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WG-C(新gTLD追加について)レポートへのコメント ver. 0.3 (updated: 4.12)

0. 序

 この文書は、JPNICの有志によって議論の上まとめられた、 gTLD追加に関するDNSO WG-Cのレポートに対する見解である。 本文書中に提示している我々の見解の骨子は以下の通り。

  • レポート中課題1としてあげられている、gTLDを追加すべきというWG-C内のラフコンセンサスには、賛同する。
  • レポート中課題2としてあげられている、最初に導入するgTLD数を6~10とし、評価期間を設けるというWG-C内のラフコンセンサスにも賛同する。ただし、最初の導入に先んじて、1999年11月にNames Councilから提出された暫定レポート中の課題を解決する必要がある。その課題は以下の通りである。
    • 今後追加するgTLDの性質をどのように定めるか
    • 拡張空間への移行をどのように行うか
    • gTLDレジストリは共有すべきか
    • 新gTLDレジストリは営利とするか、非営利とするか
    • 新gTLDレジストリの選定プロセスはどのようなものか
  • また、ccTLDと誤認されるような文字列のgTLDは追加すべきではないと考える。
  • そして、我々は、著名商標保護のメカニズムが整備されてから、新しいgTLDを追加すべきと考える。

 .comを中心とした現在のgTLDは、 複数のレジストラが競争する環境を作ったことにより、 登録ビジネスという観点からは独占の弊害は薄れてきている。 しかしながら、gTLDが未だ .com、.net、.org の3つに限定されていることから、 特に.comへの登録が集中し、その名前空間が急速に不足状態となってきている。 今必要なのは、.comに対抗し得る新しいgTLDの創設であり、 gTLD間の適切な競争(すなわち、レジストリ間の適切な競争)である。 我々の検討作業は、この点にプライオリティがおかれた。 すなわち、誰でもが使えるドメイン名の空間を増やすことによりインターネットの健全な発展を図ることを最優先課題とした。

 なお、本コメントはJPNIC有志がまとめたものであり、 決してJPNIC全体として、または組織としての方針表明ではない。 また、これは、ccTLDの立場としてではなくインターネットの健全な発展を多面的に議論したものであることを明記する。

1. 「課題1. 新gTLDを創設すべきか?」について

 我々は、新しいgTLDを追加すべきであるとするWG-Cのラフコンセンサスに賛成する。 gTLDレジストリの競争を実現し、既存の.COMへの集中を緩和するためには、 新しいgTLDを追加することが望ましい。

2. 「課題2. 最初の実施時におけるgTLDの性質」について

 まず最初に 6~10のgTLDを追加し、 一定の評価期間を設けるというWG-Cのラフコンセンサスに賛同する。 ただし、6~10のgTLD追加にあたっては、 前回Names Councilから提出された暫定レポートで提示され、 コンセンサスが形成されていなかった課題が解決できている必要がある。 その課題とは以下の通りである。

2-1. 今後追加するgTLDの性質

 新しいgTLDを追加する目的は、 gTLDレジストリレベルでの競争環境を実現することである。 また、既存の .com等の登録について、空間の不足感や独占、 投機などの問題が指摘されていることから、 既存のgTLDに対して競争力のあるgTLDを作ることも、プライオリティである。

 ただ、.comに対抗する新gTLDの導入を最優先とすれば、 最初の6~10の導入段階では、そのTLDをcharteredにする必要はないであろう。 初期に追加するTLDは、 特定の業界(specified business field)を示すもの(例: .airline)でない方が良い。

なお、WG-Cのレポートでは、"global" TLD と"generic" TLDが混在しており、 それらの意味上の使い分けが不明であった。 従って、我々は、ここで国籍を問わず、openな、 charterのないTLDをgTLDと呼ぶことにする。

2-2. 拡張空間への移行をどのように行うか

 今後gTLDを追加し、ドメイン名空間を拡張していくときには、 そのパフォーマンスを評価し、導入が成功するか検討しなければならない。 そして、最終的に導入を決定することになるICANNが、 評価の尺度を考え出す必要がある。 これが決まっていないと、最初の追加はともかく、 その後の追加を承認するかどうかを、合理的に決定できない。

