メインコンテンツへジャンプする

JPNICはインターネットの円滑な運営を支えるための組織です

ロゴ:JPNIC

WHOIS 検索 サイト内検索 WHOISとは? JPNIC WHOIS Gateway
WHOIS検索 サイト内検索
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    __
    /P▲        ◆ JPNIC News & Views vol.2107【臨時号】2024.9.20 ◆
  _/NIC
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ News & Views vol.2107 です
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

2024年8月下旬に、アジア太平洋地域におけるインターネットガバナンスにつ
いて議論するフォーラムであるAPrIGF (Asia Pacific Regional Internet 
Governance Forum)が台湾で開催されました。本稿では、APrIGF 2024の開催
概要や気になるセッションの内容を取り上げて詳しくお伝えします。

JPNICブログでは、本稿の内容を資料へのリンクや写真なども織り交ぜて掲載
しています。またいくつかのセッションの詳細はブログのみに掲載しており
ますので、ぜひ併せてお読みください。

  APrIGF 2024報告
  https://blog.nic.ad.jp/2024/10033/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ APrIGF 2024報告
                                     JPNIC インターネット推進部 山崎信
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

Asia Pacific Regional Internet Governance Forum (APrIGF) 2024は、台
湾・台北とオンラインのハイブリッドで2024年8月21日(水)~23日(金)にかけ
て開催されました(8月20日(火)にもDay 0としてセッションあり)。今回の会
議はTaiwan Network Information Center (TWNIC)が主催し、2016年以来8年
ぶりの台湾での開催となりました。


■全体概要

今回のAPrIGFには1,060名の登録があり、671名が現地参加し、オンライン参
加の登録者数は293名でしたが、実際には1,674名がオンライン参加したとの
ことです(*1)。67ヶ国/地域からの参加がありました。参加者の地理的分布
は、台湾が約18%、東アジアが18%、南アジアが約28%、東南アジアが約24%と
なっています。

セッション数は57で、台湾の国別IGFであるTWIGFの年次会合も併催された
(*2)ため、最大4セッションの同時並行開催となりました。

(*1) https://aprigf.tw/2024/08/28/reflecting-on-the-success-of-aprigf-and-looking-forward-to-nepal/
(*2) https://www.igf.org.tw/?page_id=9570


■テーマ

APrIGF 2024の全体テーマは、Evolving Ecosystems, Enduring Principles: 
Shaping Responsible Internet Governance(進化するエコシステム、恒久的
な原則:責任あるインターネットガバナンスの形成)となりました。その下
で、次の三つのテーマトラックが設けられました。

  * セキュリティとトラスト
  * 強靭性(レジリエンス)
  * 新興技術の倫理的なガバナンス

TWIGF 2024の全体テーマは、Rethinking Internet Governance: Artificial 
Intelligence, Resilience, Sustainability, and Security (インターネッ
トガバナンスの再考:人工知能、強靭性、持続可能性、安全)となり、その下
に次の三つのサブテーマが設けられました。

  * 人工知能の開発と応用
  * 強靭性と持続可能性
  * 安全


■統合文書

APrIGFの成果文書として毎年作成されている、統合文書(Synthesis Document)
(*3)は今年も作成され、草稿第0版については9月1日までコメントが募集され
ました。その後推敲委員会(Drafting Committee)で検討・改版がなされ、9月
後半には次の版が公開されコメントが募集される予定です(*4)。最終版は10
月半ばの公開予定となっています。

(*3) https://comment.rigf.asia/
(*4) https://ap.rigf.asia/news/2024/the-aprigf-2024-synthesis-document-process/


■開会式

初日21日朝一番で開催されたAPrIGFおよびTWIGFの合同開会式では、次の方々
が挨拶されました。

  * Amrita Choudhury, APrIGF MSG (Multi-stakeholder Steering Group)
    Chair
  * Kenny Huang (黄勝雄), Board Chair, TWNIC
  * Kuo-Wei Wu (呉國維), Chair of TWIGF
  * Yennun Huang (黄彦男;), 数位発展部(デジタル発展省)部長(大臣)
  * Bi-khim Hsiao (蕭美琴), 中華民国副総統
  * Vint Cerf, IGF Leadership Panel Representative

