=================================== __ /P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.1253【臨時号】2014.11.20 ◆ _/NIC =================================== ---------- PR -------------------------------------------------------- ■■■ 当日受付も可能です! ★Internet Week 2014★ 11月18~21日 ■■■ □□□┏━━━━━━━━━━━━━━┓ 富士ソフトアキバプラザ □□□ ■■■┃空きのあるプログラムはこちら┗━━━━━━━━━━━━┓■■■ □□□┃で確認いただけます → https://internetweek.jp/program/┃□□□ ■■■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛■■■ ---------------------------------------------------------------------- ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ News & Views vol.1253 です ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2013年秋以降、インターネットガバナンスをめぐる議論が盛り上がりを見せ ており、News & Viewsでも昨今の状況をお知らせしております。 本号では、まさに今、世界中のインターネットコミュニティで活発な議論が 行われている「IANA監督権限移管」に関する議論について、各コミュニティ における状況をお伝えします。 なお、今週より開催されているInternet Week 2014の同時開催イベントとし て、「第4回日本インターネットガバナンス会議」を本日11月20日(木)19:00 より、富士ソフト アキバプラザにて開催いたします。お席にはまだ少し余 裕がありますので、参加ご希望の方は直接会場にお越しください。 ・第4回日本インターネットガバナンス会議 https://internetweek.jp/program/j4/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ インターネットガバナンスに関する最近の動向 ~IANA監督権限移管に関するアップデート~ JPNIC インターネット推進部 前村昌紀 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ JPNICでは、IANA監督権限移管に関し、それを移管する意向があると2014年3 月14日に米国商務省電気通信情報局(NTIA)から声明(*1)が公表されて以来、 動向を注視し、イベントや広報チャンネルでお伝えしています。本稿では、 2014年11月時点での状況をまとめ、解説します。 (*1) 米国商務省電気通信情報局がインターネットDNS機能の管理権限を移管 する意向を表明 https://www.nic.ad.jp/ja/topics/2014/20140317-02.html ■ ICG組成までの流れ IANA監督権限移管とは、ICANNとのIANA機能契約に基づいて米国政府が現在 持っているIANAに対する監督権限を、「グローバルなマルチステークホルダー コミュニティ」に移管することを意味しています。NTIAは上に示した声明の 中で、このコミュニティに移管後の監督体制の提案を求めており、ICANNを、 移管後の体制を提案する検討を行うための「呼び掛け人(Convener)」に指名 しました。 それを受けてICANNは、声明直後に開催されたICANNシンガポール会議(2014年 3月23日から27日まで)の場を中心に、手始めとして、「移管後の体制を検討 する体制」についての意見照会を行いました。そして、この時に得られた意 見をもとに、移管後の体制を提案する検討に責任を持つ、ICG (IANA Stewardship Transition Coordination Group)の組成を進めました。ICGの第 1回会合は2014年7月10日に電話会議で行われ、この電話会議において、さま ざまなステークホルダーからの代表30名に、ICANN理事会、IANA部局責任者の 2名のリエゾンメンバーを加えた32名の顔ぶれが確定しました。ICGの活動は、 各会合の録音、速記録、議事録に至るまで、Webサイト(*2)で入手することが できます。また、各会合は事前にアナウンスされ、会場および遠隔での傍聴 が可能になっています。 (*2) NTIA IANA Functions' Stewardship Transition http://ianacg.org/ https://www.icann.org/stewardship/ ■ ICGの方針 - 資源ごとのコミュニティに検討を委ね、調整に徹する ICGは2014年8月27日にチャーターを公開し、続いて9月9日には提案募集を公 表しました。 チャーター: Charter for the IANA Stewardship Transition Coordination Group is Published https://www.icann.org/news/announcement-2014-08-27-en 提案募集: IANA Stewardship Transition Coordination Group Issues Request for Transition Proposals and Suggested Transition Process Timeline https://www.icann.org/news/announcement-2014-09-09-en この中では、ICGは移管後の体制に関する提案を、IANAが管理する三つの資源 (番号資源(IPアドレス)、プロトコルパラメーター、ドメイン名)の管理方針 を検討するコミュニティ(Operational Communities)に、それぞれの資源に関 する移管後体制の提案について起草を委ね、この三つの案を統合してNTIAに 提出する提案を作成するという方針を明確にしました。