━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ __ /P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.2135【臨時号】2025.1.24 ◆ _/NIC ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ News & Views vol.2135 です ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2024年11月中旬にトルコ・イスタンブールで開催された第81回ICANN会議につ いては、News & Views vol.2134にてお伝えしたところですが、本稿では第81 回ICANN会議を受けて2024年12月9日(月)に開催した第71回ICANN報告会につい てご報告します。報告会の資料も、併せてご覧ください。 第71回ICANN報告会 https://www.nic.ad.jp/ja/materials/icann-report/20241209-ICANN/ この報告会では、初登壇のスピーカーをお招きしたり、2024年8月に新たに ICANNのアジア太平洋(APAC)地域責任者に就任したSamiran Gupta氏に参加い ただいたりと、盛りだくさんな内容となりました。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ 第71回ICANN報告会レポート JPNIC 政策主幹 前村昌紀 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2024年12月9日(月)に、第71回ICANN (The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)報告会を、東京都千代田区神田のエッサム神田 2号館を会場に、遠隔参加も可能なハイブリッド形式で開催いたしました。報 告の対象となった第81回ICANN会議(以下ICANN81)は、2024年11月9日(土)から 14日(木)に、トルコのイスタンブールで開催されたものです。 今回は、2024年8月に新たにICANNのアジア太平洋(APAC)地域責任者に就任し た、Samiran Gupta氏が初めて東京に来訪し、ICANN報告会に参加をしました が、これに合わせた新たな試みとして、ICANN APACオフィスの提供で、報告 会の閉会後に懇親会を開催しました。 ■ プログラム ICANN報告会では、2024年4月からJPNIC職員となった大谷が、同月に開催され た第69回ICANN報告会から技術情報の報告を始めたところですが、今回はそれ に加えて、ICANN APACオフィスが共催するAPIGA (Asia Pacific Internet Governance Academy)の参加者であった早稲田大学の吉川さんが、セッション の紹介をなさいました。漫画海賊版対策の一環で最近、ICANN GNSOの知的財 産権部会(IPC)に加入なさった、JPMAC(漫画海賊版対策会議)からも初めてご 報告いただき、盛りだくさんの内容となりました。 今回のプログラムは以下の通りです。 1. ICANN80会議概要報告 ICANNジャパン・リエゾン 大橋 由美さん 2. ルートDNSサーバーシステムに関する報告 - RSSACとRSS GWG - 株式会社日本レジストリサービス 堀田 博文さん 3. 理事会とASOを中心とした報告 JPNIC 前村 昌紀 4. 国コードドメイン名支持組織(ccNSO)関連報告 株式会社日本レジストリサービス 高松 百合さん 5. ICANNの技術政策情報に関する報告 JPNIC 大谷 亘 6. レジストリ・レジストラ関連状況報告 株式会社インターリンク ジェイコブ・ウィリアムズさん 7. 次期新gTLD申請手続きポリシー検討状況報告 GMOブランドセキュリティ株式会社 寺地 裕樹さん 8. ICANN政府諮問委員会(GAC)報告 総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 データ通信課 恩賀 一さん 9. ブロックチェーン名前解決システムに関する報告 早稲田大学 創造理工学部 社会環境工学科 吉川 真矢さん 10. RDRSとレジストラにおける身元確認について 弁護士・弁理士 丸田 憲和さん ■ ICANN81会議概要報告 ICANNジャパン・リエゾンの大橋さんからは、冒頭に示した統計情報に続き、 以下のポイントを概要としてご報告いただきました。 