=================================== __ /P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.632【臨時号】2009.4.14 ◆ _/NIC =================================== ---------------------------------------------------------------------- ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ News & Views vol.632 です ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2009年3月22日から27日の6日間にわたり、アメリカのサンフランシスコで開催 された第74回IETFのレポートを、本号より、以下5号の連載でお届けします。 [第1弾] 全体会議報告 ~概要、IETF Technical Plenaryについて~ [第2弾] 全体会議報告 ~IETF Operations and Administration Plenaryについて~ [第3弾] DNS関連WG報告 ~dnsop WG、dnsext WG、DNSSEC deployment BoFについて~ [第4弾] IPv6関連WG報告 ~6man WG、intarea、ISOC主催のパネルについて~ [第5弾] IPv6関連WG報告 ~v6ops WG、6ai BoFについて~ まず[第1弾]として、本号では、全体会議の概要とIETF Technical Plenaryの レポートをお送りします。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ 第74回IETF報告 [第1弾] 全体会議報告 ~概要、IETF Technical Plenaryについて~ 株式会社インテック・ネットコア 廣海緑里 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆概要 晴天が続き、非常に暖かく気候に恵まれた会合となったIETF74は、2009年3月 22日から27日まで、カリフォルニア州サンフランシスコにて開催されました。 大橋禅太郎氏の著作の中で、カリフォルニア州で起業するメリットの一つは、 「青空というインフラの存在」と述べておられたのが、ちょっとだけわかるよ うな気がしました。 ・会期:2009年3月22日~3月27日 ・会場:Hilton San Francisco (San Francisco, California, USA) ・参加費:635USD (early registrationの場合) ・セッション数:125 (tutorial、training、plenary sessionを除くWGやBoFセッション数) ・ホスト:Juniper Networks社(通信機器ベンダー) ・参加登録者数:1,157(減ってはいますが、100年に一度の不況という割に は影響が少ないように思います) ・参加国数:49(国別の分類などもUS、JP、DEなど変わらず参加国数も常態 化) 定石通りの進行では、金曜日のセッションは午前中で終了となるのですが、こ こ数回は金曜日の午後も15時過ぎまで継続することが多くなってきており、 セッション数の増加がみられます。BoFやWGの開催希望数が多くなり、エリア ディレクター達は調整に苦心していたようです。 円滑な会議運営を目指し、ミーティングでの議論に間に合うように文書の投稿 期限などがアナウンスされますが、この期限にギリギリの投稿が多いため、と あるエリアディレクターは、会場に向かう飛行機内で読む文書の総数が500 ページを超えていたそうです。しかも、これは担当エリアについてのみであ り、全体数とするとかなりの分量となります。どうりで議論は尽きないわけだ な、とあらためて思いました。こういった点にもエリアディレクターの苦心が うかがわれます。 また今回、アプリケーションエリアのBoFが多く見受けられた点は、インター ネット技術の変遷を感じました。 ◆IETF Technical Plenary 前回は4日目にまとめられていたPlenary Sessionですが、今回は、Technical Plenaryが5日目(2009年3月26日、17:00~19:30)にあり、Operations and Administration Plenaryが4日目(2009年3月25日、16:00~19:30)に行われまし た。 全体の進行は、Welcomeスピーチの後、IRTFとIABからのレポートに続き、MPLS についてのパネルディスカッションの後、オープンマイクという流れでした。 「IRTF Report」では、IRTFチェアのAaron Falk氏から、現在11あるリサーチ グループの活動状況がされました。残念ながら、NMRG、SAMRG、TMRGについて は最近動きがないそうです。CFRG(Crypt Forum Research Group)では、セキュ リティプロトコルにおける、新旧とりまぜた暗号化手法の利用方法に関するガ イド作成を目指して活発な議論がされていること、RRG(Routing Research Group)では、制御不能なルーティングテーブルの増大への対応策について、来 年の春に推奨策を発行することを目指して、準備中であるという報告がされま した。また、PKIng、Network Virtualizationの二つの分野についてリサー チ・トピックが挙がってきているそうです。 続く「IAB update」では、IABとして現在まとめている文書として、新たに以 下の2文書の投稿がされたことの報告がありました。 ・「Principles of Internet Host Configuration」 (draft-iab-ip-config-11) ・「Design Choices When Expanding DNS」(draft-iab-dns-choices-08) 投稿済みで、更新中のものとしては、以下の4文書が残っているそうです。 ・「IAB thoughts on IPv6 Network Address Translation」 (draft-iab-ipv6-nat-00) ・「P2P Architectures」(draft-iab-p2p-archs-00) ・「Defining the Role and Function of IETF Protocol Parameter Registry Operators」(draft-iab-iana-04) ・「Evolution of the IP model」(draft-iab-ip-model-evolution-01) 上記文書に関する議論と執筆は、IABの活動の一部ですが、それだけでも、IAB の活動内容の密度の濃さや活動性がうかがえます。 