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【 1 】特集 「第49回RIPEミーティング報告」
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1. 全体会議報告
                                               JPNIC IP事業部 穂坂俊之
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◆概要

第49回RIPEミーティングが、2004年9月20日から24日までの日程で英国・マン
チェスターにて開催されました。RIPEミーティングは、議論・意見交換を主と
する、テーマ別に分かれた10個のワーキンググループ(以下、WG)と、それぞ
れのWGからの報告が行われる総会(Plenary)から構成されます。


◆ワーキンググループ(WG)

RIPEでは特に挙手によるコンセンサスの確認を行いません。提出された提案は、
今回のような直接顔を合わせてのミーティングで議論されますが、その場で議
論が収束しない場合、その議論はメーリングリスト(ML)上に引き継がれ、論
点が出尽くし、収束するまで続けられます。提案時点でポリシー文書のドラフ
トが用意されていることはなく、提案内容そのものに関する議論が先に行われ、
その後にポリシー文書ドラフトが用意され、再度議論が行われ、コンセンサス
を形成していく、というプロセスを経ます。

RIPEではAPNICと違い、提案の様式や提出期限などの定めはありません。その
分提案することに対する敷居は低いとも言えますが、コンセンサスを得て実際
の運用に入るまでの過程はAPNICよりも長くかかるということが言えそうです。
後述しますが、アドレスポリシーWGに提出されているポリシー策定プロセスの
提案などは、最初に提出されてから既に1年が経過しているにもかかわらず、
ドラフトはこれからという状況がそのことを端的に表していると思われます。


◆総会(Plenary)

総会では、WGからの報告の他に、APNICなどの他RIRや、ICANN/IANAからの報告
が行われます。今回はこれらに加え、RIPE地域のICANN ASO理事選出選挙も行
われました。選挙の方法は、RIPE事務局員を除く出席者全員に1枚ずつ投票用
紙を配り、回収するというものです。今回の改選枠は1名で、開票の結果、現
職のHans Petter Holen氏が再選されました。

ICANN/IANAからは、IANAからRIRに対するIPアドレスの割り振りに必要な日数
の報告がなされています(*1)。前回のAPNICミーティングでは同様の報告はあ
りませんでしたのでここで紹介しますと、IPv4(/8単位)は7日、IPv6(/23単
位)は最短で7日、最長で20日かかっているということでした。IANAからは今
後も納期短縮に務めるとのコメントがなされています。

(*1)http://www.ripe.net/ripe/meetings/ripe-49/presentations/ripe49-plenary-iana.pdf
 

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2. アドレスポリシーWG報告
                                               JPNIC IP事業部 穂坂俊之
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本WGは、その名の通りAS番号及びIPアドレスの管理ルールについて議論するWG
です。今回は、以下の4点が議論の対象となりました。

(1) IPv6初期割り振り要件の見直し

現在RIPE地域で適用されているIPv6ポリシー中の初期割り振り要件である、
「2年以内に少なくとも200の/48の割り当てを行う計画がある」という項目を
削除する、という提案がなされました。

WG出席者からは本項目削除に賛同する意見が大多数を占め、WGとしては本項目
を削除する方向でポリシー改定のドラフトをMLに提出し、詳細はそちらで議論
する、という結論となっています。


(2) ポリシー策定プロセスの整備

コンセンサスの定義、提案提出の期限・様式など、現在特に定めのない事項に
ついて文書で規定することが提案され、WGの賛同を得ています。今後具体的な
文書ドラフトがMLに提出され、詳細はそこで議論されることになります。


(3) IANAからRIRへのIPv6割り振りポリシーに関する提案

IANAからRIRへIPv6アドレスを割り振る際の基準、手続きについて定めようと
する提案ですが、追加割り振りのサイズ等の具体的な基準値について意見がま
とまらず、MLで継続して議論することとなりました。


(4) IPv4追加割り振り基準へのHD-ratio適用

IPv4の追加割り振り基準(現在は既割り振り空間の80%を使用していること)
を変更する提案で、前回のAPNICミーティングで提出された提案と同一です。
今回は正式提案の位置付けではなく、APNICミーティングでの提案の紹介とい
うことで案内されましたが、WGからは特に反対の意見が出なかったため、今後
正式提案としてMLで議論することとなりました。

ここでは、特に(1)のIPv6初期割り振り条件の見直しに関する議論の今後が注
目されます。RIPE地域で「2年以内に少なくとも200の/48の割り当てを行う計
画がある」という項目が削除されれば、世界4RIRのうち、同項目をそのままの
形で残しているのはAPNICだけとなります。このため、早晩APNIC地域でも見直
しの機運が高まっていくのではないかと予想しています。JPNICとしては今後
の議論の動向を適宜ご紹介していきたいと考えておりますので、よろしくお願
いいたします。


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3. データベースWG報告
                                                 JPNIC 技術部 木村泰司
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本WGはRIPE NCCのレジストリシステムとwhoisやRPSLに関する議論を行うWGで
す。ここでは、本WGで議論された主な内容についてご紹介いたします。

(1) データベースの運用報告 (報告者: Shane Kerr, RIPE NCC)

