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JPドメイン名 グランドデザイン1999(叩き台)に対するコメント(5)

日本(jp)領域名基本設計(案)
1999年2月26日
名古屋市工業研究所 小川清

現在、 日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)に求められているのは、 日本(JP)領域名の構想と登録方針に関する基本的な考え方である。 その基本的な考え方に基づき、長期的な戦略と、短期的な戦略とを区分し、 現状を改善していく具体的な手続きを検討していく必要がある。 数年以内の短期的な戦略は基本設計(グランドデザイン)ではなく、 移行措置である。
最初のたたき台は、 JPNIC内部での議論の経過が記述されている部分が多く、 基本設計には必要のない文章は削除した。 基本設計を必要とする理由と経緯は、別文書とすればよい。
作成にあたっては、JPNICの文書に対する加筆の形式を取った。 そのため、整合性が不充分な点があるが、内容の検討により、 整合性を調整するとよい。 十分検討できないところは、 そのままの文章が残っているところもある。

目次
前文
1 領域名構造の基本方針
1.1 日本国内利用者の利益と国際整合性
1.2 公平性と健全性
1.3 登録し易く、安定して使えること
2 領域名の基本構造と管理体制
3 第三水準領域名以下を登録する電気通信事業者のための手引き
4 第三水準領域名以下を登録する電気通信事業者の今後の方向性
5 知的財産権に関する問題
6 登録管理の移行と規則策定の体制
7 費用負担
8 移行のための方策
9 その他の検討事項

前文
インタネットの成長は著しく、 社会の通信基盤として定着するためにさらなる技術革新が求められている。 インタネットの利用方法は、 今後も技術革新により多様化する可能性があり、 領域名(domain name)は、郵便、 商習慣で用いられる名前の基本的な性格により利用することが可能になってきた。 そこで、これまでの領域名と登録方法を見直し、 きめ細かなサービスと簡便なサービスの両方を用意することにした。 この文書は、 日本(JP)領域名の基本構造と登録方法についてJPNICが第二水準領域名を管理するための基本方針を持ち、 第三水準以下を登録した電気通信事業者が管理するために当面必要となる事項を整理したものである。

1 領域名構造の基本方針
日本(JP)領域名登録規則の策定にあたっては、 以下の基本的な考え方をとる。

1.1 日本国内利用者の利益と国際的整合性
日本のための第一水準領域名(TLD)であるJP領域名は、 日本国内の利用者の利益を重視したものである。 そのため、日本で住所、 氏名に用いられる文字で書くことができることが望ましい。 長期的には、領域名は任意の文字表現を可能とすることが望ましいが、 これは国際的な合意に基づいて決めるものである。
そこで、現在のシステムからの円滑な移行を考え、当面、 日本で住所氏名に用いられる文字での第二水準以下の領域名が登録できる方式の提案を関係団体によびかけ実現していくことを方針とする。
最上位領域名(gTLD)と他の国別最上位領域名(ccTLD)の登録規則の整合性を図る動きがあれば、 それらとの整合性に配慮して登録規則を定める。 国際的な整合性を考慮して領域名登録規則を定めることで、 海外の利用者がJP領域名の登録規則を理解することが容易になり、 日本の利用者がgTLDまたは他のccTLDの登録規則を理解することも容易になる。 そのため、各国語での第二水準領域名と、 国際的な相互変換のための方式を制定することが重要である。
日本で住所、 氏名に用いられる文字で記述する方式が認められるまでの間は、 現行のアルファベットなどによる記述方法を取る。 国際整合性を図るため、日本で住所、 氏名に用いられる文字で登録するようになっても、 共通文字での二重登録制度とすることもある。 これは、漢字表現とローマ字によるふりがなに相当すると考えれば、 他の制度と矛盾するものではない。