提案提出の期限は、 2015年1月15日になっています。 そこで、以降では、三つのコミュニティにおける提案の検討状況をお伝えし ます。 ■ IPアドレス - 各RIRでの議論を「CRISPチーム」が統合 IPアドレスのコミュニティは、RIRごとの五つに分かれています。すべてのRIR は年2回の会議を実施しており、ICGの提案募集期間には、9月のAPNICを皮切 りに、10月のARINとLACNIC、11月のRIPEとAFRINICとそれぞれの会議が開催さ れます。これらが、各RIRのコミュニティが対面で議論を行う数少ない機会と なりますが、各RIRとも、専用のメーリングリストを設置するなど、本件の議 論をオンラインで行うための準備を整えています。 五つのRIRの連合体であるNRO (Number Resource Organization)では、五つの RIRからの提案を統合するために、CRISP (Consolidated RIR IANA Stewardship Proposal)チームと呼ばれるグループを設置し、各RIRコミュニ ティおよびRIR職員をメンバーとして募集することにしました。APNIC地域か らは、JPNICの奥谷泉が選出されています。 Consolidated RIR IANA Stewardship Proposal Team (CRISP Team) https://www.nro.net/nro-and-internet-governance/iana-oversight/consolidated-rir-iana-stewardship-proposal-team-crisp-team ・APNIC 9月中旬、先頭を切って会議を持ったAPNICでは、事務局が作成した叩き台 提案(*3)に対して、本件のための特設セッション(*4)で議論をしました。 このモデレータを務めたのは、現在アドレスポリシーSIGのco-chairを務め る、ソフトバンクテレコムアメリカ社の山西正人氏でした。このセッショ ンでは、事務局叩き台に含まれていた以下の3点に関して、コミュニティが 合意できることの確認ができました。 1) IANA機能運営者として、引き続きICANNを支持する 2) IANA機能提供に関するサービスレベル合意(SLA)を、NROとICANNの間で 締結する 3) 透明性と説明責任の観点から、ICANNとNROの間の既存の合意をレビュー し、新たな責務の合意(Affirmation of Commitment, AoC) を締結する これは、IANA機能の正常な運営を、ICANNとNRO/RIRとの取り決めによって 説明責任を強化することで担保しようとしている、ということができます。 これ以降のAPNICにおける議論は、もっぱらメーリングリスト(*5)で行われ ています。 (*3) IANA Stewardship Transition Consultation - APNIC38 http://www.slideshare.net/apnic/iana-stewardship-transition-consultaion-apnic-38 (*4) Consultation Session: IANA Stewardship Transition http://conference.apnic.net/38#consultationsessionianastewardshiptransition 議論の様子は、YouTubeにて記録動画が閲覧可能です。 http://youtu.be/bg2Kp6SRhQQ?list=PLSnVjSuzLJcxbiilGE421Zx7Wk3Wez8NS (*5) IANAxfer@apnic.net 以下のWebページから加入可能です。 http://mailman.apnic.net/mailman/listinfo/IANAxfer ・ARIN ARINは、ARIN34ミーティングでセッションを持ち、背景説明などを行った 後、調査を行ってコミュニティの意向を確認し、それに従った提案が作成 されるという流れになっています。 ARIN34 Meeting Report https://www.arin.net/participate/meetings/reports/ARIN_34/index.html IANA Stewardship Transition Proposal Survey and Mailing List https://www.arin.net/announcements/2014/20141013.html ・LACNIC LACNICでは、10月にLACNIC22ミーティングでセッションを持ちました。 LACNICでの議論は、APNICの叩き台提案を参照しながらも、新たな監督組織 として、「Multistakeholder Oversight Numbers Council (MONC)」という ものを設立するアイディアが含まれています。その概要に関しては、APNIC のStrategic Engagement DirectorであるPablo Hinojosaによる記事をご参 照ください。 LACNIC22 - LACNOG2014 http://www.lacnic.net/web/eventos/lacnic22 Pablo Hinojosaによる記事: LACNIC Community discusses IANA Stewardship Transition https://blog.apnic.net/2014/10/31/lacnic-community-discusses-iana-stewardship-transition/ ・RIPE RIPEでは、概ねAPNICのものと同じ方向の事務局提案が10月9日に公表され、 11月3日からのRIPE 69ミーティングで議論されました。 