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    /P▲         ◆ JPNIC News & Views vol.603【臨時号】2008.12.19 ◆
  _/NIC
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◆ News & Views vol.603 です
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本号では、vol.600、vol.601に引き続き、第73回IETFのレポート[第3弾]とし
て、IPv6関連WGの動向についてお届けします。

なお、今回のIPv6関連WG報告は、前後編に分けての発行となります。
前編となる本号では、IEPG、6man、v6opsの各WGの動向をご紹介します。

□第73回IETF報告 特集
○[第1弾] 全体会議報告 (vol.600)
  http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2008/vol600.html
○[第2弾] DNS関連WG報告 (vol.601)
  http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2008/vol601.html

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◆ 第73回IETF報告 [第3弾]  IPv6関連WG報告 [前編]
                                   JPNIC IPアドレス検討委員会メンバー/
                                     NTT情報流通プラットフォーム研究所
                                                              藤崎智宏
                                     NTT情報流通プラットフォーム研究所
                                                              松本存史
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第73回のIETFは、2008年11月16日から21日まで、米国ミネアポリスにて開催さ
れました。既にミネアポリスは最高気温がほぼ摂氏0度という気候で、日本に
比べてかなり寒く、また、暖房のためか部屋が極端に乾燥しており、体調を崩
していた日本の方が非常に多く見受けられました。

本稿では、会期中に議論された、IPv6に関連したトピックスをいくつか紹介し
ます。

◆IEPGミーティング(Internet Engineering and Planning Group)

IEPGミーティングは、毎回、IETFミーティング開始前の日曜日の午前中に開催
されています。IPv6に関連する発表としては、IEPGのチェアであるKurtis
Lindqvist氏による、.se(スウェーデン)におけるIPv6利用状況に関する報告、
および、Brian Carpenter氏のリナンバリングに関する検討がありました
(Brian氏の代理でチェアが発表しました)。

IPv6の利用状況に関しては、このところNANOG等のオペレーターミーティング
や、APNICのようなRIRミーティングでもしばしば報告されますが、その多くは
現状、IPv6トラフィックはほとんどない、というものです。今回のKurtis氏の
発表では、トラフィック量の具体的な値にはあまり触れられませんでしたが、
IPv6対応したコンテンツサーバ(ニュースサイト)におけるアクセス状況の分析
結果についての報告がありました。このサイトでは、2008年1月から9月までの
間に、11,504のアドレスからのアクセスがあり、アクセス手段の内訳は、6to4 
が83%、ネイティブが10.5%、Teredoが2%となっていること、また、OS種別で
は、MacOS Xが52%と多く、Windows Vistaが21%であったとのことです。

この他にも、別なサイトの短期間データも紹介されましたが、トラフィックの
大部分はまだまだトンネルプロトコルであることが指摘されています。Kurtis 
氏は、この原因の一つとして、「xDSLやFTTx等のブロードバンドネットワーク
におけるIPv6技術の標準化が十分でない」という意見がオペレーターより寄せ
られていることを紹介していました。


□IEPGのWebページ
    http://www.iepg.org/


◆6man WG(IPv6 Maintenance WG)

6manワーキンググループ(WG)は、IPv6のプロトコル自体のメンテナンスを実施
するWGです。今回は、月曜日の午後最初のコマにて、120名程度の参加者のも
と、ミーティングが開催されました。

最初に、チェアから、アジェンダの確認と、WGで扱っている文書について、次
の通り現状報告がありました(これらの項目が、IETF73開始時点における6man
WGのオフィシャルな議論アイテムとなっています)。

・前回議論になった重複フラグメントに関するドラフトのWGアイテム化
・予約インタフェース識別子ドラフトをIESGにレビュー依頼
・IPv6サブネットモデルについては、問題点について議論継続
・アドレス選択問題解法ドラフトは、設計チームの結果が出るまで議論停止
・ノード要求文書については、今回議論

