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【 1 】特集 「インターネット技術の標準化プロセス~RFCとは?~」
                 JPNIC理事/WIDEプロジェクトボードメンバー/東京大学教授
                                                               江崎 浩
                                                    (編集:JPNIC技術部)
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インターネット技術の標準化を推進する団体としてIETFがあります。
IETF(Internet Engineering Task Force)では、新しい技術仕様についてオー
プンな議論が行われ、ここでの議論を経てインターネット技術の標準「RFC
(Request For Comments)」が生まれます。

RFCとはインターネット利用者、運用担当者、開発者等に有益と判断された情
報を公開するための文書シリーズで、インターネット技術の発展に伴い常に新
しいRFCが発行され続けています。

以下では、RFCの種類とその標準化プロセスについてご紹介します。

◆ RFCの種類

RFCは、5種類のドキュメント種別が存在しており、情報の性質により区別され
ます。

(1)Standard Track RFC

IETFでは技術分野毎に組織されるワーキンググループという単位で議論、検討
を行っています。Standard Track RFCとは、ワーキンググループでコンセンサ
スが得られた業界での国際標準とすべき仕様をまとめたドキュメントです。
PS(Proposed Standard)、DS(Draft Standard)を経て、S(Standard)となります。
PSは複数の組織での独立な実装テストと相互接続性の確認が条件、DSは実質的
かつ広範囲での運用テストが条件とされています。S(Standard)の状態になる
と、STD番号が割り振られます。現在、STD番号を割り振られているドキュメン
トは非常に少数であり、実質的には、DSのRFCになると、国際標準とみなすこ
とができます。なお、最近では、必ずしも、複数での独立な実装テストと相互
接続性の確認が行われなくてもPSとしてRFC化される場合も見受けられるよう
になってきました。

(2)Informational RFC

Standard Trackには分類されませんが、業界にとって有用な情報を含むドキュ
メントです。例えば、各組織固有の仕様であっても、それが標準仕様の議論や
策定に有効と認められる場合に、RFCとすることができます。企業が標準化を
待たずに製品展開を行うような場合に、Informational RFCとしてその仕様を
広く公開し、事実上のStandardの地位を確立するための手段としてもしばしば
利用されます。

(3)Experimental RFC

標準化が目的ではなく、研究等の目的で検討される技術仕様に関するドキュメ
ントです。純粋な研究目的の場合と、企業が企業固有の仕様を使ってそれを標
準化しようとする場合などに用いられます。

(4)Historical RFC

標準化過程での議論の経過など、過去の記録として残すべき情報に関するドキュ
メントです。IPv6技術の検討経過などがHistorical RFCとなっています。

(5)Best Current Practice

直訳すると「現時点での最善の方法」となり、その時点で最善だと考えられる
インターネット管理運用手法やIETFでの標準化プロセスなどを文書化する際に
用いられます。


各組織は、各自のIETFにおける発言力とビジネス戦略に基づいて、どのTrack 
を用いて技術仕様の標準化を進めるべきかを検討しています。Standard Track 
での活動は王道ですが、ドキュメントが作成されRFCとなるまでは、1年以上の
月日を必要とするのが一般的で、Informational RFCやExperimental RFCを用
いて、より迅速な仕様の公開と普及を図る組織も少なくありません。


◆ 標準化プロセス

IETFにおいては以下の技術標準化プロセスを経てRFCが発行されます。

(1)Internet-Draftの投稿

Internet-Draftとは、その時点でまだ標準化されていない下書き段階の仕様書
のことです。各個人が自由に投稿することができ、6ヶ月間IETFのFTPサーバお
よびWEBサーバに置かれます。Internet-Draftは、6ヶ月でArchiveから消えて
いくWork-in-Progressのドキュメントです。Internet-Draftには、ワーキング
グループとして投稿・管理されるドキュメントと、個人として投稿されるドキュ
メントとがあります。

(2)Internet-Draftの成熟

Internet-Draftが、インターネット業界に有益な情報を含んでおり、将来的に
標準化されるに相応しいと判断されるとIETFで継続的に議論、検討が行われま
す。その結果は逐次Internet-Draftに反映され、そのInternet-Draftはより成
熟したものとなります。

(3)IESGの承認

IESG(Internet Engineering Steering Group)とは、IETFにおいて議論される
インターネット技術の標準化に関する責任を負い、IETFが作成するRFCの取り
扱い方法について決定をくだす組織です。Internet-DraftがRFCとして発行さ
れるのに十分成熟したと判断されると、IESGに対してRFC発行の申請が行われ
ます。申請が承認されると、そのInternet-DraftにはRFC番号が割り当てられ、
IETFのFTPおよびWEBサーバを通じて公式に参照可能なドキュメントとなります。


◆ 今後の展望

1990年後半のインターネット産業の急成長に伴い、IETFへの参加者数の増加と
関係するコミュニティの多様化が進展しました。その結果、IETFにおける技術
検討やコンセンサスの形成に必要な時間が、長期化してしまう傾向が観測され
るようになってきました。これに対応するためか、最近では、ワーキンググルー
プでの技術検討において少人数のデザインチームを形成し、技術仕様確立の迅
速化が行われるようになっています。さらに、標準化速度の迅速化と実態に合っ
たStandard Trackの再検討、あるいは、知的財産権に関する対応方法など、イ
ンターネット標準(STANDARD)化プロセスの見直しに関する検討も始まっていま
す。

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