=================================== __ /P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.1154【臨時号】2013.12.19 ◆ _/NIC =================================== ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ News & Views vol.1154 です ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 本号では、vol.1152、vol.1153に続いて、カナダのバンクーバーで開催され た第88回IETFレポート[第3弾]として、セキュリティ関連WGのうちから、イン ターネットのルーティングセキュリティとして関心が高まっている、RPKIの 動向を中心にご報告します。 昨日までに発行した、全体会議報告およびIPv6関連WG報告については、下記 のURLからバックナンバーをご覧ください。次号では、DNS関連WG報告をお届 けする予定です。 □第88回IETF報告 特集 ○[第1弾] 全体会議報告 (vol.1152) https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2013/vol1152.html ○[第2弾] IPv6関連WG報告 ~6man WG、v6ops WGについて~ (vol.1153) https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2013/vol1153.html なお、この第88回IETFの報告会を、明日12月20日(金)にISOC Japan Chapter とJPNICの共催で、東京・神田神保町の株式会社インターネットイニシアティ ブ本社会議室にて開催いたします。 参加費は無料で、登録受付は本日19日(木)17:00までとなっております。 本レポートをお読みになりご興味を持たれた方は、ぜひご参加ください。 ■ IETF報告会(88thバンクーバー)開催のご案内 https://www.nic.ad.jp/ja/topics/2013/20131205-02.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ 第88回IETF報告 [第3弾] セキュリティ関連WG報告 ~RPKIの動向~ JPNIC 技術部/インターネット推進部 木村泰司 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 本稿では、セキュリティ関連WGのうち、インターネットのルーティングセキュ リティ技術として注目されている、リソースPKI (Resource Public-Key Infrastructure; RPKI)の動向をまとめてお送りします。 RPKIは、IPアドレスの記載された電子証明書(以下、リソース証明書と呼ぶ) と、AS番号が記載されたROA (Route Origin Authorization)と呼ばれる電子 署名のついたデータを使って、不正な経路情報を検出できるセキュリティの 技術です。 今回のIETFでは、WGでの議論に加えて、LACNICからエクアドルでのRPKI導入 に関する興味深い発表がありましたので、SIDR WGの報告と併せて、この LACNICのプレゼンテーションについても取り上げます。 ◆ SIDR WG - BGPSECの仕様策定は足踏み状態、Origin Validationの改良が 続く SIDR (Secure Inter-Domain Routing)WGは、インターネットにおける経路制 御のための、PKI技術を使ったセキュリティの仕組み、すなわちRPKIを使った セキュアなルーティングの仕様を検討しているWGです。第88回IETFミーティ ングでは、2時間半のミーティングが1回行われました。参加者は40名ほどで、 多くが常連の顔ぶれでした。 SIDR WGでは、経路情報のAS番号とIPアドレスの組み合わせを確認するOrigin Validation(経路広告元ASの検証技術)と、ASパスを確認するPath Validation (ASパスの検証技術)の二つの技術課題に取り組んでおり、この二つが合わさっ たものはBGPSECと呼ばれています。WGでは、Origin ValidationのRFC化が2013 年初頭に進み、今度はPath Validationのドキュメントを準備している段階で す。 今回のミーティングで行われた、主なプレゼンテーションを簡単に紹介しま す。 □ An Out-Of-Band Setup Protocol For RPKI Production Services (RPKI発行サービスのための out-of-band の鍵セットアッププロトコル) リソース証明書は、発行先と発行元の間でセキュアな通信を行うため に、最初におのおのの公開鍵や名称を交換しますが、そのプロトコルの 策定を提案するプレゼンテーションです。特にプロトコルの定まってい ない現在は、USBメモリや電子署名つきのメールなどさまざまな方法で 行われています。 □ A Publication Protocol for the Resource Public Key Infrastructure (RPKIのデータ公開プロトコル) リソース証明書やROAを公開するための、XML (Extensible Markup Language)ベースのプロトコルの提案です。現在はrsyncが使われていま すが、この公開プロトコルに転送プロトコルなどを加えることで、rsync の代替になることを含めて検討されています。 □ A Fail-safe Mechanism for the RPKI (RPKIのためのフェイルセーフの機構) 特定のROAの署名検証に使われる認証局(Certificate Authority; CA) を、通常のRIRのものと別にすることができる方式の提案です。RIRと異 なるCA、すなわちRIRのプリフィクスを扱えるLTAM (Local Trust Anchor Management)に代わる方式で、独自のRPKIのツリー構造を構築できるよ うにするために提案されています。 WGで行われている議論は、IPアドレスの移転への対応のように、Origin Validationの仕組みを補強したり、特定の用途で使うために考えられている もので、まだまだPath ValidationのRFC化に向けた議論には至っていない状 況です。日本国内ではAS Pathを使った経路フィルターが導入されているASが 多いと言われており、今後のPath Validationの動向が気になるところです。 ◆ エクアドルにおける急速な導入 - 総プリフィクスの90%がカバーされる エクアドルは、ラテンアメリカの地域インターネットレジストリ(RIR; Regional Internet Registry)であるLACNICから、IPアドレスの割り振りを受 けている国です。