1.2 公平性と健全性
領域名空間は、インタネット利用者全体のための共有資源である。 それを公平に登録管理していくことが求められている。 そのため、領域名の健全な登録管理は、インタネットの健全な発展につながる。 領域名の登録または使用によって権利関係がまぎらわしくなく、 社会的な健全性を保つために、従来から利用していた住所、 氏名(組織名)による領域名を用いることを基本とし、 それ以外の方法を電気通信事業者による管理とする。
インタネットの発展のためには、現時点での利用者の利益だけでなく、 今後インタネットを利用し始める「将来の利用者」の利益にも配慮することが重要である。 そのため、将来の利用者に対する配慮は、 インタネットが社会的な通信基盤へと健全に発展するために必要である。 領域名を登録する電気通信事業者が、 なんらかの理由でサービスを中止する場合で、 他のサービスへの移行を図れない場合は、JPNICが入札などの方法で、 他の電気通信事業者への同名によるサービスの移行を図ることとする。

1.3 領域名が登録しやすくする。
必要な領域名が登録しやすく、 登録した領域名が安定して使えることは、 領域名登録規則の策定の基本的な考え方である。 「領域名が登録しやすいこと」は、 「任意の領域名が登録できること」を意味しない。 適切な対策無しに領域名を登録すると、 将来の利用者が必要な領域名を登録できなくなる。
領域名を登録しやすくするため、第二水準の登録はJPNICが行い、 第三水準以下の領域名の登録を第二水準領域名を登録した電気通信事業者が行うものとする。
領域名登録は、アドレス決定と異なり、 インタネット接続において選択的である。 そのため、合理的な費用で領域名を登録できることも大切である。

2 領域名の基本構造と管理体制
インタネットにおける領域名は、 相手を特定するための名前空間で郵便における住所と氏名、 電話における電話番号に相当する。 この文書はJPNICが日本のJP以下の第二水準の領域名を管理し、 第二水準以下は、郵便における住所と氏名、 電話における電話番号のような、特定のしやすい方法で、 社会的な合意が得られるものを規定する。 第二領域名以下は、アルファベット以外の漢字、カタカナ、 ひらがなで表現できるものとする。 第三領域名以下は、 どの段階であっても業として領域名を登録するのは電気通信事業者のみとする。

2.1 地域を表す第二水準領域名(地域SLC)
地域をあらわす第二水準領域名は、現在の都道府県、市町村名を利用する。 この第二水準領域名は、 それぞれの地域ごとに業として電気通信を管理できる組織を指定する。 なお、これらの組織が指定されるまでの間は、暫定的にJPNICが管理する。 都道府県、市町村名とともに、郵便番号を用いることもできるものとする。 ただし、郵便番号制度が、大幅に変更される場合には、 この方針は見なおすものとする。
・地域別SLDの下の第三水準領域名を、地域SLD登録組織の連合体で協議する。
・地域別SLDの下に、電気通信事業者による第三水準領域名を導入することができるものとする。

2.2その他の第二水準領域名(その他のSLC)
地域を表す第二水準領域名以外の第二水準名は、 電気通信事業者に対して、一つ付与するものとする。 地域を表す第二水準領域以外の管理方法も取れることとする。 これは、住所、 氏名の概念では表現できないものを表現することを可能とするとともに、 地域での独占的な領域名登録では効率的でない事態を回避するための方法として、 その管理を電気通信事業者が行う。 日本における電気通信事業者に限定するのは、 SLDはその下に業として領域名の登録をできるようにするためである。 JPNICも、電気通信事業者として、第二水準領域名を一つ登録する。
上記以外に、従来から利用していた第二水準領域名は、 当分の間利用できるものとする。 ただし、世界的な規模での領域名の見直しがあった場合の変更と、 領域名の移行が円滑に行う道具が用意された場合には、 変更を行うものとする。

その他のSLC登録細則(案)
電気通信事業者による第二水準名は、 地域名と競合しないように電気通信事業者名、 およびサービス名に基づいて、 洗願方式で決定する。 ただし、最初の登録にあたっては、 一定期間の専門委員会の協議に基づいて決める。 従来から利用していた第二水準領域名以外は、 アルファベットの場合は3文字以上とする。

3 電気通信事業者のための登録の手引き
第二水準の電気通信事業者の領域名登録規則は、 次の手引きに従って登録規則を作るとよい。 この手引きは、JPNICの考え方と整合性を持つためのものであり、 強制的なものではない。 JPNICが電気通信事業者を第二水準領域名で登録する場合も、 これに類似した登録細則を設ける。

