━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【 3 】News & Views Column 「インターネットと個人情報保護」 JPNIC CAとアプリケーション専門家チームメンバー 監査法人トーマツ 野見山雅史 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ここ数年で「インターネットで物やサービスを購入する」ということが急速に 当たり前の行為になりました。私に関していえば、本の購入、飛行機やホテル の手配等はインターネットで行うことの方がはるかに多い状態です。 このように便利に活用している一方で、気になることもあります。それは個人 情報保護の問題で、実際に個人情報漏洩事件が後を絶ちません。メールマガジ ン等でのメールアドレス漏洩や、サーバ上の個人情報が誰でも参照可能な状態 に置かれていた(不正アクセスにより漏洩してしまった、というわけではなく!) などという事件が日常的に起きています。 個人情報保護に関する取り組みをまとめた「プライバシポリシー」なるものを 掲げているWebサイトは多くあります。また、個人情報保護に関する認証制度 も複数あり、これらの認証シールを掲げているWebサイトも少なくありません。 しかし、これらのWebサイトは完全に信頼できるか? というと、残念ながら、 必ずしもそうではないようです。例えば、プライバシポリシーを読むと、「クッ キーを発行しません」と書いてあるのに、実はちゃっかりクッキーを発行して いて、そのうえWebバグ(*)まで利用していた、という場合が実際にありました。 認証シールが掲示されていても、Webアプリケーションにセキュリティの欠陥 があった、という場合もありました。 このような状況の下、平成17年4月1日から個人情報保護法(以下、法律)が全 面施行される予定です。法律では、いわゆるセキュリティ対策等だけでなく、 個人情報収集時の利用目的の明示や、利用目的を超えて個人情報を利用するこ との制限、個人情報の正確性の確保等が規定されています。違反した場合、最 高6ヶ月の懲役または30万円の罰金を受けることがあります。個人情報取扱事 業者の事業上の影響という点では、刑罰の軽重より、違反の事実を報道されて しまう、といったことの方が深刻かもしれません。 法律に対応するためには、そもそも自らが保持する個人情報にどんなものがあ るか? を特定するところから始めなくてはいけません。法律では個人情報を 「その情報単体で、または他の情報と照合することで、特定の個人を識別する ことができる情報」と定義しています。したがって、氏名等だけではなく、IP アドレスが個人情報となる場合もあります。既に個人情報保護に関する認証シー ルを取得していたり、相当する管理体制を整備している場合は、ある程度対応 済みと考えることができますが、それ以外の場合は相応の対応が求められるも のと思います。 中小規模の事業者で、Webサイトで個人情報を取り扱っている事業者にとって は、なかなか頭の痛い話かもしれませんが、インターネットの健全な発展のた めにも、ぜひ前向きに取り組んでいただきたいところです。 (*) Webバグ:Webページに埋め込まれた情報収集用の極めて小さい画像のこと。 ユーザーのアクセス動向などを収集することができる。