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    /P▲         ◆ JPNIC News & Views vol.629【特別号】2009.4.3 ◆
  _/NIC
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   ┃        JPNICはIPv4在庫枯渇の問題に取り組んでいます         ┃
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   ┃★Webサイト:「IPv4アドレスの在庫枯渇に関して」             ┃
   ┃  http://www.nic.ad.jp/ja/ip/ipv4pool/                      ┃
   ┃                                                            ┃
   ┃★バックナンバー:                                          ┃
   ┃  http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/          ┃
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◆ IPv4アドレス在庫枯渇関連レポート [第19回]
   ~アジア太平洋地域におけるIPv4アドレス移転ポリシーの検討状況~
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JPNIC News & Views vol.623(*1)において、APNIC27ミーティングの報告をし
ました。この報告にもある通り、APNIC27ミーティングの焦点が、IPアドレス
移転制度提案であったことは間違いありません。そこで、今回のIPv4アドレス
在庫枯渇関連レポートでは、この移転制度提案にかかわる議論のうち、主に
vol.623の報告に盛り込まなかった部分を中心に取り上げます。それにより、
本提案の取り扱いがなぜ過去に例を見ないほど多様な意見が出て論点を整理す
るのが難しくなってしまったのか、これまでの経緯を振り返りながらお伝えし
たいと思います。


■移転制度提案の経緯

Geoff Huston氏による prop-050が提出されたのは、2007年の7月でした。その
後、2007年9月のAPNIC24ミーティング(ニューデリー)で、初めて議論されまし
た。以降、今回のAPNIC27ミーティングに至るまで、合計4回のAPNICミーティ
ングで議論されてきました。おおまかにこれまでの議論の経過を振り返ると、
以下のようになります(*2)。

  ・2007年9月 APNIC24ミーティング(ニューデリー)
      初回の提案であり、提案者自身が議論喚起のためと位置付けていた。

  ・2008年2月 APNIC25ミーティング(台北)
      議論百出となり、まとまった方向性も見い出されぬまま終了した。

  ・2008年8月 APNIC26ミーティング(クライストチャーチ)
      挙手による賛否表明では、賛成多数という傾向ははっきりし始めたが、
      コンセンサスには至らなかった。

  ・2009年2月 APNIC27ミーティング(マニラ)
      今回のAPNIC27ミーティングでは、賛成が大多数を占めたが、反対も少
      数あった。ただし、賛成とする参加者の中でも提案内容の要素ごとには、
      さまざまな意見があり、要素ごとに多数の支持をもらえる条件を選択し
      ながら、提案文面の修正を行った上で、コンセンサスに至った。

  ・2009年4月3日現在
      移転制度上の諸条件などの要素に関して、ミーティング終了後、早速提
      案が提出され、現在、MLで議論が展開されている。


■格段に難しい提案

この移転制度提案は、現在の形のポリシープロセスが確立して以来、最も難し
い提案と言ってよいと思います。次に難しかったと考えられるのは、2001年8
月に台北で行われたAPNIC12ミーティングでコンセンサスに至った、IPv6に関
するインタリムポリシーです(*3)。この提案は、ポリシーフォーラムによって
議論されたIPv6ポリシーとしては初めてのもので、コンセンサスに至るまでに
多大な調整を要しましたが、それでも基本的にはアドレス分配に関する条件と
パラメータを定めたものに過ぎません。

それに対して今回の移転制度提案は、アドレス分配に関する単なる条件やパラ
メータの制定に留まらず、今までの「IPアドレスは借り受けるもの」「余った
ら返すもの」というアドレス管理の考え方に大きな転換をもたらし、IPアドレ
ス管理の領域の範囲を超え、社会に対しても影響を及ぼしうる、新制度の提案
です。


■JPOPFの賛意とJPNICのポジション

移転制度提案は、JPNICのオープンポリシーフォーラム(オープンポリシーミー
ティングとip-usersメーリングリスト、以下「JPOPF」)でも活発に議論されま
した(*4)。2008年11月のJPOPM15では、APNICミーティングにおける移転制度の
提案者、Geoff Huston氏も参加し、オフ会を含め非常に活発な議論と意見交換、
背景の共有が行われました。その結果、移転制度提案は、JPOPFの参加者から
は概ね賛成されるようになりました。

JPNICは、IPv4アドレス在庫枯渇に際して、アドレスの正当な保持者の同定が
難しくなるという懸念に、何らかの対策が必要であり、その対策としてIP ア
ドレス移転制度が一定の効果を持っていると考えています。

一方で、移転制度を施行した場合、その後で何らかの重大な問題が発生しても
再度移転を禁止するという変更を行うことは困難であるとともに、移転を認め
ることによる副作用(主に制度運営と取引が引き起こすもの)の検証が未だ十分
になされていないため、移転制度を致命的な影響なしに、サービス実施者とし
て安定して運営できる目処が立たないと考えています。

具体的には、少なくとも以下の2点のような懸念があります。

  ・アドレス取引に関し、一方の取引者の過失あるいは故意が原因で、正常な
    取引が行われずにRIR/NIRのデータベースが書き換えられる等により、も
    う一方の取引者の利益が損なわれるようなことがない、適切なプロセス確
    立の目処が立っていない。(またそれにあたっては、その受理を行うRIR/
    NIRにとっても、その受理の民事的責任を裁判などで問われた際には、明
    快に棄却されるようなプロセスが望まれる。)

