=================================== __ /P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.881【臨時号】2011.9.2 ◆ _/NIC =================================== ---------- PR -------------------------------------------------------- ■ オンデマンドクイック専有サーバサービス、『WiRESERV.』 WiRESERV.はF/W、Web、Mail、DB全てセキュリティ設定済みの専用サーバ。 コストパフォーマンスに優れたオールインワンサーバパックをお試し下さい。 ●株式会社ディーネット ●詳細はこちら ⇒http://www.denet.co.jp/products/dedicated/wireserv/ ---------------------------------------------------------------------- ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ News & Views vol.881 です ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 本号では、vol.879、vol880に続いて、第81回IETFのレポート[第3弾]として、 セキュリティ関連WGの動向についてお届けします。 なお、全体会議やIPv6関連WGなど、他の報告については以下のURLからバック ナンバーをご覧ください。 □第81回IETF報告 特集 ○[第1弾] 全体会議報告 (vol.879) http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2011/vol879.html ○[第2弾] IPv6関連WG報告 (vol.880) http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2011/vol880.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ 第81回IETF報告 [第3弾] セキュリティ関連WG報告 ~KRB-WG、SAAG、暗号アルゴリズムの危殆化対応の動向について~ NTTソフトウェア株式会社 菅野哲 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 第81回IETFは、カナダのケベックシティにて、2011年7月24日から7月29日の 期間に開催されました。IETFでは、インターネットに関するさまざまな議論 が行われ、情報セキュリティに関する議論もその中に含まれます。IETFには、 セキュリティに関係するWGとして、13のWGが存在しています。今回のIETF会 合では、13WGのうち11WGのミーティングが開催され、さらにBoF(Birds of a Feather)として、CICM(Common Interface to Cryptographic Modules)とWOES (Web Object Encryption and Signing)が開催されたため、計13のセキュリ ティに関するセッションが開催されました。 このように、セキュリティ関連のWGが扱う領域は多岐にわたります。今回の 報告でも、毎回お伝えしている認証や、セキュア通信に特化した内容を議論 するWGである、KRB-WG(Kerberos WG)の動向を報告します。また、それら二つ のWGの報告に加え、セキュリティ全般に関して横断的にディスカッションを 行うSAAG(Security Area Advisory Group)において、現在アメリカ国立標準 技術研究所(NIST; National Institute of Standards and Technology)が選 定を行っている、SHA-3(*1)に関する発表がありましたので報告します。その 上で、今後重要な問題であると考えられている、暗号アルゴリズムの危殆(き たい)化対応(*2)(暗号アルゴリズムの世代交代)に関するメールが、会期中に CFRGのメーリングリスト(ML)に投稿されましたので、それについても報告し ます。 (*1) Hash Competition http://csrc.nist.gov/groups/ST/hash/sha-3/index.html (*2) 暗号アルゴリズムの危殆(きたい)化 簡単に言えば、暗号アルゴリズムの安全性のレベルが低下した状況、ま たは、その影響により暗号アルゴリズムが組み込まれているシステムな どの安全性が脅かされる状況を指します。詳しくは下記のURLをご覧く ださい。 JPNIC Newsletter No.44 インターネット10分講座 「暗号アルゴリズムの危殆化」 http://www.nic.ad.jp/ja/newsletter/No44/0800.html ◆KRB-WG (Kerberos WG) KRB-WGは、マサチューセッツ工科大学(MIT)が考案した認証方式の一つであ る、Kerberosプロトコルに関する新規仕様や機能拡張について、検討を行う WGです。このミーティングは、2011年7月28日の午前9時から2時間半程度開催 され、参加者は30人程度でした。 ミーティングの構成として、以下のような議題で進行されました。なお、こ のWGがKerberosに関するものであるためか、MIT Kerberos Consortium (http://www.kerberos.org/)のメンバーたちが主導的に議論を行っていまし た。 1) ドキュメントステータスおよび確認 2) 技術的な議論 3) 可能性のある新規項目 この三つの議題について、議論のポイントを報告します。 1) ドキュメントステータスおよび確認 前回の会合から今回の会合までの期間にRFCとして発行されたドキュメント は、4本あったことが報告されました。そのドキュメントのカテゴリーの内訳 は、Standards Trackが3本、Informationalが1本でした。 ・RFC 6111 Additional Kerberos Naming Constraints - この規約は、よく知られているKerberosに関するprincipal nameとrealm nameについてのname constraintsを定義しています。 ・RFC 6112 Anonymity Support for Kerberos - この規約は、identityやKerberos realm以上の情報を暴くことなく、 Kerberosアプリケーションサービスで安全に通信するための拡張を定義 しています。 ・RFC 6113 A Generalized Framework for Kerberos Pre-Authentication - この規約は、Kerberos事前認証に関して、より形式的なモデルを記述し たものです。 ・RFC 6251 Using Kerberos Version 5 over the Transport Layer Security (TLS) Protocol - この規約は、TLS通信を用いたKerberosクライアントとKey Distribution Centers (KDCs)との間での、通信について記述しています。 また、WG itemとして扱われている9本のドキュメントについて、ステータス の報告がありました。その中で個人的に興味を持ったドキュメントは、 Deprecate DES support for Kerberos (draft-lha-des-die-die-die-05)で す。このドキュメントは、危殆化した暗号アルゴリズムであるDESの利用を廃 止することを目的にしています。この危殆化アルゴリズムであるDESは、 Kerberos V5で利用可能な暗号アルゴリズムの一つとして定義されているの で、仕様として利用できる状況になっています。ドキュメントの状況として は、Expireしてしまっている状況でありますが、暗号アルゴリズムの危殆化 対策の観点からも、危殆化した暗号アルゴリズムを、標準化活動において無 効化するための対応としての、ケーススタディとして重要なものと位置づけ られると考えられるため、更新版の投稿が望まれていると思われます。 2) 技術的な議論 技術的な議論の対象として扱われたのは、以下の二つのドキュメントについ てです。 ・A Generalized PAC for Kerberos V5 (draft-sorce-krbwg-general-pac-02) - このドキュメントは、Keberos V5における汎用的な認証の仕組みを記述 することを目的としています。 ・Kerberos number registry to IANA (draft-lha-krb-wg-some-numbers-to-iana-00) - このドキュメントは、Kerberosプロトコルを定義する多くの数値につい て整理し、それらの管理をIANAに移管することを目的としています。 ここでは、A Generalized PAC for Kerberos V5について、議論の要点および 今後の方針を報告します。この議題は、krb-wgのMLに投稿されたコメント(*3) をベースに議論が行われました。コメントは、一般的なものから仕様に踏み 込んだものまで多岐にわたっており、それぞれのコメントについて議論を行っ た結果を、次版のドキュメントに反映することで、WG itemとして採択されま した。今後の課題として、さまざまなサービス間での相互運用性を実現する ために、fieldの記述を詳細化することが求められています。 (*3) https://lists.anl.gov/pipermail/ietf-krb-wg/2011-July/009342.html 3) 可能性のある新規項目 KRB-WGとしてWG itemにするかどうか検討するために、Camellia Encryption for Kerberos 5(draft-hudson-krbwg-camellia-cts-02)に関する議論が行わ れました。このドキュメントは、Kerberos V5における利用可能な暗号アルゴ リズムとしてCamelliaの追加およびチェックサムとしてCipher-based MAC (CMAC)を追加することを目的としています。これまでKerberosで仕様化され ていないアルゴリズムのため、WGの将来的な議題として取り上げられていま す。 議論の流れとしては、AES以外の共通鍵暗号として追加される暗号アルゴリズ ムの安全性に関する議論(例えば、暗号に関する研究成果など)や、新たに暗 号アルゴリズムを追加した際に、さらに暗号アルゴリズムの追加要望が出る のではないか?などについても議論されました。 なお、enc-typeの追加に関しては、新たにCamelliaをKerberos V5に追加する かどうかを、2010年3月から議論を行っていますが、ミーティング参加者にお ける賛同者は増加しています。WG itemとしてCamelliaに関するDraftの採択 に関しては、KRB-WG Chairが検討することになり、次回以降のミーティング で決定されるものと考えられます。 □KRB-WG http://datatracker.ietf.org/wg/krb-wg/charter/ □第81回IETF KRB WGのアジェンダ http://www.ietf.org/proceedings/81/agenda/krb-wg.html ◆SAAG (Security Area Advisory Group) SAAGでは、IETFにおけるSecurity Areaの総括やセキュリティ全般に関した横 断的な議論が行われ、Security Areaの各WGやBoF、セキュリティが関係する WG等の確認が行われます。また、招待講演で勉強会も開催されるため、 Security Areaの横断的な状況や、注目のトピックスについて情報を得たい場 合に有意義な場です。このミーティングは、2011年7月28日の午前1時から2時 間程度開催され、多くのセキュリティ関係者が参加していました。 今回のトピックスは以下の通りです。ここでは、SHA-3に関する報告を行いま す。 ・IETFにおけるプロトコルや実装でのSHA-3のサポート ・安全保護のためのIdentifier Comparison ・IEEE 802.15における鍵管理プロトコル 今回のミーティングでSHA-3に関する報告された点は以下の通りです。 ・IETFで標準化されたプロトコルに対するインパクト - プロトコルとしてハッシュ関数が代替可能であるならば、SHA-2からSHA-3 への乗り換えが容易に行える - しかしながら、SHA-2に対応していない場合、SHA-3への移行については バッファサイズなどの検討が必要かもしれない ・NISTとしては、SHA-3決定後にSHA-2を取りやめたり、SHA-3を推すことはな く、SHA-2とSHA-3を共存させる ・今後のSHA-3に関するスケジュール - 2012年03月22日 Final SHA-3 Candidate Conference - 2012年夏 最終選考結果をアナウンス IETFとしては、最終選考結果を受けて標準化を実施可能 なお、このSHA-3に関する詳しい情報を確認したい場合は、以下の発表資料を ご覧ください。 http://www.ietf.org/proceedings/81/slides/saag-3.pdf また、Security AreaのWGの動向については、WGとしての役割を終えて、DKIM (Domain Keys Identified Mail)、MSEC(Multicast Security)、ISMS (Integrated Security Model for SNMP)がクローズされる予定です。WGとし て扱う新規検討項目が発生しなかった場合、IPSECME(IP Security Maintenance and Extensions)は、2012年2月にクローズされると報告されて いました。 □第81回IETF SAAGのアジェンダ http://www.ietf.org/proceedings/81/slides/saag-0.pdf ◆暗号アルゴリズムの危殆化対応(暗号アルゴリズムの世代交代)に関する最 新動向 会期中、CFRG(Crypto Forum Research Group) のMLに、IETFに存在する Internet-Draftに関して、危殆化した暗号アルゴリズムであるMD5を利用して いるものを抽出したリストが共有されました(*4)。このメールは、更新され たMD5に関するSecurity ConsiderationsのRFC(*5)を参照することを勧めるこ とで、ハッシュ関数の正しい利用を推進することを目的としています。 Security Areaが中心となって、IETFにおける暗号アルゴリズムの危殆化対策 を行っていることを、垣間見ことができる一例だと思います。 (*4) meeting at IETF 81 to discuss review of MD5 uses, http://www.ietf.org/mail-archive/web/cfrg/current/msg03012.html (*5) Updated Security Considerations for the MD5 Message-Digest and the HMAC-MD5 Algorithms, http://tools.ietf.org/rfc/rfc6151.txt ◆最後に インターネットの標準化活動に触れる機会としては、台湾(台北)で開催が予 定されている、次回の会合が大きなチャンスだと考えられます。今後のIETF においては、これ以降アジア地域での開催がしばらく予定されていません。 なお、会合の開催日程は2011年11月13日から11月18日です。インターネット の標準化活動に興味がある方は、ぜひ参加を考えてみてはどうでしょうか? ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。 http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ┃ ◆◇◆◇◆ 本号のご感想をお聞かせください ◆◇◆◇◆ ┃ ┃良かった ┃ ┃→ http://feedback.nic.ad.jp/881/2e3aec6469e77f9fcdf54bd94965acc6 ┃ ┃ ┃ ┃悪かった ┃ ┃→ http://feedback.nic.ad.jp/881/3e5586badc57abe0802def10218e7669 ┃ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ___________________________________ ■■■■■ JPNICの活動はJPNIC会員によって支えられています ■■■■■ ::::: 会員リスト ::::: http://www.nic.ad.jp/ja/member/list/ :::: 会員専用サイト :::: http://www.nic.ad.jp/member/ (PASSWORD有) □┓ ━━━ N e w s & V i e w s への会員広告無料掲載実施中 ━━━┏□ ┗┛ お問い合わせは jpnic-news@nic.ad.jp まで ┗┛  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ =================================== JPNIC News & Views vol.881 【臨時号】 @ 発行 社団法人 日本ネットワークインフォメーションセンター 101-0047 東京都千代田区内神田2-3-4 国際興業神田ビル6F @ 問い合わせ先 jpnic-news@nic.ad.jp =================================== ___________________________________ 本メールを転載・複製・再配布・引用される際には http://www.nic.ad.jp/ja/copyright.html をご確認ください  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 登録・削除・変更 http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/ バックナンバー http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/ ___________________________________ ■■■■■ News & ViewsはRSS経由でも配信しています! ■■■■■ ::::: http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/index.xml :::::  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ■■◆ @ Japan Network Information Center ■■◆ @ http://www.nic.ad.jp/ ■■ Copyright(C), 2011 Japan Network Information Center