=================================== __ /P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.1262【臨時号】2014.12.18 ◆ _/NIC =================================== ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ News & Views vol.1262 です ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2014年11月9日(日)から14日(金)までハワイのホノルルで開催された、第91回 IETFミーティングのレポートを、本号より連載にてお届けします。 第1弾となる本号では、全体会議の内容をお伝えします。次号以降は、ワーキ ンググループ(WG)の動向を個別にご報告していく予定です。 なお、この第91回IETFのオンサイトでの報告会も、明日12月19日(金)に予定 しています。14時半からJPNIC会議室(東京・神田)での開催となりますので、 ご希望の方は、以下のURLをご覧になり、本日の17時までにお申し込みくださ い。 IETF報告会(91stホノルル)開催のご案内 https://www.nic.ad.jp/ja/topics/2014/20141209-01.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ 第91回IETF報告 [第1弾] 全体会議報告 青山学院大学 情報メディアセンター 根本貴弘 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■はじめに 第91回IETF Meetingは、2014年11月9日(日)から11月14日(金)の間、ハワイの ホノルルにあるヒルトン・ハワイアン・ビレッジにて、米シスコ・システム ズ社のホストで開催されました。 ハワイといえば、エメラルドグリーンに輝く海、白い砂浜、さんさんと輝く 太陽。そんな南国の島に思いを馳せ、スーツケースにはこっそり水着とサン ダルを忍ばせていた参加者も少なくなかったのではないでしょうか。 さて、そんな常夏の楽園・ハワイにてちょうど四半世紀ぶり、第15回IETF以 来のIETF Meetingが開催されました。ハワイは、イーサネットの礎と言える ALOHAnet発祥の地で、インターネット史において大変縁のある場所で、IETF Meetingも比較的早期にこの地で開催されていました。1989年当時のIETF T シャツには、1987年に上映された映画「Revenge of the Nerds 2」の副題 「Nerds in Paradise」の文字がプリントされていたそうです。このTシャツ は数あるIETF Tシャツの中でもコアなファンがいる大変人気の1枚のようで、 なんと今回は公式IETF Tシャツとは別に、一部の有志によって当時と同様の ピンクのボディに「Nerds in Paradise 2.0」の文字をプリントし、現代版と してアレンジを加えて、もう一つの公式IETF Tシャツとして復刻されました。 先に「もう一つのTシャツ」を取り上げてしまいましたが、今回の公式IETF Tシャツは米シスコ・システムズ社のロゴが入ったIETFオリジナルデザインの アロハシャツでした。意図して作られたものであるかは定かではありません が、服好きの著者としては、米シスコ・システムズ社のアロハシャツとはず いぶんこちらも洒落を効かせた一着だなぁと思わず感心してしまいました。 というのも、会場となったヒルトン・ハワイアン・ビレッジの敷地内のビー チの名前にもなっていたハワイの英雄デューク・カハナモク、彼がデザイン したアロハシャツを販売していた企業の一つが、今は無きシスコ・カジュア ルズ社なのです。彼の名を冠したアロハシャツは、アカデミー賞にて数々の 賞を獲得した映画「地上より永遠に」の劇中で、主演のモンゴメリー・クリ フトをはじめとする出演者等が着用し注目を集め、それまでローカルな位置 づけであったハワイアンファッションを米国本土ではやらせるきっかけとなっ た歴史的なブランドです。そんな現在においてもヴィンテージとして大変人 気が高い、伝説的なブランドを持つアロハシャツメーカーと同名の「シスコ 社」がアロハシャツを作った!という、こちらもまた歴史的な一着でした。 さて、ここからは11月12日(水)に開かれた「IETF Operation and Administration Plenary」と、11月10日(月)の「Technical Plenary」の様子 について、簡単にご報告します。 ■IETF Operation and Administration Plenary 11月12日(水)の「IETF Operation and Administration Plenary」では、ホス トのシスコ社の挨拶から始まり、IETFチェア、IAOC (IETF Administrative Oversight Committee)チェアとIAD (IETF Administrative Director)、IETF トラストチェア、NomComチェアからの報告、IAOCオープンマイク、IESG (Internet Engineering Steering Group)オープンマイクという流れで議事進 行されました。 IETFチェアレポートでは、IETFチェアのJari Arkko氏より、参加者の内訳や 新しい取り組みの報告がありました。第91回の参加者は、50の国と地域から 1,080人の参加となり、前回の1,175人から95人程減少しています。また、昨 年の同時期にバンクーバーにて開催された第88回の1,189人や、その他1,200 人前後で推移してきた近年の参加者人数と比較すると100名程度減ったことが わかります。新規参加者は136人と、全体の1割強は新規参加者で、新しい層 の取り込みは継続的に進んでいるようです。