ゼロレーティングとは
通信業界における「ゼロレーティング」とは、通常は従量制料金を課しているネットワークが、 特定のコンテンツやアプリケーションに関する通信に限って、 課金対象から除外する料金施策のことを指します。
ゼロレーティングは主に、 人気のあるコンテンツやアプリケーションの通信料金を無料にすることによって、 自社のネットワークにユーザーを集める目的で、 携帯電話事業者やコンテンツ提供事業者によって導入されています。
特に、発展途上国や新興国では、回線提供事業者では無くサービス提供事業者自身が、 限定されたコンテンツを対象に、インターネットアクセスを無料で提供する事例が見受けられます。 このようなサービス提供方法は、 ネットワーク中立性*1の観点から問題があるとして、 国によっては規制されているところもあります。
また、ゼロレーティングを実現させるためには、 対象の通信が特定のコンテンツやアプリケーションに関するものかどうか判別するために、 IPパケットの内容を検査する、 ディープパケットインスペクション(Deep Packet Inspection, DPI)を使うことがあります。
このDPIの利用については、 前述のネットワーク中立性の観点から公平ではない通信になるのではという懸念に加え、 憲法および電気通信事業法で定められた「通信の秘密」に抵触する可能性が指摘されています。 そのため、ゼロレーティングサービスの実装には、慎重な検討が必要とされています。
*1 ネットワーク中立性
インターネットサービスプロバイダーが、 インターネット上のすべてのデータを同等に扱う、すなわち利用者、コンテンツ、 アプリケーションなどによりトラフィックを差別したり課金を区別したりしてはならず、 平等に扱うべきとする考え方です。2003年にそれ以前からなされていた議論を踏まえる形で、 コロンビア大学のTim Wu教授によって提唱されました。
■ 参考
ネットワーク中立性問題について(著者:九州大学 実積 寿也)*2
JPNICニュースレターNo.63 (2016年7月発行)
https://www.nic.ad.jp/ja/newsletter/No63/0800.html
*2 所属は執筆当時のものです。
JANOG38ミーティングレポート ~ゼロレーティングとネット中立性を考える~ (著者:JPNIC 佐藤 秀樹)
JPNICニュースレターNo.64 (2016年11月発行)
https://www.nic.ad.jp/ja/newsletter/No64/0620.html