(1) 組織名と領域名の対応と衝突回避方法
登録する領域名は、登録者が自由に選択する。 同一の領域名の登録を希望する組織が複数ある場合には、 先願主義によってどちらが登録できるかを決定する。 領域名を登録者の組織名と関連のあるものしか認めない方針を採っている組織(ccTLD)もあるが、 この方針では、電気通信事業者が領域名の妥当性を審査せねばならず、 公平で迅速な審査は難しい。 また、登録者が必要な領域名を登録しやすくするためには、 登録者が自由に選択する方針が適切で、先願主義は、 これに代わる公平な手段が考えられない。

(2) 組織あたりの登録可能領域数
1つの組織が1つの電気通信事業者に登録できる領域名は、 原則として1つとする。 ただし、異なる地域、異なる商品、 異なるサービスを行う組織単位ごとに申請する場合にはこの限りではない。 電気通信事業者ごとに登録できる領域名は、 年間の利用料金により経済的な上限が決まってくる可能性がある。
組織あたりの登録可能領域数の制限は、 将来の利用者に必要な領域名を登録しやすくし、 領域名と知的財産権に関わる問題の発生を軽減するために必要である。 何を1つの組織とみなすかは、組織の種別ごとに判断する。

(3) 地域存在
JP領域名の下に領域名を登録する組織は、 原則として日本に何らかの登録があるものとする。 JP領域名とgTLDの違いを明確にするために、 何らかの地域存在を求めるとよい。 海外の利用者が多くの領域名を登録し、 日本の利用者が必要な領域名を登録しにくくなることは、 JP領域名の趣旨に合致しない。

(4) 領域名の売買・譲渡の可否
領域名の売買は禁止とし、領域名の譲渡も原則として禁止する。 ただし、 領域名の売買が行われないことが明らかとみなせる場合(具体的には、 組織の合併の場合、親子会社間、 営業の全部または主要な一部の譲渡の場合のいずれか)に限り、 当事者間の合意により譲渡を認める。 領域名の売買を許可した場合、多くの領域名を登録し、 それを販売するという業務が成立する。 このような業務を電気通信事業者以外が行うことは、 将来のインタネット利用者に不必要な負担を強いる可能性がある。 また、知的財産権に関わる問題の発生を増すことが危惧される。 逆に、領域名の売買を自由化することで、 インタネットの健全な発展に資するとは考えにくい。 商標の売買が認められていることから、 領域名の売買も認めるべきという考え方もあるが、 商標では実際に問題が発生していることと、 領域名の登録・維持費用が商標に比べて極めて小さいことを考えると、 領域名の売買を認めた場合の問題はより深刻になると考えられる。 領域名の譲渡の原則禁止は、 電気通信事業者以外が領域名を扱うことを防止するための有効な手段と考える。

(5) 紛争解決手段
領域名登録者と第三者の間の領域名に関する紛争について、 JPNICでは判断を行わず、 日本において法的に有効な判断が出た場合にはそれに従う。 また、領域名申請者・登録者とJPNICとの間の紛争に関しては、 JPNIC内で二重に審査する制度を設ける。 第三者との紛争についてJPNICで判断を行わないのは、 知的財産権に関する問題について、 JPNICはそれを判断する立場になく、 またその能力もないためである。 また、国内利用者の利益を考えると、 JP領域名に関する紛争は日本国法に基づいて解決されるのが好ましい。 裁判管轄権と準拠法は、 今後電気通信事業法の改正などにより補強されることを期待する。

(6) 領域名の健全性
電気通信事業者は、 登録された領域名が公序良俗に反しないように指導する。 登録された領域名が、日本の法律に違反していたり、 公序良俗に反しないよう登録者を指導するものとする。 また、第三水準以下に分類名を設ける場合には、 電気通信事業者間で協議する名称を決める。 第三水準以下の領域名は、社会的健全性への配慮し、 登録すること(または、 登録していること)自身が明らかに社会的許容性を欠く場合には、 領域名登録申請を不承認とする(または、 領域名登録を取り消す)手段を留保する。

