわいますが、
従来型の実装では実現不可能な10GbE/40GbEの広帯域を活用するアプリケーションを実装できます。
ショートフレーム・フルラインレート実装も不可能ではありません。
果たして、そんなうまい話はあるのでしょうか? もちろん、DPDKは万能ではありません。
この発表では、DPDKの長所・短所、そして、
実装による実性能検証結果を示し、
DPDKとはなにか? ということを聴衆者の皆様と共有できることを目標とします。
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17:55~18:25 |
5) ゼロから作る高速パケット転送用OS
講演者:浅井 大史(東京大学)
汎用PCで高速なパケット転送を実現するソフトウェアとしてIntel
DPDKやnetmapなどが注目され始めていますが、
これらのLinuxや*BSDなどの汎用OSで動くアプローチでは、
汎用PCのハードウェアリソースを余すことなく使い、
その性能を最大限に引き出すことができません。
また、汎用OSを前提として議論されている「ボトルネック」がハードウェアに依るものではなく、
実はソフトウェアに起因するということも少なくありません。
そこで、
汎用PCによる高速なパケット転送の限界に挑むために、
既存の汎用OSのアーキテクチャとは完全に独立した、
ネットワーク機能に特化したOS・I/Oスケジューラを設計・実装しました。
この発表では、
パケット転送などネットワーク機能に特化したOSで、
パケット転送の限界に挑んだアプローチとその性能評価実験結果から、
ソフトウェアによる高速なパケット転送・ルーティングの将来性を共有できることを目標とします。
※本セッションは、
事前収録の動画再生となります。
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18:25~18:45 |
6) まとめと質疑応答
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