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    /P▲        ◆ JPNIC News & Views vol.1490【臨時号】2017.4.11 ◆
  _/NIC
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◆ News & Views vol.1490 です
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2017年3月中旬に、デンマークのコペンハーゲンで第58回ICANN会議が開催さ
れました。今回の会議では、2012年から開始された新gTLDの追加がそろそろ
収束してきたことを受け、次回の新gTLD追加募集に向けた動きが中心的な話
題となりました。また、最近各所で話題となっている、WHOIS登録情報の正確
性向上に向けた議論も行われています。本稿では、このコペンハーゲン会議
の模様をご紹介します。

なお、毎回恒例となっている本ICANN会議に関する報告会を、2017年4月20日
(木)に東京・神田のJPNIC会議室で開催する予定です。プログラムの詳細は
近日中に公開いたしますので、日程をご確認の上、お早めにお申し込みくだ
さい。

  第48回ICANN報告会開催のご案内
  https://www.nic.ad.jp/ja/topics/2017/20170329-01.html

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◆ 第58回ICANNコペンハーゲン会議報告
                                     JPNIC インターネット推進部 山崎信
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2017年3月11日(土)より16日(木)まで、デンマークの首都コペンハーゲンにて
第58回ICANN会議が開催されました。コペンハーゲンは北緯約55度(ロシア・
サハリン/樺太の北端より緯度が高い)に位置することもあり、寒い夜は気温
が摂氏で氷点下まで下がることもありました。

今回は2015年10月に発表された会議戦略による分類(*1)では会議A(Community
Forumと呼ばれています)の中規模なものとなり、参加者数は2,086名を数えま
した。

広大な会議場にはいくつも部屋があり、使われていない部屋もかなりあった
ようです。延べ348セッションあり、部屋の大きさに違いはありますが、いず
れもかなりの参加者で賑わっていました。同じ時間帯にいくつもセッション
が重なっていて、特にGNSO(分野別ドメイン名支持組織)関連のセッションは
数が多いこともあり、興味のあるセッションすべてには出られないこともあ
りました。

(*1) https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2016/vol1417.html


■ 今回の特徴

○次回新gTLD募集手続き開始に向けて

今回は、次回新gTLD募集手続きに関連するポリシーを策定する作業部会(GNSO
New gTLD Subsequent Procedures PDP Working Group)に関するセッションが
複数開催されました。同WGでは、次のラウンドに向けた改善点について意見
募集の準備を行ってきており、コペンハーゲン会議で開催されたセッション
では、主にその意見募集(Community Comment 2, CC2)の内容について議論さ
れました。CC2については、本ICANN会議終了後に一般からの意見募集(*2)を
開始し、5月22日まで受け付けています。今後の予定は2017年12月に暫定報告
書、2018年9月には最終報告書をそれぞれ提出する予定となっています。

本件については、これから本格的な検討に入ることになるため、意見募集が
実施された際には、次回のラウンドへの改善に向けて必要な改善点を述べて
おくことが重要だと思われます。

(*2) https://www.icann.org/public-comments/cc2-new-gtld-subsequent-procedures-2017-03-22-en

○WHOIS/RDS関連

WHOIS/登録データディレクトリサービス(RDS)関連では、GNSO RDSポリシー策
定プロセス(PDP)作業部会(WG)のセッションが複数開催されました。同WGの目
的は、gTLD登録データの収集、保守、アクセス提供に関する目的を定義し、
データ保護のためのセーフガードを検討することです。

同WGではこれまでに、

 - 問題点の記述
 - ユースケース例
 - 目的に関する声明書
 - 要求事項となり得る可能性のある項目

の四つが作成されました。しかし、検討の進捗がはかばかしくないため、
「thin data(*3)」およびデータ収集に関する重要コンセプトに焦点を絞るこ
とになり、同WGのフェーズ1では、利用者/目的、データ要素およびプライバ
シーに関連する質問について検討することにしました。

会議直前の2月末には関連する質問を作成してWG内から回答を集めた上で、コ
ペンハーゲン会議で議論が行われました。

関連して、データプライバシー保護の専門家に質問をぶつけるという「デー
タ保護機関とのコミュニティ横断セッション」が開催されました。WGにおい
てプライバシーに関する検討が行われてきており、それまでもデータ保護機
関の方々がICANN会議に参加していたため、有益な意見がもらえることにつな
がるのではと、WGメンバーからの提案で実現したものです。

このセッションには、以下の組織からパネリストが参加しました。

[データ保護機関、法執行機関およびその他国際機関]
 - 欧州評議会(Council of Europe, CoE)(*4)
 - 欧州データ保護監察機関(European Data Protection Supervisor, EDPS)
 - 国際刑事警察機構(International Criminal Police Organization,
   ICPO/INTERPOL)
 - 国連(人権に関する特別報告者)

