=================================== __ /P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.1345【臨時号】2015.10.8 ◆ _/NIC =================================== ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ News & Views vol.1345 です ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ アジア太平洋地域の地域インターネットレジストリであるAPNICのカンファレ ンスが、2015年9月上旬にインドネシアのジャカルタで開催されました。この APNIC 40カンファレンスのレポートを、前後編の2号に分けてお届けします。 前編となる本号では、カンファレンスの全体概要と、本会合で議論されたア ドレスポリシーについてご紹介します。後編では、技術動向のレポートをお 届けする予定です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ APNIC 40カンファレンス報告 [前編] 全体概要およびアドレスポリシー関連報告 JPNIC IP事業部 川端宏生 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ APNIC 40カンファレンスの概要 今回のカンファレンスは、2015年9月3日(木)~10日(木)に、インドネシア・ ジャカルタで開催されました。 インドネシアの首都であるジャカルタは、赤道直下に位置し、日中の強い日 差しと日没後の蒸し暑さを繰り返す毎日でしたが、真夏の東京とどこか似て いたかもしれません。会場周辺では、24時間体制で高層ビルの建設工事が行 われていたほか、道路はあちこちで渋滞するなど、経済発展目覚ましいイン ドネシアの現在の姿を、身をもって体験することとなりました。 主催者からの報告によると、49の国や地域から612名の参加登録があり、その うちインドネシアからの登録者は360名程度とのことでした。インドネシアの 方々が、APNICミーティングへ高い関心を寄せていたことがわかります。な お、612名の登録者のうち521名が実際に会場に足を運んだとのことでした。 APNICカンファレンスは通常、春にAPRICOTと共催で1回、秋に単独で1回開催 されますが、今回は秋のAPNICカンファレンスとしては、最大規模となったよ うです。 また、APNICカンファレンスではフェローシッププログラムが用意されてお り、アジア各地から毎回30名程度が利用するそうです。今回は、27名がこの プログラムを利用して参加していました。また、このプログラムとは別に、 APRICOT-APAN 2015日本実行委員会が用意した「APNIC 40カンファレンス参加 支援プログラム」を利用して、日本から4名が参加していました。いくつかの セッションでは最前列に陣取って、内容を聞き漏らすまいと発表を真剣に聞 く姿が印象的でした。 これまでのカンファレンスと同様に、会期前半は「ワークショップ」が開催 されました。6日(日)からは「チュートリアル」「APOPS (Asia Pacific Network Operators Forum)」「SIG (Special Interest Groups)」「BoF (Birds of a Feather)」「AMM (APNIC Member Meeting; APNIC総会)」の会 議・セッションが開催されました。これら以外にも、APNICとの関連の深い、 APIX (Asia Pacific Internet Exchange Association)やAPTLD (Asia Pacific Top Level Domain Association)が主催する会議の時間が設けられていまし た。 当日の資料、ビデオ、発言録は、以下のAPNICカンファレンスのページに掲載 されています。今回参加できなかった方や現地での発言を聞き逃した方も、 これらの資料を一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。 http://conference.apnic.net/40/program 今回はこれらのセッションの中から、ポリシー提案の結果を中心にご紹介し ます。 ■ ポリシー提案の結果について 今回は、3点のポリシー提案について議論が行われました。いずれも、前回の APNIC 39カンファレンスでも議論が行われた提案です。議論の結果、2点の提 案がコンセンサスとなり、1点の提案が継続議論となりました。 以下では、提案の内容と結果をご紹介します。ポリシー提案が行われた背景 や、前回のAPNIC 39カンファレンスではどのような議論が行われたかについ ては、vol.1289を併せてご覧ください。 □ vol.1289 APRICOT 2015/APNIC 39 カンファレンス報告 [第2弾] アドレスポリシー関連報告 https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2015/vol1289.html (1) 小規模ネットワークへのIPv4 PIアドレス割り当て基準変更 (提案番号:prop-113) 提案者:Aftab Siddiqui氏 Skeeve Stevens氏 概要:IPv4プロバイダ非依存(PI; Provider Independent)アドレスの割 り当て基準を以下の通り変更する。ただし、「3ヶ月以内に申請サ イズの25%、1年以内に50%を利用する計画を示す」という点につい ては変更しない。 (変更前) ・プロバイダ集成可能(PA; Provider Aggregatable)アドレスで 既にマルチホームしている、または ・1ヶ月以内にマルチホームする予定がある (変更後) ・PAアドレスで既にマルチホームしている、または ・/24以上のPAアドレスの割り当てを受けており、マルチホーム する意志がある、または ・6ヶ月以内にマルチホームでアドレスを経路広告する意志があ る (提案の詳細) http://www.apnic.net/policy/proposals/prop-113 結果:コンセンサス 前回のAPNIC 39カンファレンスでは、会場から出された意見を踏まえた改定 案が議論の最中に投稿されるなど、活発な議論が繰り広げられました。