◆◆【 3 】News & Views Column ◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇ JPNICの情報発信について思うこと JPNICドメイン名検討委員会メンバー/長野大学 下野隆生 大学教員として日々学生たちと接していてつくづく感じるのは、さまざまなタ イプの学生が存在するということだ。最小限の努力を最大限に拡大して提示す ることができる「要領のよい」学生がいる一方で、その反対に、努力を結果に つなげることが得意でない「要領の悪い」学生がいる。 大学であるから学期や学年の終わりには単位認定の評価がなされる。要領のよ い学生と要領の悪い学生、いずれがより高い評価を得るかというと、往々にし て成績のよいのは前者である(だからこそ、彼らは「要領がよい」)。 ところで、私が日頃、JPNICの情報発信に抱いているイメージは、まさに「要 領の悪い学生」である。 たとえば、そのWebサイト(*1)を見てみよう。半年以上前の「重要なお知らせ」 が、注目されやすいとはとても思えないところに置かれている(誰が画面の右 上方なんかを気にする? 誰が半年以上更新されない情報を「重要」だと思う?)。 また、左側の目立つところには「最新トピックス」と「Web更新情報」という、 区分の意味がよく分からぬ二つの項目がある(新しいトピックが掲載されるの はWebサイトの更新ではないのだろうか)。さらに言えば、更新情報の掲載方法 も下手である(読者に伝える必要があるのは「News & Views: 第38号」がWebサ イトに掲載されたことではなく、そこで「APNG Camp」の報告がなされている ことだ)。 JPNICの情報発信は十分ではないと感じている人は少なくないと推測されるが、 私は、JPNICは情報発信のまずさのためにたいへん損をしていると思う。 また、そもそも努力の方向が的外れだと感じることもある。たとえば、どれほ どの読者がご存知であろうか、JPNICのWebサイトではICANNが発表する文書の 多くが翻訳されて掲載されている(*2)。むろん、ICANN情報の提供はJPNICに期 待される大事な役割の一つであろう。しかし、限られたリソースの中、何も全 文書の翻訳を目標に据える(?)ことはないと思う。 たとえICANNの文書がすべて日本語で読めるようになったとしても、ICANNに対 してコメントしたり、何かの募集に応じたりする際には、結局のところ、オリ ジナルの英語の文書に当たらなければならない。JPNICに期待されるのは、 ICANN文書の全訳ではなく、むしろ、その中で重要なものを選別してタイムリー に紹介し、それに対する日本国内での意見を集約、英語で情報発信することを 促進する作業ではないだろうか。その方がJPコミュニティにとってはずっと有 益だと思う。 「要領の悪い学生」に私はよく言うのだが、発信する情報量は今のまま、提供 の仕方を工夫するだけで「見かけの情報発信量」は3倍になる。作業量は現在 のまま、適切な領域に注力することで「見かけの情報発信量」は8倍になる。 私はそう思う。 もっとも、もちろんこの数値には何の根拠もない。 (*1) JPNIC Top Page: http://www.nic.ad.jp/ja/ (*2) JPNIC: ICANNアナウンスメント一覧 http://www.nic.ad.jp/ja/icann/announcements.html