[ICANN]
 - 分野別ドメイン名支持組織(GNSO)
 - 政府諮問委員会(GAC)
 - 理事(Becky Burr氏)

参加者からはさまざまな意見が出されましたが、中にはICANNにプライバシー
オフィスを作ることを求める声もありました。他に、15日に開催されたもう
一つのWGセッションも、大半がデータ保護機関との対話となりました。

  Cross-Community Discussion with Data Protection Commissioners
  https://icann58copenhagen2017.sched.com/event/9nnl/cross-community-discussion-with-data-protection-commissioners

  2017-03-15 ICANN58 Copenhagen Next Gen RDS PDP Working Group
  https://community.icann.org/display/gTLDRDS/2017-03-15+ICANN58+Copenhagen+Next+Gen+RDS+PDP+Working+Group

(*3) Thin WHOISで表示される情報である、レジストラ情報、登録状態、登録
     日および登録終了日、ネームサーバ情報、WHOIS更新日時、レジストラ
     のWHOISサービスURL、を指します。

(*4) 欧州連合(EU)のデータ保護規則とは別に、ロシアを含む欧州のほぼすべ
     ての国が加入している欧州評議会では個人情報保護を定めた条約が存在
     し、同条約が改正プロセス途上にあります。
     http://www.coe.int/en/web/data-protection/modernisation-convention108


■ GNSOポリシー策定関連動向

○全gTLDにおけるすべての権利保護メカニズム(RPM)評価

全gTLDにおけるすべての権利保護メカニズム評価WGでは、フェーズ1で2012年
の新gTLD募集に併せて導入されたRPMについて評価し、フェーズ2でUDRP(統一
ドメイン名紛争処理方針)の見直しを行うことになっています。現状はフェー
ズ1で、事前にレジストリやレジストラが参照するデータベースへ登録するこ
とで商標保護を受けられるTrademark Clearinghouse (TMCH)に関する構造と
スコープのレビューを継続しています。完了次第(2017年4月中旬見込み)、優
先登録(Sunrise)と商標と一致する文字列が登録された場合の通知(Trademark
Claims)について検討予定となっています。フェーズ1は2017年末~2018年初
頭に終了することが目標となっていて、その後フェーズ2が開始予定となって
います。

○IGO/INGOによる事後権利保護メカニズムへのアクセス

国際政府間機関(IGO)-国際非政府機関(INGO)向けの権利保護メカニズムにつ
いては、2014年4月に理事会で決議され、現在ICANN事務局で実装中の事前(ド
メイン名登録前)RPMとは別に、事後RPMとしてのUDRPおよびURS (Uniform
Rapid Suspension)をIGO/INGOのニーズに合わせて変更するかどうかを、
IGO/INGO事後権利保護PDP WGで検討しています。暫定報告書ではどちらも変
えず、新たなプロセスも設けないという内容の勧告となっています。これに
関しては政府諮問委員会(GAC)が反対しており、GACの意見(IGO/INGOに対しゼ
ロもしくはわずかな費用で事後RPMを利用可能とする)に沿った勧告案も検討
されてはいるものの、WG内での支持は得られていないようです。

○新gTLDオークション収入

新gTLDの募集の際に、同じ文字列の取り合いになった場合にはオークション
が開催され、莫大な収入をICANNにもたらしました。その使い道を検討するた
めコミュニティ横断WG (CCWG)が設立され、チャーターの採択と検討が2017年
1月より開始しました。WG会合時点では作業計画を作成中、ならびに今後のブ
リーフィングで必要となる項目を確認中です。会合では主にICANN事務局から
法的な制約などについての説明と、それに対する質疑応答がなされました。

○TLDとしての国および地域名の利用

本件のために設立されたCCWGが暫定報告書を作成済みで、2017年4月21日まで
意見募集中です。2文字TLDはccTLDのみとし(現状維持)、3文字ccTLDの導入可
否については検討したものの、コンセンサスは得られませんでした。国およ
び地域名のフル名称をそのままccTLDとすることにについては、検討が進んで
いない状況です。このような状況のため、基本的にはCCWGを閉じることとし、
今後の方向性については検討中となっており、暫定報告書で案がいくつか示
されています。このような状況のため、コペンハーゲン会議では単独セッショ
ンは開催されず、新gTLDプログラム評価セッションで状況報告がなされたに
とどまりました。


■ 技術面での特筆すべき発表

○Moving Towards a data-driven ICANN (データ駆動のICANNに向けて)