国別の参加者数は、1位米国、2 位中国、3位日本、4位カナダとなっており、参加者全体の約半数を米国、約 7割を上位4カ国が占める割合となっておりました。また、近年中国からの参 加者の増加に伴い、ビザの発行に関する諸問題が増えてきており、IETFとし ても改善に向けた検討が続けられるとの報告がありました。 続いて、今年の9月および10月に試験的に行われた、IESGのテレチャットを公 開する取り組みについて報告がありました。この取り組みは、IESGの公平性 を保つことを目的として、IETF参加者もオブザーバーとしてテレチャットに 参加できるように実施したとのことでした。また、今後も知見の収集のため にテレチャットの公開を継続するとの報告がありました。 また、2015年夏頃を目処に現在ある八つのIETFエリア(応用分野(APP)、イン ターネット分野(INT)、運用管理分野(OPS)、リアルタイム応用・基盤分野 (RAI)、ルーティング分野(RTG)、セキュリティ分野(SEC)、トランスポート分 野(TSV)、その他分野(GEN))の再編をIESGが進めているとの報告がありまし た。このエリア再編の目的には、新たなWGのサポート体制の整備や、エリア ディレクターの人数の調整などがあげられました。また一方で、IESGでは、 この再編に伴い影響を受ける可能性のあるAPPエリアやRAIエリアについては、 エリアを統合するなどして今後も応用分野に関する活動を継続していくこと を検討していると報告がありました。 今回のRecognitionでは、中南米からのIETFへの参加者増加に貢献したAlvaro Retana氏、IETF Datatrackerの改善に貢献したLars Eggert氏、20年以上にわ たりインターネットおよびIETFに貢献してきたBert Wijnen 氏等3名が紹介さ れました。また、Bert Wijnen氏は、スピーチの際に氏の十八番であるオラン ダ語による歌を披露し、参加者から拍手喝采を浴びていました。 IAOC・IADチェアレポートでは、IAOCチェアのChris Griffiths氏およびIADの Ray Pelletier氏より報告がありました。今回の会議の収支決済速報では、参 加者人数は予測の1,200人より少なく、参加費およびスポンサー費の合計は 150,000ドルの赤字であることが報告されました。そのため、今回の Bits-N-Bitesもスケジュールされないことがあらためて伝えられました。一 方で、トロントで行われた、第90回の収支決算の最終報告では、参加者人数 は予測を超え、参加費およびスポンサー費ともに収支見通しを上回り、 192,349ドルの収益があったとのことでした。また、これまでのIETF継続に伴 う純利益は640,000ドルとなったとのことでした。 IETFチェアレポートでも触れられた、ビザの発行に関する諸問題についての 今後の対策については、検討を続けるとともに、必要な参加者へ会議参加を 証明するための招待状を発行するなどの方針について報告がありました。ま た、IAOCではこの問題に対して十分な理解があるため、問題が生じた際はぜ ひ連絡を取ってほしいと述べられていました。 また、第95回IETF Meetingおよび第98回IETF Meetingの開催地が決定したと の報告がありました。第95回はIETF史上初となる南米で、アルゼンチン・ブ エノスアイレスにて開催されることが決まりました。また第98回は、カナダ・ モントリオールにて開催されることが決まりました。 最後に、各スポンサーの紹介がありました。ホストのシスコ社の他に、 Welcome ReceptionをスポンサーしたNBCユニバーサル社、回線提供をしたタ イム・ワーナー・ケーブル社、そして、休憩時の飲食物を提供した各社が紹 介されました。会期初日の日曜日に開催されたWelcome Receptionでは、スポ ンサーがNBCユニバーサル社であったこともあり、参加者にはミニオンのぬい ぐるみが配られ、一部の参加者は至る所(自室やビーチ、ターミナルルームな ど)で、このミニオンを撮影し、参加者のメーリングリストに投稿することが 会期中はもとより会期後もしばらくはやっておりました。 ■Technical Plenary 11月10日(月)の「Technical Plenary」では、IAB (Internet Architecture Board)チェア、IRTF (Internet Research Task Force)チェア、RSE (RFC Series Editor)・RSOC (RFC Series Oversight Committee)チェアからの報 告、ITU (International Telecommunication Union) Plenipotentiary Conferenceの報告、IABに関する問題の報告が二つ、IABオープンマイクとい う流れで議事進行がされました。 はじめにIABチェアのRuss Housley氏より、第90回IETF Meetingからのハイラ イトについて紹介がありました。まず、IRTFチェアにLars Eggert氏が、ISE (Independent Submission Editor)にNevil Brownlee氏が、それぞれ再任した ことが紹介されました。続いて、IABが執筆したRFCとして、RFC7322「RFC Style Guide」が発行されたことが紹介されました。最後に、2015年のICANN NomComメンバーとして、John Levine氏が選ばれたことが紹介されました。 IRTFチェアのLars Eggert氏からは、次のような報告がありました。今回の IETF Meetingの期間中に開催されるIRTF Meetingは、八つあるResearch Group (RG)のうち、以下の四つのRGでした。 ・Software-Defined Networking (SDNRG) ・Information-Centric Networking (ICNRG) ・Internet Congestion Control (ICCRG) ・Network Management (NMRG) また、提案中のRGとして、Datacenter Latency Control (DCLCRG)および Network Function Virtualization (NFVRG)がありました。