JPドメイン名の歴史
最終更新日2016年12月22日
.JUNETから.JPへの移行
JPドメインが広く使われるようになる以前は、 学術研究機関を中心に構成されるJUNETというネットワーク内で、 トップレベルが「.JUNET」となっているドメイン名が利用されていました。 JUNETは、1984年10月に東京大学、東京工業大学、 慶應義塾大学にあるコンピュータを電話回線経由で接続することから始まったUUCP (Unix to Unix CoPy:UNIXマシン同士でファイル転送を行うための方法の一つ)ベースのネットワークでした。
最初は3台のコンピュータを接続するところから始まったJUNETですが、 参加組織が増えるとともに民間企業の研究所等も接続されるようになり、 また1986年1月にはアメリカのCSNETとの接続も開始され、 海外とのメールやニュースの交換なども、 日常的に行われるようになってきました。
このようなUUCPネットワークの展開の一方、 TCP/IP接続をベースとしたネットワークを指向する人達も国内に出始め、 IPネットワークの優位性であるDNSを使用するために.JUNETから国際的な基準に沿ったJPドメイン名への移行を望む声が出てきました。 その結果、 1989年4月に「.JUNET」から「.JP」への移行が行われました。
また、高エネルギー物理学研究所(KEK:現在の高エネルギー加速器研究機構)などを中心として運用されていた、 HEPNET-JなどのJUNET以外のネットワークに関しても同じく「.JP」への移行が行われていきました。
このように、 JPドメイン名の本格的な利用は1989年から始まることになります。
移行にあたっては、セカンドレベルに属性が設けられ、 従来の.JUNETの左側にあたる部分(サブドメイン名・ホスト名にあたる部分)をそのまま残して、 .JUNET部分を.CO.JPや.AC.JPといった属性付きのドメイン名に置き換える形での移行が、 一部の例外を除いて行われました。
また、.JPへの移行と相前後して、1988年にWIDEプロジェクト、 1989年にはJAINやTISNといったネットワークプロジェクトがスタートします。 これらのネットワークでは、プロトコルとして主にTCP/IPが用いられ、 また、回線も専用回線での常時接続となるなど、 より現在のインターネットに近い形のネットワークとなりました。
JNICの設立
.JPへの移行が行われた後も、 しばらくの間はJUNET時代の.JUNETと同様に、 junet-adminと呼ばれるJUNET内のボランタリーな管理者グループによって.JPの管理は行われていました。 しかしながら、ネットワークが加速度的に発達するに従い、 従来の有志による登録管理に頼るという状況には限界が見えてくるようになります。 そこで、ネットワーク運営組織や学会などに呼びかけて作られたJCRN(研究ネットワーク連合委員会)での検討の結果、 .JPのスタートから2年後の1991年12月にJCRNを母体として、 現在のJPNICの前身であるJNIC (Japan Network Information Center)が組織されることになりました。
JNICは、 主に当時IP接続に力を入れていた組織(WIDEプロジェクト、JAIN、TISN、日本BITNET協会など)に所属する人々の協力によって運営され、 発足と同時にjunet-adminからJPドメイン名の登録管理の引き継ぎを受けました。
junet-adminがJPドメイン名の管理を行っていた時と、 JNICが管理を行うようになってからの大きな違いは、 ドメイン名登録のためのルールが明文化されたことです。 ルールが明文化されたことにより、登録者から見て、 ドメイン名の登録管理のための方針がより明確に示されるようになりました。
JPNICによるJPドメイン名の登録管理
1991年に設立されたJNICは、1993年3月に任意団体JPNICへと改組され、 1997年4月には任意団体から社団法人となりました。 JPNICによるドメイン名登録管理が行われていた時代の大きな出来事は、 ドメイン名空間の新設、ドメイン名に対する課金の開始、 ドメイン名に関する紛争処理方針の策定、 そしてJPドメイン名登録管理業務の民間企業への移管です。
まず、ドメイン名に対する新しい取り組みとして、 1995年6月からドメイン名の新規登録に対して登録料の徴収を開始しました。 これは後に導入された維持料制度と併せて、 受益者負担の仕組みを作り上げるとともに、 レジストリとしての業務をより安定的・継続的に行うために、 世界的に見ても大きな意義があることでした。
また、ドメイン名空間の新設については、 1989年4月の.JUNETから.JPへの移行時には、 CO、OR、AC、AD、GOの五つの属性から構成されていたJPドメイン名に、 1996年11月にはNEが、1997年12月にはGRが、 1999年2月にはEDが追加され、全部で八つの属性となりました。 また、これらの属性型JPドメイン名とは別に、 1993年12月には地域型JPドメイン名(実験プロジェクトとしてスタート、 1996年4月から本格運用開始)が導入されました。 (その後、「地域型」も一種の属性であることから、 従来「属性型」と呼んでいたものは「属性型(組織種別型)」という呼称になりました。)
1990年代の終わり頃になると、インターネットユーザーの増加、 Webサイトの増加と相まってドメイン名の利用形態も多様化してくるようになります。 これに伴いユーザーからは一つの組織で複数のドメイン名を登録できるようにして欲しいとか、 ドメイン名の移転が自由にできるようにして欲しいといった要望が出てくるようになりました。 しかし、 JPドメイン名は「一組織一ドメイン名の原則」「ドメイン名の譲渡禁止原則」などによって、 不正の目的による登録・使用を未然に防止していたところもあり、 これらの原則を緩和あるいは撤廃するためには、 不正の目的による登録・使用を防止あるいは解決するための別の手段が必要でした。
そこで、2000年10月には、 JPドメイン名に関する紛争処理の仕組みである「JPドメイン名紛争処理方針(JP-DRP)」およびその処理手続きについて定めた「JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則」が策定されました。 このJP-DRPは、 ICANNが策定した「統一ドメイン名紛争処理方針(UDRP)」をモデルにして策定されたもので、 JPドメイン名の不正の目的による登録・使用を解決することを目的としたものです。
JP-DRPの策定後、 JPNICは「ドメイン名の譲渡禁止原則」を撤廃しました。 そして、2001年2月には、 一つの組織(個人)で複数のドメイン名が登録できる汎用JPドメイン名の導入にふみきることになります。 また、この汎用JPドメイン名では、 初めて日本語文字の使用も可能とするなど、 ユーザーの多様なニーズに応えるものとなっています。
なお、この汎用JPドメイン名の導入時には、 紛争の未然の防止を目的として、 属性型・地域型JPドメイン名の登録者や商標権者のための優先登録の仕組みが採用されるなど新しい試みも取り入れられ、 汎用JPドメイン名のスタートに先立って策定されていたJP-DRPと併せて、 その後の紛争防止に役立ちました。
そして、 2002年4月にはJPNICから株式会社日本レジストリサービス(JPRS)へと、 JPドメイン名の登録管理業務の移管が行われました。
なお、JPRSへ移管後の2002年10月には、 属性型JPドメイン名としてLGが新設されており、 現在の属性型(組織種別型)JPドメイン名は全部で九つの属性となっています。 また、従来の属性型・地域型JPドメイン名、 汎用JPドメイン名に加えて、 2012年11月には都道府県型JPドメイン名と呼ばれる、 全国都道府県名のラベルを持ち第2レベルに登録する、 新しいJPドメイン名が新設されています。