今回は、

1. フローラベルの利用法方法の提案
2. IPv6複数アドレス選択に関する報告
3. ノードに対する要求仕様議論
4. ルータ広告を利用したDSL回線識別方法の提案
5. 短命IPv6アドレスの提案
6. IPv6アドレスのステート拡張
7. ドメイン名を利用したインタフェース選択

のそれぞれの項目について、議論が実施されました。次に、このうち重要な議
論について説明します。

2.の「IPv6複数アドレス選択に関する報告」と3.の「ノードに対する要求仕様
議論」は前述の通り、6man WGとしての正式な対応アイテムとなっています。2
のIPv6複数アドレス選択に関する議論報告は、前回のIETFでの6man WGミー
ティングにて設立が決まった、IPv6アドレス選択設計チームの議論報告です。
ノードが複数のIPアドレスを持っている場合、通信をする際に使用するアドレ
スを選択することが必要になります。その際に使用する選択ポリシーを配布す
る機構について、どのようなタイミングでポリシー配布が必要か、また、どれ
くらいの頻度で配布することが必要かの検討結果として、多くの場合、頻度的
にはそれほど多くなく、また、ネットワーク管理者がポリシー配布のトリガー
となることが多いという報告がありました。会場から、ポリシー配布のみでな
く、ベースとなっているRFC3484のアドレス選択機構自体の検討も進めてほし
いという意見がありました。今後、配布に使用するプロトコルの検討等、さら
に議論を進めていくとのことです。

5.「短命IPv6アドレスの提案」は、IPv6の新たなアドレスとして、アプリケー
ションが短時間だけ利用する「短命IPv6アドレス」を定義しようという提案で
す。従来、匿名性等を担保するために、ランダムなアドレスを一定期間利用す
る、一時アドレス(RFC4941)が定義され、既にWindows Vista等で利用されてい
ます。今回提案された「短命IPv6アドレス」は、アドレスの有効期限をさらに
短く、アプリケーションが通信する"セッション"毎とすることで、匿名性を向
上させ、アドレスが外部に漏れることから発生するセキュリティ問題を防ご
う、というものです。発表では、実装して試験をし、問題がないとのことでし
たが、会場からは、短時間でアドレスを大量に使用する場合、ルータ等のND
キャッシュへの影響が大きいことや、セッション毎にアドレスが変わるとなる
と、現在、サーバ側は、同じノードは同じアドレスを使っているという前提で
動いているものがあるため、通信のセマンティクスが変わってしまう、といっ
た意見が出されました。

7.の「ドメイン名を利用したインタフェース選択」では、複数のネットワーク
インタフェースを持ち、別々のネットワークに同時に接続しているノードが通
信をする場合、通信先のネットワークを選ぶ際にドメイン名を利用することを
提案しています。それぞれのネットワークがDNSサーバアドレスをノードに伝
える際、ドメインサフィックスも同時に伝え、そのドメインサフィックスに該
当する名前解決、通信は、該当するインタフェース向けに実施しようというも
のです(日本では、NTT東西の提供するアクセス網にて、同様の技術がアドホッ
クに利用されています)。この提案に対しては、利用環境に関する質問や、既
存の経路制御を利用することで実現可能であるといった議論が実施されまし
た。

それぞれの新提案については、継続議論となっています。

□6man WG
  http://www.ietf.org/html.charters/6man-charter.html

□第73回IETF 6man WGのアジェンダ
  http://www3.ietf.org/proceedings/08nov/agenda/6man.html


◆v6ops WG(IPv6 Operations WG)

v6opsは、IPv6とIPv4の共存技術、IPv6のディプロイメントに関する話題を扱
うWGです。今回は火曜日の午後最初のコマにて、ミーティングが実施されてい
ます。参加者は、150名程度に見受けられました。

前回ダブリンで開催されたIETFでは、IPv6/IPv4の共存技術であるIPv6トラン
スレータに関する議論が長時間にわたって実施されましたが、10月1日から2日
にカナダのモントリオールにて開催されたsoftwire、v6ops、behave、intarea
の各WG合同のIPv4-IPv6共存中間ミーティングでの議論の結果を受け、実際の
プロトコル策定議論は、behave WGとsoftwire WGにて実施されることになりま
した。

