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【 1 】特集 「第20回APNICオープンポリシーミーティングレポート」
                                                JPNIC IP事業部  奥谷泉
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今回のAPNICミーティングは、ベトナムのNIR(国別インターネットレジストリ)
であるVNNICがローカルホストを務め、2005年9月5日(月)~9日(金)、ハノイで
開催されました。

ハノイの街は東南アジア特有の強い太陽の日差し、道の半分以上を占めて走る
バイク等、熱いエネルギーを発散してはいながらも、街の所々に湖と緑があり、
「しっとり」と「喧騒」のミックスした都市というのが個人的な印象です。

この号でまずはミーティング全体の概要をご紹介し、より詳しい議論の内容に
ついては別の号でお伝えしたいと思います。

■ミーティングプログラム
  プログラムは従来通り、各種チュートリアル、BoF、SIG、APNIC総会から構
  成され、5日間にわたり開催されました。SIGは分野ごとに参加者が集まって
  議論を行うセッションであり、現在は7つSIGが存在します。このうち「ポ
  リシーSIG」(9月4日)がJPNICオープンポリシーミーティングに該当する、ポ
  リシーについて議論を行うSIGになります。

  ミーティングプログラム
  http://www.apnic.net/meetings/20/programme/

■参加者
  約30カ国からの参加者200名弱のうち、日本からの参加者は15名、JPNICから
  は3名のスタッフ、そしてIPアドレス分野担当理事の前村が出席しました。
  また、参加者はアジア太平洋地域に限らず、ヨーロッパ、北米、ラテンア
  メリカ、アフリカ等、他のRIRのスタッフも毎回参加しています。

■主なトピックス
  ・NRO NC(*1)選挙
  ・ポリシーSIG Co-Chair(副議長)の選出
  ・参加者によるコンセンサスが得られた提案事項は4点

■NRO NC選挙
  現NRO NCである荒野高志(JPNIC理事)の任期満了に伴い、9月9日(金)のAPNIC
  総会ではアジア太平洋地域を代表するNRO NCの選挙が行われました。

    候補者(順不同):Eugene Lee(中国), Kenny Huang(台湾)、穂坂俊之(日本)
    結果          :現職NCでもあるKenny Huangが当選
                    合計投票数110票弱、うちオンライン投票数は40票弱。
    任期          :2006年1月1日より2年間

  今回の結果は日本の皆様からもありがたいご支援を頂いていたところ誠に残念
  です。今後はKennyをサポートしながらAPコミュニティへの貢献を続け、次の
  機会につなげたいと考えています。

■ポリシーSIG   Co-Chairの選出
  ポリシーSIGの最後に、Chair(議長)をアシストするCo-Chair(副議長)の選出が
  行われました。こちらは投票ではなく、会場での参加者の挙手により、選出
  されます。

    候補者(順不同):Ahmad Alkazimy(インドネシア)、Eugene Lee(中国)、
                    Billy Cheon(韓国)
    結果          :Eugene Leeが選出。現ポリシーSIG Chair Kenny Huang、
                    Co-Chair 穂坂俊之は継続。
    任期          :期限なし

■提案事項の結果
  以下の提案はミーティング参加者からのコンセンサスが得られました。今後8
  週間の間に該当するSIGのメーリングリストで大きな反対意見がなければ、そ
  の後の定義されたプロセスを経て、APNICポリシーとして施行されます。

  コンセンサスの得られた提案
    1) IANAからRIRへのIPv6割り振りポリシー
    2) NIRに対するIPv6割り振り手数料の課金廃止
    3) APNICによるip6.intでの逆引きゾーン対応停止
    4) IPv6アドレスにおける追加割り振り利用率の変更

  コンセンサスの得られなかった提案
    5) IPv6アドレスにおけるデフォルト割り当てサイズの変更
    6) 独立したネットワークおよびナショナルピアリングに関する提案

  その他
    IPv4の追加割り振りにおけるHD-ratio適用については調査の結果割り振りサ
    イズと利用率の問題との関係性は見つけられなかったため、当面ポリシー変
    更が行われることはない。

■コンセンサスの概要
  1) IANAからRIRへのIPv6割り振りポリシー
     IANAからRIRに対するIPv6アドレスの割り振りポリシー。最小割り振りサイ
     ズは/12、追加割り振り時の利用率を50%と定義(以前提案されたものが他の
     RIRコミュニティとの調整のもと、再提案)
    
  2) NIRに対するIPv6割り振り手数料の課金廃止
     NIR共同名義で提案。NIRに対してAPNICから課金されているIPv6割り振り手
     数料を暫定的に廃止。NIRに対する課金体系の抜本的な見直しも今後中長期
     的に取り組む。
    
  3) APNICによるip6.intでの逆引きゾーン対応停止
     APNICにおけるip6.int方式による逆引きゾーンの委譲を2006年6月1日以降
     に廃止。具体的な日程は他のRIRと調整のうえ決定。

  4) IPv6アドレスにおける追加割り振り利用率の変更
     IPv6アドレスの寿命を延長すべく、IPv6アドレスの追加割り振りを計算す
     るうえで必要な値、HR-ratioを0.8から0.94へ変更。

■日本における影響
  ・ NIR向けのIPv6割り振り手数料の廃止に伴い、JPNICもIP指定事業者向け
     IPv6割り振り手数料を廃止する方向で検討を進める
  ・ HD-ratioの変更に伴うIPv6追加割り振り利用率の変更。これにより、    
     /32の割り振りでは利用率が10%⇒50%、/20では2%⇒31%へアップ
  ・ ip6.int方式で逆引きゾーン委譲を行っているIP指定事業者は、ip6.arpa
     方式への移行が必要(当該事業者へは近日連絡予定)

■所感
  大きな焦点であったIPv6ポリシー変更の提案、NIRに対するIPv6割り振り手数
  料の撤廃も含め、全体として議論が活発で活気のあるよいミーティングだった
  と思います。

  特にポリシーSIGでは議論の時間が足りなかったとの指摘があり、これについ
  ては改善の余地はありますが、しっかりと意見交換が進められていたしるしと
  受け取ることもできそうです。

  ミーティングの公式プログラム以外のJPNICとしての収穫としては、これま
  で密接な連携を進めてきたKRNIC、TWNICに加え、CNNIC、VNNIC等、ここ最近
  アドレス管理に力を入れるようになってきたNIRとの交流を強められたこと
  です。特にNIRに対する課金体系の中長期的な見直し等、これまで以上にNIR
  間の情報  交換、連携が必要となることが予測されます。個々の国によって
  考えや事情は異なり、必ずしもすぐに意見が一致するとは限りませんが、
  スタッフ同士が顔をあわせて交流を深めることによって、少なくとも対話に
  必要な基盤はできあがっていくのではないかと思います。

  最後に余談ですが、ハノイのタクシーはメーターでも信用してはいけません。
  メーター表示で2倍以上の請求を何度か体験!必ず相場をおさえ、メーターが
  ケースで守られているものにお乗りになることをお勧めします。

■参考
  「20th APNIC Open Policy Meeting」(APNICミーティングトップページ)
    http://www.apnic.net/meetings/20/

   「APNIC Policy Proposals」(AP地域での提案事項一覧)
    http://www.apnic.net/docs/policy/proposals/

(*1) NRO NC(NRO Number Council)
     RIRによる共同組織である「NRO」の諮問委員会。また、実質的にはICANN
     ASOのAddress Councilメンバーとして、グローバルアドレスポリシーを
     ICANNが承認するにあたり、ICANN理事会に対して提言を行います。各RIR

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