経路情報としては、8,800ほどのプリフィクスが観測されて います。 2013年9月に、このうちの90%をカバーするリソース証明書とROAが、一斉に発 行されました。ROAにはIPアドレスとAS番号が書かれているため、インター ネットの他のASからROAに書かれているIPアドレスが経路広告された場合に は、検出することができます。検出自体はエクアドル国内でなくてもできる ため、例えばヨーロッパやアジアにあるASであっても、エクアドル国内のプ リフィクスが経路広告されたときには、それを観測できることになります。 IETFミーティングの初日に行われたIEPG (Internet Engineering and Planning Group)ミーティングでは、LACNICのスタッフであるSofia Silva Berenguer氏よって、このイベントについてプレゼンテーションされました。 □ RPKI and Origin Validation Deployment in Ecuador http://iepg.org/2013-11-ietf88/RPKI-Ecuador-Experience-v2b-1.pdf 今回、RPKI導入の主役となったのはNAP.ECというIXPで、エクアドル国内の97% のネットワークを収容しています。RPKIを導入するイベントは2013年の7月と 9月に行われ、9月にROAの一斉発行が行われました。このイベントは、RPKIが 普及しないために導入効果が上がらず、同時にそのことが普及の足止めになっ ている、いわゆる"鶏卵問題"を解消するため、LACNICの協力のもと開催に至っ たとのことでした。ROAの発行だけでなく、NAP.ECで経路情報を配布している ルートサーバに、RPKIの電子署名の検証を行う"RPKI cache"が導入されてい るとのことです。ただし、検証結果に応じてルートサーバの挙動を変えるわ けではないようです。 今後、不適切な経路情報の検出が実際にはどの程度できるようになり、イン ターネット経路制御の運用に役立つのかが注目されます。今回の話題は、 LACNICのブログに詳しく掲載されています。 □ Deployment of RPKI and BGP Origin Validation in Ecuador, LACNIC http://labs.lacnic.net/site/RPKIandOriginValidationEcuador ◇ ◇ ◇ RPKIの可視化サイトで知られている、オランダにあるSurfnetのRPKI Dashboardによると、2013年12月12日現在、RPKIを使って経路広告元ASの判定 ができるプリフィクスは22,808あります。国際的な経路情報の総量は515,101 観測されていることから、そのうちの4.4%ほどであることがわかります。ま たROAの発行の段階で、既にAS番号が実際の経路と異なっているものが1,196 あります。従って、ISPなどにおいて実運用されているとは、まだまだ考えに くい段階にあると言えます。 今後、実際にRPKIが使われていくためには、発行数を増やすだけでなく、IP アドレス担当者と経路制御の担当者が連絡し合い、正しいASが入ったROAが発 行されていく必要があると考えられます。 □ RPKI Dashboard http://rpki.surfnet.nl/ 次回の第89回IETFは、2014年3月2日(日)~7日(金)、イギリスのロンドンで行 われます。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。 https://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ┃ ◆◇◆◇◆ 本号のご感想をお聞かせください ◆◇◆◇◆ ┃ ┃良かった ┃ ┃→ http://feedback.nic.ad.jp/1154/657b0f7c03291d60dc4a96affb3dc552┃ ┃ ┃ ┃悪かった ┃ ┃→ http://feedback.nic.ad.jp/1154/6b8e5108bdba9943b5c27156868e94c3┃ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ___________________________________ ■■■■■ JPNICの活動はJPNIC会員によって支えられています ■■■■■ ::::: 会員リスト ::::: https://www.nic.ad.jp/ja/member/list/ :::: 会員専用サイト :::: https://www.nic.ad.jp/member/ (PASSWORD有) □┓ ━━━ N e w s & V i e w s への会員広告無料掲載実施中 ━━━┏□ ┗┛ お問い合わせは jpnic-news@nic.ad.jp まで ┗┛  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ =================================== JPNIC News & Views vol.1154 【臨時号】 @ 発行 一般社団法人 日本ネットワークインフォメーションセンター 101-0047 東京都千代田区内神田3-6-2 アーバンネット神田ビル4F @ 問い合わせ先 jpnic-news@nic.ad.jp =================================== ___________________________________ 本メールを転載・複製・再配布・引用される際には https://www.nic.ad.jp/ja/copyright.html をご確認ください  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 登録・削除・変更 https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/ バックナンバー https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/ ___________________________________ ■■■■■ News & ViewsはRSS経由でも配信しています! ■■■■■ ::::: https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/index.xml :::::  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ■■◆ @ Japan Network Information Center ■■◆ @ https://www.nic.ad.jp/ ■■ Copyright(C), 2013 Japan Network Information Center