464XLATとは
464XLATとは、IPv6とIPv4の共存技術の一つで、 RFC6145 (IP/ICMP Translation Algorithm)と、 RFC6146 (Stateful NAT64:Network Address and Protocol Translation from IPv6 Clients to IPv4 Servers)に記述されているアドレス変換技術を組み合わせた技術です。 IPv4アドレスの在庫が枯渇した時期においては、 ユーザーに割り当てられるグローバルIPv4アドレスが希少となることから、 IPv4によるインターネットへの接続性をどのように得るかが課題となりますが、 RFC6145とRFC6146に記述された手法を組み合わせることで、 IPv6のみのネットワーク上で、IPv4による接続性を得ることができます。 この技術手法が464XLATと名付けられ、 RFC6877 (464XLAT:Combination of Stateful and Stateless Translation)として、 2013年4月に発行されています。具体的な組み合わせの手法は、以下の通りです。
ユーザー側に設置されたアドレス変換装置(この装置を「CLAT:Customer-side translator」と言います)が、 RFC6145に準拠した技術により、 ユーザーのプライベートIPv4アドレスをグローバルIPv6アドレスに変換します。 一方、インターネット接続性を提供するプロバイダー側に設置されたアドレス変換装置(この装置を「PLAT:Provider-side translator」と言います)が、 RFC6146に準拠したアドレス変換技術により、 グローバルIPv6アドレスをグローバルIPv4アドレスに変換します。 これにより、ユーザー側にはプライベートのIPv4アドレスしか割り当てられなかったとしても、 プロバイダーからインターネットにアクセスする時点でグローバルIPv4アドレスに変換されるので、 グローバルIPv4アドレスによるインターネットへの接続性を得ることができます。
また、アドレス変換の状態(ステート)を管理するかどうかについて、 管理しない場合は「ステートレス」、管理する場合は「ステートフル」と呼びますが、 CLATの方はステートレス、PLATの方はステートフルにアドレス変換されます。 ステートレスの場合は、状態を管理しなくて済むことから機器の処理負荷が低く、 ユーザーへ配布する通信端末への適用が実現しやすくなります。
なお、IPv6とIPv4の共存技術の一つとして、今回解説した464XLATの他に、 MAP-E (Mapping of Address and Port Encapsulation)があります。 パケットのフォーマットについてMAP-Eと464XLATには異なる点があり、 MAP-Eの場合はカプセル化によりIPv6とIPv4相互の通信が実現されますが、 464XLATの場合はパケットのヘッダが変換されることにより、 IPv6とIPv4相互の通信が実現されます。また、ステートの管理方法についても違いがあり、 MAP-Eではユーザー側のカプセル化装置がステートフル、 プロバイダー側の方がステートレスとなります。
■参考
RFC6145 "IP/ICMP Translation Algorithm"
http://www.ietf.org/rfc/rfc6145.txt
RFC6146 "Stateful NAT64:Network Address and Protocol Translation from IPv6 Clients to IPv4 Servers"
http://www.ietf.org/rfc/rfc6146.txt
RFC6877 "Combination of Stateful and Stateless Translation"
http://www.ietf.org/rfc/rfc6877.txt
JPNIC インターネット用語1分解説「MAP-Eとは」
https://www.nic.ad.jp/ja/basics/terms/map-e.html