(7) 登録要件の確認と登録者の確認
領域名の登録要件を、できる限り形式的に判断できるようにする。 登録要件を形式的に判断できるようにすることは、 裁量の余地を排除することで公平性を確保し、 登録手続きを迅速に行うために、必要な条件である。 法人のように登記などに基づいて登録要件を確認できる組織については、 自己申告に基づいて領域名を登録し、はがき、FAX、電話、 電子メールの情報伝達媒体によって登録要件を確認する。 それ以外のものについては、登録者を確認した上で、 書類による自己申告に基づいて領域名を登録する。 登録者の確認は、登記などに基づいて登録要件を確認できる組織について、 登録要件の確認と登録者の認証を省略するのは、次のような理由による。
・登録要件を満たしているかどうかの確認を事後に行うことができる
・組織の法的な責任者を事後に明らかにすることができる
・領域名登録にかかる費用を低減する
存在しない組織または個人の名義で領域名を登録した場合には、 存在しないことを確認した上で領域名登録を取り消すことができる。 また、他の組織または個人の名義を使って領域名を登録した場合には、 名義の組織または個人を確認し、 名義の個人または組織が登録された領域名を使えるようにする。 それに対して、登記などの確認手段のない組織について、 登録者を確認した上で、 書類による自己申告に基づいて領域名を登録する方針を採っているのは、 次のような理由による。
・自己申告以外に登録要件を形式的に判断できる手段がないと考えられる
・登録の責任者が誰であるかを明確にするために登録者の確認が必要である
例えば、架空の名義で領域名が登録されると、 通信の安全上の問題や知的財産権に関する問題などで紛争が発生した場合に、 登録の責任者が誰であるかが明確にならず、解決が困難になる。 また、組織が分割した場合に、 登録された領域名を誰が使用できるようにすべきか判断できない。

(8) 登録規則変更時の扱い
領域名を登録した後に登録規則が変更になった場合、 すでに登録済の領域名についても、 変更後の規則に従って扱うのを原則とする。 ただし、規則の変更によって領域名の登録要件を欠くこととなっても、 登録済の領域名については移行期間を設けずに取り消したり、 他の領域名に変更させることはしない。 これは、 領域名が登録された時期によって規則が異なると事務手続きが煩雑化し、 結果的に領域名の維持にかかる費用が上昇することが理由である。 規則の変更によって領域名の取り消しや変更を強制しないのは、 それによって領域名登録者に多額の費用負担が必要になったり、 何らかの損害を被る可能性があるためである。

4 電気通信事業者の登録方針に関する今後の方向性
現行の領域名登録規則の策定方針は不変のものではない。 今後次のように課題を検討するとよい。 要求の多様化に答えるために、 複数の登録方針を併用することがあってもよい。

(1) 組織名と領域名の対応
国際的な動向により、 登録申請者に領域名選択の根拠や使用方法を明示させ、 それを公開する方法を採ることを検討するとよい。 領域名選択の根拠と使用方法を明示させることで、 知的財産権に関わる問題の発生を軽減する効果があると考えられている。 商品、 サービスまたは行事のための領域名などの領域名を登録したい場合には、 一つの水準を設けて、その下に領域名構造を拡張してもよい。
例: comp.event.xxx.jp 電気通信事業者XXXが登録するeventに関するcompで申請 された領域名

(2) 組織あたりの登録可能領域数
1つの組織が複数の領域名を登録したいという要求がある。 しかし、 将来の利用者が必要な領域名を登録しやすいという条件を満たす必要もある。 そのため、第三水準以下の領域名の細分化により対応可能とする。

(3) 地域存在
何らかの地域存在を求める条件は、様々な方法を検討するとよい。

(4) 領域名の売買・譲渡の必要性
領域名の譲渡の必要があれば、 電気通信事業法などの法的な整備により実現することとし、 その検討にあたっては、 JPNICはこれまでの経験に基づく意見を述べる。

