ICANN 一般討論会(Public Forum)2日目
日時:2002年6月27日(水)8:00~19:00
会場:Bucharest Marriott Grand Hotel(ルーマニア、ブカレスト)
司会:Vint Cerf(ICANN理事長)
出席者:理事会メンバー17名+約90名
内容:1. 各種委員会とその他の組織からの報告
2. 2002-2003年度予算案について
3. 「削除済みドメイン名の請戻し猶予期間」の実施案について
4. 新TLD評価プロセス計画タスクフォース(NTEPPTF)からの報告
5. 国際化ドメイン名(IDN)委員会からの報告
6. 政府諮問委員会(GAC)からの報告
7. 「ICANN改革に向けての青写真」について
8. ドメイン名のウェイトリスティングサービス(WLS)について
写真
加藤氏によるプレゼンテーション
ICANN理事
発言の順番を待つ参加者
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<概要報告>
- ICANNの発展と改革に関する委員会より、最新発表文書「ICANN改革に向けての青写真」
についての説明が行われたが、その後、会場の参加者からの熱心な意見発表が相次いだ。
独自に用意したICANN改革に関する長文の声明を読み上げる者が多く、参加者の関心度
の高さがうかがえた
- 政府諮問委員会(GAC)からは、コミュニケおよびICANN改革に関する声明文が発表され
た。ICANN改革に関しては、総じてICANN側の提案を支持する立場をとっている。ここで
も会場の参加者からの積極的発言が見られ、GACが民間組織であるICANNへの関与を強め
ようとしていることへの懸念を表す者もいた
- ICANNからの「削除済みドメイン名の請戻し猶予期間」提案、およびVeriSignからの
ウェイトリスティングサービス(WLS)提案については、ビジネス関係者を中心に反響
があったが、概ね前者については支持、後者については反対の声が聞かれた
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<詳細記録>
■1. 各種委員会とその他の組織からの報告
●1.1. ICANN事務総長からの報告
#予算案を含めたICANNの活動に関する全般的報告が行われた
●1.2. ルートサーバーシステム諮問委員会(RSSAC)からの報告(by 村井氏)
○ルートサーバー運用者の役割:
- ルートゾーンファイルのコンテンツをコミュニティに提供
- ICANN/IANAによる意思決定の下でボトムフレーム部分を担当
+ データベースの更新
+ ルートサーバー間でデータベースの共有
+ 全ユーザーに利用可能にする
○活動状況など
- 過去12回のミーティングを開催(ほとんどがIETFミーティング)
- 2001年11月のICANN会議でセキュリティをテーマにし、ルートサーバーのセキュリティ
について話し合った(ゾーンファイルのトランスファーなど)
- 今回の会議でccTLDレジストリ部会とのミーティングを実施。非常に重要
- IPv6問題も他のDNSシステムと共に重要
- IDNがルートサーバーに及ぼす影響:事前のテスト実施が重要
○ICANNとの契約問題
- 法的問題の関係者を含め検討を行っている
○ルートサーバー(再)配置の問題
○今後の予定
7月14日にIETF横浜ミーティングを開催
[質問]
Q.ルートサーバー配置の国際化をどう進めていく?
A.10台が米国内にあるのは、過去には合理的であったが、その後3台が再配置された。
サービスのクオリティが最も重要な要素。エンジニアリング面、トラフィック面で賢
明な状況を模索する必要がある
Q.ルートサーバーの数が13台であることの理由は?