まずChoudhury氏からの登壇者、ホスト、スポンサー、参加者、フェローへの
感謝および呼びかけで始まり、次いでTWNIC理事長Huang氏はインターネット
の未来を形作るために積極的に議論に参加するよう参加者に呼びかけ、すべ
ての人々にとってオープンで安全かつ強靭なエコシステムを促進することの
重要性を強調しました。Wu氏からは、2016年に台北でAPrIGFを主催したこと
を振り返り、インターネットガバナンスはますます複雑化しており、技術的
な管理から、教育、文化、人権を含む広範なデジタル文明へと進化している
ことなどについて述べられました。

数位発展部部長の黄氏からは、インターネットガバナンスが現代の生活、文
明、経済発展において重要であると強調した上で、インターネット上の偽・
誤情報やセキュリティ脅威の課題に対し、信頼性、人権、そしてオンライン
の民主主義を維持する必要性を訴えました。

蕭副総統もまた、デジタル時代におけるグローバルなインターネットガバナ
ンスの重要性を強調しました。次いで、台湾は高度な半導体製造技術を有
し、AI革命の中心に位置しているため、台湾の安全と地域の安定は、全世界
の利益にとって極めて重要であることから、デジタル強靭性の強化、デジタ
ル人材の育成、技術革新の推進へのコミットメントを強調しました。また、
自由でオープンかつ強靭なインターネットエコシステムを構築し、技術を用
いて社会問題に取り組むこと、デジタルおよび技術開発の過程では、国民の
ニーズを優先し、より包括的・包摂的・先進的なデジタルガバナンス環境の
構築を目指している旨を述べました。

Cerf氏はビデオレターで登壇し、フォーラムの全体テーマについて触れた上
で、特に人工知能と大規模言語モデルの登場に伴うインターネットの急速な
進化を強調しました。次に、AIの課題と機会について、責任の所在、情報の
出所、偽・誤情報などの問題に言及しました。これらの課題に対処し、グロー
バルなインターネット政策を形成する上で、IGFの重要性を強調し、グローバ
ル・デジタル・コンパクト(GDC)の実施においてIGFが重要な役割を果たすこ
と、リヤドで開催されるIGF 2024の議論に反映するためのAPrIGF 2024の成
果、これらに期待していると述べました。


■キーノートスピーチ

開会式に引き続き、村井純慶應義塾大学教授より、キーノートスピーチがあ
りました。概要は、以下の通りです。

  * アジア太平洋地域は、インターネットユーザーの数が多く、さらなるア
    クセス拡大の可能性があるため、グローバルなインターネットの風景に
    おいて重要な役割を果たしている
  * リアルタイムアプリケーションにとって有益な短いラウンドトリップタ
    イム(RTT)を提供するため、データ交換、データセンター管理、デジタル
    基盤において各国が協力することが不可欠
  * インターネットの拡大は標準化の成功に支えられており、これによりイ
    ノベーションが確立されたプロトコルの上に構築されているため、アジ
    ア太平洋諸国がIETFやWorld Wide Web Consortium (W3C)などの組織に参
    加することは、将来の標準策定のために非常に重要
  * インターネットガバナンスは、データ、技術、エネルギーに関してマル
    チステークホルダーモデルで取り組む必要があり、これらのトピックを
    縦割り化せず、包括的な議論を行うことが重要
  * アジア太平洋諸国からのインターネットガバナンスに関する議論への参
    加を増やすことは、インターネットの将来の発展にとって不可欠
  * 研究および教育ネットワークもインターネットの発展に重要な役割を果
    たしており、データがますます重要になる中、機密情報を保護しつつ、
    公的データをアクセス可能にするための安全な共有モデルを確立する必
    要があり、その取り組みに大学や教育機関を関与させることは、若い世
    代の育成の場となるため非常に重要