ポリ シー変更の必要性や変更内容の詳細について、前回の議論において一通り確 認されている状況にあることから、今回は、改定案に賛同する意見がいくつ か表明されたほかは、前回のように時間を超過するほどの活発な議論は行わ れませんでした。 インドやパキスタンといった南アジア地域からの参加者の多くが、改定案に 賛同する意見を表明していました。経済発展目覚ましいこれらの地域の企業 にとって、IPv4アドレスの分配を受けられる可能性が増えることで、ビジネ スの展開を加速させることができるのではないか、と考えているようでした。 (2) AS番号割り当ての基準変更(提案番号:prop-114) 提案者:Aftab Siddiqui氏 Skeeve Stevens氏 概要:AS番号の割り当て基準を以下の通り変更する。 (変更前) ・マルチホームする、かつ ・AS番号の割り当て予定のネットワークが、上流プロバイダの 外部経路制御ポリシーとは異なり、明確に定義された単一の ものである (変更後) ・既にマルチホームしている、または ・APNICからPIアドレスの割り当てを受けており、将来マルチ ホームする意志がある (提案の詳細) http://www.apnic.net/policy/proposals/prop-114 結果:コンセンサス 提案の議論に先立って、APNICのGeoff Huston氏からは、APNICで管理する 「/8相当の最後のAPNICにおけるIPv4未割り振り在庫」や「IANAからAPNICに 再割り振りされたIPv4アドレス在庫」に関する発表が行われていました。 「/8相当の最後のAPNICにおけるIPv4未割り振り在庫」からの割り振りアドレ スでは、割り振りが行われているにもかかわらず経路情報が広告されていな いIPv4アドレスが、25%程度あることが報告されていました。提案者はこの報 告内容を取り上げて、AS番号がより容易に割り当てられるようになることで、 こういったIPv4アドレスの経路情報広告促進につながるのではないかという コメントを出していました。 こちらの提案についても、提案番号:prop-113と同様に、一通りの議論と確 認が行われている状況にありましたので、改定案に賛同する意見がいくつか 表明されるにとどまりました。 他の地域インターネットレジストリ(RIR)を見ても、北米地域を管轄するARIN や南米地域を管轄するLACNICにおいても、今回の提案と同様にAS番号の割り 当て基準が変更されています。また、ヨーロッパ地域を管轄するRIPE NCCに おいても議論中の状況にありますので、今後の動向を追っておく必要があり そうです。 (3) WHOISでのフィルタリング情報提供(提案番号:prop-115) 提案者:廣海緑里氏 藤崎智宏氏 概要:IPv4では「ポート番号」を、IPv6では「割り当てアドレスサイズ」 の情報をWHOISに追加し、これらの情報でも登録情報を検索できる ようにする。 (提案の詳細) http://www.apnic.net/policy/proposals/prop-115 結果:ポリシーSIG MLでの継続議論 前回の議論と同様に、WHOISを利用して情報提供を行うことについて、疑問や 懸念を示す意見が表明されていました。 また、韓国の国別インターネットレジストリ(NIR)であるKRNICでは、いくつ かの大手ISP事業者の担当者に対して、提案内容を実装した場合に考えられる 影響などについて、事前に意見照会をしたそうです。ISPの担当者からは、 WHOISの登録内容は攻撃やSPAM送信の対応の際に利用されていることや、登録 にはかなりの業務量が必要となるため、提案には反対するという意見が多く 寄せられたとのことです。 日本でも、ポリシーワーキンググループが中心となり、APNICカンファレンス において提出された提案に関する意見収集イベントを開催しています。今回 は意見収集イベントは開催されませんでしたが、今後開催される際には、現 場の生の声を議論の場に届けられるよう、ぜひご参加ください。 疑問や懸念を示す意見が表明される一方で、特にIPv6の情報提供については 賛同する意見が表明されていました。提案はメーリングリストに差し戻して、 継続して議論を行うことがチェアから発表されましたが、メーリングリスト での議論と並行して、WHOISでの情報提供が適切かどうか、どのような情報を 提供することが適切かといった、それぞれの点について調査が行われる予定 です。 ■ IANA機能の監督権限移管に関する議論 2014年3月に発表された、米国商務省電気通信情報局(NTIA)によるIANA監督権 限移管の意向を受けて、移管後の体制を検討し、提案することに責任を持つ ICG (IANA Stewardship Transition Coordination Group)は、番号資源(IPア ドレス/AS番号)、プロトコルパラメーター、ドメイン名の各コミュニティに 対し、提案の策定を要請しました。その要請を受け、各コミュニティではそ れぞれの資源に関するIANA機能において、移管後の体制について議論を行い、 検討結果を提案としてまとめました。 その後、IANA機能に関わりを持つ上記の三つの各コミュニティが策定した提 案は、ICGにより一つの統合提案にまとめられました。ICGではこの統合提案 について、2015年9月8日(火)を締め切りとして意見募集を行っていました。 APNICカンファレンスではこれまでも、本件に関するセッションを開催してき ましたが、セッションの当日に締切日を迎えるということもあり、APNIC地域 からの意見提出に向けて呼びかけが行われました。 