RIPE Community IANA Stewardship Proposal [DRAFT] http://www.ripe.net/iana-oversight-transition ・AFRINIC AFRINICのAFRINIC 21ミーティングは11月22日からですが、既に情報集積の ためのWebページを開設するとともに、AFRINIC 21ミーティングでの議論の 助けにするために、コミュニティの意向を探る調査を実施しています。 AFRINIC-21 http://meeting.afrinic.net/afrinic-21/ IANA Oversight http://www.afrinic.net/en/community/iana-oversight-transition AFRINIC Community Input Survey on the IANA Stewardship Transition http://survey.afrinic.net/index.php?sid=72285&lang=en これらを総合して、IPアドレスに関する提案を2015年1月までにまとめる必要 があるわけですが、APNICとRIPEの方向性に、調査をもとにするARINとAFRINIC がどう合わせて来るか、そして、LACNICのMONC提案をどう扱うのかが、今後 注視するべきポイントとなります。 ■ プロトコルパラメーター - 標準プロセスで淡々と プロトコルパラメーターの管理方針を検討するIETFでは、インターネット標 準をはじめとする文書を作成するための、確立したプロセスがあります。文 書を検討するのは、技術領域に細かく分かれたワーキンググループ(WG)で、 WGを組成するためには、BoF (Birds-of-a-feather)セッションをIETF会合で 開催する必要があります。企画案はインターネットドラフト(Internet Draft, I-D)として提出され、WGでの議論を経てラフコンセンサスに至ったものがRFC (Request for Comments)となります。 IANA監督権限移管に関しても、この標準プロセスが用いられています。2014 年6月にカナダ・トロントで開催されたIETF 90会合でBoFが開催され、これを 受けてianaplanと名づけられたWGが設立されました(*6)。提案は、 draft-ietf-ianaplan-icg-responseという名前で提出され、2014年11月9日か ら米国ハワイ州ホノルルで開催された、IETF 91会合における議論を反映した 第3版となるdraft-ietf-ianaplan-icg-response-03 (*7)が最新版です。 プロトコルパラメーターのIANA機能に関しては、RFC2860として公開されてい るICANNとの間の覚書(*8)やRFC6220による定義(*9)など、IANA機能運営者で あるICANNとIETFとの関係が定められています。 そのため、NTIAからの監督権限移管にあたっても、プロトコルパラメーター に関しては基本的に現行の枠組みだけで十分とする見方が趨勢で、議論のポ イントは、説明責任体制の骨格ではなく、細部に至っています。ICGに対する 提案の最終形に近い形のドラフトが議論されていることも含め、内容面の検 討が、三つの資源の中で最も進んでいると言えます。 (*6) Planning for the IANA/NTIA Transition (ianaplan) https://datatracker.ietf.org/wg/ianaplan/charter/ (*7) draft-ietf-ianaplan-icg-response-03 https://tools.ietf.org/html/draft-ietf-ianaplan-icg-response-03 (*8) RFC2860, Memorandum of Understanding Concerning the Technical Work of the Internet Assigned Numbers Authority” http://www.rfc-editor.org/rfc/rfc2860.txt (*9) RFC6220, Defining the Role and Function of IETF Protocol Parameter Registry Operator http://www.rfc-editor.org/rfc/rfc6220.txt ■ ドメイン名 - ICANN自体の説明責任との関連を整理し、期限までの提案提 出に意欲 ドメイン名に関するポリシーはICANNで検討されますが、他の二つの資源に比 べ、難しい状況があります。gTLDを中心としたICANNにおける議論は、明確な マルチステークホルダー体制で行われ、さまざまな関係者による方針検討は、 検討体制の公平性に多くの時間を費やしがちです。また、理事会による決定 は、十分な精査の上であっても、それに不満を持つコミュニティメンバーを 含む結果となりがちで、ICANN自体の説明責任に疑義を持つ人が少なからずい るという状況です。 このような背景から、ICANNでIANA監督権限移管が議論し始めてから一貫し て、IANA監督権限移管に当たっては、ICANN自体の説明責任の強化が必要だと して、この二つを結びつけて議論する人が多く見られました。このため、 2014年6月のロンドン会議、同10月のロサンゼルス会議を通じて、ICANNの説 明責任強化とIANA監督権限移管の議論をどう整理するかという点に、大きな 時間が取られました。この詳細は、JPNICの奥谷泉による「ICANNロンドン会 議報告」にまとめてありますので、そちらをご参照ください。 