Uniform Rapid Suspension (URS)とは
「Uniform Rapid Suspension (URS; 統一早期凍結)」とは、 2013年から「新gTLD (generic Top Level Domain; 分野別トップレベルドメイン)」が追加されることを受けて、 その新gTLDを使ったドメイン名をユーザーがセカンドレベル以下へ登録するにあたり、 企業などが持つ商標権を守るための仕組みです。 新gTLD共通で参照する商標保護データベースである、 「Trademark Clearinghouse (TMCH)(*1)」とともに導入されます。
TMCHが、商標文字列がドメイン名として他者に登録される前に対応するための事前対処的な仕組みなのに対し、 URSはgTLDで従来利用されてきた紛争処理策である「UDRP (Uniform Domain Name Dispute Resolution Policy; 統一ドメイン名紛争処理方針)(*2)」と同様に、 ドメイン名登録後の事後的対処のためのものです。各新gTLDでの登録受付開始後に、 商標権を侵害する文字列がドメイン名として登録された場合は、 TMCHではなくUDRPやURSを利用して問題の解決を図ることになります。
URSでは、申請受領後の事務的なチェックが済み次第、 24時間以内にドメイン名の登録内容がロックされ、 ドメイン名の移転やレジストラ変更等ができない状態になります。 その後、裁定で申請者の主張が認められれば、当該ドメイン名の利用が差し止められ、 そのドメイン名を持つWebサイトなどにアクセスしても、 利用差し止め中である旨を表示する紛争処理機関のWebサイトにリダイレクトされるようになります。
ただし、UDRPと比べてより簡便な手続きであることから、 裁定はいわゆる仮処分的なものであり、URSで認められるのは恒久的ではなく、 一時的な利用の「差し止め」(当該ドメイン名の登録期限までですが延長は可能とされています)だけです。 ドメイン名の「移転」や「取り消し」はできず、 その場合はUDRPを利用することになります。
UDRPも対象を限定し、書面による1回のみの審理とすることで、 裁判などに比べ十分簡易・迅速な手続きを実現していますが、 URSはさらに簡便かつ安価な手続きであることがその特徴です。 新gTLDの導入に伴いより多くの紛争発生が予想されたことから、 今回新たにURSが導入されました。URSの主な利用目的としては、 問題のあるドメイン名をまずは利用できない状態にした上で、 その間にUDRPや訴訟の準備をするなどが考えられます。 また、「移転」や「取り消し」までは求めず、 「差し止め」ることを目的とする場合にも有効です。
URSの申請費用は各紛争処理機関が決めることになっていますが、 2013年5月時点ではThe National Arbitration Forum (FORUM)と、 Asian Domain Name Dispute Resolution Centre (ADNDRC)が紛争処理機関に認定されているものの、 費用は未定です。 平均してUSD 1,500~3,000前後かかるUDRPよりは安価になるはずですが、 当初予定されていたUSD 300は上回る見通しです。
URSは、実際に新gTLDのドメイン名登録開始後に始まるものであることから、 いまだ書面ではわかりにくい未知数なところも残されていますが、 現時点でのURSの規則や手続きの詳細、認定紛争処理機関などについては、 URSのWebサイト(*3)をご覧ください。
(*1) JPNIC 1分用語解説 Trademark Clearinghouseとは」
https://www.nic.ad.jp/ja/basics/terms/tmch.html
(*2) UDRP(Uniform Domain Name Dispute Resolution Policy:統一ドメイン名紛争処理方針)とは
https://www.nic.ad.jp/ja/drp/udrp.htmll
(*3) Uniform Rapid Suspension System (URS)
http://newgtlds.icann.org/en/applicants/urs/
■参考
新gTLDのページ(JPNIC)
https://www.nic.ad.jp/ja/dom/new-gtld.html
JPNICニュースレター49号「2012年初頭の新gTLD募集」
https://www.nic.ad.jp/ja/newsletter/No49/0800.html
ドメイン名を中心としたインターネットポリシーレポート 2013年4月号「新gTLDの商標権保護策について」
https://www.nic.ad.jp/ja/in-policy/policy-report-201304.pdf