 なお、最初の追加である6~10個のgTLDについては、 導入前に評価尺度を厳格に決めず、実装しながら運用状況を監督し、 問題が生じたときに対応するやり方でも問題はないであろう。

2-3. gTLDレジストリは共有すべきか

 現在の.COM、.NET、.ORGに対抗できるようなgTLDを追加し、 レジストリレベルの競争環境を創出することが重要である。 また、 新しく追加されるgTLDのレジストリを以前のNSIのように独占状態にする必要性はない。 従って、NSI Registryが現在採用している共有レジストリシステムを採用した方が良い。 なお、レジストリおよびレジストラの公平な競争を実現するため、 あるgTLDに関して一つの会社がレジストリとレジストラを兼ねることを認めないようにすべきである。

2-4. 新gTLDレジストリは営利とするか、非営利とするか

 新しいgTLDのレジストリを営利とするか、非営利とするかは、 ICANNがレジストリ募集の際に、レジストリ資格要件の一つとして明示する必要がある。 従って、これについてもICANNは方針を決めるべきである。

 なお、我々としては、営利/非営利どちらでも特に問題はないと考えている。

2-5. 新gTLDレジストリの選定プロセスはどのようなものか

 新しいgTLDとそのレジストリを選定するために、 WG-Cレポートでは3つの案が紹介されている。 すなわち、

  1. ICANNが新gTLDの文字列を決定し、それを運営するレジストリを選定する。
  2. ICANNが規定するレジストリの要件に基づいてレジストリを選定し、その後で、各レジストリが新gTLDの文字列を決定する。
  3. レジストリ候補が自ら運用したい新gTLDの文字列とともに申請し、ICANNはレジストリ+提案されたgTLDの文字列を選定する。

というものである。我々は、その3つのうち、(3)を支持する。

 その理由は、次の通りである。 多くのレジストリ希望者は、 レジストリ業務そのものにインセンティブを感じているというよりも、 「特定の文字列を掲げたレジストリ」に大きなインセンティブを感じていると考えている。 したがって、 それぞれが取り扱いたいgTLDの文字列とともにレジストリの申請をするという形が望ましいと考える。

2-6. 新gTLDレジストリの選定プロセスはどのようなものか

 レジストリ希望者は、入札によって決まるべきである。 なお、ICANNは、入札の基準を決めておく必要があるだろう。 この他これに関連してICANNが決めておくべき事項としては、 1社が複数レジストリに入札できるのか、レジストリ選定において、 geographic diversity を考慮すべきか、 入札を希望するレジストリ候補者がICANNに対して提示するものは何か、 などである。

3. その他

 我々が議論した際に出たその他の意見としては、 ISO3166の3文字コードや非英語による記述を含む、ccTLDと誤認されるような文字列は、 gTLDとして採用すべきではないというものである。

 また、著名商標保護の如何に関してはWG-Bの担当となっているが、 この著名商標保護のメカニズムを整備するまでは、新gTLDを追加すべきではない。 商標の保護や誤認を招く文字列登録の防止は、消費者を混乱させずに、 インターネットを安定的に運用することを目指したものであり、 我々が考えているところの、 gTLD追加の目的を果たすための一つの方法ということができる。

 ただ、この点に関しては、 「著名商標保護メカニズムの整備までの間はUDRPで対応すればよい」という反対意見も見られ、議論参加者の意見の完全一致が見られた訳ではない。

丸山 直昌 (JPNIC ドメイン名検討部会、企画・国際部会、ドメイン名の紛争解決ポリシーに関するタスクフォース)
久保 次三 (JPNIC ドメイン名検討部会、ドメイン名の紛争解決ポリシーに関するタスクフォース)
堀田 博文 (企画・国際部会)
坪 俊宏 (JPNIC ドメイン名検討部会、企画・国際部会、ドメイン名の紛争解決ポリシーに関するタスクフォース)
矢部 耕三 (JPNIC ドメイン名の紛争解決ポリシーに関するタスクフォース)
荒野 高志 (JPNIC 企画・国際部会、IPアドレス検討部会)
大橋 由美 (JPNIC 事務局)
松丸 真紀子 (JPNIC 事務局)
草場 明子 (JPNIC 事務局)

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