JPNIC News & Views vol.1217「第50回ICANNロンドン会議報告」 https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2014/vol1217.html ICANNでは「ドメイン名に関連するIANA監督権限移管提案立案のためのクロス コミュニティワーキンググループ(Cross Community Working Group to Develop an IANA Stewardship Transition Proposal on Naming Related Functions、以下CWG)」(*10) を2014年10月に組成し、検討を開始しました。 ICANNロサンゼルス会議では公開CWG会合(*11)を開き、その時点ではまだまだ 提案内容の検討には至っていない状況でしたが、ロサンゼルス会議以降、週 次の電話会議が計画されるなど、2015年1月の期限までに提案を提出すること に意欲を見せていました。ロサンゼルス会議以前には、2015年1月の期限は非 現実的だとする意見を多く聞く状況であったことを考えると、状況は良い方 向に向いていると言えます。 (*10) CWG to Develop an IANA Stewardship Transition Proposal on Naming Related Functions https://community.icann.org/display/gnsocwgdtstwrdshp/CWG+to+Develop+an+IANA+Stewardship+Transition+Proposal+on+Naming+Related+Functions (*11) Meeting of the CWG to Develop an IANA Stewardship Transition Proposal on Naming Related Functions http://la51.icann.org/en/schedule/mon-iana-stewardship-naming ■ 今後 ここまで、IANA監督権限移管に関する、各資源コミュニティの現状を説明し てきました。2015年1月という、ICGが設定した提案提出期限は、現在のIANA 契約が満了する2015年9月までに、NTIAが提案を受領するためのものですが、 関係者はそれぞれ非常に大きな労力を割いて、期限までに提出できるよう、 提案検討を進めています。しかし、IPアドレスに関する提案には、まだ具体 的な内容がなく、また五つのRIRからの提案統合が円滑に進むかという問題が 残っています。また、ドメイン名に関しても、コミュニティの多様性やドメ イン名という資源特有の複雑さから、内容検討には多難が予想されます。 予断を許さない状況が続きますので、引き続きJPNICでは検討参画や情報収集 を進め、適宜皆さまに状況をご報告してまいります。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。 https://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ┃ ◆◇◆◇◆ 本号のご感想をお聞かせください ◆◇◆◇◆ ┃ ┃良かった ┃ ┃→ http://feedback.nic.ad.jp/1253/afc5df4fe5e35234f79b904b84b173bb┃ ┃ ┃ ┃悪かった ┃ ┃→ http://feedback.nic.ad.jp/1253/7a4d313d0c38aefb4c0071ae1d2cfcea┃ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ___________________________________ ■■■■■ JPNICの活動はJPNIC会員によって支えられています ■■■■■ ::::: 会員リスト ::::: https://www.nic.ad.jp/ja/member/list/ :::: 会員専用サイト :::: https://www.nic.ad.jp/member/ (PASSWORD有) □┓ ━━━ N e w s & V i e w s への会員広告無料掲載実施中 ━━━┏□ ┗┛ お問い合わせは jpnic-news@nic.ad.jp まで ┗┛  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ =================================== JPNIC News & Views vol.1253 【臨時号】 @ 発行 一般社団法人 日本ネットワークインフォメーションセンター 101-0047 東京都千代田区内神田3-6-2 アーバンネット神田ビル4F @ 問い合わせ先 jpnic-news@nic.ad.jp =================================== ___________________________________ 本メールを転載・複製・再配布・引用される際には https://www.nic.ad.jp/ja/copyright.html をご確認ください  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 登録・削除・変更 https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/ バックナンバー https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/ ___________________________________ ■■■■■ News & ViewsはRSS経由でも配信しています! ■■■■■ ::::: https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/index.xml :::::  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ■■◆ @ Japan Network Information Center ■■◆ @ https://www.nic.ad.jp/ ■■ Copyright(C), 2014 Japan Network Information Center