第90回以降に IRTF関係として発行されたRFCは、今回はないとのことでした。 最後に、Applied Networking Research Prizeの紹介がされました。2014年は 過去最多となる46人の推薦者の中から、Sharon Goldberg氏、Misbah Uddin 氏、Tobias Flach氏、Robert Lychev氏、Kenny Paterson氏、Keith Winstein 氏の6名が受賞しました。 RSE・RSOCチェアからの報告では、Heather Flanagan氏より、RFC formatの改 訂作業の進捗としてdraft-flanagan-rfc-frameworkの紹介があり、新たなRFC formatの作業は順調に進んでいる旨の報告がありました。また、その機能と して、図表の挿入をできるようにするとの紹介があり、猫の絵を例にあげて、 従来のASCIIアートによる表現からSVGファイルによる表現が可能となる点を 紹介し、参加者にこの機能を使ってみたいか問いかけがあり、多くの参加者 が挙手をしていました。 Sally Wentworth氏からは、ITU Plenipotentiary Conferenceについて報告が ありました。これは、ITUの最高意思決定機関として4年に1度開催されます。 2014年は開催年にあたり、10月20日から11月7日の期間に開催されました。イ ンターネット関連の議論ではITUがスコープとする、プライバシーや監視、人 権、インターネットガバナンスとそれに関する政策などの諸問題を中心に話 し合いがされましたが、これらインターネットの運用に関する諸問題につい てはITUの条約やその定義の変更、範囲の拡大には至らなかったとの報告があ りました。また、この結論は投票ではなく、参加者の合意形成により導かれ たとのことでした。 IABに関する問題として、以下の二つについて報告がありました。 ・IP Stack Evolution Joe Hildebrand氏より、IPv4とIPv6が共存し進化し続ける今日において、こ のような共存環境がトランスポート層において、さまざまな影響を引き起こ す可能性について説明がありました。そして、この問題に関連するWGとして Transport Services (TAPS) WG、TCP Increased Security (TCPINC) WG、 Advanced Queue Management (AQM) WGやその他のAPPエリアの紹介がありまし た。また、2015年の1月26日から27日の期間でIAB Workshop on Stack Evolution in a Middlebox Internet (SEMI)を行い、その結果を次回IETF Meetingにて発表するとの報告がありました。 ・Privacy and Security Ted Hardie氏より、プライバシーとセキュリティに関する諸問題について、 現在IABではInternet Scale Resilience、Confidentiality、Trustの三つの エリアに分類を行ったところで、今後この三つエリアごとにプライバシーと セキュリティに関する諸問題について取り組んでいくと説明がありました。 ◇ ◇ ◇ 次回のIETF Meetingは、2015年3月22日(日)から3月27日(金)にかけてアメリ カのダラスにて開催されます。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。 https://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ┃ ◆◇◆◇◆ 本号のご感想をお聞かせください ◆◇◆◇◆ ┃ ┃良かった ┃ ┃→ http://feedback.nic.ad.jp/1262/24203c2973b29592659221d7b2b4efd3┃ ┃ ┃ ┃悪かった ┃ ┃→ http://feedback.nic.ad.jp/1262/73ae8474e62c81b1151d78f6b75bca8e┃ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ___________________________________ ■■■■■ JPNICの活動はJPNIC会員によって支えられています ■■■■■ ::::: 会員リスト ::::: https://www.nic.ad.jp/ja/member/list/ :::: 会員専用サイト :::: https://www.nic.ad.jp/member/ (PASSWORD有) □┓ ━━━ N e w s & V i e w s への会員広告無料掲載実施中 ━━━┏□ ┗┛ お問い合わせは jpnic-news@nic.ad.jp まで ┗┛  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ =================================== JPNIC News & Views vol.1262 【臨時号】 @ 発行 一般社団法人 日本ネットワークインフォメーションセンター 101-0047 東京都千代田区内神田3-6-2 アーバンネット神田ビル4F @ 問い合わせ先 jpnic-news@nic.ad.jp =================================== ___________________________________ 本メールを転載・複製・再配布・引用される際には https://www.nic.ad.jp/ja/copyright.html 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