━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【 3 】News & Views Column 「インターネットと省エネ」 JPNIC IPアドレス検討委員会メンバー キヤノン株式会社/慶應大学SFC研究所訪問研究員 伊藤公祐 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 関東地方ではこの夏、停電の恐れがあるそうです。例の原発不祥事で、十数機 ある発電機のうち一機しか稼動できない状況が続き、このままでは夏の冷房需 要を満たせないそうです。ただ、ここまで言われても本当に「停電」の事態に 至るのか、今一つ実感が沸かないのが正直なところです。生まれてこの方、夏 になると省エネだ!と言われてきましたが、一度も危機的な停電に見まわれた 経験はありません。ただその裏では、消費者の生活を守るためにライフライン を守っている各社の努力と設備の拡充があったのだろうと推察します。 一方、この7、8年で急増したインターネット需要によって電力需要はどのくら い押し上げられてしまったのか、を考えると相当なものがあるのではないかと 想像します。現に、1997~98年頃、イギリスでは急増するデータセンターや企 業のIT設備増強に絡んだ電力需要を賄いきれず、電力供給がダウンしたニュー スもあったのは記憶に新しいところです。街が古く、設備的な増強を急に行う ことが難しい街並みが災いしていたところもあるかと思いますが、やはりイン ターネット需要による影響は明らかにあるでしょう。 数値的なリサーチはしていませんが、日本、特に人口の集中している都市部で も、データセンターの乱立や企業のIT化で、24時間365日で稼動する拠点はコ ンビニの数とはいかないまでも急増したでしょう。それに加えて、家庭のPCや プリンタ、無線LANターミナルなどは恐らく電源が入りっぱなしのものも多い でしょう。その中で特にデータセンターは、サーバ類から発せられる熱を冷房 で冷やす、というエネルギー効率的に見ても超贅沢な環境で稼動している、と いうもので、決して環境に優しいとは言えない近代の贅沢品の様に見えてしま います。 昔はそれでも、最新のデータセンターの空調設備や電力供給システムを見学し たときは、すげーカッコイイ!なんて思ったものですが、最近はこれでいいの かなぁ、と思うようになりました。「サーバから発せられるこの熱エネルギーっ て、冷房で吹き飛ばしてしまう以外にうまく活用するの方法はないのだろうか?」 「この熱をリサイクル、転用する方法はないのだろうか?」、「このサーバで 消費するエネルギーを半減させる技術ってないのだろうか?」と最近思うので す。 自動車の分野も各企業の努力でどんどんエコ化技術が進化し、燃料電池やガソ リン代替燃料で動く自動車もかなり実用レベルに上がってきています。電車も 最近よく目にする通勤用新車両は、これまでの車両よりも約40%も電力消費効 率がいいそうです。データセンターが屋上のソーラーパネルで動く、という程 消費電力を抑えるのは無理にしても、消費電力を抑えていく技術、そして消費 によって排出された熱エネルギー転用の技術によって、データセンター運営コ ストも抑えられれば、インターネット利用料金も下がるでしょうし、ユーザー も嬉しいし、環境への負担も減り、よい循環になるのではないかな、と思うの です。 インターネットが生活必需品、ライフラインとして社会的地位を確立していく には、やはりエネルギー消費の面でも環境に優しいものであるべきで、インター ネット関連設備の省エネ、エコ化というのは今後検討していく必要があるので はないか、と感じています。 (2003年6月4日執筆)