A.ルートサーバーの数を増やす提案が多くなされている
フェーズ1のタスク:数が増えた場合の配置の問題
フェーズ2のタスク:配置場所の問題
1台は運用の継続が困難になっており、再配置が必要
理事会はルートサーバー運用に関する技術上・政治上の問題についての協議を始める
べき(Cerf)
●1.3. セキュリティおよび安定性に関する諮問委員会(by Stephen Crocker)
- 昨年11月のマリナデルレイ会議ではセキュリティおよび安定性に関する様々なプレゼン
テーションを実施
- 委員会メンバーは多様なバックグラウンドを持つことの強み(ルートサーバー運用者、
gTLD・ccTLD運用者、その他)
- 委員会チャーターについて
委員会の目的はDNSとアドレス割り振りのポリシー策定(運用組織ではない)
- Measurement
- 進捗状況などの情報をICANNウェブに公開していく予定
- 短期的スケジュール
上海会議までに詳細部分、脆弱性、セキュリティの構築、測定(measurement)の方法
などについて検討
●1.4. At-Large組織委員会からの報告
※DNSO総会(General Assembly)での発表と同内容
- アクラ会議において強固なAt-Largeのメカニズムが必要との決議がなされた
- Esther Dyson氏によりUS$17,000の資金提供
- 世界中で16のAt-Large組織が設立・指定された
- At-Large組織委員会を暫定的に設置し、活動を行っている
ALSC, NAISメンバなどにより構成
(委員会メンバー:http://www.at-large.org/at-large-members.htm)
- 目標:ポリシー策定やDNS管理の実施などに個人ユーザーの代表を参加させること
- ICANN改革についての提案:
+ 理事会は新たなAt-Largeを制度化すべき
+ 透明性、広範からの参加などを増強させるべき
+ 個人ユーザー参加のためのvenueを設立すべき
[質問]
Q.委員会の下に複数の組織がある階層構造を持つ状況で、いかにして一般ユーザーの
参加を透明性のあるものにしていけるのか?
A.我々はひとつの方向に向かおうとしてるのではなく、多様な異なる意見を尊重して
やっていく
●1.5. ASO アドレス評議会からの報告
- 新RIR(LACNICおよびAFRINIC)について
- RFC2050の見直しについて議論を開始
- RIRはIPv6に関する共通ポリシーを策定
●1.6. PSO プロトコル評議会からの報告
○PSOの使命と構造について
- ETSI、IETF、ITU-T、W3Cにより構成
- 最近メンバーの交代が数回行われ、多様な意見を反映するベース
- インターネットプロトコルのパラメータ割り当てに関する問題を理事会に勧告
○PSOの活動
- 共同のポジションペーパーを発表
- 6月に会議を開催
○ICANN改革について
- 組織ごとにそれぞれポジションペーパーを発表
○PSO選出理事の選考
- 6/1に候補者のオープンコール
- 10月に選出予定
○各構成組織の紹介
●1.7. DNSO ドメイン名評議会からの報告
- トランスファーについての作業が遅延気味
- WHOISについては、タスクフォースが調査を実施。コメント募集の後、最終勧告書を
作成予定
- .ORG新レジストリ選出について
理事会の電話会議により決定する場合は、公開型の会議とすることを要請
○ICANN改革に関する声明
- 資金確保が鍵となる。核となる資金確保はgTLDドメイン名登録料により賄われる
ことになる。「改革に向けての青写真」の提案内容を支持
- ポリシー策定機関からの代表が理事会議席の半数を占めるべき
- 政府からの代表理事は投票権を持つべきではない。GACとのリエゾン関係がより望ましい
●1.8. DNSO ccTLDレジストリ部会からの報告
#ccTLD管理者によるコミュニケの発表
http://www.wwtld.org/~wwtld/livescribe/communique.html
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■2. 2002-2003年度予算案について
http://www.icann.org/financials/proposed-budget-15may02.htm
- 予算案作成作業の経緯説明
予算委員会および諮問委員会からの助言をもとに作成
- この予算案は改革前の予算
セキュリティ委員会の新設やインフレその他の状況を反映
- ハイライト
+ IANAサービスの改善
+ gTLDレジストリ・レジストラへのサービス向上