(5) 紛争解決手段
JPNICは電気通信事業者間、 登録者と電気通信事業者の紛争には関与しない。 ただし、裁判に代わる簡便な紛争解決手段の検討を行う。

(6) 領域名の使い方
国際的な動向がそのようになるのであれば、 登録申請者に領域名選択の根拠や使用方法を明示させ、 それを公開する方法を採ることを検討する。

(7) 登録要件の確認と登録者の認証
登録者の認証を、 印鑑登録証明書よりも簡易な方法を採る方向は検討する。 ただし、 登録者の認証を簡易に行った場合には、 問題発生時の解決方法にも影響を与えることになる。 結果的に、登録者の認証を簡易に行った引き換えに、 領域名登録の安定性が犠牲になるものと思われる。 例えば、郵便を使って登録者を認証する方法が考えられる。 この方法を採った場合、 問題が発生した時の領域名登録の責任者への最終的な連絡手段は郵便になるため、 郵便が届かず連絡手段がなくなると、 問題の性質によっては領域名登録を取り消す場面が出てくるものと予想される。 つまり、データベースの更新を忘れていた場合などに、 領域名登録が取り消される危険が高くなり、 領域名登録の安定性はやや犠牲になる。 逆に、通信の安全の観点から、 登記などに基づいて登録要件を確認できる組織についても、 登録者の認証をより厳格に行うよう社会的要請がある可能性も考えられる。 また、 電子的な企業認証基盤の整備へ向けての検討が政府を中心に行われているが、 このような新しい技術の導入も検討していく必要がある。

(8) 登録規則変更時の扱い
登録規則変更時に新しい規則に従って扱うことを確認するための有効な手段として、 領域名登録を定期的に更新する方法が考えられる。 この方法は、領域名登録の内容を最新の状態に保つために有効であり、 事務手数の増大の問題はあり、 電気通信事業者の収入確保の方法ともなる。 登録規則の変更によって規則に合致しなくなった領域名については、 強制的に適切な領域名に変更させるという意見がある。 これは移行のための規約、道具が揃ってから行うべきことである。

5.知的財産権に関する課題
知的財産権、特に商標権に関する課題は、 領域名登録規則を策定するにあたって重要である。 商標という「名前」に対して投資がなされてきたことから、 インタネット上での「名前」である領域名の登録方針はそれを無視しない。 JPNICは、領域名登録が商標権に抵触するかどうかを判断しない。 領域名の登録ないしは使用が商標権に抵触するかどうか、 抵触するとすればどのような時に抵触するのかは、 法律に照らして裁判所で判断されるべきことである。 国内での判例がないために正確な判断は困難である。 法的に有効な判断が出た場合にはそれに従うことを原則とする。 COM, ORG, NETなどのgTLDの登録機関であるNetwork Solutions Inc. (NSI)のこの問題に対する方法は、 最終的に裁判に従う点は同じであるが、 NSIとして機械的に判断できる紛争解決方針を定めている点で、 JPNICの方針とは異なる。 NSIの紛争解決方針では、商標権者からクレームがあった場合には、 領域名登録者も商標権を持っていない限りは、 商標と同一の領域名の使用が無条件に停止される(実際には、 領域名登録が商標登録よりも古い場合には停止されないなど、 より複雑な規則となっている)。 すなわちNSIは、実際に商標権侵害があったかどうかを判定するのではなく、 商標登録があるかないかだけで判断を下す方針を採っている。 この課題を解決する方法として、 裁判に代わる簡便な紛争解決手段(ADR)を設け、 商標権侵害の有無を実体的に判断しようとする方法がある。 国際的には、 世界知的所有権機構(WIPO)がgTLDを対象としてADRを設ける検討を続けている。 日本においても、 工業所有権仲裁センターにおいて領域名に関する紛争の仲裁が可能となっている。 ただし、 仲裁が成立するためには紛争の両当事者の合意が必要で、 現状では有効に活用されていない。 JPNICにおいても、工業所有権仲裁センターの研究会に委員を送るなど、 実効性を持ったADRを設ける方向での検討を行っているが、 JPNICだけの能力では難しく、まだ時間がかかるものと考えている。 また、国際的にも議論の途中であり、 国際的な整合性を保つためには、今しばらく経過を見守る。

