━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ __ /P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.2101【臨時号】2024.8.23 ◆ _/NIC ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ News & Views vol.2101 です ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2024年6月中旬にルワンダ・キガリで開催された第80回ICANN会議を受けて、 恒例となる第70回ICANN報告会を2024年7月25日(木)に開催しました。今回の ICANN会議では、新しいICANN事務総長の指名が発表されたほか、次期新gTLD の募集やRDRSの話題など、引き続きgTLDの議論が多く行われました。新gTLD の次期募集については、今のところ2026年第2四半期の募集開始というスケ ジュールが維持されているようです。 なお、本報告会の資料はJPNIC Webで公開しておりますので、こちらも併せて ご参照ください。報告会の模様を収録した動画についても、近日中に公開予 定です。 第70回ICANN報告会 https://www.nic.ad.jp/ja/materials/icann-report/20240725-ICANN/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ 第70回ICANN報告会レポート JPNIC 政策主幹 前村昌紀 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2024年7月25日(木)に、第70回ICANN (The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)報告会をオンライン形式で開催いたしました。 報告の対象となった第80回ICANN会議(以下ICANN80)は、2024年5月28日(火)か ら30日(木)にPrep Weekと呼ばれる会期前インプットセッションが開催され、 会期前日6月9日(日)のハイレベル政府会合に引き続き、本会議が6月10日(月) から13日(木)に開催されました。開催地はルワンダ共和国のキガリで、現地 開催とオンライン開催とのハイブリッド形式で行われました。 ■ プログラム 今回のプログラムは以下の通りです(話者敬称略)。 1. ICANN80会議概要報告 ICANNジャパン・リエゾン 大橋 由美 2. GNSOレジストリ・レジストラ部会報告 株式会社インターリンク ジェイコブ・ウィリアムズ 3. 国コードドメイン名支持組織(ccNSO)関連報告 株式会社日本レジストリサービス 高松 百合 4. ICANN政府諮問委員会(GAC)報告 総務省 総合通信基盤局電気通信事業部データ通信課 片柳 早苗 5. 次期新gTLD申請手続きポリシー検討状況報告 GMOブランドセキュリティ株式会社 寺地 裕樹 6. 理事会を中心とした活動の報告 JPNIC 前村 昌紀 7. ICANNの技術政策情報に関する報告 JPNIC 大谷 亘 それぞれの報告内容について、以下にご紹介します。 ■ ICANN80会議概要報告 ICANNジャパン・リエゾンの大橋さんからは会議概要に関連し、開催地や 参加者数について報告いただきました。現地参加1,004人、リモート参加が 634人の参加があり、開催地の地域であるアフリカからの参加が44%あまりを 占めていたとのことです。大橋さんからは会議中に注目を集めたトピックとし て、以下の紹介をいただきました。 (1) 新gTLDの次回ラウンド(次期募集に向けた進捗状況) PICs/RVCs (Public Interest Commitments /Registry Voluntary Commitments)(レジストリが行う自主的な登録方針誓約)に関して、コンテン ツの制限を制約するものを認めることがICANNの付属定款に違反する恐れがあ るとして、ICANN理事会が会期直前の会合で、次回ラウンドではコンテンツを 制限するRVCsを含む契約を除外することを議決したことが説明されました。 それ以外には、「単数形と複数形のように見えるgTLD申請は使用目的が異な る場合には自動的に競合セットに入れない」実装方針の検討や、申請者支援 プログラム(ASP)の検討状況が報告されました。 (2) Registration Data Request Service (RDRS) 非公開のレジストリデータの開示要求を行う時限パイロットプロジェクトで ある、RDRSに関する利用状況が共有されました。7,700件ほどの問い合わせに 対して、3,500件ほどがRDRS対象外ドメイン名、請求に至ったものが1,200件 あまりで、データ開示に至ったのは200件あまりという状況が、セッションで 使われた図も交えて説明されました。 (3) 地政学的動向と規制・政策動向 恒例となっている、政府・政府間組織エンゲージメントチームのアップデー トセッションの内容が紹介されました。 (4) 2026-2030年度戦略計画書案 理事会による意見聴取セッションが開催された2026-2030年度戦略計画書案に 関して説明があり、2024年9月17日まで意見募集中であることが案内されまし た。このほか、新事務総長決定や今後開催される関連イベントが案内されま した。 ■ GNSOレジストリ・レジストラ部会報告 インターリンクのジェイコブ・ウィリアムズさんから、ICANN80でのレジスト リ部会、レジストラ部会でのトピックをご紹介いただきました。レジストリ 部会からは、2025年8月に施行される新登録データポリシーの導入と、現在意 見募集が行われているデータ処理仕様に関して、レジストラ部会からは、米 国サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)によるサイバーイ ンシデント報告法、部会役員選挙とICANN理事指名(第13議席)、レジストラ部 会会費構造変更案、プライバシープロキシサービス認定問題(PPSAI)、DNSア ビューズに関するレジストラ契約変更、レジストラ間移転ポリシーに関する 議論が報告されました。 これらから、ここでは新登録データポリシーの導入とデータ処理仕様を取り 上げます。新登録データポリシーは、欧州連合のGDPR(一般データ保護規則) 施行に対応してICANNが施行したgTLD登録データ暫定仕様書に替えて、GNSOの コンセンサスポリシーに従って実施準備され、2024年2月に公開された暫定版 ではない登録データポリシーです。レジストリでは、2025年8月までに準拠が 求められています。ICANNはレジストリ・レジストラに対して機密性保持のた めに非公開の会議を複数開催する予定とのことですが、レジストラからは、 レジストリ個別となるポリシーを一元的にデータベース化できないかという 要望があるものの、レジストリの機密情報であることを理由に、ICANNでは拒 否しているようです。暫定ポリシーから新ポリシーへの移行はレジストリご とに移行計画があるため、円滑な移行に向けた技術的な議論を増やすことが 計画されているとのことでした。一つの方針の変更にあたって、レジストリ 側、レジストラ側それぞれの立場の考え方が垣間見える報告でした。 ■ 国コードドメイン名支持組織(ccNSO)関連報告 ccNSOに関しては、JPRSの高松さんより、ICANN80におけるccNSO会合に関して、 概要とともに以下のトピックをご報告いただきました。 (1) SDGsとccTLDの果たすべき役割 (2) ccTLDのあり方に関する議論 (3) ccNSOによるccNSOメンバー向け啓発活動(World Cafe) (1)と(3)は、互助的な情報交換活動が多いccNSOらしいプログラムの紹介でし た。(3)では活発な意見交換のためにWorld Cafeという方式を取り入れたもの の、あまり参加者が集まらなかったとのことで、運営方法の見直しをするそ うです。(2)は、前回のICANN報告会でも紹介されたレバノンのccTLDである.lb に関して、責任者としてIANAデータベースに登録されている方の死去によっ て一時的に責任者が不在になったという問題の継続議論で、そもそも現在の IANAデータベースにおける各レコードの目的、IANAによる評価を待たず責任 者が実質的に変更された場合、あるいはIANAに知らされず責任者が変更され た場合の対応、といったテーマで意見交換が行われたそうです。今後、作業 部会を設置して本件の検討を進めるとのことでした。 ■ ICANN政府諮問委員会(GAC)報告 総務省データ通信課の片柳さんからご報告いただきました。ICANN80ではGAC ハイレベル政府会合が会期前日に開催され、ICANNとマルチステークホルダー モデル、協力とガバナンス、デジタル・インクルージョンの推進、アフリカ におけるMeaningful Connectivity発展を支援するための四つのセッションが 行われたとのことです。総務省から参加された国際戦略局野村次長が発言さ れた、3点を報告いただきました。主な議題も、以下3点のご報告がありまし た。 (1) 新gTLDの募集に向けた整理等 (2) DNS不正利用(DNS Abuse) (3) 登録データリクエストサービス(RDRS) (1)については、概要報告でも紹介があったPICs/RVCsに関しての議論が紹介 されたとともに、GACコミュニケでは「コンテンツの制限」に関して具体的な 内容を明らかにするガイダンス作成が必要と盛り込まれたとのことです。ま た、申請者支援プログラム(ASP)に関して期限内の申し込みを先着順で処理す るべきでないこと、プライベートオークションを申請競合の解決策にしない こともコミュニケに含まれたようです。(2)に関しては、今回遠隔参加となっ た同課西潟課長(当時)が米国、EUと共同でセッションを主導なさり、DNS Abuseに関する現況共有、課題指摘などが行われたとともに、地域間の対応策 共有の機会を設けるべきとする日本からの提案がGACコミュニケに盛り込まれ たこと、(3)については、概要報告で取り上げられたRDRSの利用状況が紹介さ れ、RDRS自体の周知活動が重要とGACコミュニケに盛り込まれたことの報告が ありました。 ■ 次期新gTLD申請手続きポリシー検討状況報告 GMOブランドセキュリティの寺地さんからは、次期新gTLD申請手続き (SubPro)に関する進捗状況について報告いただきました。ICANN79以降の進捗 として、申請者ガイドブック(AGB)の一部内容のフィックス、申請者支援プロ グラム(ASP)の仕様明確化、レジストリサービスプロバイダ(RSP)評価プログ ラムの仕様明確化が挙げられました。これによって2024年第4四半期には申請 者支援、RSPの申請受付が始まる見通しが立っていること、さらに、AGBの完 成を2025年第2四半期、AGB理事会承認を2025年第4四半期、募集開始を2026年 第2四半期とする、今後の見通しが提示されています。AGBの策定に関しては、 ここまでに7領域の内容が意見募集を経て確定、9月には16領域、12月に8領域 の意見募集が予定されているとのことです。このほかに、現在20万8,000米ド ルから29万3,000米ドルの間で検討が進んでいるという申請費用の検討状況 や、ASPやRSP評価プログラムの内容も具体的に解説していただきました。 ■ 理事会を中心とした活動の報告 JPNICの前村からは前回の報告会以降の、ICANN理事会決議を中心とした理事 会の動向について報告したほか、ICANN80で印象に残ったトピック・セッショ ンとして、新事務総長指名、マルチステークホルダーアプローチに関するコ ミュニティセッション、理事会による戦略計画コンサルテーションを紹介し ました。 新事務総長には、現在London Internet Exchangem (LINX)のCEOを務める、 Kurt Eric (Kurtis) Lindqvist氏の指名が、会期直前の6月8日の理事会で決 議され、会期初日6月10日夕方のコミュニティカクテルにおいて、理事会議長 Tripti Sinha氏から発表されました。Lindqvist氏はLINXの前にはスウェーデ ンのccTLDマネージャーNetnodにも務めており、RIPEミーティングを中心に活 躍する技術コミュニティのメンバーで、着任は12月になる見通しです。同じ く初日に開催された「マルチステークホルダーアプローチを操縦する:グロー バルなインターネットガバナンスにおけるICANNコミュニティの役割」と題さ れたセッションは、支持組織や諮問委員会の活動ではない、クロスコミュニ ティの活動で、グローバルデジタルコンパクト(GDC)、WSIS+20レビューなど、 政府間組織におけるインターネット政策の議論が続く中で、マルチステーク ホルダーアプローチの震源地とも言えるICANNならではのセッションでした。 理事会による戦略計画コンサルテーションでは、理事会戦略計画委員会の共 同議長であるMaarten Botterman氏とChris Chapman氏から2026年度から2030 年度の戦略計画の案が提示され、コミュニティからの意見が求められました。 同計画は、2024年7月23日から9月17日までのパブリックコメント期間に入っ ています。 ■ ICANNの技術政策情報に関する報告 最後はJPNICの大谷から、JPNICによるICANN関連情報提供状況についてご報告 しました。大谷は、2023年にはアルバイトとしてこのICANNからの技術政策情 報のブログ記事執筆を担当しており、2024年4月からは正職員となり、技術部 の業務のかたわら、この情報提供を継続しています。今回は新着記事のご紹 介として、OCTO-037「RBL評価方法」を紹介しました。RBL (Reputation Block List)は、悪意のあるコンテンツを提供していると考えられるIPアドレス・ド メイン名・URLなどをリスト化したもので、専業のコンサルタント会社から提 供されるものです。ICANN OCTOではDAAR、ITHIなどで利用されています。詳 細はぜひJPNICブログの記事をご覧ください。 ブロックリスト(RBL)のより効果的な使い方を探る -OCTO-037のご紹介- https://blog.nic.ad.jp/2024/9890/ ■ 最後に 本メールマガジンでご紹介した第70回ICANN報告会について、資料を以下の Webページでご覧いただけます。詳しい内容を知りたい方は、ぜひ資料をご覧 ください。また、近日中に報告会の動画も公開する予定です。公開しました ら、JPNIC Webや本メールマガジンなどでお知らせいたします。 第70回ICANN報告会 https://www.nic.ad.jp/ja/materials/icann-report/20240725-ICANN/ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。 https://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html ◇ ◇ ◇ メールマガジン以外でも、情報を発信しています! 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