  ・市場原理により取引が行われるようになると、それによって得られたアド
    レス空間や売却益に対する課税の可能性が生まれるが、そのリスクについ
    て検討がされていない。すなわち、課税に起因して「取引そのものが地下
    にもぐり、データベースの信頼性維持とインターネットの安定性が損なわ
    れる」、また「現況のRIR/NIRにおける在庫、LIRが保持して利用中の空間
    に対しても課税が及ぶ可能性がある」等のリスクが考えられる。こうした
    ことから、現段階では致命的な影響が、社会全体に、そして我々レジスト
    リに及ばないとは言い切れない。

そのため、APNIC27ミーティング直前にたどり着いたJPNIC内の結論としては、
今回のAPNICミーティングでコンセンサスに至り、施行準備に入るのは時期尚
早だ、というものでした。

一方で、JPOPFの議論や意見をJPNICがAPNICミーティングにインプットするこ
とは、JPNICのポリシー策定プロセス上定義されています。結果的に、APNIC27
ミーティングにおいては、JPNIC職員が、「JPOPFからの賛意」と「NIRとして
のJPNICからの反対意見」の双方を同じ場で表明するという、複雑な取り扱い
を行う結果となりました。


■きしむポリシー策定プロセス

「日本のコミュニティからの意見」と「JPNICからの意見」の二つの立場を表
明するというこの取り扱いは、客観的に見ても複雑で分かりにくいものであっ
ただけでなく、JPNICの意見がJPOPFの賛意に反するものであったことから、日
本のコミュニティの一部で、ある種の疑念を持たれているようにも聞いていま
す。JPOPFのコンセンサスに基づきポリシー制定・施行するという立場を持つ
JPNICに対し、JPOPFでのコンセンサスを尊重しないのかという疑念を持たれる
ことは、ある意味当然のことかもしれません。

もちろんJPOPFのコンセンサスを十分尊重した上で、JPNICとしての意見を検討
しました。しかしJPNICは、大半がISPであるAPNICの1,900に上るメンバーのう
ち、IPアドレス管理を「業」として行う、6しかないレジストリの一つです。
ISPからではなく、「レジストリ」という視点から見て、移転実施に伴う懸念
が解消されない以上、たとえ批判を受けたとしても、「懸念がある」という意
見をポリシー策定プロセスの中できちんと共有することは、NIRとしてだけで
なく、APNICのメンバー・コミュニティの一員としても責務であると考えまし
た。

それに加え今回は、さらに議論を複雑にした、ポリシーSIG運営上の問題があ
りました。

APNIC27ミーティングのポリシーSIGでは、SIG会合直前のprop-050、prop-067、
prop-068の統合と再提出、移転制度の中の細かな条件に関する個別の意向聴取
によって、会合中に統合提案テキストの修正を行ったりしました。このように、
取り進め方が複雑になり、特に非英語話者にとってその場で理解し、意見をま
とめるには難解な内容であったことから、さらに本提案の議論を行うことの混
乱度合いが増したように思います。

以上のような難しい取り回しを見ると、本移転制度のように、新制度策定とも
言えるような、アドレス管理の枠組みを抜本的に変える提案の場合には、現行
のポリシー策定プロセスに則った方法の議論では、限界がある可能性が示され
たのかもしれません。「NIRが存在すること」「非英語話者が多い」というア
ジア・パシフィック地域の特質に合ったプロセスを考えていく必要も、一部で
指摘されています。


■今後の流れ

混乱含みではありながら、本移転制度提案は、ポリシーSIG翌日のAPNIC総会で
承認され、ポリシープロセスに従ったコンセンサスとなりました。今後の流れ
としては、メーリングリスト上のラストコール(最終意見聴取・確認)が2009年
4月末まで行われます。これによってコンセンサスが確定した場合には、APNIC
理事会による承認を受け、施行準備に入ります。

APNIC地域以外でも、ARINにおける移転制度ポリシーが理事会承認を受けたこ
とや、LACNICにおいて移転制度提案が提出されたことが、APNIC27ミーティン
グの会期中に報告されました。RIPE NCCでは既に施行が済んでいますので、グ
ローバルにIPアドレスの移転を認める方向で、物事が動いていると言っていい
と思います。

今回のコンセンサスを受け、今後のJPNICにおけるアドレス移転制度の施行に
は、JPOPM(次回は7月に開催予定)における提案とコンセンサスの成立が必要で
す。JPNICの現段階のポジションは上述の通りですが、日本のコミュニティの
意向、グローバルな情勢を十分考慮しながら、課題としている施行上の懸念の
精査を進め、必要なアクションを取ってまいります。


(*1) JPNIC News & Views vol.623
     特集 APNIC27ミーティング報告 [第1弾]
     http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2009/vol623.html

(*2) 移転制度提案のこれまでの経緯は、APNICのポリシー提案Webページをご
     参照ください。
     http://www.apnic.net/policy/proposals/prop-050-v004.html

(*3) IPv6 Address Allocation and Assignment Policy
     http://www.apnic.net/policy/ipv6-address-policy.html

(*4) ポリシーWGのWebページから、各JPOPMの議事録が参照可能です。
     http://venus.gr.jp/opf-jp/


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       わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。
            http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html

        IPv4アドレス在庫枯渇関連のQ&Aは特集ページをご覧ください。
            http://www.nic.ad.jp/ja/ip/ipv4pool/
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