競争、消費者からの信頼、消費者の選択肢(CCT)評価チームが発行した暫定報
告書中の勧告で、ドメイン名マーケットとポリシー実装の成果に対し、デー
タ収集活動を正式化するよう求めたことに対応して開催されたセッションで
す。データ収集対象、収集されたデータの利用などについて議論され、ICANN
によるオープンデータイニシアティブについても紹介されました。

  Cross-Community Session: Moving Towards a Data Driven ICANN
  https://icann58copenhagen2017.sched.com/event/9oMx/cross-community-session-moving-towards-a-data-driven-icann

○Root Zone KSK Rollover (ルートゾーン鍵署名鍵の更新について)

現在DNSSECプロトコルで使われている鍵署名鍵(KSK)は2010年に署名されたも
のですが、2017年10月11日にルートゾーンの鍵署名鍵が更新されます。更新
への対応が必要になる可能性があるということで、更新に関して周知啓発す
るためのセッションが開催されました。

○Emerging Identifiers Technology (新たな識別子技術について)

新たに出現したインターネットの識別子技術として、以下の三つが紹介され
ました。

- Namecoin:ブロックチェーン技術を利用した識別子登録および更新技術
- Frogans:アプリケーション層で動作する識別子技術
- Digital Object Architecture(DOA):デジタル図書館のために考案された
  技術を基に開発された、インターネット上で動作する分散情報保存、特定
  および検索識別子技術

  Emerging Identifiers Technology
  https://icann58copenhagen2017.sched.com/event/9nqD/emerging-identifiers-technology

なお、ブロックチェーン技術については、パブリックフォーラムセッション
において、参加者よりICANNはDNSの進化もしくは代替として使う可能性はあ
るのかと質問がありました。これに対し、最先端技術についての意志決定は
IETFが担うのでICANNはその立場にないが、技術は追っており、Technical
Expert Groupとの会合でNamecoinについてのプレゼンテーションを受けたこ
と、およびARPANETを開始してからインターネットが花開くまで時間がかかっ
たように、新技術が一般的になるには時間がかかるものだ、という返事が
ICANN理事長Steve Crocker氏よりありました。


■ その他

○説明責任についてのコミュニティ横断作業部会(CCWG-Accountability)

ICANNの説明責任強化に向けての検討は、テーマごとにサブグループを設立し
て、IANA監督権限移管後も、コミュニティ横断作業部会
(CCWG-Accountability)で継続しています。以下のサブグループより進捗報告
が行われ、今後の提案策定までのスケジュールが見直される予定のものもあ
ります。

- スタッフの説明責任について
- 支持組織(SO)および諮問委員会(AC)の説明責任について
- SO/AC/配下もしくは横断グループのダイバーシティについて
- 独立評価パネル(IRP)実装監督チームの状況
- ICANNの法管轄(Jurisdiction)について(具体的にはICANNが米国にあること
  について)

なお、同CCWGにより意見募集中のものは、以下の通りです。

[意見募集・アンケート]

法管轄(4月17日まで):
https://community.icann.org/display/WEIA/Jurisdiction+Questionnaire

理事解任時の誠意ある対応に関するガイドライン(4月24日まで):
https://www.icann.org/public-comments/enhancing-accountability-guidelines-good-faith-2017-03-07-en

○GNSOスタッフ退任

GNSOの事務局を長らく担当されたICANNスタッフ、Glen de Saint Gery氏が今
回を持って退任されました。それに合わせ、今回はGNSOの歴史に関する炉辺
談話(GNSO History Fireside Chats)と名付けられた、彼女を囲むセッション
が行われ、GNSO評議会の新旧メンバーなどを中心に思い出話を語り合いまし
た。会期中開催されたGNSO評議会会合および理事会会合では、それぞれ彼女
に対する感謝決議がなされました。


■ 最後に

久々にICANN会議に参加してみて、とにかく守備範囲が広いことを実感しまし
た。本稿では国コードドメイン名支持組織(ccNSO)や政府諮問委員会(GAC)な
どでの議論には触れていませんが、これらについては2017年4月20日(木)に開
催する、第48回ICANN報告会において報告される予定です。

  第48回ICANN報告会開催のご案内
  https://www.nic.ad.jp/ja/topics/2017/20170329-01.html

次回第59回ICANN会議は、南アフリカ・ヨハネスブルグで、2017年6月26日(月)
から29日(木)まで開催されます。その際、次期新gTLD募集に関連してGAC、
GNSO、ccNSOで地名TLDでの扱いについての、合同セッションの開催が提案さ
れています。


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       わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。
             https://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html
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 JPNIC News & Views vol.1490 【臨時号】

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