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    /P▲         ◆ JPNIC News & Views vol.832【臨時号】2011.4.1 ◆
  _/NIC
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◆ News & Views vol.832 です
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2011年2月21日から25日にわたり、香港でAPNIC 31ミーティングが開催され
ました。このミーティングレポートの第3回(最終回)として、「アドレス枯
渇を目前に、IPv6導入やRIRのアドレス品質向上に対する取り組み」をお届
けします。

なお、第1回の「アドレスポリシー動向」、第2回の「APNICとの技術的な情
報交換」については、以下のURLからバックナンバーをご覧ください。

□APNIC 31ミーティング報告 [第1弾] アドレスポリシー動向(vol.829)
  http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2011/vol829.html

□APNIC 31ミーティング報告 [第2弾] APNICとの技術的な情報交換(vol.830)
  http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2011/vol830.html

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◆ APNIC 31ミーティング報告 [第3弾] アドレス枯渇を目前に、
   IPv6導入やRIRのアドレス品質向上に対する取り組み
                           JPNIC 技術部/インターネット推進部 木村泰司
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APNIC 31ミーティングは、2011年2月3日のIANA在庫枯渇の後、初めて行われ
たAPNICミーティングです。また、RIRの在庫枯渇を目前に控えた時期での開
催とも言えます。本稿では、IPv4アドレスの在庫枯渇というエポックを目前
に控え、筆者が特に注目したIPv6関連の話題やRIRで行われているアドレスの
品質向上に向けた取り組みについて報告します。

◆ APOPSにおけるIPv6の話題

Asia Pacific Operators Forum(APOPS)は、APNICコミュニティの中でネット
ワーク運用に関わる話題を扱うフォーラムです。APOPSの全体会議であるAPOPS
プレナリーは、2011年2月21日(月)の16時40分から18時にかけて行われまし
た。約240名が参加していました。

今回は、併設のAPAN-APRICOT 2011の参加者が流れてきていて人数が多かった
こともあり、プレゼンテーション(以降、プレゼン)の内容を受けて、参加者
同士のディスカッションがいつもよりも活発に行われていたようです。APOPS
プレナリーで行われたプレゼンを以下に紹介します。

  (1) World IPv6 Day

      Google社のLorenzo Colitti氏のプレゼンです。World IPv6 Dayは、
      Google社、Facebook社、Yahoo!社、Akamai社、Limelight Networks社
      などが提供するWeb上のサービスにおいて、協定世界時の2011年6月8日
      0時から23時59分までの間、一斉に「IPv6を優先しよう」とするイベン
      トです。この時間帯、参加企業のDNSサーバでは、Aレコードよりも優
      先してAAAAレコードが返されるように設定がなされます。このように
      IPv6を多くのユーザーが使う日を設定することで、IPv6の大規模な展
      開にあたっての課題を解決していくことを目的としています。詳しく
      は以下をご覧ください。

      ・World IPv6 Day
        http://isoc.org/wp/worldipv6day/

  (2) Operational Problems in IPv6: Fallback Issues

      NTT情報流通プラットホーム研究所の岡田真悟氏によるプレゼンです。
      IPv6からIPv4にfallbackする動作において起きる遅延を、さまざまな
      利用環境において計測し、多くの利用環境で、ユーザーが不便を感じ
      る程度にまでなってしまうことを指摘しています。会場でも話題にな
      り、今後OSの実装やIETFでのディスカッションに影響すると考えられ
      ます。

  (3) 6rd-Enabling IPv6 Customers on an IPv4-only Network

      Cisco社のJoe Wang氏によるプレゼンです。ISPの運用者に向けて、IPv4
      のみのユーザーにIPv6の接続性を提供するために6rdを採用した事例を
      紹介しています。6to4やDS-Liteなどのトンネリング技術と比較検討さ
      れています。

◆NIRにおけるIPv4の在庫枯渇対応やIPv6の導入促進

APNIC 31でのNIR SIGは、2011年2月22日(火)11時から12時過ぎまで行われ、
30名以上が参加していました。NIR SIGでは、NIRで行われているIPv6の導入
促進について活動報告が行われました。またIANA在庫枯渇時の情報共有のさ
れ方を振り返り、RIRの在庫枯渇に関する情報共有がどうあるべきか、といっ
たディスカッションが行われました。各NIRの報告内容は以下の通りです。

    - TWNIC
      IPv4の在庫枯渇に関するWebページを提供するとともに、"IPv6
      Directory"と呼ばれるIPv6対応機器の一覧を作成し提供しています。
      また、IPv6導入のガイドライン等のドキュメントも作成されています。

      ・IPv6 Ready Logo Program Approved List
        http://v6product.ipv6.org.tw/

    - KRNIC
      Next Generation Internet Address (IPv6) Transition Planと称し
      て、三つの施策を取っています。(1)WebサービスやIPTV、3Gネットワー
      クにおけるIPv6商用サービスの促進(2)IPv6の優先割り振りやIPv4の在
      庫枯渇基準日の設置(3)IPv6 Transition Centerの設置およびその機関
      を通じた移行プランの周知徹底、などが行われています。

