━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【 1 】特集 「JUNETスタートから20年を迎えて」 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学センター教授 砂原秀樹 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 1984年10月に東京工業大学・慶應義塾大学・東京大学を接続したJUNETがスター トして今年(2004年)で20年を迎えました。JUNETスタート当初からインターネッ トに携わってきた我々にとっては感慨深いことですし、現在の日本のインター ネットへとつながるエポックでもあるため、今年何か大きなイベントをとも考 えましたが「過去を振り返っても」という村井純氏の意見もあり、今年1年を 淡々と過ごしてきました。そもそも、「今のインターネットを利用している人々 のうちJUNETを知っている人がどのぐらいいるのだろうか?」とも考えてしまう ところです。 JUNETがスタートした頃と比べて、インターネットを取り巻く環境は劇的に変 化しています。アプリケーションの種類、回線速度や応答時間、利用者の数、 利用者の多様性、どれをとっても全く違う状況といっていいでしょう。しかし、 普遍的なこともあります。例えば、「自分たちが自分たちのためにネットワー クを構築している」ことはインターネットを支える重要な原則だと思います。 現在のインターネットを取り巻く環境の中には、少し困った問題も含まれてい ます。例えば、著作権の問題は本当に何が大切なのかを良く考えなければなら ないと思います。また、犯罪の道具としてインターネットが使われてしまって いることについては、道具としてのインターネットについて「正しく」教育す ることが大切なのだと思っています。 今、我々はインターネットを「安心して」利用できるようにする取り組みをス タートさせています。インターネットは、今や社会基盤として機能するように なってきており、それの上でさまざまなサービスを展開するために不可欠な技 術の研究開発を進めているのです。ここには、IPv6を快適に利用するために必 要な技術開発と技術移転・プロモーションも含まれています (http://www.v6fix.net)。今後コミュニケーションという観点においてインター ネットに依存することはますます増えていくと考えられます。こうした要求に 応えるためにも「安心できる(Dependableな)」インターネットを構築すること は重要な課題と言えるでしょう。 忘れてはならないことは、インターネットは誰のためのもので誰がそれをしな ければならないかということです。これは、まぎれもなく「自分」のためであ り、それを行うのは「自分」だという普遍な原則にあるのです。誰かがやって くれるのではなく、インターネットにおいて主役は自分自身なのです。それさ え忘れなければ、20年後のインターネットにも、明るい未来が待っています。