━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【 1 】特集 「2004年のインターネットキーワード!」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ インターネットとインターネットを取り巻く環境は目まぐるしい速さで変化し ています。2003年もIP電話、ブロードバンド、ユビキタスなど、新しい波が続々 と押し寄せた1年でしたが、2004年もインフラのみならず、コンテンツ、セキュ リティ、コミュニケーション、社会制度など、更に範囲を拡大しながらこの 「激動」は続くことでしょう。 この「激動」の2004年・インターネットを、インターネットの最先端で活躍さ れる方々はどのように予想しているのでしょうか? 8名の方にポイントとなる キーワードをそれぞれ一つずつ挙げていただきました。 ◇ ◇ ◇ ┌──────────────────────────────────┐ ◆氏名:荒野 高志(JPNIC理事(IPv6分野担当)/(株)インテック・ネットコ ア 専務取締役CTO) ◆2004年のInternet Keyword!:「IPv6本格化にむけて最終準備の年」 [理由] IPv6により、セキュアでシームレスなネットワーク上で個別認識された携 帯、家電、車などの「もの」から吸い上げられる情報を生かして企業プロ セスを変えていくことにより、大きな経営的な効果をあげていくことがで きる。情報は異業種間でもやりとりされ、企業間連携により日本の、さら に世界のさまざまな産業の接着剤となっていく期待もある。この意味で IPv6は大きな情報交換のためのプラットフォームとなっていく。 現在実証実験段階であるIPv6も2005年を目処に本当の意味で実用化されて いくであろう。2004年はその最終準備段階の年にあたるはずだ。移行・導 入ノウハウの集積、v6セキュリティモデルの確立などの課題を解決し、さ まざまな有用なソリューションが開発されていくだろう。 └──────────────────────────────────┘ ┌──────────────────────────────────┐ ◆氏名:後藤 滋樹(JPNIC副理事長/早稲田大学 理工学部 コンピュータ・ ネットワーク工学科 教授) ◆2004年のInternet Keyword!:「P2P(Peer to Peer)」 [理由] 技術的に見るとP2Pは新しい通信の形態を提示している。国際会議などで P2Pに関する発表が増えている。実際にP2Pのトラフィックが急増しており、 その対策をとっているネットワーク管理者の方も多いのではないか。とこ ろで、P2Pの利用方法をみると、著作権を侵害するような例があり、これ が社会的な問題となっている。既に昨年から世間を騒がせているP2Pであ る。 └──────────────────────────────────┘ ┌──────────────────────────────────┐ ◆氏名:坪 俊宏(JPNIC理事(ドメイン名事業部門担当)/グローバルコモン ズ(株) 代表取締役社長) ◆2004年のInternet Keyword!:「リッチクライアントと日本語ドメイン名」 [理由] 2004年のWebブラウザを取り巻く動きとして二つのキーワードをあげてみ ました。これらは直接的な関係はありませんが、ユーザーに「直感的な理 解」の世界を提供するという意味で共通するトレンドだと思います。 Webが誕生して10年。それまで主流であったクライアント/サーバーという コンピューティングパラダイムが、ここ数年でWebに置き換わりました。 ハイパーリンクを始めとするその独特な機能は文書管理において社会を大 きく進化させてきましたが、アプリケーションの操作画面としては、直感 的な使いやすさを犠牲にしてきたことは否めません。ここにきて「リッチ クライアント」への回帰がみられます。2004年はさらに拍車がかかるでしょ う。 同様にWebサイトを示すURLにおいても直感的にわかりやすい「日本語ドメ イン名」が大きく動き出す年になるのではないかと思います。 └──────────────────────────────────┘ ┌──────────────────────────────────┐ ◆氏名:野村 純一(JPNIC理事/エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ (株)経営企画部担当部長) ◆2004年のInternet Keyword!:「ブロードバンド・アプリケーション」 [理由] 世をあげてブロードバンド時代です。韓国でも日本でもDSLや光アクセス でのインターネット加入者が激増し、アメリカも追随の様相です。またワ イヤレスの世界でもブロードバンド化が始まっています。ここで重要なの は、ユーザーがブロードバンドを真に必要とするアプリケーションの存在 と発展でしょう。