+ セキュリティ委員会、IDN委員会への支援
+ 契約モニターの改善
+ ICANNの運営業務におけるセキュリティ・強固性の向上
+ 新gTLD評価
+ At-Large活動への暫定的支援(200,000を提供の予定)
+ 新たなccTLD契約締結に向けての交渉に継続的に取り組む
- 以下は予算に含まれていない
+ 改革に伴う予算(オンブズマン、一般からの参加の管理者)
+ DNSO事務局維持費
その他
- 資金確保のモデル
+ TLDレジストリ
+ RIRレジストリ
+ TLDレジストリ料(固定費)
+ レジストラ認定料
+ ccTLDからの献金
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■3. 「削除済みドメイン名の請戻し猶予期間」の実装案について
#技術運営グループによる実装案の説明
- 削除未決期間の延長
- レジストリ・レジストラの透明性の要件
削除、回復されたドメイン名の扱いはオープンで透明性のあるものにする
- 新たな「回復(restore)」機能の作成
- 「回復」ドメイン名のレジストリ料金
#会場のビジネス関係者からは、この提案を支持する声明が複数出された
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■4. 新TLD評価プロセス計画タスクフォース(NTEPPTF)からの報告
http://www.icann.org/committees/ntepptf/draft-final-report-15jun02.htm
暫定報告書を2001年12月に発表の後、最終報告書ドラフトを2002年6月に発表
○最終報告書ドラフトの内容
- 評価のための質問事項を掲載
- 人的資源および時間が限られているため、優先的質問事項に焦点を絞って評価作業を
進める
- 勧告の要旨:
+ 理事会は本報告書に記載の重要な質問事項に関する評価を早急に開始すべき
+ 本報告書にて推奨している方法を採用すべき(評価のプロセス、TLD評価諮問委員会
による監視)
+ 評価作業は本報告書にて推奨しているスケジュールに沿って進めるべき
(2003年6月までに評価を完了)
#会場からのコメント抜粋
- 競争環境の導入に賛成
- タスクフォースは完全に誤った方向に進もうとしている
- プロセスの遅延を懸念
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■5. 国際化ドメイン名(IDN)委員会からの報告
※ccTLDレジストリ部会会合(2日目)での報告と同内容
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■6. 政府諮問委員会(GAC)からの報告
○コミュニケの発表
- ICANNおよびccTLDコミュニティとの対話
ccTLD部会との合同ミーティングにおいて、今後小規模なグループを結成し対話を
進めていくことが話し合われた
- .info国名の解放について
開放の要請について、2003年12月を期限とする
○ICANNの発展と改革についての声明文の発表
#以下、内容の抜粋
- ICANNのミッションステートメント(「ICANNの使命について」)については満足してい
る
- 米国政府は文書「改革に向けての青写真」について満足しており、なんらの修正は必要
ないと考える
- ICANNは安定した資金確保の基盤作りに努めるべきである
- 理事会構成:GACはICANN理事会との対話を希望
- 理事選出プロセス:指名委員会については総じて特別の見解はない
- 政治上のリスクから、理事会への代表選出については支持しない(職権上の理事を除く)
- GACが理事会へ直接問題提起できるよう定款の改定を行う
- ポリシー策定に関し、外部からの専門家に助言を要請するという案を支持
- 改革に向けての移行:ブカレスト会議から上海会議までの間に細部の移行を実施するべ
き(ICANN定款の改定を含む)
#会場の参加者からの反応が大きく、活発な質問が出た
- コミュニケにはGACとしての総意が見られる部分とそうでない部分が見受けられるが、
その場合理事会としてどう受け止めればよい?(Cerf)
- 我々消費者はICANNプロセスに組み入れてもらえない。GACがポリシー問題に関与して
いこうとするのであれば、理事会ではなく我々に対してアプローチを行うべき
(消費者団体)
- GACミーティングをもっとオープンにできないのか?
- GACは「民間セクター」の組織であるICANNでリーダーシップをとろうとしているのか?
- GACメンバーは自国の政府の代表として位置づけているのか?