6.登録管理の移行と規則策定の体制
インタネットの技術発展を考えると、 JPNICを大きな組織とすることは妥当でない。 そこで、領域名の登録管理体制については、 第三水準以下はすべて地域名登録組織および電気通信事業者名組織に行うものとする。 現行の業務委任会員(または指定業者)を第二水準領域名組織とし、 第三水準領域名の登録組織として移行する。 JPNICは第二水準の組織のみを登録する。 領域名登録規則の策定体制については、 JPNIC運営委員会の下に設置された日本(JP)領域名登録検討部会(DOM WG)が中心になって行う。 具体的には、登録規則を変更する場合には、DOM WGの部会員または外部からの提案を元にDOM WGが改訂規則の起案を行い、 それに対して一般からの意見を募集・反映し、DOM WGで最終案を作成する。 DOM WGで作成された最終案は、 JPNIC運営委員会の承認を経て実施に移される。 JPNIC運営委員会は、 JPNIC理事会から領域名登録規則の策定を任されている。 JPNIC理事会は、 JPNIC会員の総意の場であるJPNIC総会によって選出され、 JPNICの運営に関して責任を持っている。 この枠組みでは、領域名登録規則策定の最終的な権限はJPNIC会員、 すなわち、インタネットに関わるサービスの提供者側にある。 これに対して、 領域名の登録規則はインタネット利用者の総意を反映する形で策定すべきである。 これを実現するための方法として、 DOM WG部会員の選出方法を今後も検討する。 JP領域名の登録管理と規則策定の体制の将来像を、 gTLD-MoUにおいて提案されたモデルには必ずしも当てはまらない。
第二水準登録事業者 JPNIC
第三水準以下登録事業者 電気通信事業者(多段階に登録してもよいが、 当面、第五水準までとする。)
CORE [電気通信事業者の協議機関]
POC JPNIC JP領域名登録検討部会(DOM WG)
PAB [インタネット利用者による監視機関]
現在、COREとPABに対応する枠組みはなく、 それらの必要性も含めて今後の課題である。

7.費用負担
第二水準の領域名の登録・維持にかかる費用の負担は、 JPNICの会費制度で定める。 会費制度の見なおしに際しては、 gTLDや他のccTLDの費用負担モデルとの整合性にも配慮する。 JPNICの費用負担は、JPNICの業務全体の整合性を考慮して定める。

8 移行のための方策
8.1 領域名の国際化
領域名を国際化するためには、 領域名の機構を大幅に改善する必要がある。 そのために必要な技術的な方策をJPNICおよび関係団体と協議のうえ進める。

8.2領域名の移行
領域名を移行を円滑にするためには、 領域名の機構を改善する必要がある。 そのために必要な技術的なほう際をJPNICおよび関係団体と協議のうえ進める。

8.3地域名登録の移行
地域名登録は、当分の間JPNICで行うが、 速やかに各地域ごとの組織が行うものとする。 ただし、JPNICは複数の地域名を登録する組織を禁ずるものではない。

8.4 従来の第二水準領域名の移行
従来の第二水準領域名は、 地域名または電気通信事業者領域名の基に格納されるとよい。 ただし、JPNICは現在の第二水準領域名を管理する電気通信事業者が社会的な合意のもとに管理を行うように移行するのを妨げない。

9.その他の検討事項
現行の領域名登録規則は契約約款と同等の位置付けになる法律的文書であるために、 法律的な用語で記述されている。 これについては、なるべく平易な言葉で解説文書を作る。 実施規則の細目が文書化できていない場合は、 簡素な規則になるような文書化を図る。 過去の規則に基づいて登録された組織の扱いは、 実施規則を複雑化している。 例えば、GR領域名導入以前の「権利能力なき社団」の考え方に基づいて領域名を登録した任意団体が多数残っている。 これらの団体が団体名を変更する場合に問題が発生する。 このような場合に JPNICでは、第三水準での登録に移行をお願いする。 しかし、権利能力なき社団の要件により領域名を登録した団体が団体名を変更する場合の手続きも、検討する。

E-mail:secretariat@nic.ad.jp ogawa.kiyoshi@nmiri.city.nagoya.jp
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