■セッション紹介

いくつかのセッションの内容は、ブログ記事で詳しくお伝えしていますので、
ぜひ併せてお読みください。

  APrIGF 2024報告
  https://blog.nic.ad.jp/2024/10033/

 * GDC後の時代におけるマルチステークホルダー主義
 * NETmundial+10, GDC, WSIS+20 ? インターネットガバナンスの世界で他に
   何が起こっているか
 * マルチステークホルダー主義のための技術コミュニティ連合の紹介


■閉会時の全体会議(Closing Plenary)

「デジタル空間において、リスクをバランスさせ包摂を確保しつつイノベー
ションを活用」という副題がついたこのセッションでは、Global Digital 
Inclusion PartnershipのWaqas Hassan氏がモデレーターを務め、APNIC 
FoundationのRajnesh Singh氏、前台湾数位発展部部長のAudrey Tang(唐鳳)
氏、eWorldwide GroupのSalma Abbasi氏、MicrosoftのMichael Kariman氏が
パネリストとして登壇し、各々がイノベーション、安全性、包摂性について
の見解を共有しました。

Singh氏は、特に地域レベルでのイノベーションについて述べ、南アジアや
東南アジアの港や工業地帯から遠いと思われる特定の地域で鉄骨ではなく地
元ではありふれている竹を使って通信塔を建設するというような、コミュニ
ティ主導のイノベーションの重要性を強調しました。

Tang氏はまず、台湾では、イノベーションについて考えるとき、技術革新だ
けでなく、社会的なイノベーションについても考えるが、これはイノベーシ
ョンは単なる技術の応用とは異なり、決して道徳的に中立なものではないた
めであると述べました。次に、人権とオンライン上の安全性やリスク管理を
トレードオフで考えるのではなく、両方を確保し、市民社会のアクターが有
機的に集結することを目指すべきであると述べました。さらに、政府の役割
として、政府は一種の資金提供機関として行動する必要があるが、デマや情
報操作への対策に関しては、トップダウン式の直接的な管理は行わないとい
うことであると述べました。

Abbasi氏は、特に社会的に疎外されたコミュニティにおける草の根イノベー
ションの実践について共有し、パートナーシップについて議論し、デジタル
平等を達成するために政策を複数の省庁にまたがって統合する必要があるこ
と、グローバルな評価基準を持つ必要があること、および変化の真の進展に
実際に影響を与えることができるようにする必要性を強調しました。

Kariman氏は、すべての利害関係者の責任ある行動が重要なサイバー空間に
おいて、ルールに基づく秩序を推進することが重要と述べました。次いで、
あらゆる規模の企業が、あらゆる場所で、事業活動、特に開発・販売する製
品において、またビジネス上の関係においても、人権を尊重する責任がある
とも述べました。さらにイノベーション、リスク、そして包括性のバランス
は、継続的なプロセスであり、絶え間ない警戒、適応、対話が必要であると
も述べました。

質疑応答のセッションでは、モデレーターから次の質問がパネリストに投げ
かけられて議論が行われました。

  * オンライン体験が安全なものであることをどうやって保証できるか
  * 政府が実際に安全なオンライン体験を促進し、同時にイノベーションが
    社会に確実に定着させるにはどうすればよいか
  * テクノロジーはすべての人に公平な競争の場を提供すべきだが、それを
    どのように保証できるか、また、実際にそれが実現する上で重要な要因
    は何か
  * サイバーレジリエンスに関して、企業はどのような設計原則に注目して
    いるのか

その次に、参加者から投げかけられた質問である、技術的な議論へ市民社会
が関与することの重要性、技術的能力と社会や人間との間のギャップの拡大、
デバイスの価格の問題、新技術に対する恐怖などについて議論されました。


■最後に

閉会式では、ホストであるTWNIC事務局長のJo-Fan Yu (余若凡)氏より、参加
者への感謝およびTWNICで本イベントに関わった職員にねぎらいの言葉を述
べ、次いで本イベント開催に多大な貢献を行った事務局のEdmon Chung氏
(DotAsia)、およびアジア太平洋ユース運営委員会のSameer Gahlot氏、APrIGF
マルチステークホルダー運営委員会のAris Ignacio氏からそれぞれ挨拶があ
りました。

