=================================== __ /P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.1301【臨時号】2015.4.21 ◆ _/NIC =================================== ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ News & Views vol.1301 です ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2015年3月下旬に米国のダラスにて開催された、第92回IETFミーティングのレ ポートをvol.1298より連載にてお届けしています。[第3弾]となる本号では、 IPv6関連WG報告として、6man、v6ops、sunset4の各WGの動向をご紹介します。 これまでに発行した、全体会議および暗号技術に関する動向のレポートにつ いては、下記のURLからバックナンバーをご覧ください。また、連載の最終回 となる[第4弾]では、DNS関連WGの報告をお届けする予定です。 □第92回IETF報告 特集 ○[第1弾] 全体会議報告 (vol.1298) https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2015/vol1298.html ○[第2弾] IETFにおける暗号技術に関する動向(楕円曲線) (vol.1299) https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2015/vol1299.html なお、今週4月24日(金)にISOC-JPとJPNICの主催で、東京・田町にて「IETF報 告会(92ndダラス)」も開催いたします。 報告会では、本連載で取り上げるエリア以外にも、より幅広いエリアの報告 がなされます。実際にIETFに参加されている方々と直接お話しをするよい機 会でもありますので、ご興味のある方はぜひご参加ください。参加申し込み は23日(木)の17時までとなっております。 □IETF報告会(92ndダラス)開催のご案内 https://www.nic.ad.jp/ja/topics/2015/20150409-02.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ 第92回IETF報告 [第3弾] IPv6関連WG報告 ~6man WG、v6ops WG、sunset4 WG~ NTTコミュニケーションズ株式会社 西塚要 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2015年3月22日(日)~27日(金)に米国のダラスにて、第92回IETFが開催されま した。筆者が会合に参加したIPv6に関連するWorking Group (WG)の中から、 v6man WG、v6ops WG、sunset4 WGについて、主な議論の概要を報告いたしま す。 ◆ 6man WG (IPv6 Maintenance, Int Area) 6man WGは、IPv6の仕様およびアーキテクチャのメンテナンスと、最新化を行 うWGです。IETFにおけるIPv6関連トピックの受け皿となり、IPv6の仕様拡張 や変更に関して、責任を持っています。6man WGから以下のRFCが発行された ことが、チェアから報告されました。 RFC7421 - Analysis of the 64-bit Boundary in IPv6 Addressing https://tools.ietf.org/rfc/rfc7421.txt IPv6ユニキャストアドレスのインタフェース識別子(IID)が64-bitで固定され ていることの利点および可変にしたときの影響について、調査結果をまとめ たInformational RFCです。 今回は一つのワーキンググループドラフト、11の個人ドラフト(そのうち四つ が新規ドラフト)が話し合われましたが、特に議論を集めた3項目について紹 介いたします。 (1) Validation of IPv6 Neighbor Discovery Options (draft-ietf-6man-nd-opt-validation) 2015年3月にワーキンググループドラフトとして提出されたもので、IPv6近隣 探索(ND)におけるNDメッセージのオプション情報の評価について、推奨のルー ルを決めています。Source Link-Layer Address (SLLA)オプションとTarget Link-Layer Address (TLLA)オプションについて、オプション内のリンクレイ ヤアドレスに、ブロードキャストアドレス・マルチキャストアドレスまたは 受信ノードのリンクレイヤアドレスが指定されている場合は、このオプショ ンを無視しないと、パケットの転送を反復させる攻撃が可能となってしまい ます。それ以外のオプションについての記述は、既存の文書(RFC4861、 RFC2464)と大きな変更が無いので、この二つのオプションの記述のみに絞る べきかどうかが議論されています。 (2) A survey of issues related to IPv6 Duplicate Address Detection (draft-yourtchenko-6man-dad-issues, draft-nordmark-6man-dad-approaches) 前回の第91回IETF報告(*1)でも取り上げられた、近隣探索プロトコルの無線 環境における問題についての議論の一環です。重複検出(DAD)について、問題 点と解決に向けたアプローチが、それぞれまとめられています。「アドレス 重複が起こる確率は低いので、配慮する必要は無いのでは」という意見があ る一方、「実際にアドレス重複が起きたらトラブルシュートするのは時間が かかるので、解決手段を得るためには必要だ」という意見もありました。 こちらは多くの関心を集めており、引き続き議論されていく予定です。 (*1) https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2014/vol1263.html (3) IPv6 Neighbor Discovery Optional Unicast RS/RA Refresh こちらも近隣探索プロトコル(ND)に関連し、定期的なマルチキャストのルー タ要請(RA)は無線環境には適さないことから、ユニキャストでルータ探索(RS) を更新できるように、RSメッセージにR-flagを追加しようという提案です。 また、RAメッセージにオプションを追加して、ルータ側から更新時間を通知 できるようにします。