━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ __ /P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.1871【臨時号】2021.9.2 ◆ _/NIC ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ News & Views vol.1871 です ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2021年6月に開催された第71回ICANN会議を受けて、恒例となる第61回ICANN報 告会を開催しました。報告対象となるICANN会議同様に、報告会も引き続き完 全オンラインにての開催です。今回もDNSの不正利用に関する議論が行われた ほか、一時期はGDPR対応優先で後回しになっていた、各種課題も再び検討が 進んでいるようです。 なお、本報告会の資料および動画をJPNIC Webで公開しておりますので、こち らも併せてご参照ください。 第61回ICANN報告会 https://www.nic.ad.jp/ja/materials/icann-report/20210805-ICANN/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ 第61回ICANN報告会レポート JPNIC インターネット推進部 藏増明日香 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2021年8月5日(木)に、61回目となるICANN (The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)報告会を開催いたしました。報告の対象となる 第71回ICANN会議(以下、ICANN71)は、Prep Week(会議前の事前インプットの ための週)が2021年6月1日(火)から3日(木)、本会議が6月14日(月)から17日 (木)に開催されたものです。同会議は、当初はオランダ・ハーグにて開催予 定でしたが、過去4回のICANN会議に続き、新型コロナウイルス感染症の影響 を受け、オンライン会議として開催されました。 ■ プログラム 今回のICANN報告会のプログラムは、次の通りでした(話者敬称略)。 1. ICANN71会議概要報告 ICANNジャパン・リエゾン 大橋 由美 2. 日本語Root Zone LGRについて 株式会社日本レジストリサービス(JPRS) 堀田 博文 3. ICANN政府諮問委員会(GAC)報告 総務省 総合通信基盤局電気通信事業部データ通信課 森下 大 4. ICANN理事からの報告 JPNIC 前村 昌紀 5. GNSOレジストリ・レジストラ部会報告 株式会社インターリンク ジェイコブ・ウィリアムズ 6. 次期新gTLD申請手続きポリシー検討状況報告 GMOブライツコンサルティング株式会社 寺地 裕樹 7. 国コードドメイン名支持組織(ccNSO)関連報告 JPRS 高松 百合 8. gTLD登録データ向け暫定仕様に関するEPDPフェーズ2Aに関する報告 JPNIC 藏増 明日香 それぞれの報告の内容について、以下、簡単にご紹介します。 ■ ICANN71会議概要報告 ICANNジャパン・リエゾンの大橋氏からは、ICANN71の概要についてご報告い ただきました。ICANN71は、当初はオランダ・ハーグにて開催予定だったた め、オランダの現地時間(日本時間よりマイナス7時間)で開催され、参加数は 1,337人が確認されたとのことです。このうち、北米からの参加が最も多く全 体の約35%を占め、ヨーロッパ地域からの参加が約25%、約23.7%がAPAC(アジ ア・太平洋)地域からの参加だったとのことでした。ICANN71は、年3回のICANN 会議のうち、「ポリシーフォーラム」と呼ばれる利害関係者グループや部会 の中でのポリシー検討が中心の、フォーマリティを省略した短い会期の会議 でした。 大橋氏からは、ICANN71における以下の三つのプレナリーセッション(会議参 加者全員の参加を前提としたセッション)のテーマをご紹介いただきました。 - 法規制の進展がICANNポリシーに及ぼす影響 - インターネットガバナンスのエコシステムにおけるICANNのマルチステーク ホルダーモデル - Reputation Block Lists (RBLs)を理解する 大橋氏からはその他、ICANN71本会議でのGACおよびGNSOの契約者会議による セッション(DNSに対するセキュリティ上の脅威に関するセッション)や、 At-Large関連セッション(エンドユーザーのポリシー策定プロセス(PDP)参加、 技術を用いたGDPR遵守(最近米国でVerisign社に付与された特許の紹介)、 ccTLDにおけるガバナンスモデル)もご紹介いただきました。また、新型コロ ナウイルス感染症によるパンデミック終息後の、ICANN公開会議のあり方に関 するセッションが開催され、意見交換が行われたそうです。 最後に大橋氏からは、現在ICANNにおいて検討作業が進んでいる、PDPをご紹 介いただきました。 ■ 日本語Root Zone LGRについて JPRSの堀田氏からは、ルートゾーンラベル生成ルールおよび日本語LGRの活動 状況についてご報告いただきました。 堀田氏からは、日本語LGRにおける視覚的同一の判断に関する結論(漢字の 「口」とカタカナの「ロ」は視覚的に類似し紛らわしく、見間違いが起き得 るので同一と判断する等)についてご報告いただきました。