新gTLD次回ラウンドに関して: - 申請者ガイドブックは2025年12月に確定版公開を予定。内容をいくつか に区分してパブリックコメントを実施中 - 競合セットに関して、前回には散見されたICANN枠外での私的解決を今回 禁止する方針が定まった - TLDラベルの文字列に関して、同じ言語で単数形/複数形となる文字列の 委任をしない - 申請者支援プログラム(ASP)が決定され、既に申請受付中 - レジストリ業務の外部委託を受ける、レジストリサービスプロバイダー の評価プログラムが制定され、既に申請受付中 DNS不正利用に関して: - レジストリ契約(RA)、レジストラ認定契約(RAA)改定後の執行状況 - PICs/RVCs (Public Interest Commitments /Registry Voluntary - 情報サービス Domain Metrica、フィッシングに関する分析報告書 INFERMAL その他: ブロックチェーンドメイン名に関するセッションと技術文書、インターネッ トガバナンスに関するセッションについて ■ルートDNSサーバーシステムに関する報告 - RSSACとRSS GWG - JPRSの堀田さんから、最近のRSSACの活動状況に関してご報告いただきまし た。RSSACでは現在さまざまなステークホルダーにRSSに関する理解を増進す るためにコミュニケーションに重点を置いているとのことで、ICANN81でもGAC (政府諮問委員会)に対してチュートリアルセッションを開催したとのこと。 RSSの新たなガバナンス機構に関して検討を続けているRSSガバナンスワーキ ンググループ(RSSGWG)は2020年の創設以来の検討が進展して、2025年中に検 討を終了する見通しで、11の原則が定まり、検討結果の適用に関しては、段 階的に導入する方針とのことでした。 ■理事会とASOを中心とした報告 JPNICの前村からは、ICANN80以降の理事会決議と、年次総会での理事3人の交 代を紹介し、印象に残ったセッションとして、オープニングセレモニーにお ける新事務総長Kurtis Lindqvistのスピーチ、NROチェア挨拶から二つのRIR におけるCEOの交代(APNIC: Paul WilsonからJia-Rong Low、LACNIC: Oscar RoblesからErnesto Majo)、GNSOレジストリ部会とICANN事務局合同の 登録データ正確性ワーキングセッションを紹介しました。また、自身がASO Address Councilメンバーに指名され、任期が始まる2025年1月を前に、新RIR 認定要件文書 ICP-2の改定に取り組むASO ACワーキングセッションに参加し たことを紹介しました。 ■国コードドメイン名支持組織(ccNSO)関連報告 JPRSの高松さんによるccNSO関連報告では、インターネットガバナンス関連の 議論、ccNSO評議委員・ccNSO選出理事の選挙状況、ランサムウェアを事例と した机上訓練の様子が報告されました。机上訓練は、小グループに分かれて 15分の制限時間の間に状況分析と対応判断を行うことが要求され、ccTLDマ ネージャごとに対応要領が異なることが分かり、大きな気付きが得られたそ うです。 ■ICANNの技術政策情報に関する報告 JPNICの大谷による技術政策情報に関する報告では、SSACのSAC125「SSAC Report on Registrar Nameserver Management」、SAC126「SSAC Report on DNSSEC Delegation Signer (DS) Record Automation」と、RSSACコーカスの ルートサーバのIPアドレス変更に関するガイドライン、RSSセキュリティイン シデント報告要領に関する議論が紹介されました。 ■レジストリ・レジストラ関連状況報告 インターリンクのウィリアムズさんからはGNSOレジストラ部会に関して、新 たに導入された登録者データポリシーの状況、試験運用中の登録データリク エストシステム(RDRS)の状況、登録者データの正確性チェック義務化と欧州 連合のNIS2指令の関連が報告され、ドメイン名の登録者情報の取り扱いに関 する議論の高まりが感じられました。レジストリ部会に関しては、新gTLD次 回ラウンド(SubPro)に関して、申請からルートゾーン委任までの期間が長す ぎるという懸念や、ベースRA(レジストリ契約)に多くの課題があり対応中で あることなどが紹介されました。 ■次期新gTLD申請手続きポリシー検討状況報告 GMOブランドセキュリティの寺地さんからは、次期新gTLD申請手続き(SubPro) の進捗に関して、冒頭の大橋さんの概要報告で触れられた項目を詳細にご説 明いただきました。