━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【 2 】特集2 「IP Meetingレポート」 元JEPG/IP代表 白橋明弘 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2003年12月4日(木)に、Internet Week 2003の中のメインプログラムとして開 催された、IP Meeting 2003のレポートをお伝えします。 IP Meetingは、JEPG/IP(Japanese Engineering & Planning Group/IP)によっ て1990年に第1回が開催され、それ以来毎年1回続いている会議です。その趣旨 は、「インターネットの開発・構築・運営に関わる人々が一堂に集まって知識・ 課題を共有し、インターネットの発展のための議論を行う」というものです。 このIP Meetingが母体となって、1997年からさまざまなインターネット関連団 体も参加して、Internet Weekという形で開催されるようになり、今日に至っ ています。 今回IP Meetingとしては14回目を数えますが、JEPG/IPは今回をもってその役 割を終えたとして解散ということになりました。しかし、IP Meetingは今後も JPNICが主催して、Internet Week全体のプレナリー的会議として継続されます。 そのため、今回のIP Meetingも、JEPG/IPとJPNICの共催という形で運営されま した。 前置きはこれくらいにして、IP Meeting 2003の内容をご紹介します。最初に 基調講演として、現JEPG/IP代表である筆者が、「日本のインターネットの発 展とJEPG/IPの10年」と題して、JEPG/IPの活動とIP Meetingの歴史について発 表を行いました。そして、「インターネットに関わるさまざまなグループ ~ オペレーター、研究・開発、製品・サービス提供者、リソース管理、セキュリ ティ ~ が、お互いに議論する場としてのIP Meetingの重要性は、ユビキタス 時代を迎えて一層高まっており、今後も維持・発展させていかなければいけな い」と締めくくりました。 次に、恒例の報告として、JPNICとJPRSから、国際関連とIPアドレス関連の報 告が行われました。国際関連では、JPRS 大橋由美氏から、その後の世界情報 サミットでもインターネット利用先進国とこれからの国の間での鋭い対立点と なった、ICANNガバナンスをめぐる問題について報告が行われました。 引き続き行われた、JANOG 吉田友哉氏からのルーティング・トポロジーに関す る報告では、さまざまなトラフィック・ルーティングに関する具体的なデータ が示されました。継続的にこのような情報を収集・分析・公開していくアクティ ビティの重要性について考えさせられる内容でした。 午前の部の最後には、JPNIC 二瓶竜史氏から、日本語ドメイン名やENUMなどの 最近のドメイン名をめぐる動向についての説明があり、JPCERT/CCの山賀正人 氏からは、この1年のセキュリティの動向と、JPCERT/CCの組織変更・定点観測 などの活動の展開について発表が行われました。 午後の部では、最初にJPNIC 小島育夫氏から、DNSをめぐる最近の動き、JPNIC とJPRSがWIDEと協力して行っている、DNS設定の改善の取り組みやDNS運用健全 化活動などについて紹介がありました。 次に、かつてのIP Meetingではよく取り上げされていた教育(K12(*))と医療 へのインターネットの利用がブロードバンド時代にどう変わってきているかに ついて、教育が広島県吉田町立郷野小学校 玉井基宏氏・京田辺市教育委員会 中島唯介氏から、医療が東京医科歯科大学 田中博氏から、それぞれ発表され ました。どちらの分野でも、ブロードバンドが普通の環境となった今、双方向 の動画系のニーズが高く、しかも臨場感や高精細度の要求から、さらなる高速 ネットワークへのニーズがあることが語られました。会場からストリーミング 関係者からの質問もあり、多くの参加者にとって興味深い内容だったのではな いでしょうか。 最後のプログラムとして、奈良先端科学技術大学院大学 山口英氏を司会者と して、慶應義塾大学 中村修氏、独立行政法人産業技術総合研究所 高木浩光氏、 JPNIC/JPRS 佐野晋氏という豪華なメンバーで、「インターネットにおけるID とトレーサビリティ」というテーマでパネルディスカッションが行われました。 山口氏の巧みな仕切りもあって、会場からも多くの質問が寄せられ、短い時間 で議論しつくせる話題ではないものの、考えさせられる議論が闘わされました。 最後に、JEPG/IPの初代代表である村井純氏より、「インターネットのこれか らの10年」という題で、IP Meeting/Internet Week、そしてその参加者の皆さ まがこれまで果たしてきた役割、またこれから果すべき役割について、および その重要性が力強く語られ、IP Meeting 2003は閉幕しました。 (*) K12:概ね18才以下の幼児・児童・生徒を対象としている小中高校などの 教育機関のこと。米国での表現「幼稚園(Kindergarden)から高校 3年生(12th Grade)まで」に由来。