○IPv6の割り振り

統計上の大きな動きとして、inet6num(IPv6アドレスブロックの割り振り情報)
が7400あり、年間でみると100%以上の伸び率(倍増以上)であること、そのう
ち85%が割り当て済みであることなどが紹介されました。統計資料は下記URLに
あります。

  RIPE Database Usage Statistics
    http://www.ripe.net/projects/dbconstat/stats.html

○ whoisサーバの性能向上

whoisサーバの性能向上の為、問い合わせ/参照のみのサーバを増加してロー
ドバランシングを行い、update等の操作を行うためのサーバをバックエンドに
する構成にするようです。

○ 旧来の認証方式の削除

RIPE DBMにおけるmntnerオブジェクトのセキュリティモデルの変更です。現在
はだれでもこのオブジェクトを作成することができますが、ハイジャックを防
ぐための対策として、セキュリティモデルを変更し、認証方式のmail-fromや
noneを削除すること、mnt-lowerフィールドをデフォルトではmnt-byにするこ
とを行うとの報告がありました。

○ RPSLng(Routing Policy Specification Language next generation)

今までは対応していなかったRPSLngに対応したこと、IETFのInternet-Draftが
RFC Editorの編集待ちになったこと(すなわちIESGの承認は既にあり、RFCに
なることが決まっている)などが報告されました。

○ Afritrans

Afiritrans(AfriNICへのアドレスブロックの移転)を進めるプロジェクトが
進行中であるという報告がありました。

○ KEY-CERT/MNTNER LIR Portal Integration

第46回RIPEミーティングで提案された、X.509証明書のデータベースへの登録
手続きの改善に関する報告です。これまでは証明書の発行とデータベースへの
登録が別の手順で利便性が低い状況でした。(Shane氏によると登録数は20程
度とのことです。)新たに導入された方法では、RIPE NCCの認証局を使って証
明書を発行すると、自動的にkey-certオブジェクトが生成されるようになりま
した。


(2) ERX(Early Registration Transfer project)レポート 
                                       (報告者:Leo Vegoda, RIPE NCC)

RIPE NCCにおけるERXの進行状況の報告です。AS番号の移管は2002年8月に始ま
り、IPv4アドレスの移管は2002年12月に始まっています。2004年4月までにク
ラスBのブロック(48 (/8) )の移管が終了し、既にAS番号の移管も終了しま
した。クラスCのブロックは196/8と198/8 が2004年7月に開始、合計で1964の
移管が終了したようです。

クラスCの移管は、192/8、196/8 および 198/8 で、あと3000以上が残ってい
ます。これらの移管を進めるフェーズ3では、メールの送信の必要がないWebの
システムを使い、レスポンスを早くするようです。このシステムやプロジェク
トについては[erx-ip]から資料を入手できます。

 [erx-ip] Project Web Page
  http://www.ripe.net/db/erx/erx-ip/


(3) IRRToolSetソフトウェアメンテナンス (報告者:Shane Kerr, RIPE NCC)

whoisのプログラムセットであるIRRToolSetは、もともとISIによって開発され
たもので(当時RAToolSetと呼ばれていた)RIPE NCCに移管されたものです。
ソフトウェアの質の向上とソースコードの公開の為、ISCに移管しオープンソー
スプロジェクトとして進めることになりました。

現在既に、この移管はほとんどが済んでおり、ソースコードのリポジトリ、ML、
Webなどの移動は終わっているそうです。またこの機会にRPSLngへの対応、各
種バグフィックス、パッチの適用、gcc 3.x でのコンパイル対応などを済ませ
たと報告されました。


(4) Routing Registry コース (報告者:Rumy Kanis, RIPE NCC)

IRR(*2)の利用法の説明会の実施報告です。2004年には16回行われました。
2005年は、ドイツ、スペイン、ロシア、オランダ、イギリス、フランスで開催
される予定のようです。資料などは[training-rr]から入手できます。

  [training-rr] Material & Info
  http://www.ripe.net/training/rr/


(5) CRISP(*3) 関連報告 (報告者:Shane Kerr, RIPE NCC)

IETFで策定作業が進んでいるCRISP(Cross-Registry Information Service
Protocol)に関する状況報告です。CRISPに関する簡単な解説のあと、CRISPの
IRISでは、mntner、irtオブジェクトといった情報が記述できなかったり、
import:、export: といった経路情報の方針の記述ができなかったりする問題
点が指摘されました。これらは今後の検討課題のようです。

このプレゼンテーションを行ったShane氏は、IETF CRISP WGで、IPアドレスと
AS番号の書式の標準化作業に取り組んでいます。


(6) IRT / Abuse-c 議論のまとめ (報告者:Marco Hogewoning)

データベースにおけるIRTオブジェクト/abuse-cの追加に関する議論のまとめ
です。inetnumとinet6numオブジェクトにabuse-c:を加えること、inetnum,
inet6num,person,roleオブジェクト等にabuse-mailbox:を加えること、
changed:にメールアドレスではなくNICハンドルを入れること、の比較検討が
行われました。

このセッションでは、irt、personおよびroleオブジェクトにabuse-mail:を加
えることとabuse-email: がある場合にはその他のメールアドレスをデフォル
トでは返答しないというサーバの挙動について、コンセンサスが得られました。

(*2)IRR: 
    http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glos-a.html#11-internetroutingregi
(*3)CRISP:
    http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glos-ah.html#01-crisp


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