━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【 2 】News & Views Column 「富豪的ネットワーク with IPv6」 富豪的ネットワーク家 すずきひろのぶ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 増井俊之氏の提唱する富豪的プログラミングにあやかり、富豪的ネットワーク というのを考えてみた。ネットワークバンド幅をじゃぶじゃぶ使うというのは ISPがいい顔をしないので、ここではIPv6における富豪的ネットワークの実践 を考えてみたい。 私の回りのネットワーク環境は、既にIPv6が中心となっている。もちろん外部 ともIPv6で接続されていて、外に出た時でもIPv6が使える環境であればアクセ スできる。アメリカに出張した時、現地の大学のネットワークからIPv6で自分 のオフィスにあるマシンに直接アクセスした時は、思わずデジャブ感を覚え た。 昔懐かしいインターネットでは、全てのマシンには今で言うところのグローバ ルアドレスが割り当てられており、世界中どこからでもアクセスされるべきマ シンはアクセスできたものだ。あの頃はスタンフォード大学はたしか/8を持っ ており、個人でも/24を抱えていたりしていた。本来インターネットは富豪的 なのである。その後、紆余曲折あって、NATが一般的になってしまった。この ような環境は、本来富豪的であったインターネットの姿とは言えない。 昔に戻ったとは言うけれど、IPv6の広大なIPアドレス空間を手にしてみると、 人間とは何か新しい富豪的なことをやりたくなるものだ。昨今は仮想マシンモ ニタXenがある。もちろん私のところでもXenを使って複数のカーネルを動か し、当然IPv6で運用している。さらにサーバ・デーモン用に、それに対応する IPv6のアドレスを個々に割り当てている。 同一ネットワーク上であれば、サーバ環境を別のカーネル上に引越ししてもIP アドレスはついて回る。まさにインタフェースIDである。このような環境で は、ポート番号は「あんなのは飾りです(以下省略)」的な状態である。いくら でもIPアドレスを消費できることをいいことに、こんな具合にガンガンIPアド レスを割り振っている。と言っても、IPアドレス空間の広さからみれば使って いないに等しいようなものだが。 IPv4のアドレス枯渇のためにIPv6が必要であると言う。そうではない。富豪的 に、どんどんIPアドレスを消費するから枯渇するのである。したがって、非富 豪的な使い方をしていれば、いつまでもIPアドレスなど枯渇などしないのでは ないかと思う。 というわけで、IPv6で富豪的ネットワークを試すのも、やってみるとなかなか 面白い。もちろん、もっといろいろな富豪的なアプローチがあるはずである。 ぜひみんなも新しいアイデアで挑戦してほしい。 ■ 著者略歴 すずきひろのぶ (URL: すずきひろのぶ.jp) 1985年(株)SRA入社。開発部門を経て同社ソフトウェア工学研究所へ移動。 UNIX、ネットワーク系システム開発、ネットワーク・トラフィックの研究、ソ フトウェア品質の研究などを行う。1996年にコンサルタントとして独立。現 在、早期攻撃広域警戒システムWCLSCANの研究を行っている。