次回ラウンドでは、申請料が前回の185,000米ドルから 227,000米ドルに値上げ、バックエンドレジストリ事業者(RSP)を利用する場 合には、RSPが認定を受けていれば申請者の技術評価は不要、上場企業におい ては財務評価を削減、申請費用の支払いによって信用状が不要、ブランドTLD などではTrademark Clearinghouseの利用が不要、申請文字列が競合した場合 に備えるため第2希望の文字列の申請が可能、IDNにおいては異体字の申請を 含めることができるなど、前回2012年ラウンドからの変更点とともに、申請 者支援プログラム(ASP)、レジストリ事業者評価プログラム(RSP)、申請者ガ イドブック検討の今後のスケジュールが示されました。 ■ICANN政府諮問委員会(GAC)報告 総務省の恩賀さんによるGAC報告では、DNS不正利用に関するセッションの様 子が紹介され、日本政府が米国、ECとともにセッションを主導したこと、日 本政府が、ICANNにおける狭義な不正利用よりも広い意味で注視しているこ と、RA・RAAでは不正利用報告に対して契約上の対応義務があること、ICANN コミュニティ以外のホスティング事業者、CDNとの連携が重要であることを強 調したことなどが紹介されました。また、GNSO契約者会議(CPH)との合同会議 では、登録データの正確性に関して議論され、不正確な情報に対する適切な 措置を取る旨CPH側から発言があり、コミュニケで特筆して評価したとのこと でした。 ■ブロックチェーン名前解決システムに関する報告 発表者の吉川さんは、2024年のAPIGAの参加者(英語では卒業生という意味の Alumniという言葉が使われます)で、今回現地参加はしなかったものの、APAC オフィスの誘いを受け、遠隔参加したブロックチェーン名前解決システム関 連のセッションの報告をしました。ICANNでは2024年10月にCTOオフィスから ブロックチェーンドメイン名とブロックチェーン技術に関する文書、 OCTO-039、OCTO-0450が公表され、ICANN81会期中には3セッションで議論され ました。ICANNは、あくまでインターネットのルートDNSサーバを起点とする ドメイン名に責任を持つものであり、ブロックチェーンによるドメイン名は 別の名前空間であり、関知しないという立場を取り、この周知に力を入れて いるようです。 ■RDRSとレジストラにおける身元確認について JPMACは出版業界の各社を構成メンバーとする漫画海賊版対策に関する連合体 であり、ドメイン名の登録データから海賊版事業者の特定をする上で、レジ ストラから正確な登録データを得られないことに懸念を持ち、2023年にIPCに 加入して、gTLDポリシーの観点からも対応を進めているとのこと。GACにおけ る登録データの議論、GACとCPHの合同会合、GACコミュニケの内容などを紹介 した上で、レジストラにおけるデータ検証は不十分だという認識を示されま した。 ■懇親会 すべての発表と質疑応答が終了した後には、同じ部屋でICANN APACオフィス の提供で、懇親会を開催しました。スクール形式に並べられた机を片付けて 立食可能にアレンジする作業は、参加者総出で行いました。小さな会場でし たが、APACオフィスから来た、Gupta氏、日本を担当するAthena Foo氏ととも に、2時間ほど、いろいろな話に花が咲きました。APACオフィスにとっても満 足のいくものとなったようで、今後も年次総会(AGM)に対する報告会では定例 化する方向で検討しようと思います。 ■ 最後に 本メールマガジンでご紹介した第71回ICANN報告会について、資料を以下の Webページでご覧いただけます。詳しい内容を知りたい方は、ぜひ資料をご覧 ください。また、近日中に報告会の動画も公開する予定です。公開しました ら、JPNIC Webサイトや本メールマガジンなどでお知らせいたします。 第71回ICANN報告会 https://www.nic.ad.jp/ja/materials/icann-report/20241209-ICANN/ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。 https://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html ◇ ◇ ◇ メールマガジン以外でも、情報を発信しています! 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