また、OECDとの協力関係については、http://www.internetac.org/のWebサイ トにアナウンスが出たそうです。 最後に、IABメンバーの交代の発表がありました。また、Aaron Falk氏がIAOC チェアに再任されたことの報告もありました。 ・退任(4名) Loa Andersson氏 Lixia Zhang氏 Barry Barry氏 Kurtis Linqvist氏 ・新任(4名) John Klensin氏 Jon Peterson氏 Vijay Gill氏 Marcelo Bagnulo氏 今回のテクニカルセッションのパネルディスカッションでは、「MPLS turns 12: A Successful Protocol's History and Lessons Learned」というタイト ルで、MPLSのプロトコルの標準化活動を取り上げ、どのように進めると成功す るのかについて話がされました。モデレータであるAndrew Malis氏からは、 「IABでは、RFC5218(*1)としてまとめられた『何がSuccessful Protocolに導 くのか』というテーマに、とても関心がある。そのため今回は、成功したプロ トコルの一例であるMPLSの標準化を取り上げ、そのMPLSを例にRFC5218に書か れたことが実践的であることを実証することで、それをプレナリーの参加者に 持ち帰ってもらい、役立てて欲しい」という今回のセッションの主旨が説明さ れました。 MPLSに白羽の矢が立ったのは、MPLSは広く普及させることができたプロトコル であるけれど、決して簡単に進んだわけではなく、途中問題もあった上で、そ れを乗り越えているというのが重要な理由であるようです。3人のスピーカー から、それぞれの観点による発表がありました。 ・"MPLS history - MPLS becoming a teenager" George Swallow氏, Cisco社 ・"Operator perspective" Tom Bechly氏, Verizon社 ・"Vendor perspective" Kireeti Kompella氏, Juniper Networks社 関係した側からの意見として、 ・早い段階でいろいろな人を巻き込んだことはよかった面もあるが、ベン ダー間の調整などが難航するなど問題もあった ・IPベースの管理、制御系を作ることという目標が明確だったため、検討す べきことも明白であった ・目標の共有がされていたので、関係者の議論のフォーカスもぶれずに進ん だ ・実用的なアーキテクチャとプロトコルデザインにこだわったことが重要で あった ・いろいろ競合する技術提案がある中で、フェアな議論が行われた ・ゴールの変更もあったが、ここでもフェアな議論により分裂せずに済んだ ・実験ネットワークが拡張していく中で要求事項も変わったが、プロトコル に拡張性があったことがよかった といった点が挙げられていました。 今回の発表、そしてその原典となるRFC5218の解説は、IETFのプロトコルワー クのみならず、いろいろな連携を伴う作業を成功裡に収めるにあたって非常に 参考になるものであることが理解できる、よいセッションでした。当初の目的 である、RFC5218の内容をデモンストレーションするという点においても、面 白い試みであると思いました。会場からの意見で、シングルベンダーでMPLSを 利用している組織が多いという点を確認した上で、「one single standard is better」というコメントがされたのですが、「確かにシンプルな標準定義がよ いかもしれないが、あえて競合環境で切磋琢磨しながらプロトコルを作ること もいいものだ」という回答がされていたのが印象的でした。 (*1) RFC5218: "What Makes For a Successful Protocol?" (http://www.ietf.org/rfc/rfc5218.txt) ◇ ◇ ◇ 次回の[第2弾]では、「全体会議報告 ~IETF Operations and Administration Plenaryについて~」をお送りする予定です。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。 http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ___________________________________ ■■■■■ JPNICの活動はJPNIC会員によって支えられています ■■■■■ ::::: 会員リスト ::::: http://www.nic.ad.jp/ja/member/list/ :::: 会員専用サイト :::: http://www.nic.ad.jp/member/(PASSWORD有) □┓ ━━━ N e w s & V i e w s への会員広告無料掲載実施中 ━━━┏□ ┗┛ お問い合わせは jpnic-news@nic.ad.jp まで ┗┛  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ =================================== JPNIC News & Views vol.632 【臨時号】 @ 発行 社団法人 日本ネットワークインフォメーションセンター 101-0047 東京都千代田区内神田2-3-4 国際興業神田ビル6F @ 問い合わせ先 jpnic-news@nic.ad.jp =================================== ___________________________________ 本メールを転載・複製・再配布・引用される際には http://www.nic.ad.jp/ja/copyright.html をご確認ください  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 登録・削除・変更 http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/ ■■◆ @ Japan Network Information Center ■■◆ @ http://www.nic.ad.jp/ ■■ Copyright(C), 2009 Japan Network Information Center