なお、中国語と韓 国語のLGRで定義された異体字は、日本語LGRにも取り入れる(日本語LGRでも 異体字として扱う)ことに落ち着いたとのことであり、同活動は本報告会の時 点で、報告書をまとめている段階にあることが報告されました。 ■ ICANN政府諮問委員会(GAC)報告 総務省の森下氏からは、ICANN71におけるGAC加盟国の参加状況と、GAC会合に おける以下の主な話題についてご紹介いただきました。ICANN71には、71のGAC 加盟国/地域政府と、五つの国際機関の参加があったそうです。 - DNS不正利用 - gTLD登録データへのアクセス(WHOIS) - 新gTLDの拡大 - IGO(国際政府機関)の保護 DNS不正利用に関するセッションでは、総務省より発表を行い、ICANNとの契 約を遵守していない事業者の実例を報告するとともに、ドメイン名登録時の 正確な情報収集や身元確認の必要性、ICANNによる不正利用対応を強化する必 要性等について提言を行ったとのことでした。GACのPSWG議長や欧州委員会 (EU)からは謝意や支持が表明されたものの、GAC議長からはドメイン名が不正 利用されていないことの証明への取組方法について各国で共有していく必要 がある旨の発言がなされたり、事業者からは不正利用の証明に関する責任は レジストラには無いとの発言があったりしたそうです。 他に森下氏からは、gTLD登録データへのアクセスに関しては、登録者データ 開示システム(SSAD)について、GACから2020年に提出済みの意見(データの開 示方法や消費者保護に関する取り組み等の必要性について、GAC70勧告で表明 済みの懸念)を引き続き打ち出していくことが確認されたこと、また、次期新 gTLD募集に向けた取り組み状況を確認し、SubPro WGによる最終報告書にDNS 不正利用に関する勧告が含まれていなかったことについて、ICANN71での会合 で懸念が表明されたこと等についてご報告いただきました。 ■ ICANN理事からの報告 JPNICの前村からは、ICANN理事としての報告を行いました。 まず、ICANN70以降における理事会のWeb会議に関する実施状況や、2021年中 に予定されている、理事会メンバーの交代をめぐる状況について報告いたし ました。また、前回の報告会以降に行われた、ICANN理事会決議の概要等につ いて報告いたしました。 前村からは他に、コミュニティ勧告実施のための補助資金(Supplemental Fund for Implementation of Community Recommendation/SFICR)の仕組みを紹介い たしました。SFICRは、運転資金(Operating Fund)、準備資金(Reserve Fund) の他に設けるもう一つの特別資金枠で、準備資金への資金移動後にさらに余 裕がある場合に、資金を確保し、大規模で多年度にわたるコミュニティ勧告 の実施の費用に充てるというものです。また前村からは、先に大橋氏からも ご説明のあった、APACスペースから理事会宛の、今後の会議開催形態と参加 機会の平等に関するレターを受け取ったことや、時差の関係でアジア・太平 洋地域からの遠隔会議参加の困難さや、今後の課題等についてお話しいたし ました。 ■ GNSOレジストリ・レジストラ部会報告 株式会社インターリンクのジェイコブ・ウィリアムズ氏からは、契約当事者 の立場から、ICANN71におけるレジストリ・レジストラ関連会合等について、 ご報告いただきました。 レジストラ部会は、法人化した結果年1回の総会実施が義務となり、ICANN71 で初の総会が行われたとのことでした。なお、ICANN71では正式な会合は開催 されず、非公式会合でもビジネス面の問題が話題のほとんどを占めたとのこ とでした。 他に、2012年より活動を開始した団体で、各地域の規制やビジネスへの影響 の調査や情報提供を行っている、インターネットと管轄政策ネットワーク (Internet & Jurisdiction Policy Network、I&J)の、ドメイン名関連の部 会に参加したメンバーから、DNS Abuseへの対応ツールや対策に関する報告を 受けたことや、レジストラ間移転ポリシーをめぐる状況報告がありました。 ICANN71では、レジストリ部会も正式な会合は行わなかったとのことですが、 ウィリアムズ氏からはレジストリ部会のBrand Registry Group (BRG)がパネ ルディスカッション形式の会合を行い、ICANNに次期新gTLD募集ラウンドの認 知度を上げることや、申請者ガイドブックのドラフト版を早めに公開するよ う求めていくこと等が議論されたとの、ご報告をいただきました。 ウィリアムズ氏からは他に、GNSOにおけるCPH(契約者会議)での話題をご紹介 いただきました。CPHでの話題としては、WHOISとプライバシー法の競合に対 処するための、ICANNの手順(WHOIS Conflicts Procedures)について改訂が必 要であることがICANNとの間で話し合われたことや、DNS Abuse対応に関する セッションが行われたことについてご報告いただきました。 ■ 次期新gTLD申請手続きポリシー検討状況報告 GMOブライツコンサルティング株式会社の寺地裕樹氏からは、次期新gTLD申請 手続き開始に向けた、ポリシー検討の状況についてご報告いただきました。 寺地氏からは、次期新gTLD募集をめぐるこれまでの経緯や、次期募集に向け た検討を行ったポリシー策定プロセス(PDP)による、報告書への意見募集結果 等をご紹介いただいた他、ICANN71での関連セッションについてご報告いただ きました。