インターネットが次第に社会のインフラとして地歩を固 めているとはいえ、『不可欠』なものとなるにはブロードバンドならでは のアプリケーションが広く深く普及することが肝要です。ナローバンドに おける電子メールとウェブのようにブロードバンドでもキラーアプリケー ションが出現してくることを期待したいです。 └──────────────────────────────────┘ ┌──────────────────────────────────┐ ◆氏名:前村 昌紀(JPNIC理事(IPアドレス事業部門担当)/フランステレコ ム ネットワーク・アンド・キャリアジア地域IPプロダ クト担当 シニアマネージャー) ◆2004年のInternet Keyword!: 「社会資本化を遂げるインターネットとそのガバナンス」 [理由] ADSLやFTTHなどの常時接続サービスの一般家庭への普及がさらに進むとと もに、ENUMやVoIPなどの利用で、電話サービスにもインターネットのネッ トワークや技術を利用することが多くなってきた。2004年はこうした動き によって、今までは、どんなに一般化してきたといってもせいぜいパソコ ンマニアくらいまでが使う趣味の世界であったインターネットが、本格的 に社会資本となる区切りの年になるのではないかと考えている。 既に存在している社会資本のほとんど全ては政府によって管理されてきた が、インターネットは今まで民間主導・ボトムアップでここまで発達して きて、トップダウンな管理では機能し続けられないというのが専門家の観 測であるし、私もその通りだと思う。 そのような時期に、インターネット・ガバナンスの世界で起きている一大 事は、ICANNを中心とする管理体制に、中国を中心とした途上国グループ が、政府間組織であるITUを中心とした管理に移行するべきだと主張し、 国連事務局長を議長とするワーキンググループで今後2年間に渡って検討 されることになったことである。 上に述べたように、政府間組織主導ではインターネットが動き続けるべく 管理できるとは考えにくい。つまり現在の民間主導モデルでインターネッ トを今後も適切に管理していく必要があり、またそれが可能であることを 積極的に示していく必要がある。民間主導モデルの主役は、直接エンドユー ザーにサービスを供給するISP一社一社である。 └──────────────────────────────────┘ ┌──────────────────────────────────┐ ◆氏名:松本 敏文(JPNIC副理事長(国際分野担当)) ◆2004年のInternet Keyword!:「アジア」 [理由] 異なった文化、習慣、言語が入り混じるアジアが、これからのインターネッ トの中心となり、推進役となる新たな年。日本も、JPNICもその中心とし てアジアの地域をリードし、一緒に学び、一緒に素晴らしいインターネッ トを築いて行く。そんな思いで今年1年活動したいからです。 └──────────────────────────────────┘ ┌──────────────────────────────────┐ ◆氏名:山口 英(JPNIC理事(セキュリティ分野担当)/奈良先端科学技術大 学院大学 情報科学研究科 教授) ◆2004年のInternet Keyword!:「社会インフラへの脱皮」 [理由] インターネットは多くの人々にとって日常的に使用し、また、さまざまな 経済活動が依存する情報通信インフラになってきている。しかし、社会が インターネットに大きく依存しても大丈夫にするためには、広い意味での 保証が必要となる。24時間365日安定してサービスを提供すること、シス テム上に保存されたデータが何年たっても変わりなく保存されていること、 各ユーザーが望む形通りにデータが保護されていること、データ処理が期 待通りにいつでも提供されることなど、保証機構を開発し、実際のサービ スに適用していなければならない。インターネットが社会インフラへ脱皮 するためには、必ず行わなければならないプロセスである。2004年が、イ ンターネットが真の社会インフラに成長するターニングポイントとなるこ とを強く期待する。 └──────────────────────────────────┘ ┌──────────────────────────────────┐ ◆氏名:村井 純(JPNIC理事長/慶應義塾大学 環境情報学部 教授) ◆2004年のInternet Keyword!:「JPNIC」 [理由] ブロードバンド化、ケータイ、IPv6ベースの未来への展望、ユビキタスネッ トワークなど、先端的なテクノロジの発展に加えて、それらに体重をかけ た社会の進展があり、インターネットの役割は大きくなり、基盤性を増し ています。一方、これらの基盤を、民主導(+官サポート)で健全に進行 するのは世界中のインターネットの課題です。 そのもっとも適切な立ち位置にいるのがJPNIC。良い見本を日本で作り、 世界に貢献する強烈な使命が2004年のJPNICにはありますね。 └──────────────────────────────────┘