今回は、

1. 不正ルータ広告への対応に関する提案
2. CPEルータの仕様に関する提案
3. Teredoの拡張に関する提案
4. サイト境界ルータ発見プロトコルと経路制御に関する提案
5. スウェーデンにおけるIPv6利用の紹介
6. Google社におけるIPv6統計情報の紹介

の六つの項目の議論がありましたが、最後の2点は状況紹介であり、v6opsで扱
う議論項目が急に少なくなってしまった感がありました。ここでも、このうち
重要な議論について、ご説明します。

セッションは、チェアからのWG文書5点に関するステータス報告から始まりま
した。WG文書を含め、現在v6ops WGで扱っている内容は、セキュリティに関す
る話題が多くなっています(上記5点のWG文書うち3点が、CPEルータ、ルータ広
告、トンネル機構のそれぞれのセキュリティに関する検討となっています)。

1.の「不正ルータ広告への対応に関する提案」は、ここ数回議論が続いていま
す。今回議論された対象は、要求条件ドラフトに関するもので、前回のIETFで
WGアイテムとして認定された文書の改版です。この要求条件ドラフトと、解法
の一つであるRA Guardの双方のドラフトについて、WGラストコールが実施され
ることになりました(執筆時において、既にMLでのラストコール期間は終了し
ています)。

2.の「CPEルータの仕様に関する提案」に関しても、ここ数回継続的に議論さ
れています。前回IETFのWGミーティングにおいて、この提案は重要であるとの
合意は得られましたが、内容的に不足点が多く、WG文書化は見送られていまし
た。今回の改版で、モデルや環境の追記、不必要と指摘された記述の削除、
IPv4からの移行/共存に関する記述の追記等を実施し、WG文書として今後検討
を継続することとなりました。3.の「Teredoの拡張提案」は、Teredoを改良
し、より多くの種類のIPv4 NAT環境下で動作するようにしたことについて、非
常に詳しい解説がありました。こちらは、v6opsで扱う内容を超えるものがあ
るため、intareaにて議論が継続されますが、v6opsでもWGラストコールがかか
る予定です。

5.「スウェーデンにおけるIPv6利用の紹介」と6.「Google社におけるIPv6統計
情報の紹介」は、IPv6のトラフィック状況などに関する報告です(5.は、IEPG
で報告されたものと同じものです)。6.は、Google社のサービス向けのトラ
フィックからIPv6の普及度合いなどを測定したもので、測定手法の紹介、IPv6
浸透の状況について多角的に報告がありました。これによると、IPv6の普及度
合いが高いのはロシアやフランスで、日本はかなり下位となっています。私見
ですが、日本の普及度合いが低く測定されている原因としては、計測トラ
フィックの60%程度が6to4であり、IPv6ネイティブアドレスがついている場合
や、IPv4グローバルアドレスが端末に直接付与されない場合には6to4機構が利
用されないことから、環境的な問題ではないかと思われます。Google社の報告
の結論としては、IPv6の普及度は低いものの、増加傾向であること、現状で
は6to4がIPv6移行プロトコルの主流を占めることが述べられています。

□v6ops WG
  http://www.ietf.org/html.charters/v6ops-charter.html
  http://www.6bone.net/v6ops/

□第73回IETF v6ops WG のアジェンダ
  http://www.ietf.org/proceedings/08nov/agenda/v6ops.txt


第73回IETFミーティングの各種情報は、以下のURLより参照可能です(議事録も
今後掲載される予定です)。

□ 全体プログラム、WGアジェンダ、発表資料
   https://datatracker.ietf.org/meeting/73/materials.html

□ 録音
   http://videolab.uoregon.edu/events/ietf/


次号では、behave WG、intareaの活動をご紹介します。


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       わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。
            http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html
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 JPNIC News & Views vol.603 【臨時号】

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