2002年8月16日
「改革に向けての青写真」について - Lynn提案との比較 -
2002年6月28日にICANN理事会が採択した「改革に向けての青写真」では、ICANN事務総長のStuart Lynn氏による改革案(以下「Lynn提案」)からいくつかの変更がなされました。
<変更1>理事会の構成
Lynn提案の大きな特徴は、広範にわたる公益性の観点を理事会に取り入れるための方法として、各国政府が5名の理事を選出するというものでした。「青写真」では、このような政府による直接関与の形式は採用されず、職権上の理事と指名委員会が選出する理事によって構成される15名の理事会となっています。また、各諮問委員会と技術専門家組織から、投票権を持たないリエゾンが1名ずつ選出されます。
<変更2>ポリシー策定の組織構造
現在のポリシー策定組織はドメイン名支持組織(DNSO)、アドレス支持組織(ASO)、プロトコル支持組織(PSO)の3つですが、「青写真」ではLynn提案を踏襲し、現在のDNSOがgTLD関連のポリシー策定組織(GNSO)とccTLD関連のポリシー策定組織(CNSO)に分かれることになります。また、PSOは解散し、その機能は新たに設置される技術諮問委員会(TAC)が行うことになります。
Lynn提案では、組織運営をより実効的なものとするために、各組織の運営メンバーの半数弱を指名委員会が指名し、理事会が承認するとしていましたが、「青写真」では指名委員会が指名するメンバーの比率が削減され、さらに理事会による承認は必要なくなりました。また、「青写真」では各組織の運営グループに政府諮問委員会(GAC)が指名する投票権を持たないリエゾンを1名置くことになりました。
<変更3>指名委員会の構成
理事会メンバーとポリシー策定組織の運営メンバーを選出する指名委員会に関しては、その性質がLynn提案から大幅に様変わりしました。Lynn提案では、現職理事と理事会が選任した者によって構成されるために、理事会による影響力が必然的に強くなることが予想されたわけですが、このような閉鎖性に対する批判が大きかったことから、「青写真」では広範な組織・分野の代表からなる多様性を反映させた構成となっています。
<変更4>資金確保の構造
Lynn提案では、ICANNが本来の使命を達成できない原因の一つに資金不足があるとし、ICANNに実効性をもたらすために資金確保の基盤を大幅に拡張することが謳われていました。このため、ICANNと契約を締結しているレジストリ・レジストラに加え、ICANNプロセスに参加する各国政府からも資金を回収することが提案されていました。これに対し「青写真」では、受益者負担の原則を反映させ、ICANNと契約を締結しているレジストリ・レジストラがICANNプロセスの恩恵を受ける全員を代表して資金提供をすべきであるとしています。