→GACメンバーの中には、GACミーティングの内容を大臣レベルに直接持ち帰る国もあれ
ば、そうでないところもある
#Paul Twomey氏は10月の上海会議でGACチェアを辞任する予定であったが、2003年3月の任
期終了まで留任の意向であると説明
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■7. 「ICANN改革に向けての青写真」について(by ICANNの発展と改革に関する委員会)
○委員会の紹介:理事5名(1名は辞任)により構成
○経緯:DNSOおよびAt Largeの見直しに続き、Stuart Lynnからの改革案が発表
2~6月まで作業を継続してきた。多方面からの意見を聞くことに尽力してきた
○文書の内容説明
- 使命を明確に定義
- 合法性の問題(合法性と代表とのバランス、信頼性)
- 支持組織:
名称を変更した(GNSO、CNSO)
ccTLDの法人化には反対
ASO
- 各種委員会:
指名委員会はICANNの監督機関ではない。15種類の組織代表により構成
- ポリシーおよびプロセス
ボトムアップで総意に基づくものとすべき
プロセスが多すぎるということだけが改善の理由ではない。適切な機関に委任すべき
明確なタイムスケールを設ける
- 説明責任
オンブズマン、一般からの参加、理事会決定措置の再検討、定款の改定など
- 政府からの参加:政府とのよりよいコミュニケーションを図る必要
- 専門家による助言パネル:安定性確保のため重要
- 資金確保:運用業務を分離させるのではなく、明確なインターフェイスを設ける
○今後の作業
- コミュニティからのインプットおよびフィードバック
- 細部の検討
- 定款
- 移行の手続き
#会場からのコメント
- ICANNと契約関係にあるレジストリ・レジストラについては、紛争解決の機能を確立す
べき。理事会の権威に基づき諸問題を解決すべき
- gTLDの資金確保モデルはccTLDには適切ではない(NCメンバー)
- ポリシー策定は支持組織に委ねられるべき
- 「改革に向けての青写真」の提案内容への懸念。ICANNは効率化の名の下に「参加」の
原則を損いつつある
- GACリエゾンオフィサーの設置のみでは不適切。日本ではccTLD管理者と政府が良好な協
力関係にある。GACとccTLD管理者とのワークショップが同様の良好な関係構築に役立つ
と考える(JPRS 堀田氏)
- 「改革に向けての青写真」では3つの支持組織が提案されているが、異なる性質・役割を
持つ支持組織に単一のポリシーをあてがうのは問題(Kilnam Chon, KR)
- 指名委員会は理事の指名のみを行い、支持組織は対象に含めるべきではない。ポリシー
策定にステップが欠如している(Cade, DNSO ビジネス部会)
- IANA機能はICP-1に基づき運用されているが、ccTLD管理者を代表してICP-1をICPシリーズ
の一つとして位置づけることに反対する(Marianne, CENTR)
- ICP-1に規定されているポリシーは理事会によって採択されたのか?(Peter, NZ)
→ICP-1はRFC1591を再編成したものであり、新たなポリシーではない
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■8. ドメイン名のウェイトリスティングサービス(WLS)について
- VeriSignからの提案
- 2つの特徴
WLSは削除済みドメイン名の割り当て方法を変更する
VeriSignはサービス料の課金を提案
●8.1. VeriSignによるWLSの説明
- 3つのプールによる解決
- WLSをアウトソースする
- 背景説明
- 現在の登録者には何ら影響を及ぼさない
- レジストリにとってはドメイン名が削除されれば100%efficacyになる。
- 我々の顧客のビジネスを侵害するものではない
- 結論:レジストラ、顧客などからのフィードバックを反映し、次の3つの変更を行う
こととする
1.暫定的「削除済みドメイン名の請戻し猶予期間」は完全に実装されるまでWLSと共に
行われる
2.SnapNamesなどへの特別措置はなくす
3.リベートを除外し、レジストラへの課金は24ドル/年とする
●8.2. NCのTransferタスクフォースからの報告
1.合法性の問題
2.プロセスの問題
理事会への勧告ドラフト:
- 理事会は早急に「削除済みドメイン名の請戻し猶予期間」 のポリシーおよび実施案
の実装を進めるべき
- 理事会はVeriSignからの要請(WLS導入のための契約改訂)を却下すべき
- 理事会はVeriSignからの要請(12ヶ月間のWLS試用期間導入の要請)を却下すべき
他
- 次回のNC会合で最終勧告書を完成させる予定
#会場からのコメント抜粋
- WLSは競争を減少させることになる。WLSを100%得られる保証はない
- 料金を決定する際にはレジストラに選択余地を与えるべき(Melbourne IT)
- 「削除済みドメイン名の請戻し猶予期間」の導入により多くの解決がなされる。マー
ケットの改革を望む(Scot Evans, IP部会)
- 全レジストリが同様のサービスを導入することで、VeriSignが不当な料金設定をする
ことを防げる
- 顧客の要望を第一に考慮すべき