セッションでは、ICANNから理事長のSteve Crocker氏とIANA部局の責任者の Elise Gerich氏、RIRからICGのメンバーを務めるAPNIC事務局長のPaul Wilson 氏とAFRINIC CEOのAlan Barrett氏、全RIRの調整機関であるNRO (Number Resource Organization) ECからChiarのAxel Pawlik氏、各RIRコミュニティ の提案をまとめるCRISP (Consolidated RIR IANA Stewardship Proposal)チー ムからChairの奥谷泉(JPNIC)が登壇しました。セッションは、それぞれの立 場からIANA監督権限移管への関わりを紹介する形式で進められました。 IANA監督権限の移管が意味するものについての解説や、これまでの進捗状況 の報告、今後の計画について説明も行われたほか、登壇者によるディスカッ ションや会場の参加者からの質疑応答など、盛りだくさんの内容でした。こ こでは詳細までお伝えすることはできませんが、番号資源の分野に限らず、 IANA監督権限移管への関心を持つ参加者は多かったのではないでしょうか。 セッション中に放映された、NRO制作のIANA監督権限移管についての説明ビデ オ(日本語版)は、以下のURLから参照することが可能です。ぜひ一度ご覧くだ さい。 IANA Stewardship Transition Update: what Numbers folk need to know [IANA監督権限の移管: 現状はどうなっているのでしょうか?] https://www.youtube.com/watch?v=B5n3XgZTaac ■ 選挙結果のご紹介 APNICカンファレンスでは、情報提供やポリシー提案に関する議論のほかに も、各種選挙が行われます。今回行われたNRO NCおよび各SIGのChair・ Co-Chairの選挙結果をご紹介します。 (1)NRO NC:藤崎智宏氏(日本電信電話株式会社(日本)・再選) NRO NCは、ICANN理事会がグローバルポリシーを承認する上でアドバイ スを行う役割を担います。ポリシーフォーラムより選出された2名と、 RIRの理事会が指名する1名の合計3名を、各RIR地域の代表者としていま す。五つのRIRから合計15名で、NRO NCを構成しています。 2008年4月よりNRO NCとして活躍する藤崎氏は、2016年1月から2年間の 任期で、引き続きNRO NCの役割を担います。 APNIC 40における選挙にて藤崎智宏氏がNRO NCに再選出 https://www.nic.ad.jp/ja/topics/2015/20150911-01.html (2)ポリシーSIG Co-Chair: Sumon Ahmed Sabir氏 (Fiber@home Limited(バングラデシュ)) アドレスポリシーの提案について議論・コンセンサスの確認を行う、ポ リシーSIGでは、Co-Chairが空席となっていました。今回、Sumon氏の当 選により、Chairである山西正人氏とともに、ポリシーSIGを運営するこ ととなります。 (3)NIR SIG Chair: 橘 俊男氏(グリー株式会社(日本)・再選) NIR SIG Co-Chair: Ajay Kumar氏(CNNIC(インド)・再選)、 Zhen Yu氏(CNNIC(中国)) NIRに関する議論を行うNIR SIGにおいても、任期満了となるChairおよ びCo-Chairの選出が行われました。橘氏は2期目となり、これまで以上 の活躍が期待されます。 今回の選挙では、日本国内のアドレスポリシーフォーラムにおいて活躍する 藤崎氏と橘氏が当選されました。おめでとうございます! ■ 次回以降のAPNICカンファレンスについて 次回のAPNIC 41カンファレンスは、APRICOT 2016と共催となり、2016年2月16 日(火)~26日(金)にニュージーランド・オークランドでの開催が予定されて います。ニュージーランドでのAPNICカンファレンスの開催は2008年8月以来、 約7年半ぶりとなります。 また、2016年9月頃開催予定のAPNIC 42カンファレンスは、バングラデシュ・ ダッカで、2017年9月頃開催予定のAPNIC 44カンファレンスは台湾・台中での 開催を予定している旨も、併せて発表されています。 APNICカンファレンスは、RIRやNIRのスタッフ、APNICメンバーに限らず、ど なたでも自由に参加することが可能です。今回の報告に目を通されて、興味 を持たれた方は、一度参加してみてはいかがでしょうか。特に日本国外での 開催の場合には、ポリシーに関わる熱のこもった議論のほかに、開催地のイ ンターネット事情を垣間見られる場面に遭遇するかもしれません。JPNICから は、職員が毎回参加していますので、多くの方と会場でお目にかかれること を楽しみにしています。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。 https://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ┃ ◆◇◆◇◆ 本号のご感想をお聞かせください ◆◇◆◇◆ ┃ ┃良かった ┃ ┃→ http://feedback.nic.ad.jp/1345/8fd38655a76c9c723d76b05dce96536b┃ ┃ ┃ ┃悪かった ┃ ┃→ http://feedback.nic.ad.jp/1345/d3ac56d11ef90b4ffe58f57980ea51e5┃ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ___________________________________ ■■■■■ JPNICの活動はJPNIC会員によって支えられています ■■■■■ ::::: 会員リスト ::::: https://www.nic.ad.jp/ja/member/list/ :::: 会員専用サイト :::: https://www.nic.ad.jp/member/ (PASSWORD有) □┓ ━━━ N e w 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