この提案は「IPv6のRFC全体に影響を与えることから、 問題の解決策としてはよいアプローチではない」という意見が大勢を占めま した。 ◆ v6ops WG (IPv6 Operations, Ops Area) v6ops WGは、IPv6を全世界に展開するにあたっての緊急の課題、特に運用上 の課題に対処することに焦点を当てたWGです。また、新しいネットワークや 既存のIPv4ネットワークにIPv6を導入するためのガイドラインや、IPv4/IPv6 共存ネットワークの運用ガイドラインを作成することも目的としています。 今回のv6ops WGでは、"IPv4 as a service"と呼ぶ、新しいプロジェクトを始 める提案がチェアからなされました。IPv6のネットワーク上において、IPv4 を必要なサービスとして提供する(ただし、徐々に減らしていく)というシナ リオを前提として、IPv4 over IPv6技術の展開における運用ガイダンスを書 くというプロジェクトです。対象とする技術は、現在、以下の九つです。 (1) 464XLAT (RFC 6877) (2) SIIT-DC (draft-anderson-v6ops-siit-eam, draft-ietf-v6ops-siit-dc, draft-ietf-v6ops-siit-dc-2xlat) (3) MAP-E encapsulation (draft-ietf-softwire-map) (4) MAP-T translation (draft-ietf-softwire-map-t) (5) RFC6145 translation (stateless translation to an IPv4-embedded IPv6 Address) (6) RFC6146 translation (stateful translation IPv6 clients->IPv4 servers) (7) DS-LITE (RFC 6333) (8) Lightweight 4over6 (draft-ietf-softwire-lw4over6) (9) LISP (4 over 6, various RFCs and drafts) これらの技術に関する経験の集約には、オペレーターからの意見が重要なの で、各地のNOG (Network Operators Group)と連携しながら進めていきたいと 表明されました。これらの技術の利用が既に始まっている日本から、多くの 貢献ができるのではないかと筆者は考えています。 この提案に関連する形で、日本でのMAP-Eの利用状況について、日本ネット ワークイネイブラー株式会社(JPNE)の中川あきら氏が発表を行いました。中 川氏の発表では、日本におけるIPv6普及状況とIPv6トラフィックが増加して いること、JPNEがMAP-Eを選択した理由と現状で特に大きな問題が発生してい ないことが報告されました。 JPNEがMAP-Eを選択した理由としては、「ステートレスであるためログ収集が 不要で運用が楽なこと」「カスタマサポートが容易なこと」「エンド-エンド で通信が可能であること」が挙げられていました。 また、「速度測定結果ではIPv6通信とIPv4通信が同程度であること」「ポー ト利用状況の統計データからユーザーに十分な数のポートが割り当てられて いること」「接続判定ページが提供されており、トラブルシュートが容易に なっていること」などの実用的な情報提供がされました。 会場の参加者は非常に興味を持っており、スライドの内容について詳しく知 りたいという内容の質問が相次ぎました。また、日本のIPv6の普及状況につ いて、日本のコンテンツプロバイダに対してIPv6でのサービスを促してはど うか、という突っ込んだ内容の発言もありました。 インドからは、MAP-Tのトライアルについての発表がありました。発表の構成 は中川氏とほぼ同様でしたが、MAP-TとMAP-Eを比較して、「MAP-TはQoS/SLA など顧客単位のポリシー適合が容易であること」「DPI装置の利用が容易であ ること」などが挙げられ、国が異なれば選択される技術が異なることが、興 味深かったです。 また、中国からは、CERNETとChina Telecom社における、MAP-TとMAP-Eの同時 提供のトライアルについての発表がありました。同一のBR (Border Relay)と CPE (Customer Premises Equipment)で、MAP-TモードとMAP-Eモードを自動的 に変更できるという、非常にユニークな構成となっています。MAPによるアド レス共有比率について実際のユーザーで試した結果、「1/256(1ユーザーあた り255 port) はOK」「1/512(1ユーザーあたり127 port) では、一部のユー ザーに影響があったかもしれない」など、興味深いデータが提供されていま した。 2日目のv6ops WGでは、2件のドラフトが、WGLC (Last Call)となることの同 意が得られました。 - Some Design Choices for IPv6 Networks (draft-ietf-v6ops-design-choices) IPv6ネットワークをデザインするにあたり、ルーティングに関してどのよう な選択肢があり、それぞれにどのようなメリット・デメリットがあるのかを、 網羅的に調査したドラフトです。リンクローカルアドレスしか付与されてい ないインタフェースについて、"unnumbered"と呼ぶか"link-local-only"と呼 ぶか(あるいはそれ以外か)という議論に、白熱するという一幕もありました が、ミーティングでは後者に落ち着き、WGLCをすべきかの採決が行われ、賛 成多数となりました。 - Close encounters of the ICMP type 2 kind (near misses with ICMPv6 PTB) (draft-jaeggli-v6ops-pmtud-ecmp-problem) 前々回の第90回IETF報告(*2)でも取り上げた、「ロードバランサ環境下で、 ICMPv6type 2 "Packet Too Big" (PTB)メッセージ応答が元のサーバに返らな い」問題です。こちらもWGLCをすべきかの採決が行われ、賛成多数となりま した。 (*2) https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2014/vol1223.html また、データセンター内ネットワークのIPv6化に関して、以下のような注目 すべき発表が行われました。 - SIIT-DC (draft-anderson-v6ops-siit-eam, draft-ietf-v6ops-siit-dc, draft-ietf-v6ops-siit-dc-2xlat) "IPv4 as a service"プロジェクトでも取り上げられている、IPv6で構成され たデータセンター内ネットワークにおいて、IPv4での接続性を提供する方法 に関する一連のドラフトです。 draft-anderson-v6ops-siit-eamは、RFC6145にて定義され、464XLATではCLAT 側で使われている、ステートレスなIPv4/IPv6変換(Stateless IP/ICMP Translation(SIIT))のアドレスマッピングルールを、緩和することを提案す るものです。元は、draft-ietf-v6ops-siit-dcに含まれていた内容でしたが、 単体で有用と見なされ、切り出されました。 RFC6145では、IPv6アドレス(64:ff9b::/96)の中にIPv4アドレスを埋め込むな ど、RFC6052で定義されたマッピングルールしか認めていません。しかし、 464XLATで利用するにはこの制約は不都合であるため、任意のIPv6アドレスに 静的にマッピングする方法が求められています。事実、Androidの464XLAT実 装では、RFC6052のルールを既に使っていないというコメントが会場から出さ れました。そのため、このドラフトはRFC6145をアップデートするものとし て、ワーキンググループドラフトとして採用される予定です。 draft-ietf-v6ops-siit-dcとdraft-ietf-v6ops-siit-dc-2xlatは、共に前回 のIETF91にて、ワーキンググループドラフトに採用されています。例えるな らば、データセンター側にステートフルNAT64または464XLATを提供し、IPv4 ネットワークからIPv6データセンター内の、IPv6/IPv4サーバに接続できるよ うにする提案です。特に、464XLATに類似した手法を使った場合、データセン ター内でIPv4のみのソフトウェアやデバイスをサポートできるようになりま す。これらの二つのドラフトは、利用形態やレファレンスが多く重複するこ とから、一つのドラフトとしてまとめられることとなりました。 ◆ sunset4 WG (Sunsetting IPv4, Int Area) sunset4 WGは、IPv6への完全な移行に向けて、アプリケーション・ホスト・ ネットワークが、IPv4への依存無しに機能することをめざすWGです。他のWG に対して、プロトコルの策定に際してIPv4に依存しないよう、働きかけを行 うことも目標にしています。 前回のIETF91ではミーティング自体が開催されず、MLの流量も少ないため、 残念ながらあまり活発ではなくなってしまったWGです。なぜこちらのWGを取 り上げたかというと、"IPv4 as a service"プロジェクトについて、v6ops WGとsunset4 WGのどちらが適切か、という議論があったためです。しかし、 両者のWGの違いはどこなのか、という議論にすり替わり発散してしまったた め、特に決定事項はありませんでした。 ワーキンググループドラフトとして、IPv6移行の最終段階においてIPv4を実 際に無効化するときの難しさについて列挙した draft-ietf-sunset4-gapanalysisが残っており、MLで引き続き議論をしてい くことが確認されました。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。 https://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ┃ ◆◇◆◇◆ 本号のご感想をお聞かせください ◆◇◆◇◆ ┃ ┃良かった ┃ ┃→ http://feedback.nic.ad.jp/1301/49c08c58d68d2d522f33f3c95cfeceee┃ ┃ ┃ ┃悪かった ┃ ┃→ http://feedback.nic.ad.jp/1301/6d84f89fc5e35f65dae6833581653af1┃ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ___________________________________ ■■■■■ JPNICの活動はJPNIC会員によって支えられています ■■■■■ ::::: 会員リスト ::::: https://www.nic.ad.jp/ja/member/list/ :::: 会員専用サイト :::: https://www.nic.ad.jp/member/ (PASSWORD有) □┓ ━━━ N e w s & V i e w s への会員広告無料掲載実施中 ━━━┏□ ┗┛ お問い合わせは jpnic-news@nic.ad.jp まで ┗┛  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ =================================== JPNIC News & Views vol.1301 【臨時号】 @ 発行 一般社団法人 日本ネットワークインフォメーションセンター 101-0047 東京都千代田区内神田3-6-2 アーバンネット神田ビル4F @ 問い合わせ先 jpnic-news@nic.ad.jp =================================== ___________________________________ 本メールを転載・複製・再配布・引用される際には https://www.nic.ad.jp/ja/copyright.html をご確認ください  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 登録・削除・変更 https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/ バックナンバー https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/ ___________________________________ ■■■■■ News & ViewsはRSS経由でも配信しています! ■■■■■ ::::: https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/index.xml :::::  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ■■◆ @ Japan Network Information Center ■■◆ @ https://www.nic.ad.jp/ ■■ Copyright(C), 2015 Japan Network Information Center