続いて、次回2025年の会議のホストとなるネパール(*5)よりBabu Ram Aryal
氏(ネパールIGF)が遠隔で挨拶を行い、新型コロナウイルスのパンデミック
により、2020年はバーチャル開催となり、開会式と閉会式はカトマンズで行
うハイブリッドモデルに変更となったこと、残念ながら、パンデミックのた
め、外国人がネパールへ渡航できなかったことに触れ、このたびカトマンズ
が選ばれたことを光栄に思う旨の発言がありました。挨拶に次いで、ネパー
ルの紹介ビデオが流れました。

偽情報、AI、インターネットフラグメンテーション、仲介者の責任、医療デー
タガバナンス、海底ケーブルなど他にもセッションは盛りだくさんでしたが、
全部を紹介することは困難ですので、興味ある方はサイト(*6)から録画を視
聴いただくことが可能です。

(*5) ネパール政府が主催し、ISOCネパール支部が共催と紹介されていまし
     た。
(*6) Day 1: https://aprigf.tw/program/day-1-aug-21-wed/
     Day 2: https://aprigf.tw/program/day-2-aug-22-thu/
     Day 3: https://aprigf.tw/program/day-3-aug-23-fri/


     ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
      わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。
             https://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html
                  ◇              ◇              ◇
            メールマガジン以外でも、情報を発信しています!
             JPNICブログ   https://blog.nic.ad.jp/
             X(Twitter) https://x.com/JPNIC_info

      YouTubeでは各種セミナー資料や解説動画などを公開しています
             https://www.youtube.com/@JPNIC_info
     ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃     ◆◇◆◇◆   本号のご感想をお聞かせください   ◆◇◆◇◆     ┃
┃良かった                                                          ┃
┃ https://feedback.nic.ad.jp/2107/7d9060b1daf724dea8231ea2f3937891 ┃
┃                                                                  ┃
┃悪かった                                                          ┃
┃ https://feedback.nic.ad.jp/2107/86edf3a529f40cc92b2b50cbd25ac737 ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
___________________________________
■■■■■  JPNICの活動はJPNIC会員によって支えられています  ■■■■■
  :::::  会員リスト  ::::: https://www.nic.ad.jp/ja/member/list/
  :::: 会員専用サイト :::: https://www.nic.ad.jp/member/ (PASSWORD有)
□┓ ━━━  N e w s & V i e w s への会員広告無料掲載実施中 ━━━┏□
┗┛          お問い合わせは  jpnic-news@nic.ad.jp  まで          ┗┛
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  ━━ JPNICへのご連絡/お問い合わせは極力電子メールでお願いします ━━
  ■ 各種お問い合わせ先:https://www.nic.ad.jp/ja/profile/info.html ■
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 JPNIC News & Views vol.2107 【臨時号】

 @ 発行  一般社団法人 日本ネットワークインフォメーションセンター
          101-0047 東京都千代田区内神田2-12-6 内神田OSビル4階
 @ 配信先変更・停止  https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/#regist
 @ 問い合わせ先 jpnic-news@nic.ad.jp
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
___________________________________
            本メールを転載・複製・再配布・引用される際には
        https://www.nic.ad.jp/ja/copyright.html をご確認ください
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   ◇ JPNIC Webにも掲載していますので、情報共有にご活用ください ◇
登録・削除・変更   https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/
バックナンバー     https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/
___________________________________
■■■■■     News & ViewsはRSS経由でも配信しています!    ■■■■■
::::: https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/index.xml :::::
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

■■◆                          @ Japan Network Information Center
■■◆                                     @  https://www.nic.ad.jp/
■■

Copyright(C), 2024 Japan Network Information Center
            

このページを評価してください

このWebページは役に立ちましたか?
よろしければ回答の理由をご記入ください

それ以外にも、ページの改良点等がございましたら自由にご記入ください。

回答が必要な場合は、お問い合わせ先をご利用ください。

ロゴ:JPNIC

Copyright© 1996-2024 Japan Network Information Center. All Rights Reserved.