ICANN71では、ブランドTLDを代表するグループであるBrand Registry Group (BRG)によるセッションが開催され、次期ラウンドでの申請 者への、ICANNのサポート等について議論されたとのことでした。 寺地氏によれば、事業者の立場としては、ICANNに対して申請要件やスケ ジュールの早めの開示を期待するとのことでした。しかし、ICANN側は調整が 完全に済んでいない情報の開示に積極的でなく、また、ICANNがポリシーの実 施前にOperational Design Phase (ODP)の実施を検討していることから、次 期ラウンド開始は早くて2023年ではないかとのことでした。 ■ 国コードドメイン名支持組織(ccNSO)関連報告 JPRSの高松氏からは、ccNSO関連会合についてご紹介いただき、ICANN71では ccNSOの運営に関するセッション、ポリシー関連セッション、最後にccNSO評 議会の会議が行われたことについてご報告いただきました。 また高松氏からは、ccNSOにおいて検討が進められている、二つのポリシー策 定プロセス(PDP)をご紹介いただきました。一つは、ccTLDの委任を終了する (国・地域等が消滅し、ccTLDを廃止する)際のプロセスの整理が課題となって いることについてです。このPDPについては、ccTLD委任終了に関するPDPの作 業部会(WG)における議論が終了し、会員全体による投票でも承認を得て、理 事会に結果が回される予定とのことでした。ただし、ccTLDの委任、解約、委 任の移管(ccTLDは維持するが運営組織が変わる)場合の手続きについては、議 論が継続されるとのことでした。 もう一つの、略称が「ccPDP 4」とされているPDPでは、国際化ドメイン名 (IDN)のccTLDにおいて認める文字列の、決定ルールの策定を検討しているこ とについてご紹介いただきました。ccPDP 4では現在検討作業が継続中で、 ICANN71では作業部会(WG)で検討中の論点の紹介等、進捗状況の共有が行われ たとのことでした。 ccNSOでは、メンバーの増加等に伴い、ccNSOのガバナンス(運営)ルールの見 直しの必要性が以前より生じていました。高松氏からは最後に、ICANN71では 運営ルールの見直し方針について、議論が行われたことのご報告がありまし た。 ■ gTLD登録データ向け暫定仕様に関するEPDPフェーズ2Aに関する報告 最後に筆者より、2021年6月にICANNより公表された、GDPR対応を検討する ICANNの迅速ポリシー策定プロセス(EPDP) Phase 2Aに関して、中間(暫定)報 告書の概要についてご報告いたしました。 同EPDPでは、Phase 1で登録者情報公開における暫定仕様が検討され、Phase 2 では非開示の登録者情報の開示方法(SSAD)が検討されました。Phase 2Aでは、 登録者が法人である場合と個人である場合の区別の方法と、登録者の連絡先 メールアドレスとして匿名の統一したアドレスを設けることの二つが検討課 題で、2021年6月にPhase 2Aの報告書が公開され、意見募集が行われたところ でした。また、同報告会の直前の2021年8月2日に、意見募集結果の報告書が 公開されたところでした。 暫定報告書は、法人と自然人を区別する方針自体に変更は必要ないとの立場 を示しつつ、区別する際の具体的なガイダンスを示していました。本報告会 では、このガイダンスの概要についてご報告いたしました。 統一した匿名の連絡先メールアドレスを設けることについては、暫定報告書 は技術的には困難ではないとしつつも、意見募集の結果も踏まえて今後検討 したいとするに留まっていました。 意見募集の結果を見ると、法人と自然人を区別することについては若干の反 対意見(区別に意味がない等の意見)もあったものの、個人情報の非開示はGDPR の要請であることを考えれば、個人情報は伏せ法人情報は公開するとの方針 に、今後変更は発生しないのではないかと思われます。こうした見通しをお 伝えするとともに、統一した匿名のメールアドレスの連絡先を設けることに ついては、意見募集の結果を見る限りは反対意見も多かったことから、改め て今後検討される見込みであることをご報告いたしました。 ■ 終わりに オンライン開催によるICANN報告会も5回目となり、主催者側も登壇者もすっ かりオンライン慣れした感がありました。ICANN会議もオンライン開催が続い ていますが、各課題とも着実に検討作業が進捗しており、報告会ではICANN会 議での非公式な会合における議論の内容等も聞くことができました。一時期 は最優先課題だったGDPR対応も、ポリシー検討としては一区切り付いた感が あり、GDPR対応のためペンディングとなっていた、他の検討課題への取り組 みも進んでいます。ワクチン接種が進み、実開催の話も出始めたICANN会議で すが、秋の会議もオンラインによる開催となりました。 次回のICANN会議は、本会議の会議日程変更が先般発表され、2021年10月25日 (月)~28日(木)に開催される予定となっており、この会議の報告会は11月終 り頃か、12月上旬に開催の見込みです。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。 https://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html ◇ ◇ ◇ メールマガジン以外でも、情報を発信しています! 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