    - CNNIC
      CNNICからは、技術的なリサーチ活動の紹介が行われました。さまざま
      なプロトコルについて技術的なIPアドレスの利用形態を調査し、IPv6
      アドレスのフォーマットを再検討するなどの活動が行われています。
      なお、IANAの在庫枯渇の際には、メディア対応などが行われたとのこ
      とです。

    - JPNIC
      JPNICからも、2月3日のIANA在庫枯渇の際に、NRO、ICANN、ISOC、IAB
      による合同式典とプレスカンファレンスの中継、および同時通訳につ
      いて紹介を行いました。後日、個別にNIRの方々とお話しした際に、一
      部のNIRの方々から、JPNICの活動を評価しており、「今後連携を図り
      たい」といったコメントをいただきました。

        【速報】IANAからAPNICへ、二つの/8ブロックが割り振られました
                http://www.nic.ad.jp/ja/topics/2011/20110201-01.html

        【(IANA枯渇)続報】NROからのプレスカンファレンスの案内
                http://www.nic.ad.jp/ja/topics/2011/20110201-02.html

        【(IANA枯渇)第3報】NROプレスカンファレンスの日本語同時通訳
         ストリーミング提供のご案内
                http://www.nic.ad.jp/ja/topics/2011/20110203-01.html

最後に、APNICのPaul Wilson氏やJPNICの前村昌紀がディスカッションに加わ
り、RIR在庫枯渇の情報共有においては、APNICとNIRが協力して進めていこう
という意識共有が行われて、ミーティングが終わりました。

◆ RIRにおけるアドレス品質向上の取り組み

APNICをはじめとするRIRでは、Resource Quality Assurance(RQA)と呼ばれる
活動が行われています。RQAは、ISP等によるフィルタリングや経路制御のた
めに、インターネットにおける到達性が一部失われているようなIPアドレス
を調査し、その到達性を改善する活動です。IPアドレスが返却され、そのア
ドレスが再割り振りされる場合を想定して、インターネットにおける到達性
という意味で「品質」を保つことを目的としています。

APNIC 31では、RQAに関する「RQA BoF」が開かれました。2011年2月23日(水)
の17時過ぎから19時過ぎにかけて行われ、約20名が参加しました。BoFで報告
された主なRQA活動を以下にまとめます。

    - RIPE NCC
      これまでBogonリストに入っていたIPアドレスが、Bogonリストから外
      れたことを周知する"De-bogonize"の活動が行われています。IANAから
      /8の割り振りを受けると、多くのNOGに周知されるようになっていま
      す。

      ・De-Bogonising New Address Blocks
        http://www.ris.ripe.net/debogon/index.shtml

   - LACNIC
     IPアドレスをレジストリの製品と捉え、経路の到達性という意味でより
     よい品質で提供するための活動が行われています。そのために割り振り
     の前にテストプロセスが設けられています。

   - 日本における取り組み
     NTTコミュニケーションズ株式会社の吉田友哉氏による発表が行われま
     した。JPIRRのfltr-unallocatedオブジェクトを使ったオペレーターへ
     の通知方法紹介の後、Bogonフィルタを正しく利用しないことで著名な
     Webページにアクセスできなくなった事例の紹介や、到達性の確認実験
     「reachability test」の結果が報告されました。他に、オペレーター
     同士の連絡手段として、JANOGのコミュニティが紹介されるなどしまし
     た。

   - Team Cymruの取り組み
     インターネットにおける情報セキュリティに関して、調査や分析などを
     行っている非営利団体Team Cymruによるプレゼンです。Team Cymruでは
     Bogonリストに関する普及啓発や、最新情報の提供を行っています。
     Bogonリストを使ったフィルタリングの是非から、Bogonリストを使うに
     あたって陥りやすい問題についての紹介が行われました。Team Cyrmuの
     Bogonに関するコンテンツは以下のWebページで閲覧できます。

     ・The Bogon Reference
       http://www.team-cymru.org/Services/Bogons/

RQAの活動は、上記のようにRIRでも取り組まれていますが、割り振ったIPア
ドレスの到達性を、IPアドレスのレジストリがどこまで保証すべきかという
点について、共通の指標があるわけではありません。IPv4の在庫が枯渇しIPv6
の普及が本格化した場合、IPアドレスのレジストリは、IPアドレスの管理業
務においてどのような役割を担っていくべきなのか、という点について考え
ると、RQAはインターネット経路制御のセキュリティ等と同様に、重要な事項
になってくるかもしれません。

                ◇                ◇                ◇                

2011年に入ってから、IPv4アドレスのIANA在庫が枯渇し、RIRの在庫枯渇も近
づいてきました。今後はIPv6の導入が本格化し、IPv4とIPv6の共存の際に起
こる問題解決に向けた取り組みが行われていくことが考えられます。一方で、
逆引きソーンへのDNSSECの導入や、IPv6の経路制御への対応など、話題の多
い年になりそうです。


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       わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。
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